第六十九話
今回は、いつも以上に短い……。
申し訳ない。
次回は、もう少し長くなります。
「……」
「ジェイクさん。どうかしたんですか?」
一度、集合してこれからのことを考えようと思っていたせつな。
シーナから、メールが届き表情を強張らせていた。
その内容とは……。
「どうやら、シーナが襲われたようだ」
「シーナさんが……」
「だが、見事撃退したようだ」
そう言って、届いたメールを集まった皆に見せる。
「……うわぁ、めちゃくちゃなメールね」
「あ、最近追加された絵文字を使ってますね、シーナさん」
そんなものがあったのか。
まったく知らなかったジェイクはシーナから届いたメールに少し戸惑っていた。
「というか、いつの間に登録していたの?」
「最初この学園に来た時、な」
護衛の途中だった。
エミリアの授業を見ている中、背後から忍び寄ってきたシーナ。何事かと思いきや、マジフォンへの登録だけだった。
いずれは登録をしようとは思っていたので断ることなく承諾した。
「抜け目ないわね……」
「それにしても、シーナさんって戦えたんですね」
「当たり前よ。じゃなきゃ、冒険者育成学園の学園長なんてできないわ。結構、授業に参加してくることもあるわよ」
それは、楽しそうだなっと小さく笑い話を進める。
「さて、奴らのことがいよいよわからなくなってきた。まさか、シーナを人質として狙ってくるとはな」
「ええ。あたしの命が狙いなのは当たり前だけど、まさか学園長を狙うなんて……」
「ねえ、ネロ。ローグって男は本当に人質を取らない、のよね?」
ネロから聞いていた話と違う展開。
ローグと言う男がわからなくなってきている。
視線が集まる中、ネロは口を開ける。
「僕はそう信じてる。だから、シーナが襲われたって言うのは」
「信じられない、か?」
「ううん。そうじゃない。それは本当だと思う。だけど、シーナを襲ったのはローグの命令じゃない。僕はそう思うんだ」
ここまでの信頼があるローグ。
どんな男なのか……敵だが、会ってみたいと思ってしまっている。
「ネロがそういうなら、私達もそう思いたいけど……」
「あなたの知らないところで何かが変わっちゃっているってこともあるのよ? もし、もしもよ。ローグが変わっていたとしたら……あなたはどうするつもり?」
再び、重い空気が場を包む。
しばらくこの空気が続く。
そう思っていたが、ネロは目を開きはっきりと答えた。
「その時は、僕がローグをどうにかするよ。仲間として」
嘘偽りない真っ直ぐな言葉に、メアリスはふっと笑う。
「それじゃ、動きましょうか。ここで、ただ喋っていても何も始まらないわ」
「うん。僕も、動いていたほうが楽かな」
「おいおい」
先ほどまでの空気はどこにやら。
二人が席から立ち上がる中、ジェイクは眉を顰める。
「あ、あの私も考えるのはちょっと苦手なので……」
「まあ、冒険の基本は動くこと。考えることも大事だがな」
「冒険じゃないけどね」
それを言うのはなしだ、とエミリアに言いジェイクも立ち上がる。
最初は、そのまま交代、ということになっていたが状況が変わった。ジェイクはこのままエミリアの護衛に。そして、ジェイクと組むのはユーカとなった。
そして、護衛はネロとメアリスの二人。
「……」
解散した後、ジェイクは自分の体を見詰める。
朝方と違い、体から抜けていくマナの量が明らかに多くなってきていた。気になり話しかけてきた生徒達には、有り余るマナを抜いているだけと答えている。
しかし、なんとか誤魔化せたが少し無理があっただろうか。
「もう少しの辛抱です、ジェイクさん。夕方になれば、元の姿に戻れますから!」
「早く戻って欲しいわね。今の姿じゃちょっと頼りないし」
「え、エミリアちゃん……」
「冗談よ。さあ、次の授業は実験室よ。急ぐわよ」
「ま、待ってよエミリアちゃん!」
命が狙われているというのに、元気なものだ。
だが、それが彼女なのだろう。
あんなことを体験したからこそ、今は命が狙われていようとも自然体でいる。
「私達のことを信じてくれている証拠、てことでいいのでしょうか? あの元気は」
「そうだと嬉しいがな。俺達も遅れないように急ぐぞ」
「はい!」
エミリアの姿を見失わないように、追う二人。
追いついたところで、エミリアが止まり振り向く。
どうしたんだ? と首を傾げると……。
「廊下は走らないように」
「あ、はい」
「す、すまん」
そういえば、エミリアとアリサは走っていなかった。
廊下にも廊下は走るなと書かれたものがあったのを思い出す。
わかればよし、と笑い再び歩き出した。
☆・・・・・・
「―――ああ、わかっている。作戦は必ず遂行する」
オルフィス学園の倉庫内。
そこでは、殺し屋ローグが何者かと会話をしている。周りには、部下が一人もいない。
「ところで、俺の部下の他にも変な奴らがうろちょろしているようだが……」
「――――」
「ふっ。別に文句を言っているわけじゃない。だが、これは俺の仕事だ。俺に任せてくれ」
「――――」
「ああ。任せておけ。だが、どうして……いや詮索はしない約束だったな」
それっきり、会話相手の気配はなくなってしまった。
ふうっと一呼吸いれ、ローグは倉庫から出て行く。
「ローグ様」
すぐで迎えてくれたのは、ローグの部下達。
「ああ。そろそろ行くぞ。一輪の花を狩りに」
部下達は頷き、ローグと共に姿を消す。