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第四十五話

ちなみに、次の章はジェイクとネロが主となる予定です。

「今の俺を見よ! 魂を喰らい続け己の力としてきた結果がこれだ! 今の俺は、神をも殺せるだろう!!」

「神をも殺せる? それはありえないことだ! 確かにお前は、強い。強いだろうが、神を殺せるまでの強さではない!!」

「なぜ、人間の貴様がそう言い切れる!!」


 ぶつかり合う衝撃だけで、ダンジョンの壁という壁が崩れていく。

 ヨハネスから溢れ出るオーラは、もはや普通ではない。

 魂を喰らい続けた結果のもの。

 確かにこの力ならば、神をも殺せると自信を持って言えるのもわかる。しかし、ジェイクにはそうは思えない。

 なぜなら、本物の神という存在を知っているから。


 ヨハネスから感じとれる力は、まだ神へは届かない。

 アレス……そして、この世界の神であるアダー。おそらく、アルスとの会話を中断させたあの強大なる力……あれがアダーなんだろう。

 もしそうだとしたら。


「神に、俺は出会っているからだ!」

「なにぃ?」


 ガキィン! 剣を弾き、ヨハネスは今一度ジェイクを睨む。


「俺は、二柱の神に出会っている。だからこそ、言える。今のお前では、神を倒せない。……むろん、俺もだろうが」

「ほう? 貴様も、神を殺そうとしているのか? 面白いことを言うな。なんだ? 貴様も、神殺しの二つ名が欲しいのか?」


 違う。

 自分は、そんな二つ名など欲しくは無い。

 ただ、自分はイルディミアを護りたいだけなんだ。そのためにも、アルスを亡き者にしようとしているアダーを倒さなければならない。


「俺は、お前のように自分を大きく見せるために神を倒そうとはしない!」

「ならどうしてだ? 普通神を殺すことなど、考えない。それ相応の答えがあるんだろうな?」

「ある。イルディミアを護りたい。そして、俺に第二の人生を与えてくれた神様を……助けたいんだ」


 人間の希望の星になろうとただただレベルを上げるだけの人生を送っていた自分に、二度目の人生を与えてくれたアルス。

 恩人……いや、恩神を助けたい。

 今も尚、アルスはアダーの侵攻を止めているはずだ。御使い達の言葉通りならば、自分達は常に監視されている。

 この世界がアダーのものであるうちは、何をしても逃れられない。

 だが、それでも諦めるわけにはいかない。


「護る? 助けたい? ……くははっはっはっは!! まだそんな綺麗事を並べるとはな。そんなこと貴様には不可能だ!」

「不可能だと?」

「なぜなら貴様は」


 オーラが、形を変える。

 まるで、腕のように。

 そして、ヨハネスは叫んだ。己を奮い立たせるかのように、剣を天高く掲げて。


「俺が殺し、その魂を喰らうからだ!! 貴様の力を貰い、俺は神を殺す!!」


 跳んだ。

 いや、むしろ飛んでいる。低空飛行しながら、ヨハネスは腕のような形をした翼で飛び突撃してきている。


「そんなことは、させない!!」

『そうだともさ。君の魂が喰らわれたら、私も危ういからね』


 あの声だ。

 あの金色の蚊の声が脳内に響き渡る。激しいぶつかり合いの中でも、金色の蚊は語り続けている。


『ジェイク=オルフィス。私はね、君という可能性に賭けているんだ』


 可能性? どういうことだ。


『君は、どこまでも真っ直ぐで、一度決めたことは意地でも遣り通す。それは、レベル100になるために私をどこまでも追いかけてきたことでわかっている。人間で、しかももう年老いているのにも関わらず君は諦めなかった。正直、私はこんな老い耄れならすぐ諦めるだろうと馬鹿にしていたんだ』


 真剣な戦いの中で、ジェイクは金色の蚊の言葉に耳を傾け続ける。

 確かに、誰が見てもあの時のジェイクはただの老い耄れ。

 いくらレベルが99だったとしても、そう思うのが普通かもしれない。あの時のイルディミアは、ジェイクと同じぐらいの年寄りで冒険者をやっている者などいなかった。


『それがどうだ? 君は見事私を倒し、レベル100となった。この人間なら、何かを変えてくれる。そう思ったからこそ、転生する時も私は君と一緒に居たのだ。アルスも、それを許してくれたからな』

