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第十七話

「無事でよかったぜ! まったくよ……!」

「本当に、ありがとう! 帝都の騎士様。それに冒険者の人達も!」


 特に何事もなくファルネアまに到着することができたジェイク達。

 依頼を出した二人も親友と無事に出会えて嬉し涙を流しながら報酬を渡す。


「いえ。人々を守るのが騎士の務めですので。ですが、今回は本当に危なかった」


 感謝の言葉を受け取り、商人達が立ち去った後カイルはジェイク達のほうへと振り向く。


「改めて感謝の言葉を。助けていただきりがとうございました。そして、名乗りましょう。帝都アルヴァラント。皇焔騎士団近衛隊所属カイル=イノセリアです」


 帝都アルヴァラントは、ジェイクが生きていた頃より存在していた都市のひとつ。圧倒的な武力を誇る者達が集まることで有名で、その理由が闘技場。

 アルヴァラントの王が主催をしており、もっとも強き者には褒美として多額の金と名声。さらに、アルヴァラント王の直属の騎士になる権利を得られるのだ。

 もちろん、騎士になることは強制ではない。権利を得るだけで、騎士にならずそのまま褒美として手に入れた金で裕福な暮らしをしてもよしとされている。


 とはいえ、アルヴァラント王は自らも戦場へと赴くほどの武人。王という威厳を持ちながらも、騎士達と共に訓練で汗を流し、凶悪な魔物が出現すれば自ら剣を振り下ろす。

 多くの者が、王としてではなくその武人としての強さに魅かれることが多い。

 今のアルヴァラント王はどんな人物なのかは、ジェイクはまだ知らない。

 だが、目の前に新たな騎士を見る限りでは昔とあまり変わらないのかもしれない。


「俺の名前は、ジェイク。ジェイク=オルフィスだ」

「私は、ユーカ=エルクラークです!」

「メアリスよ」

「ジェイク=オルフィス? あの伝説の冒険者と同じ名前とは、驚きです」


 目の前にいるのが、その伝説の冒険者本人だということにカイルは気づいていない。だが、これが普通の反応だろう。

 まさか、若返って転生するなど誰が予想できようか。


「まあ、その人本人なのだけれどね」

「え? 本人?」

「だが、ジェイク=オルフィスはもうすでに死んでいるんじゃ」


 メアリスの言葉に、カイルを含めた他の騎士達も首を傾げる。


「……まさか、転生者、ということですか?」

「よくわかりましたね、ジェイクさんが転生者だってことが」


 少し考えた後、カイルはジェイクが転生者だということに気づいた。こちらとしては、説明をしなくて済むのだが。


「はい。近年、転生者を名乗る者達が増えてきているんです。そのほとんど、異世界から来たと。我々の帝都アルヴァラントにも何人か転生者が居ます」

「俺だけじゃなかったのか……」


 その転生者達は、ジェイクと動揺アレスより転生をさせてもらったのだろうか? いや、子の世界にはもうアレスはいない。

 そう考えると、今この世界を管理している他の守護神から?

