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第十六話

「泊まる宿も決まったし、さっそくレベル上げに行くぞ。ユーカ」

「はい! 一気にレベル10にはなりたいですね!」


 泊まる宿が決まり、部屋を取ってから荷物を置いてジェイク達は街の外へと向かおうとしている。ファルネアに来る途中でユーカのレベルは7に上がった。

 絶好調なユーカの勢いは止まらない。


「おいおい、マジかよ。このままじゃ、あいつが」

「早く冒険者に依頼するかしないとあいつらも危ない」

「だが、今から依頼を申請してもそれまで時間が」


 途中、頭を抱え悩んでいた二人を発見。

 なにやら、深刻な雰囲気が漂わせている。


「どうしたんだ?」


 つい気になってしまい、ジェイクはエプロンを着用した男に話しかける。


「ん? あんた達、もしかして冒険者か?」

「はい! 三人とも冒険者です! あ、ちなみに私はまだ駆け出しですけど」


 ジェイク達が冒険者だと知り、男達はよしっと頷き説明を始める。


「俺は、この先にある店で働いているんだが。帝都から物資を頼んでおいたんだ。けど」

「こいつを見てくれ」


 もう一人の少し小太りしている男がマジフォンを見せる。

 ユーカは、まじまじと画面を見詰め文章を読み上げた。


「なになに。途中にある山岳地帯で、魔物に襲われた。護衛をしてくれた帝都の騎士さんが俺を庇って怪我をしてまともに戦える状態じゃない。今は隠れているが、魔物は明らかに物資を狙っている。見つかるのも時間の問題だ。頼む、救援を! ……って、大変ですよ! ジェイクさん!!」

「ああ。山岳地帯っていうのはここから西側だったか?」


 街に入る前に周りのちょっとした風景を記憶しておいたため、ジェイクは山岳地帯とは西側にあるとすぐにわかった。


「その通りだ。頼む! 物資を運んできているのは俺達のダチなんだ!」

「あいつ、帝都ですげぇ商人になるんだって言ってよ……。報酬は必ず払う! だから」

「わかった。俺達に任せてくれ」

「はあ……本当あなたって、厄介ごとにすぐ首を突っ込むのね」


 隣で傘を回しながらため息を吐くメアリス。

 そんなメアリスにジェイクはふっと笑う。


「退屈せずに済むだろ?」

「……まあ、そうね。いいわ。私も手伝ってあげる」

「そうと決まればさっそく行きましょう! 西へ!!」


 元気良く体を向け、走り出そうとするユーカだったが。


「ユーカ。そっちは東だぞ」


 自分達が歩いてきた方向。つまり東へと向いていた。


「……ではいざ、西へ!」


 ジェイクに指摘され、何事もなかったかのように方向転換する。


「あなた、冒険者として大丈夫なの? 西と東を間違えるとか」

「こ、これからってことで。今は……!」


 これからのユーカがどう成長していくのか。メアリスは不安になるも、今は何よりも先に帝都から来ている商売人を助けにいかなければならない。

 ジェイク達は、西の山岳地帯へ向け走り出した。




★・・・・・




「あそこだ!」


 急ぎ走り出すこと十分弱。

 馬車とその商人が岩陰に隠れており、帝都から派遣された護衛の騎士らしき青年が片膝を地面につきながらも槍で魔物の攻撃を防いでいた。

 他の騎士達は、もう戦えるような状態ではなさそうだ。


 彼らを襲っている魔物は【ベアード】という熊のような魔物だ。

 森や山などに多く生息する魔物で、集団ではあまり行動することはなく一体で狩りをする。


「へぇ。ベアードが三体も居るなんて珍しいわね」


 山岳地帯に現れる魔物は【キートン】という枯れ木のような魔物や【ガンドル】という岩の巨人が多い。標高が高ければ空を飛ぶ魔物も存在するが……彼らが襲われているのは出入り口付近。

