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第二十二話

 エルフェリアという謎の天使の少女により人々は人狼へと変わってしまった。自我を失い、ジェイク達をまるで獲物かのように鋭い牙を爪を立ててくる。

 ただ倒すだけならば簡単だ。

 だが、今回は違う。

 襲ってきている人狼は、何の罪もない人々。もし、術により操られているだけなのであればカイルが使っている解除呪文でどうにかできる。


「カイル様! 我々が敵を押さえつけます!」

「その間に解除魔法を!」


 カイルと共に居た騎士達が槍を携え突撃していく。


「大人しくしろ!」


 一体の人狼に二人がかり押さえ込もうとする騎士達。二手に別れ左右同時に拘束をしようという作戦なのだろう。

 が、相手にほうが上手だった。


「なにっ!?」


 人狼にとっては軽く跳ねただけなのだろう。しかし、騎士達にとっては凄まじいジャンプ力に驚愕してしまった。

 その隙を狙われ他の人狼が襲い掛かってくる。


「やらせはしない!」


 右の騎士をカイルが守り。


「無事か!」


 左の騎士をジェイクが守った。それなりの力を込めて蹴ったつもりだが、人狼はくるっと空中で体勢を立て直し地面に着地してみせる。


「頑張れ! 頑張れぇ!! エルフェリアちゃんが応援しちゃうぞー!!」


 戦いの中で、一人お気楽に声を上げているエルフェリア。人狼達は、咆哮し再び襲い掛かってくる。


「ただ素早いだけじゃ、私の闇からは逃れられないわ!!」


 畳んだ傘の先で地面を叩くと噴水のように溢れる闇が人狼三体を捉えた。対して、メアリスの魔法を目撃したエルフェリアはぎょっとした様子で表情を曇らせる。


「う、うわぁ……闇属性を使う人間が居るなんて最悪だよぉ!! 皆ぁ! さらにパワーアップだよー!!」


 天使ということもあり、闇というものが嫌いなのか。またあのチョコのようなものを人狼達の体内に投げ捨てた。


「グオオオオオッ!!」

「くっ!? この力は……!」


 人狼の体が光りだしたと思えば、メアリスの闇は浄化されるように消える。


「どうだー! 闇なんて光の前にはただ消されるだけの存在なんだから!」

「……くっくっく。やってくれるじゃない。私の闇を、馬鹿にしてくれたことを後悔させてあげるわ……!」


 体全体から噴出す闇の波動。

 空気が揺れ、周りの空間が徐々に黒く染まっていく。これは少しまずい。そう思ったジェイクはカイルに任せた! と告げメアリスの隣に移動し、肩を叩く。


「落ち着け、メアリス。街を崩壊させるつもりか?」

「そ、そうだよ! 落ち着けー! メアリス!!」


 《フレア》を唱えながら、ユーカは叫ぶ。

 先ほどまで、自慢するようなドヤ顔だったエルフェリアもメアリスの怒りに青ざめた表情で震えていた。


「……ふう。仕方ないわね。今回だけは、あなた達の言葉に従ってあげるわ」

「そうか。ありがとう」


 体から溢れ出ていた闇は引っ込み、いつもの冷静なメアリスになったのを確認し一安心と微笑む。


「けど、どうするつもり? あれ、私の闇でも簡単には捉えきれないわよ。あのアホ天使の光属性がある限り。他に何か手があるのかしら」

「……ああ。試してみたいことはある。成功すれば、人狼と化した人々も元に戻るかもしれない」


 ジェイクの呟きに、一瞬驚くメアリスであったがすぐにどんな方法なのかを問う。


「どうするつもり?」

「俺の得体のしれない職業のスキルを使う。何度も確認したが【吸血剣士】は何かを吸収するスキルが多い。ただ血を吸うだけのスキルばかりかと思ったがな」


 最初に試したのは、ネム達を襲った三人組の一人に。

 あの時使ったのは【吸血転化】という触れた対象者の血と魔力を吸い取り自分の力にすると言うもの。吸った力は、力として変容することができ、一度発動してしまえばその力はなくなる。


 そして、今試そうとしているのは触れた対象者の害となるものを吸い取るスキル。例を挙げるとすれば、毒などがいい例だ。

 吸収したものは吸血転化同様放出することができる。

 今暴れている人狼達は、体内に異物を入れられ術により強制的に暴れさせられているだけ。であるのなら、体内にある異物を取り出せば……カイルも、何度か解除魔法を試みようとしているが中々うまくいっていない様子。


