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第三十五話

昨日は投稿できず申し訳ありません。

遅れてやっと投稿しても、まあ相変わらずの三千文字ちょっとです……。

「ここは果物が多いな。いくつかは、見たことがないものばかりだ」

「ふむ。この辺りの果物は守人の力と自然本来の力で独自に成長した果物が多いのだろう。ちなみに、この曲がりくねった黄色い果物だが、こうして皮を剥くと」


 中は白かった。

 これならば、普通のバナナと同じだが。ハージェは更に皮を剥いていく。半分を超したところで、皮よりは薄いが黄色い実の部分が出てきた。


「半分白くて半分黄色いんだ。珍しい果物だね」

「もぐもぐ……この果物は『バナン』と言うのだよ。ちなみに命名は私!」

「どういう意味合いで名づけたんだ?」

「ふむ。特に意味はない。ただバナナの亜種な見た目なので、一文字変えただけ。このバナンだが、黄色い部分は白い部分よりも甘みが増していて栄養価も豊富なのだよ。これ一本で、バナナ三本分に値する! と思う」


 思うなのか……。

 兎に角、この辺りには普段自分達が見る果物に良く似たものが多い。しかし、ハージェが食べているバナンというもののように何かしらこの辺りの環境により変化している。


 大地から湧き上がるマナや植物達を管理している微精霊。

 そのどれもが清らかで、豊富だ。

 これが守人達がずっと守り続けてきたもの。


「この辺りは、水も植物も食べ物も豊富だ。サバイバルをするなら、ここでやるのが最適な場所だろう。とはいえ、ちゃーんと環境に影響が出ない程度には気をつけないとだけど。少しでも、汚染をするような行為をすれば守人達が許しておかないだろうからね」


 人間の力を借りず、守人だけで護り育ててきた自然。

 その環境を破壊するわけにはいかない。

 それに、今の守人は護ろうにも四十年前のように人の姿になることができない。精魂では、動物にも勝てるかどうか……。


「そういえば、あっちのほうはどれくらい調査が進んだんだろうね?」

「もう昼前か……。一度集まって互いに調査結果をまとめるのがいいだろうな」


 そう思い、マジフォンでユーカに電話をかける。

 しかし。


「……おかしい。繋がらない」

「術式から流れる魔力が届いていないってことなのかな?」


 マジフォンでの会話は、魔石に刻まれている術式。それから発せられる魔力が、同じ術式へと流れそれが繋がると会話ができるようになっている。

 この機能はまだ世界的には広められていない。

 とはいえ、あのメアのことだ。

 もうすぐ世界中のマジフォンに会話機能が追加されるに違いない。


 その会話機能だが。

 今まで繋がらなかったことは一度もなかった。まさか、ユーカ達に何かあったなのか?

 不安が募る中、精魂達の声が聞こえてくる。


「大変! 大変!!」

「なにか、ユーカ達にあったのか?」

「落ちた! 穴に、落ちた!!」

「長老も一緒に落ちちゃった!」


 ユーカ達と一緒に調査をしているはずの精魂達はぴょんぴょんっと跳ねて事の次第を知らせる。

 穴に落ちた? しかも長老も?