 ほとんど平地のような場所だ。

 キートンもガンドルも見当たらない。


「俺も気になるが、今はあの人達を助けるのが優先だ」

「というわけで! 気をこっちに逸らすための……一撃!」


 今にも押し切られそうな帝都の騎士を助けるためにユーカが先行として、魔法を撃ち放つ。真っ直ぐ突き進んだ火球は、見事にベアードの背中に直撃し怯む。

 同時に、他のベアード達もジェイク達に気づき、騎士から離れていく。


「良い選択だ、ユーカ! 後は」


 こちらへ向かってくるベアード一体へと剣に手を添え瞬間的に駆ける。


「《駿刃斬》!!」


 一閃。

 素早い動きからの鋭き一撃で、ベアードは沈黙。


「さあ、闇に食われなさい! 《インフェルノ》!!」


 メアリスが闇の力にて相手の動きを封じつつ一度に残りに二体を撃退。その間に、ユーカが『癒しの結晶』で騎士達の傷を癒している。

 癒しの結晶は、回復魔法が封じ込まれた魔石で「癒しを」という呪文を唱えるだけで範囲内にいる者達の傷を癒してくれる昔ながらの道具のひとつだ。


 回復魔法などを使える者がいない場合にはかなり役立つ道具のひとつ。ちなみに使い捨てではなく、教会など行き治癒術師などに金を払い頼めばまた回復魔法を封じ込めてくれる。

 使用回数は一個につき三回まで。


「大丈夫だったか?」


 ベアードを撃退し、周りにもう魔物の気配がないことを確認した後、騎士達に話しかける。


「す、すみません。助かりました」

「これで、少しはマシになったと思います。立てますか?」


 回復を終えたユーカは青年騎士に手を差し伸べるが、大丈夫ですと一人で立ち上がった。


「いや、助かりましたよ。あなた方がファルネアから駆けつけてくれた冒険者の皆さんですね?」


 魔物がいなくなったことで、岩陰に隠れていた商人も馬車と共に姿を現す。ジェイク達のことは、おそらくマジフォンで知らせがあったのだろう。


「そうだ。友人を助けてくれと頼まれたんだ」

「それで? 帝都の騎士様はあの程度の魔物にも勝てなかったのかしら?」

「こ、こら! メアリス! 失礼だよ!」


 商人を守るために必死に戦っていた騎士に対しての失言にユーカは止める。だが、青年騎士は苦笑いをしながらメアリスの言葉を素直に受け取った。


「いや、良いんです。事実ですから。あれは、僕の失態です。この辺りの魔物ならば負けるはずがないと油断をしていたばかりに……」

「そんな! あれは、危険種から我々を守るために!」

「そ、そうです! カイル様の失態ではありません!」


 カイルという銀髪の青年騎士が自分を攻め立てていると、他の騎士達が庇うように弁解してくる。


「危険種? まさか、ベアードの危険種が現れたのか?」

「でも、危険種らしいのはいなかったですよね。あ! もしかしてもう倒しちゃったとか?」


 ジェイク達が倒したベアードの中に、危険種らしき魔物はいなかった。危険種とは他の魔物とは違い、一回り体が大きく、禍々しいオーラのようなものを放っているため見分けがつきやすいのだ。


「はい、カイル様が危険種を討伐したのですが。安心しきったところにあのベアード達が襲ってきて……」


 カイル達が戦っていた光景を目にしていた商人がもう危険種はいないことを説明してくれる。危険種を倒したが、その後で襲撃に遭いあのような状況になった。

 大体の状況がわかったジェイクは、多少は回復したとはいえもっと安全なところで体を休めたほうがいいと判断する。


「わかった。兎に角無事でよかった。俺達が護衛として一緒に行動するから、街に急ごう」


 街まで馬車ならそう遠くない。

 途中の道には魔物も少なかった。今なら、一気にファルネアまで突っ切れるはずだ。


「はい。よろしくお願いします」

「では、馬車にお乗りください。ファルネアまでお送りしますので」


 またベアードが襲ってくるかもしれない。

 ジェイク達も一緒に乗せ馬車は一直線にファルネアまで駆け抜けていく。

ユーカとかに回復魔法を覚えさせようと思いましたが、やめました。

なんというか、設定的に回復魔法を覚えさせると……。

せっかく攻撃魔法の威力二倍という固有スキルをつけているので、もう攻撃特化にしようかなーと。

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