第四十七話
お待たせしました。
風邪も大分治り、新章を迎えられました。とはいえ、まだ病みあがりなので短めです。
「もういいわよ! あんた達はついてこないで!」
「ですが……お嬢様」
「我々は旦那様の命でお嬢様の護衛を真っ当しなければなりませんので」
「それに、この前のように金目当てでお嬢様を狙う者が現れるやもしれません。お嬢様に何かあったら、旦那様も奥様も悲しみます」
頑なに言うことを聞いてくれない護衛達に、エミリア=ウィル=アンブライはため息を漏らす。
燃えるような真っ赤なツーサイドアップの髪の毛。
強気な吊り上った翡翠色の目。
未成熟な体を張り、護衛達に叫ぶ。
「あたしは、剣術を習っているの! あんた達も知ってるでしょ? 大人相手でもあたしは負けないわ!」
「し、しかし」
確かに、エミリアの剣術は大人顔負けだ。
剣術を教えてくれた先生をも半年足らずで圧倒してしまったほどの才能を持っている。
彼女も十二歳。
いくら、金持ちの令嬢だとしても自由に街を歩きたいと言う気持ちで一杯なのだ。
「口答えしない!! いいから、あんた達は解散! 夕方までには戻るってお父様に伝えておきなさい!!」
「お、お嬢様!?」
怒鳴りつけ、エミリアは人ごみに紛れるように走り出す。
必死に追おうとする護衛達だったが……エミリアの体の小ささと持ち前の瞬発力に追いつけず、見失ってしまった。
「おい、見つかったか?!」
「いや、こっちには」
「このままでは、お嬢様が……」
「ん? 待て。屋敷から何か連絡が……」
辺りを必死に探している護衛達を物陰から観察していたエミリアは、やってやったという表情でその場から離れていく。
裏路地をすいすいと歩いていき、辿り着いたのは噴水広場。
「さぁて、今日はどんなことをしようかなっと」
年頃の女の子のように、楽しそうな笑顔。
しかし、彼女が気づいていなかった。
護衛と一緒に居る時でも、ずっと彼女の行動を伺っていた者が居ることを。
★・・・・・
ジェイクは困っていた。
とある依頼の前に、自由行動をしていた。
久しぶりに、男一人で買い物でもしようかと。色んな場所を回って、とある栄養ドリンクを見つけ出したのだ。
そういえば最近、疲労が溜まっているような感じがする。
そう思ったジェイクは、栄養ドリンクを少し高めな値段で購入し、それを飲んだ。
だが、それがいけなかった。
どういうわけかジェイクの体が……。
「……どうして更に若くなっているんだ、俺は」
縮んでいた。
いったいどういう原理なのか。もしかすると、飲んだドリンクに何かの仕掛けがあったのだろう。十八歳だったはずだが、今では十二歳? いやぎりぎり十三歳だろうか?
それぐらいの年齢までになってしまっている。
身に着けている服も、そのまま。だが、大きさは十八歳のままだ。このままでは、身動きが取れない。
「とりあえず、服とズボンはこうすれば……よし」
裾を上げ、ベルトを更にきつくすればなんとかなる。
だが、これでもまだ身動きが取れ難い。
いつ体が元の大きさに戻るかわからないが、この体にあった服を買っておかなければ。
「ユーカ達にはなんて説明すればいいか。素直に言って信じて……くれそうだな、うん」
あの三人ならば、簡単に信じてくれそうだ。
ユーカは、驚きつつも心配してくれ。メアリスは、動揺をせず何をやっているのかと呆れ。ネロは、どうやって元に戻るのかと模索してくれるだろう。
それにしても、ここが人気の無い公園で助かった。
今の時間帯ならば、皆昼食の時間。
公園に立ち寄る者はそうはいないだろう。
確か服屋はここから三分ほど歩いた場所にあったはずだ。ユーカ達との集合時間は、今から一時間後。
それまでに、元の姿に戻るとは考え難い。
「よし。そうと決まれば、さっそく服を買いに行くか」
と、ベンチから離れたところで。
「ちょっとそこのあんた!」
「ん?」
赤い髪の毛の少女に声をかけられた。
剣を腰にぶら下げており、強気な雰囲気を出している。周りに誰もいないことから、すぐに自分に声をかけたのだとわかったが……ジェイクは彼女のことを知らない。
いったいどんな用事なんだろうか?
「あんた。なかなか強そうね」
「そうか?」
「ねえ、あたし今暇なの。どう? 一戦交えない?」
今日は、なんて日だろう。
体が小さくなる。
見知らぬ少女にいきなり勝負を申し込まれる。
さて……どうしたものか。