表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/162

エピローグ

「ありがとう。君達のおかげで娘はこれからも平和に毎日を暮らせそうだ。本当にありがとう……」


 エミリアを狙っていた殺し屋はもういない。

 ジェイク達の活躍もあり、学園にも被害はあまりなかった。メアリスが気絶させた殺し屋は、皆捕まってしまっている。

 殺し屋とは二つの勢力に分かれている。


 ひとつは、国が認め、正式な依頼を貰って殺しをする正式な殺し屋。

 もうひとつは、ただ殺しだけを楽しむために、依頼も関係なく命を奪う邪道な殺し屋。


 今回エミリアの命を狙っていた殺し屋は、後者の者達。

 中には、指名手配されていた極悪人までもが混ざっていたことから、ジェイク達には追加報酬が国から与えられ、かなり懐が温かくなった。


「当然のことをしたまでだ。それに、娘さんも結構活躍していたんだ」

「あれは活躍したって言わないわよ。ま、だけど褒め言葉として受け取っておくわ」


 旅立ち当日。

 アレクセイは、ジェイク達に改めてエミリアを助けてくれたお礼をしていた。殺し屋が捕まったという知らせを受けて一番喜んでいたのはアレクセイだった。


 これで、娘は命をを狙われなくて済む、と。

 しかし、そんなアレクセイにエミリアは現実味のある言葉を投げつけたのだ。


「パパ。あたしは冒険者になるの。だから、命が狙われない、なんてことはないわよ」


 彼女は、冒険者への道を諦めていない。

 それはアレクセイもわかっていたことだ。自分の娘は、どんなことがあろうと自分の決めたことを諦めるような子ではないことを。

 父親として、娘を心配している。だからこそ、今回の一件で少しでも冒険者を諦めないかとひそかに思ってはいたが……やはり、諦めてはいないようだ。

 むしろ、よりやる気に満ちている。

 その原因となったのは……。


「ジェイク殿。今日で旅立たれるということで、こちらで食料などを準備をさせてもらったよ」

「よかったわね、ジェイク。食費が浮いたわよ」


 本来ならば、自分達で買い込むつもりだった。

 つもりだったのが、今回の一件で色々とあり買う暇がなかったのだ。なので、旅立ち当日に、全て買うつもりだったが……アレクセイの言葉でほっと一息。


「これで、後は気持ちよく旅立つだけですね!」

「いいや、まだ旅立てない」

「そういえば、約束っていうのがあったよね」


 ああ、と頷きジェイクはエミリアを見詰める。

 その視線に気づいたエミリアはやる気に満ちた表情で見詰め返す。


「あんたの本気。ちゃんとこの目に焼き付けてやるわ。今後、あたしの成長のためにね」

「……ジェイク殿。旅立ち前に、娘に本気の指導……お願い致します」

「任せておいてくれ。とはいえ、指導という指導ができるかどうかはわからないが。先輩として、残せるものは残しておくつもりだ」


 確かに、ジェイクはユーカに色々と指導をしている。

 だが、指導がうまいと自覚はしていない。

 自分に出来る限りの指導をしているだけ。

 それを今度は、未来ある冒険者見習いに。




★・・・・・




 ジェイクは、エミリアは、剣を構え中庭で立ち会っていた。

 今日は、晴天。

 雲ひとつなく、太陽の日差しが、風が心地いい。


「念を押しておくけど、手を抜くんじゃないわよ!」

「わかってる。だが、本気を出したうえで、お前には怪我をさせないように倒す。お前は……俺を殺すつもりでかかってくるんだ」


 刹那。

 ジェイクから発せられるオーラは、中庭にいる誰もが感じた。戦闘経験のないメイド達も、今のジェイクは先ほどまでの優しいジェイクとは違う。

 エミリアはごくりと喉を鳴らす。

 剣を握る手にかなり力が入る。


「あら、本当に本気のようね」

「あわわわ……! な、なんだか身震いいてきちゃった……」


 ユーカ達はずっと見てきた。

 ジェイクの戦いを。

 間近で見てきたからこそわかっていたつもりだった。しかし、ジェイクは日に日に力を増している。もうレベルが100だから成長はしないと思っていた。

 それがどうだ?