「じぇ、ジェイクさーん! ヘルプですー!!」

「っと、考えている暇はない。メアリス! お前もできるだけ援護を頼む!」


 ユーカも何とか頑張っていたようだが、そろそろきつそうだ。

 考えている暇はない。

 危険を承知で、やるしかない。


「いいわ。そういう無茶は嫌いじゃないわよ」


 メアリスの言葉に頷き、ジェイクは飛び出す。ユーカに襲い掛かろうとした人狼へと右腕を伸ばし首を掴んだ。

 抵抗せんと爪を振り下ろそうとするも、メアリスのサポートにより腕が拘束される。

 その隙を逃さずジェイクはスキルを発動。


「【浄】!!」

「グオ……! オオオオ!?」


 スキルを発動させると、人狼が苦しみだす。

 ジェイクの手の中でびくんびくんっと痙攣しながら、体内にある害が取り除かれていく。その度、ジェイクの金髪が赤く染まっているのに本人は気づいていない。


「……ふう。なんとかうまくいったようだな」


 体内にあった異物を取り除いたことにより、人狼と化した男性は人間の姿に戻った。意識は失っているようで、ジェイクはそのまま地面に寝かせる。


「う、うっそぉ!? なに、なんなのさっきの!? あれを体内に入れてなんで冷静で居られるの!」

「生憎俺は、人間だ。浄は、害を成すものを浄化しながら俺の体内に吸収する。だから、俺はこうして正常でいられるんだ」

「き、君! 人間じゃないでしょ!? だってそうじゃなくちゃ……」

「ジェイクさん! こっちも二人ほど元に戻せました! 後は二人です!!」


 ジェイクのやったことに驚愕している間、カイル達は苦戦しつつも二人を元の人間の姿に戻すことができたようだ。


「こっちも」


 襲ってきた人狼の攻撃をひらりと回避し、背後から腕を掴み浄を発動させた。もう、効果があることは実証された。

 ジェイクも二人目を救助することに成功し、ふっと微笑む。


「二人救助した」

「後は、一人ですね!」

「案外、呆気なく終わりそうね」

「ぐぬぬ……! こ、これはやばい。ひじょーにやばい! え、エルフェリアちゃんちょっと用事を思い出したから……これで!!」


 危険だと察したエルフェリアが、逃げ出そうと走り出す。


「逃がさん!」


 助け出した女性をユーカに預け、ジェイクは逃げ出すエルフェリアへと駆ける。足の速さは一目瞭然。簡単に追いついたジェイクは少し手荒だが間接をキメようと手を伸ばす。


「ひいいっ!?」

「―――させない」


 後一歩というところで殺気。

 ジェイクはすぐに剣を抜き、間に割って入ってきた謎の影の攻撃を防ぎ、そのまま追撃を与える。弾き飛ばされた影はエルフェリアを抱き距離を取る。


「……まさか、追撃をくらうなんてね。ちょっと予想外」

「うえええん! 助かったよぉ!! ルーシア!!」


 現れたのは、銀髪の少女。

 赤いマントを羽織り、腕や足にアーマーを装備。右手には片刃の剣を構えている。一見かっこいい騎士風の少女に見えるが、後頭部青いリボンやスカートにフリルなどがついており可愛らしいところもある。

 ジェイクにやられた右腕の装備を見詰めながら、エルフェリアを抱き寄せている。


「エルフェリア。ちょっと、悪戯が過ぎたみたいだね。やばいのに見つかったみたいだし、帰るよ」

「うん、帰る! ちょー! 帰る!!」


 ルーシアという少女は、ジェイクを睨む。戦う意思が見えたが、すぐに冷静になったようで残った人狼を盾にし閃光魔法を唱え逃げ出した。


「な、なんだったんでしょう? あの子達」

「さあ、少なくとも悪さをしているってことだけはわかるわね」


 残りの人狼も元に戻し、戦いは終わる。

 犯人であるエルフェリアという少女は逃げていった。もう一人の少女ルーシアと共に。あの様子から考えるともう二度とファルネアで悪さをすることはないはずだ。

 ……ファルネアでは、だが。

もう少し進めば、もっと激しい戦いなどが出てくる予定です。やはり、強い主人公設定にすると戦闘を考えるのが難しいですね。

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