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第七十三話

お久しぶりの投稿。

「ユーカ! エミリア!!」

「ジェイクさん!! それにネロ!!」

「ほら、無事だったでしょ? アリサ」

「よ、よかったぁ……」


 先に逃げたユーカ達に追いついた。四人とも、どうやら無事のようだ。

 当たり前、といえば当たり前だろう。

 周りを見れば、何十人もの人が倒れていた。その中心に立っているのは……メアリスだ。夕日を防ぐように傘を差し空を見上げていた。


「あら? 随分と遅かったじゃない。もう、殺し屋達はこっちで倒しちゃったわよ」

「これ全部、メアリスだけで?」

「当たり前じゃない。私が本気を出せば、この程度の実力じゃ、一瞬よ」


 さすがは、というところか。

 少し心配をしていたが、どうってことはなかったようだ。ジェイクは倒れている殺し屋の一人の首元を触る。ちゃんと生きている。ただ気絶させただけのようだ。


「殺さないわ。私は、冒険者。いくら、相手が殺し屋だとしてもね。それに、ここで血なんて飛び散らせていたら、学園側にも迷惑でしょ?」

「よく言うわよ。私が言わなかったら、殺す気だったじゃない」


 と、エミリアは眉を顰める。


「そんなことはないわ。ただ殺気を本気で出して、怯えさせただけよ」

「本当?」

「本当よ。それよりも、そっちは片付いたの?」


 そのことを問いかけられ、ジェイクは首を横に振る。今現在、敵だったはずのローグが、首謀者であるフランと戦っている頃だろう。

 ローグは確かに強い。

 だが、今のフランは以前に比べて別格。

 はっきり言って、ローグが勝てるとは思えない。


「片付いたといえば片付いた。だが、本当の首謀者がな」

「本当の首謀者?」

「フラン……僕の妹だよ」

「妹さんが!?」


 そこからは、場所を移動。

 学園長であるシーナの元へ。学園長室は現在より厳重な警備になっている。この中ならば、いくらかは安全だろう。

 そして、シーナはジェイクから事の次第を全て聞き、小さく頷く。


「なるほど……エミリアさんを狙っていたのはただのお遊び。本当の狙いは、兄であるネロさんを……え? 今更ですけど、男だったんですか?」

「そ、そうよ! あんたって男……だったの?」

「あははは。黙っているつもりはなかったんだけど。あ、でも元だから。今は女の子だよ」


 なんだかこの反応新鮮だな……と、その場でくるって回って見せているネロとその正体を知ったエミリア達のことを見てくすっと笑うジェイク。

 もう、ネロはジェイク達に馴染んでいる。最初は驚いたものの、今では元男だろうと殺し屋だろうと、仲間として接している。


「こほん……話を戻しますが。ジェイク様。そのフランという子は」

「……ネロと同じ殺し屋。だけど、明らかに様子がおかしい。おそらくあの力に操られている、のかもしれない」


 ネロからの情報。そして、ジェイク達がメアのところで見たカドゥケという黒き存在。フランに取り付いているのは、その力と同等なものと考えていいだろう。


「つまり、自分の意思ではないってことですか?」


 事情が知らないエミリア達にはそう思うだろう。が、ネロは首を横に振り、語りだす。


「フランは……僕のことを本気で殺そうと思っているんだよ。だから、あの力に頼って確実に僕を……」


 重い空気が学園長室中に張り詰める。

 が、すぐにそれを破るかのように扉が開き教師の一人が慌てて入ってきた。


「が、学園長!!」

「騒がしいですよ。今は、ジェイク様達と大事な話を」

「こ、この手紙を!! 殺し屋の首謀者からの!!」

「なんですって?」


 教師の一言に、シーナはもちろんのこと。ジェイク達も驚きを隠せない。教師の手にある薄く真っ白な一通の手紙。

 それをシーナは受け取り、ゆっくり開封していく。


「……」

「なんて、書かれているんだ?」

「……えーっと。手紙に書かれている通りに読めとありますので。失礼しますよ?」


 どういうことだ? と首をかしげながらも首を縦に振る。それを確認すると、シーナは目を一瞬瞑り、開眼。


「今回の殺しはやーめたっ! 楽しかったから、また今度にするよ~! あ、ジェイクくん! それにお兄ちゃん。後、その他! また会える日までちゃんと強くなっててよ?」

「……完璧にふざけてるわね」

「なんて軽い子なんでしょう、フランって子は」


 シーナも、意外とノリノリだった。

 おそらくノリノリで読めと書かれていたのだろう。


「だけど、エミリアちゃんはもう殺し屋に狙われていないってこと、ですよね?」

「え、ええ。なんだか、あれだけのことがあったのに呆気なく終わったって感じなんだけど……」


 安堵する二人。

 ジェイクも、護衛として役目を果たせたと緊張の糸を解こうとした刹那。まだ手紙には続きがあったようだ。二枚目を見たシーナは表情を曇らせる。


「……PS。ローグさんは……殺しちゃったよ。死体はちゃんと処理班に任せたから捜しても無駄だよ、お兄ちゃん」

「……」

「ネロ……」


 何も反応しないネロを気遣って、声をかけようとするユーカだったが。それをメアリスが肩に手を置いて制する。


「大丈夫。僕達殺し屋は、誰もが覚悟していること。それに、仲間が任務で死ぬことなんて……数え切れないほど聞いているから……平気だよ」


 ユーカを安心させるために笑顔を作るネロだが……明らかに動揺している。普段のネロであるのならうまく隠せていただろうが、今は違う。

 無理に笑顔を作り、唇をかみ締めているのがその証拠。


 無理もない。

 命を狙われているとはいえ、相手は妹。家族が、あんな姿に変貌し、さらには親友を殺された。動揺しないほうが無理というもの。


「シーナ。その手紙、俺が預かってもいいか?」

「はい。もちろんです」


 シーナは、丁寧に手紙を折り元に戻した。

 それをジェイクに手渡す。


「……ともかくです。これで、一件落着。任務、ご苦労様です。そして、ご無事でよかったです、エミリアさん」

「……ええ。優秀な、護衛達のおかげよ」

「気にするな。依頼はきっちりこなす。冒険者として当たり前のことをしたまでだ」


 手紙をポケットにしまいながらジェイクは笑う。


「それでだけど」

「ん?」

「あんた達、依頼が終わったってことは近いうちにこの街を出て行くんでしょ?」


 その通りだ。

 依頼を達成して、貰った報酬で食料などを買い込み、数日のうちに経つことをジェイクは考えていた。そのことを伝えると、エミリアはとんっとジェイクの腹部に拳を触れさせた。


「それじゃ、旅立つ前に……約束を果たして貰うわよ」

「もちろん」

「それと、もうひとつ」

「もうひとつ?」


 どうやら追加で何かを注文するようだ。


「連絡先。交換しなさい」


 マジフォンを取り出した。なんだそんなことか、とジェイクも自分のマジフォンを取り出す。


「お安い御用だ」


 マジフォンを合わせ、互いの連絡先を交換した。

 これは信用してくれた証拠、ということなのだろうか?

新作のほうの続きも同時に投稿しました。

よろしければそちらも!

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