 明らかに、前より強くなっていると感じ取れる。

 レベル的には限界まで達しているというのに。


「……ふう。すごいオーラを出すじゃない。さすがは伝説ね」

「自分では伝説になるつもりはなかったんだけどな」


 やっと搾り出したエミリアの言葉に対して、ジェイクはいつも通りの対応だった。だが、体から発せられているオーラは消えていない。

 今、踏み出せば確実に攻撃をされる。

 それは経験が浅いエミリアでも容易に理解できるが。


「それじゃ、その伝説に」


 エミリアは踏み出した。

 確かに、相手は人間の希望。伝説だ。

 だからなんだ? 

 伝説だから、強いから逃げる? ……違う。今、自分は約束を果たしてくれているジェイクという冒険者と戦っている。

 そう、約束は自分からしたんだ。

 だから……逃げるわけにはいかない。


「立ち向かうわよ!!」


 例え、いや絶対勝てなくても。

 この戦いの経験は次に生かせるはずだ。

 そのためにも、今自分の全力をジェイクにぶつける。その覚悟で、エミリアは真っ直ぐ駆け抜けていく。


「はあっ!!」


 全力の一刀。

 この素早さ、そして剣速はエミリアと同い年の子からすれば一回りも二回りも早い。


「……」

「なっ!?」


 だが、ジェイクは別格だった。

 まるで時がゆっくりと動いているかのように、ジェイクの剣は斜めに動き……エミリアの攻撃は受け流された。


「まだまだ!」


 受け流されたからなんだ。

 エミリアは、そのまま体を回転させ斜めから切りかかる。


「いい連撃だ」


 それでも……ジェイクには無意味だった。刃が肩に当たる寸前で掴まれ、そのまま投げ捨てられる。


「嘘っ!?」


 そのまま流れるように、足元を狙われ、地面に倒れた。


「お嬢様!」

「エミリア!!」


 まだやれる。

 剣がなくても攻撃はできる。アレクセイ達の声に応じて、すぐ立ち上がろうとするエミリアだったが。それでも遅い。

 気がつけば目の前には剣の切っ先があった。

 動けない。 

 このまま動いたら確実にやられる。そんな想像をさせられるほど、今ジェイクから発せられているオーラは凄まじいものだった。


「……はあ、もう降参よ。……やっぱり伝説は強いわね。強すぎよ」


 と、エミリアが降参を宣言した瞬間、ジェイクから発せられていたオーラは消えてしまう。剣を鞘に収めにっこりと笑顔のまま手を差し伸べてくる。


「お前は、まだ発展途上だ。これから成長していけば、俺よりも強くなれる」

「本当かしら? ……ま、それも褒め言葉として素直に受け取っておくわ」


 ジェイクの手を取り、エミリアは立ち上がる。

 勝負は誰もが予想していた通り、ジェイクの勝利だった。もしかすれば、エミリアが一撃ジェイクに与えられると思ってはいたのだが……やはり無理だったようだ。

 しかし、エミリアは悔しがってはいない。

 むしろ嬉しそうにしている。


「大丈夫よ。もう少し経験を積めばジェイクの一番弟子であるユーカを越えられるわ、とりあえず」

「ちょっ!? なんでそういうこというの、メアリス!!」

「でも、いい太刀筋だったよ。僕もエミリアの今後の成長が楽しみになってきちゃったな。もし、冒険者になって冒険に出ることがあったら、一緒に冒険しようね」


 エミリアの強さは、ジェイクの仲間達も認めている。

 これほど強い先輩達に期待され、エミリアは嬉しくもなり恥ずかしくもなってきた。


「あら? 照れちゃったのかしら。顔が赤いわよ」

「う、うるさいわね!! ほ、ほら!! もう約束も果たしたんだし。さっさと行っちゃいなさいよ!!」

「こらこら。エミリア。ちゃんとした別れの言葉を言いなさい。ジェイク殿。娘と本気で戦ってくれてありがとう。娘もこんな態度だが、嬉しいはずだ」

「ジェイクさん!! 僕も、あなたの戦いを見て勇気をもらいました。姉共々これから頑張っていきたいと思います!!」

「ああ。頑張るんだぞ、エリオ」


 また、新しい冒険者。

 自分達はこの冒険者の卵達を導くことにある。レベル100となっては、強くなるためにではなくこれからの者達に残せるものを……残すことが大事だ。


(なんて……俺にこれからそんな大それたことができるのか……心配だが、頑張ってみるしかないな)

完結。

二回目の完結……うーん。ちょっとかなり微妙な終わりだけど、とりあえず完結です!!

今まで応援ありがとう!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