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第二十三話

「ま、待てぇ! 私、そろそろ体力の限界!! 大人しく捕まってよー!!」

「いい走りっぷりね、あの子」

「手伝ってやりたいが、一人でやるって止められたからな……」


 謎の天使エルフェリアの悪事を解決してから二日。

 ファルネアはすっかり平和な日常が続いていた。ジェイク達は、凶暴化した人々が壊したところを依頼として受け修繕を手伝い、カイル達騎士団は操られた人々へと事情説明、帝都へ報告などに忙しかった。


 そして、今日はジェイク達の旅立ち。

 ファルネアを出ると次の街までは、相当な時間がかかる。山岳地帯とは逆の平原を通っていくのだが……五日は絶対かかる。

 魔物を倒し、素材を売り、そしてギルドの依頼をこなし資金を稼いで旅の準備は終わった。食料も多めに、いつでも野宿ができるように便利な道具などもいくつか購入した。


 今は、ユーカの旅立ち前の依頼を見守っている最中。

 今回の事件で、自分はほとんど役に立てなかったと落ち込みちょっとでも役に立てるように一人で依頼をこなし資金を貸せごうという考え。

 ジェイクは、別に気にはしていないのだが本人がそれではだめだ! と言うのだ。


「はあ……はあ……。こ、こうなったら最終兵器を!」


 呼吸を乱しているユーカを、まるで来ないのか? と煽っているかのように猫が見詰めている。そんな猫に対し、ユーカは目を怪しく光らせ取り出したのは……猫じゃらしだった。


「あの子は、まだ駆け出しだ。力不足なのは当たり前なのにね。それも、前回のような未知なる強敵相手だと尚更」


 早く強くなりたい。そして、役に立ちたい。

 その一心で、ユーカは自分に厳しくしているのだろう。その考えは、誰しもが思うこと。だが、焦って体を壊してしまったりすれば、強くなる以前の問題。

 そうならないように、ジェイクは一歩一歩少しずつだが確実に前に進めるようにユーカのレベル上げの手伝いをしていた。


「ほらほら~。猫じゃらしだよ~」

「にゃ?」

「強くなろうっていう気持ちが大きいのはわかるが……」


 この百年後の世界では、ジェイクが体験した以上にレベル上げがしやすくなっている。パラレルワールドとはいえ、それが現状。

 ジェイク意外にもレベル100の者が増え、いずれ100になる者達も大勢いる。


「いい子だねぇ。ほらほら~」

「……にゃっ」

「あ! なんで逃げるの!?」

「まあ、あの子なりのやる気だと思って受け入れてあげればいいわ。頑張りなさいね、先輩」

「……そうだな。先輩冒険者として、後輩を導いてやらないとな」


 猫じゃらしが聞かず、再度追いかけっこをすることになったユーカの後ろ姿を見守りながら、ジェイクは小さく笑った。




★・・・・・




「それでは、ジェイクさん、ユーカさん、メアリスさん。ご協力感謝します。皆さんのおかげで、迅速且つ最小限の被害で事件を解決できました」

「皆さんのおかげねぇ……」

「うぅ、視線が。視線が痛いよ……メアリス」


 ジェイク達の旅立ちを見送りにきたカイル達騎士団。

 カイル達が予想していたよりも、被害は少なかったらしい。確かに、エルフェリアという天使をあのまま放置していれば、子供の悪戯なんだと言いもっと被害が出ていただろう。


「僕達は、もうしばらくファルネアに滞在します。犯人は街からいなくなったとはいえ、まだ安全と言えるかわかりませんからね」

「帝都より、他の騎士を呼びここを守るように命じています。これで、前よりはいくらかはマシになるでしょう」

「とはいえ、あの天使のような摩訶不思議な力を使う者が居る今。我々も、もっと修練を積まねばなりませんね」


 天使という存在は、ジェイクですらどんな力を持っているのかは知らなかった。どうして、エルフェリアはこの街に居たのか。

 曖昧な考えだが、昔この街が天使の力により復興した街だから、かもしれない。何か、この街には不思議な力があるのかも……。


「帝都によることがあったら、今度は手合わせをしよう。騎士団の力を、この身で体験してみたいからな」

「もちろんです。その時は、帝都をご案内させて頂きます」

「帝都かぁ……お姉ちゃん元気かなぁ」


 ユーカの呟きに、そういえばユーカの姉は帝都にある学園に通っていると以前話してもらった。


「もし、帝都に行ったら会いに行こう。きっと、喜ぶはずだ」

「……そうですね。でも、いつになるかわかりませんけどね」

「そんなにすぐ会いたいのなら、彼らについて行けばいいんじゃない?」

「こ、心に準備というものがあるの! それに、こんな弱い私じゃ、だめ。もっと強くなってからお姉ちゃんに会わなくちゃ!」


 少しでも、姉が安心できるような自分になりたい、ということなのだろうか。決心するユーカの瞳に、嘘はない。

 今回の事件で、ユーカは強くなりたいという意思が高まったようだ。


「……そ。じゃあ、そんなあなたにこれをあげるわ」


 そう言って、メアリスが渡したものは……スキルチップだった。それに、地属性の初級魔法が封じ込められた。

 受け取ったユーカは、唖然とチップを見詰めながらメアリスへと視線を向ける。


「こ、これって」

「少しでも、私が楽できるように強くなりなさいってことよ」

「メアリス……って、今更だけど。このままメアリスも、一緒に旅するんだね」


 と、ユーカの発言にジェイクもそういえばそうだったな、と思い出す。


「あなた達について行くって、言ったでしょ? 忘れたの」

「いや、あれはファルネアに居る間だけだと思ってたから……でも! 仲間が増えるのは嬉しいよ。それと、改めてありがとうー!!」


 色々な嬉しさがこみ上げてきたユーカは、そっぽを向くメアリスに思いっきり抱きつく。どこなく、嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。


「仲間と楽しく支えあい、冒険をする。とても良い事です」

「ああ。一人で冒険するのもいいが、やっぱり仲間と一緒のほうが……楽しい」

「ですね。では、皆さんの旅路に光があらんことを」


 息ぴったりに、敬礼をする騎士団。

 が、メアリスは眉を顰めぼそっと呟く。


「個人的には、光はいらないんだけど……」

「もう、そういうこと言っちゃだめだよ!」

「はいはい。というか、あなた。いつまでくっ付いてるのよ。早く離れなさい。暑苦しいから」


 出会った頃よりは距離が縮まった。

 いつまでも抱きついているユーカを、メアリスは空いた手で押し退けようとしている。


「カイル達も、帰り道には気をつけろよ」

「もう油断はしません。騎士団の誇りにかけて」

「皆さんもお気をつけて!」

「良き旅を!」


 帝都の騎士団に見送られながらジェイク達はファルネアから離れていく。冒険は、出会いがあり別れがあるからこそ、思い出として強く残るもの。

 冒険は、多くの思い出を作れる。

 さあ、次はどんな出会いがあり別れがあるのか……。

次回から第三章です。

少しは、盛り上がる! はずです。

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