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第三十八話

「きゅうぅ……」

「つ、強ぇ……」

「うーむ、結構頑張ったようだけど。ハージェさん達の敵じゃなかったねぇ~」


 相手の獣人二人は強かったが、ジェイク達のほうが上手だった。

 倒すのに、数分かかってしまったがこれならばまだ間に合うはずだ。武器を収め、ジェイク達は先に進んだ【魂喰い】を追う。


 この辺りを探していたということは、大体の場所に見当がついていたということ。

 だが、完全には場所を把握しきれていない。

 だとすれば、こちらが先に見つけれる可能性はある。


「精魂達! ユーカ達が落ちたって場所はこの先か?!」

「この先! この先!」


 精魂達を抱えながら、全速力で走り出す。

 ちなみに、ハージェはジェイクが背負っている。レベル八十代とはいえ彼女は魔法使い。さすがに、ジェイク達のスピードにはついていけない。


 かといって、ハージェを置いて行くわけにはいかない。

 彼女の知識が必要になることがあるからだ。


「あれ! あれ!!」


 辿り着いたのは、見たことのない瓦礫が地面や木々に突き刺さっている場所。

 精魂達が言うのは、おそらく先に見える地面が隆起しているところだろう。

 どうやら魂喰いはいないようだ。

 よかったと安心しつつも、足を止めハージェを下ろす。


「どうだ? ハージェ」

「ふむふむ……これは、マナに反応して起動する罠ですな。二人も知っていると思うが、マナは生命の源。生物にとっては必要不可欠。魔力もマナが変換されて出来た力だと言われているね。おそらく、吐息から出る微かなマナに反応した、のかな」


 そう言って、試しにと漏らした刹那。

 隆起していた地面が凹み、ハージェの足元が消える。


「おっと」

「やるならやるで、一言言ってからにしてくれ……」


 ぎりぎりのところで、ハージェを救出することができたジェイク。突然のことだったので、一瞬の判断が遅れていたらハージェをそのまま落としていただろう。

 救出されたハージェはにへらっと笑い説明を続ける。


「このように、ユーカとノア、メアリスは落ちたのだろうね。あ、助けてくれてありがとうだよ。ジェイク=オルフィス」

「ああ。それよりもこの下に行くにはさっきの穴を通っていくしかないのか?」

「うーむ、そうだねぇ……おっ」


 地面に手を当て、何かを調べるように目を瞑る。

 そして、ハージェは動いた。

 動いた先は、瓦礫が突き刺さった木の背後。ジェイク達も追いかけると、確かに同じような隆起した地面があった。


「ここと……後、もうひとつある」

「つまり計三つの入り口があるってことだね。どうする? ここは手分けして探す?」


 ネロの提案は、ジェイクも賛成だ。

 賛成だが、こちらも分散してしまうため素直に首を縦に振れない。


「私は手分けして探したほうが言いと思うぞ。確かに、こちらも分散してしまうゆえ効率は悪くなるだろうが……今最優先すべきは、ノアの保護」


 そうだ。ノアが何者かに狙われているとはユーカとメアリスも知っている。だが、その狙っている者が今まさにノアへと近づこうとしていることは知っていない。

 そして、こうして悩んでいる間にも魂喰いはノアに近づいていることだろう。

 ならば。


「よし。ここは手分けして探そう。俺はここから降りる」

「ふむ。では、私はユーカ達が落ちたところから行こう」

「それじゃあ、僕は三つ目のところだね」


 決まりだ。魂喰いよりも早くノアを見つけ出し、護る。

 それが最優先すべきことだ。


「俺は先に行く。二人とも、俺よりも先にユーカ達を見つけ出したら……頼んだぞ」

「まっかせなさーい」

「任せて。ジェイクも、僕達よりも先に見つけたらノアを護るんだよ」

「ああ!」


 また合流しようと約束をし、ジェイクは一足先に穴へと落ちていく。

 滑り台のように綺麗に滑り、数十秒経ち出口が見えた。

 念のため、剣に手を添え……着地。


「……お前は?」


 着地したところは、地上にあった瓦礫で囲まれた広々とした部屋。

 そこには、椅子にどっかりと座っている翡翠色の髪の毛の少年? がいた。額には、ひし形の装飾がついている。


「私は、このダンジョンの名も無き精霊。ふむ、今日はなんていい日だ。こんなにも我がダンジョンに客人が来るとは。どうだ? お茶を飲みながらゆっくり話し合いでも?」


 なにやら、交友的な精霊だ。

 ダンジョンの精霊という存在は初めて聞いたが……それよりも気になることを言っていた。


「いや、そうしたいところだが。実は俺は仲間を探しているんだ。お前が、ダンジョンの精霊と言うなら見ていないか? 三人組で、精魂が一体いると思うんだが」

「ほう。その者達なら、見たぞ。いや実際に会った」

「本当か!?」


 いきなり情報ゲットだ。

 それに、ダンジョンの精霊というのであれば迷うことなくユーカ達に会えるかもしれない。


「その者達は。今、私の部屋に向かうべく奮闘をしている真っ最中だろう。この部屋に辿り着けたら、出口に案内すると約束したのだ」

「それじゃ、ユーカ達はこっちに向かっているってことだな? すぐ呼び出すことはできないのか?」

「それは無理だ。これは、私からの挑戦を彼女達が快く受け入れてくれたのだ。途中で止めることは出来ない」


 つまり、精霊を頼ることは出来ない。

 こっちから赴くしかないのか。

 最初からそのつもりだったが、少し残念だ。


「わかった。無理にとは言わない。俺は、自分で探しに行く」

「……待て」

「どうした?」


 背を向けた刹那、ダンジョンの精霊はジェイクを呼び止める。


「何か事情があるのか? その事情次第では、協力しなくもない」


 事情次第では、か。

 いや、迷っている場合じゃない。ジェイクは、どうして急いでいるのかを掻い摘んで説明をする。今、ノアという少女が魂喰いという存在に狙われている。


 魂喰いは、おそらく精霊をも喰ってしまう恐ろしい存在だ。

 ダンジョンの精霊と言えど、危ないだろう。

 その事実を知った精霊は、真剣な表情で口を開く。


「地上では、そのような危険な存在が暴れていたのか。外の情報は適度に得ていたのに知らなかったとは……己が食われる恐れがあるというのに」

「気にすることはないと思うぞ。奴は四十年前に暴れていたとはいえ、シルティーヌを滅ぼしてからすぐにそこを立ち去って十数年は眠っていたんだ」

「そして、目が覚めた魂喰いは腹を空かせて、その守人の少女を狙っているということか。……ならば、安心するがいい」


 何をだ? と首を傾げるジェイク。


「今より、全ての出入り口に結界を張る! 力が弱まっている魂喰いならば多少なりとも防衛策になるだろう」


 それは、心強い。

 これで、後はユーカ達といち早く合流することができれば。


「それで、ユーカ達との合流のことだが」

「そのことなら安心するがいい。彼女達は、すでにこの部屋の近くまで辿り着いている。こちらから赴くことはないだろう」


 それならば安心だが……安心だが、やはり少し不安でもある。


「というわけでだ! ジェイクと言ったな。彼女達が来るまで、私に地上のことを話してくれ! さあ、さあ!! ここから出られない可哀想な私に!!」

「い、いやだが……」


 好奇心に満ちたキラキラとした瞳に見詰められ、 ここから出られないということを知り、ジェイクは強気に断れなくなってしまった。

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