「どうした! 防戦一方ではないか!! 俺を倒すのではないのか!?」

『長く語ったが……さあ、反撃の時だ。今の君ならば、やれる。私はあんな見た目だが、神により創られるもの。分け与えし力は、本物だ』


 刹那。

 体の底から、今までにない力が湧きあがってくるのを感じた。そうか……もう自分は数々の強敵と戦い成長し、そして今日をもって金色の蚊との絆も深まった。

 だからこそ、こんなにも声が聞こえている。

 だからこそ……こんなにも、勝つイメージが頭に浮かんでくる。


「たああああッ!!!」

「な、なんだこれは……!?」


 今まで、使ってきた力とは違う。

 根本的に。

 今までは、相手の魔力と血を奪わなければ力は覚醒しなかった。それが、今ではそんなことをしなくとも湧きあがってくる。


「いくぜ、ヨハネス。お前の魂喰いは、ここで終わる!!」


 高揚している。

 しかし、不思議とそこまで荒々しくはなっていない。今までなら、ただただ荒々しくなっていたが、今は静かだがそれで居て荒々しい、という感じだ。

 髪の毛は、真っ赤に染まり、体を纏うオーラも金混じりの赤。


『第一段階解除。まだ、全てではないが……今の君なら十分に奴を倒せる』

「……第一段階、か」


 その言葉を聞いて、まだ強くなれるんだとわかり自然と剣を握る力が強くなった。


「やっと俺と互角と言ったところか?」

「それはどうかな?」

「ぐはっ!?」


 ヨハネスが小さく笑った一瞬の隙に、ジェイクは距離を詰め剣を構えていた。

 咄嗟の判断で、防いだヨハネスだったが予想外の力に体が浮く。


「まだだ!!」

「何度も……!」


 追撃を喰らうまいと黒き雷を放出するも、今のジェイクには効かなかった。

 纏った赤きオーラが、障壁となし攻撃を防いでいる。


「ハッ!」

「まだ、この力にはなれていないんでな……」


 迎え撃つヨハネスだったが、逆に押されている。


「全力で戦えよ?」

「ふは……ふははっはっは!! 言われなくともなぁ……!!」


 幾度も交わされる剣撃。

 互角に見えるが、ヨハネスの表情には焦りの色が見えている。今までの高笑いも失い、ジェイクと全力で打ち合っている。


「……うひゃー、ますます人間離れしちゃってるね彼」

「普通に空中で戦っていますもんね……」

「こら! あなた達、まだこっちは終わっていないんだからよそ見しない!」


 あまりの激しさに、ユーカとハージェは攻撃の手を休め二人の戦いを見てしまっていた。メアリスやネロとて気になってしまうが、こちらを終わらせないことにはゆっくりできない。


「ノア! 残り、二体! よろしく!!」

「はいです!」


 とはいえ、何十体も居た魔物も残り僅かだった。

 大分浄化のために力を使っていたノアだったが……まだ余裕に見える。


「ジェイクさーん!! こっちはもう終わりましたー!!」

「後は、親玉だけだぞ1 頑張りたまえー!!」

「そうか……ならば」


 それを耳にし、一安心したところで身に纏ったオーラを剣に宿すジェイク。

 ヨハネス自身もかなり疲弊しているようだ。


「これで、終わらせてやる」

「終わらせる、だと? なめるな、人間!! 多少強くなったからと言って、この魂喰いを……絶望の星が人間如きに負けると思うなあああっ!!!」


 オーラが、ヨハネスを包み込んでいく。

 まるで、オーラの鎧。

 素顔が完全に隠れ、今のヨハネスは獣そのものと化している。


「だったら、俺も言わせて貰う……あまり、人間をなめるなあああッ!!!」


 ぶつかり合う二色のオーラは、弾ける。


「アアアアアアアアアッ!!!」

「切り裂けええええッ!!!」

「羽?」


 ヨハネスを切り裂くその一瞬。

 ジェイクの背中から、羽のようなものが生えたような気がしたユーカ。


「ぐ、あ……」


 幻覚? だったのだろうか。


「……終わりだ、ヨハネス」


 体が真っ二つに切り裂かれ、自然と消えていく。

 そこに残ったのは……穢れた魂だけだった。

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