 もしそうだとしたら、その異世界から来たという転生者に話を聞く必要がありそうだ。


「ですが、驚きました。まさか、あのジェイク=オルフィスと出会えるだなんて」

「今は、二度目に人生を気ままに楽しんでいる普通のジェイク=オルフィスだ。あんまり畏まらなくてもいい。よろしくな、カイル」

「はい。こちらこそ」


 互いに笑みを作り、手を交し合う。

 こうして見れば、普通の同年代の男子が握手をしているという風に見える。が、実際は八十歳越えの老人と青年。

 ジェイクのように見た目に反して本当の年齢が高い転生者はいるのだろうか。


「では、我々は別の任務があるためここで失礼致します」

「そうか。頑張れよ」

「はい。しばらくはこのファルネアに滞在していますので。何かお困りのことがありましたら、お声をかけてください。我々でできることでしたら、助力致します」


 そう言い残し、カイル達は去っていく。

 別の任務。

 帝都からわざわざ騎士団が派遣されるほどの任務。ジェイクはそれが何なのか気になっているが、それは彼らが解決してくれるだろう。


「さて。ちょっと、遠回りをしたが。レベル上げに向かうか」


 本来、ユーカのレベルを上げるために外へと赴こうとしていた。

 まだ日は暮れていない。

 時間がある限り、できるだけのレベル上げはしておきたい。


「ですね。ご協力お願いします!」

「とは言っても、山岳地帯に行く途中である程度の魔物のレベルをサーチしたけど……すぐにレベルアップとはいかなそうだったわね」


 メアリスの言うとおり、ファルネア周辺に居た魔物のレベルは平均8から9となっている。

 現在、ユーカのレベルが7なのでまだ短い時間でレベルアップが見込めるとは思うが……やはり、最初の危険種で一気に上げたのが……だがあの場合は。


「それでも、地道に経験値を稼ぐのは無駄じゃない。焦らず急がずレベル上げをしていくぞ」


 そして、魔物との戦いが始まる。

 なるべくレベルの高い魔物を重点的に狙い、経験値を稼いでいく。ジェイクが攻撃をすると、ファルネア周辺の魔物は一撃で倒してしまう恐れがあるので、ジェイクは囮役。

 初めて、ユーカと一緒に戦った時と同じ方法で経験値を稼いだ。

 その結果、なんとかレベル8に上がる事ができた。




★・・・・・




「いやぁ、お店で食べるのも久しぶりですねー」

「まだ旅をして四日しか経っていないぞ。久しぶりっていうのは、早すぎないか?」


 ちょっと遅めの昼食を食べるため、ファルネアの人達から聞いた料理店に訪れていた。

 旅をして、そして野宿をして四日。

 ずっと、鍋や肉を焼くなどの簡単な料理と言ってもいいのかというものを食べてきたジェイク達にとって、料理人が作ったものは久しぶりになるのかもしれない。


「それがですね。お小遣いが少なくて、お店の料理には手が中々つけられなかったんですよ。故郷でも! ずっと、家でお母さんに作ってもらっていましたから」


 えへへ、と楽しそうにメニューを見詰めているユーカ。


「俺も結構久しぶりかもしれないな。店で食べるのは……」

「あなたの場合、年単位になりそうだけど……それくらい久しぶりなの?」


 メアリスの問いに、ジェイクはメニューに描かれている食欲をそそる料理の数々を見詰めながら、静かに呟いた。


「十年……ぐらいだったかなぁ」

「あら。意外と短いのね」

「ええ!? いやいや! 十分長いと思うけど、私は!?」


 どう考えても、十年は長い。素直に驚いていユーカに対し、メアリスの薄い反応。思わず大声を上げてしまったユーカは、周りに視線に気づきメニューで顔を隠す。


「とはいえ、こうやって落ち着ける環境でだけどな。すぐに食べられるようなものはちゃんと店では買って食べていたぞ」

「そ、そうだったんですか。でしたら、今日は思いっきり食べちゃいましょう」

「それは良いけど、お金のことを考えなさいよ?」

「わ、わかってる……!」


 今度は、迷惑がかからない程度の音量で声を発する。

 思いっきり、とは言ったがメニューや周りの雰囲気を見る限りではあまりガツガツいくのは場違いになるかもしれない。

 周りの客を見ても、皆静かに声も周りに迷惑がかからない程度に抑えている。


「私はもう決まったわ」

「俺は……どうするかな」

「実を言うと、こういう雰囲気のお店に入るのは初めてなんですよ私。だから、何が良いのかさっぱりで……うーむ」

「早く決めちゃいなさいよ。じゃないと、私も食べられないんだから」


 先に注文をしておけばいいのに、二人が決まるのを待っている。そんなメアリスの優しさに甘えじっくりとメニューと睨めっこをしようやく決まった。

 出てきた料理を口にし、ジェイクは感じた。

 やっぱり、少しでも料理を学んだほうがいいのかな……と。

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