「穴に落ちたって……落とし穴とか?」

「ふむ。落とし穴ならば、メアリスの力でどうにかできるだろう。だが、精魂達が慌てて我々に知らせに来たということは」

「自力では脱出できない穴に落ちた、ということか。お前達、そこまで案内してくれるか?」

「わかった!」

「こっち! こっち!!」


 昼を食べるの後回しだ。

 穴に落ちたというユーカ、メアリス、ノア。そして、精魂の長を助けるべくその現場へとジェイク達は向かう。

 無事でいてくれと願いながら。




☆・・・・・




「ここは、やっぱりダンジョンなのかな?」

「その可能性が高いわ。魔物も出てきているしね」


 穴に落ち、地中深い未知なる場所から脱出せんとユーカ達は歩き回る。

 途中、魔物に襲われるも敵ではなかった。

 とはいえ、毒を吐き、触手を伸ばし、電気を発するなど。中々厄介な攻撃をしてくる魔物ばかり。少しでも油断してしまえば、危ない魔物ではある。


「ノアちゃんは、まだ平気?」

「うん。これぐらいなら平気。それよりも……なんだかあっちから水の音がするよ」

「水の?」


 そう言われて、耳を澄ますもそんな音は一切聞こえてこない。


「この先に水辺があるの?」

「たぶん。でも、ちょっと自信がない」


 自分でも本当に水辺があるのかと眉を顰めるノア。

 だが、水辺があるということは何かがそこにあるかもしれない。ただ何もわからず進んでいるだけでは始まらない。

 それに、ノアは記憶を失っていると言っても守人だ。

 守人とは、自分たちにはない力を保持している種族。


「いや、この先に水辺はあると思いますぞ」


 と、精魂の長が足元で呟く。


「どうしてそう思うの?」


 まだ不安そうにしているノアが問いかける。


「私も、微精霊とはいえ精霊。微量なマナを感じ取ることができます。この先からは、水から出る清らかなマナが感じられます。それに、ノアはよく森の中で水の音を聞き、風を感じて迷える動物たちを導いていました。そのノアは言うのです。間違いありません」


 長は、記憶を失う前のノアのことを知っている。

 その長が言うのだ。

 信じてもいいだろう。ユーカとメアリスは互いに見詰めあい、頷く。


「それじゃ、行こうかノアちゃん」


 ノアの手を取り、ユーカが先頭となって前へと進んだ。メアリスは、後ろからいつでも魔物に対処できるように警戒しつつ。

 そして、数十秒ほど進むと……微かにだが水が流れる音が聞こえてきた。


「ふふ。どうやら、ノアの言ったことは正しかったようね」


 辿り着いたところは、今まで通ってきた場所より遥かに広々とした空間。

 天井には、大きな水晶のようなものがありそこから光を放ち、灯りとなっているようだ。とても不思議で、思わず見入ってしまうほどの水晶。

 大きさもさることながら、色鮮やかな見た目。

 水晶といえば、よくマナが詰まっているものが多い。良質なマナが詰まった水晶はよく魔法実験などに使われることが多いと聞く。

 色合いから考えると、あの水晶の中にあるマナは四大属性のマナは詰まっている。その他の属性も……あるようだ。


「とりあえず、ここで休憩をしようよ。あまり急ぎすぎても、もしもの時に体力がなくなっていたら事だからね」

「まさか、あなたが先のことを考えるなんて」

「もう。いつまでも、昔の私じゃないんだからね?」


 ごめんなさいね、と笑いメアリスは異次元リングの中から水筒を二つ。そして、パンを三人分取り出した。ひとつはメアリスので、もうひとつはユーカのだ。

 ノアの分は、ユーカの水筒から分けられることになる。

 精魂の長だが、微精霊なために食事という概念はない。

 椅子になる丁度いい岩を見つけ、腰を下ろし休憩に入った。


「それにしても、見事な水晶よねあれ」

「うん。きらきらしていて、綺麗……」


 視線を上へと向ければ水晶は見える。

 今までの旅であれほど立派な水晶は見たことがない。いったいどういう原理であれほどの水晶が天井に張り付いているのだろうか。


「……あれ?」

「どうしたの、ノアちゃん」

「む、この気配は」


 パンを齧っていたノアと精魂の長さえも何かに反応している。

 まさか敵? そう思い周りを警戒すると。

 こつこつと、奥の暗闇から足音が近づいてくる。


「何者かが侵入したと思えば……まさか、人間が。それも」

「人?」


 暗闇から出てきたのは、長い翡翠色の髪の毛を生やした男性だった。全身をローブで囲み額にはひし形の装飾をつけている。

 彼の言葉から察するに、このダンジョンに何かしら関係している者だろう。


「私は、人ではない。見た目は人の形をしているがこれは動くのに最適な形を取っているだけ」

「ということは、あなたはもしかして精霊、だったりするのかしら」

「ふっ。察しのいい人間だ。その通り。私は、このダンジョンを護る精霊。名は……まだない」


 現れたのは、名もないダンジョンを護る精霊。

 彼は味方なのか、それとも敵なのか。

 少なくとも、ノアや精魂の長の反応を見る限りでは敵ではない……と思える。

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