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第三十二話

 夕食を済ませ、ノアが眠りについたところでユーカはジェイク達にノアを狙っている者がいるんじゃないかと迷った末に喋ることを決意した。


「それは、なんとなくだが予想はしていた。ノアのあの傷、それに倒れていた場所も少し焼けていた」

「私もさっき見てきたけど、あの残留したマナに焦げ方から考えると雷属性の魔法だと思うわ」


 ユーカは、やっぱりこの人達はすごいと感心する。

 特に、メアリスは残留しているマナと焦げ方だけでどんな魔法なのかを考え付いている。自分も、魔法を扱う者として精進しないと、そう思いつつ会話を続ける。


「雷属性か……使い手によっては天候も自由自在っていう人もいるよね?」

「まあね。雷属性や風属性、氷属性なんかは使い方によっては天候を操ったりも出来るわ。でも、それはかなり魔法を極めなくては無理な話。私は闇属性だけを極めているから今ここを真っ暗にはできるわよ?」


 と指を擦り「闇夜へ」と唱える。

 すると、明るかった空間が一瞬にして暗闇へと包まれる。魔法はスキルにより決められた攻撃などしかできないと思われているが、使い方は無限なのだ。

 メアリスのように、攻撃だけではなくこうして空間に影響を及ぼすことだって極めれば可能ということだ。


「ちなみに、私が知っている限りでは風属性と氷属性を極めて里を護るために吹雪を起した魔法使いがいたわねぇ」

「複合属性か……複数の属性を極めた者が到達する特殊な属性魔法。俺も、その使い手は今までメアリスを入れても三人しか見たことがないな」

「それでも三人も見ているんだね。僕は、メアリス一人だけなんだよね」


 同じく、とユーカが小さく挙手をするが……。


「……ところで、メアリス。そろそろ闇を解除してくれないか?」

「あら、ごめんなさい」


 再び指を擦ると闇がなくなり明るく照らされる。


「ところで、そこの研究者さんは何をしているのかしら?」

「さっきからマジフォンにものすごい勢いで書き込んでいるな」


 カチカチと、メアリスの闇で何も見えなかった中でも無心で誰かに送るメールをものすごい勢いで打ち込んでいた。


「ふふふ……まだそれほど調査は進んでいないが、中々のデータが取れた。やはり現地に赴き自分で調査をしたほうがデータが集まりやすいものだ。さっそく、後輩ちゃんにこのことを報告して、他の研究者達に更なる研究を進めるように言っておかなければ。初日でこれほどのデータが取れるなら明日からの調査はよりよいデータが取れそうだ。そうだ! 明日と言わずこれからいけば良いんだ。夕食がおいしくとゆっくりしてしまったが、まだ今日は終わっていない。まだまだ夜は長いのだ。ハージェさんの真骨頂は夜だと言っても過言ではないからね。夜更かしは得意中の得意だ。だったら、さっそくこのメールを送り調査に赴くとしよう。あ、だが一人だと不安だからここは―――」

「……とりあえず、収まるまで無視しておきましょう」


 そうだな、とジェイク達は頷く。

 しかし、思ったよりゆっくりと夕食を楽しんでしまい調査をする時間がなくなってしまったのは事実。

 とはいえ、シルティーヌに到着した時点で日が沈みかけていたため仕方ないと言えば仕方ないのだが。


「ともかくだ。ノアを狙っている者がいるなら、警戒は怠らないようにしよう。さて、俺は食器を洗うかな」

「僕も手伝うよ。ジェイクは、料理も作って疲れているでしょ?」

「ありがとう、助かる」

「それじゃ、私達はノアの様子でも見に行きましょうか」

「うん、そうだね」


 ジェイクとネロは食器を洗い、ユーカとメアリスは二階で眠っているノアの様子を確認へ赴く。相変わらずハージェはマジフォンに文字を打ち込んでおり一歩も動こうとしない。


 それから数十分の時が過ぎ、ようやくハージェの指が止まった。


「よし、こんなものだろう。……あれ? ユーカとメアリスはどこへ行ったのだい?」

「二人なら、二階にいるノアの様子を見に行ったぞ」

「やっぱり気づいていなかったんだね」


 食器を洗い終わったジェイクとネロは、すでに椅子に座っていた。


「ノアの様子を? それは何分前だ?」

「二十分ぐらい前、かな?」

「それは遅くないか? 様子を見に行くだけならそこまでかからないだろう」


 言われてみればそうだ。

 ただ単純に、もう二人とも眠ってしまっているだけなのかもしれないが……。


「……ちょっと様子を見てくる」

「私も行こう」

「僕も行くよ」


 もしかしたら、ノアを狙っているという者が気づかないうちに、ということもあるかもしれない。ジェイク達は急いで二階へと向かおうとする。


 階段を上がり、月明かりだけが差し込む部屋を見渡す。

 ベッドは二つあり、そのひとつにノアが眠っているはずだったが……姿がない。

 そして、ユーカとメアリスの姿もどこにも見当たらない。


「三人ともいない?」

「ふむ。悲鳴なども聞こえなかったことから、誘拐というのは低いだろう」


 とはいえ、相手の力は未知数だ。

 転移魔法の類で声を上げる暇もなく、ということもありえる。

 周りを再度見渡し、どうやって姿を消したのかを思考する。

 ……窓が開いている。それも森側のほうだ。


「まさか、三人は森に?」

「可能性は高いかもね。ノアに何かがあって二人はそれを追いかけた、とか?」

「ノアの姿がないということは、ノアに何かが起こったのは可能性としては高いだろうね」


 いったい、三人になにが起こったんだ?




☆・・・・・




「ぐっすり眠っているね」

「ええ。子供は、眠っている姿は可愛いとは思っているわ」

「ええ? はしゃいでいる姿も可愛いじゃん」


 先ほどの話から心配になっていたが、何事もなかったようだ。

 一安心したところで、窓から外の様子をしばらく眺めることにした。月が綺麗で、明日への活力となりそうだ。


「ところで、ユーカ。グリードゥアで貰ったあのスキルチップ。何が入っていたのかしら?」

「あのスキルチップ?」

「ええ。ずっと気になっていたの。世界に一枚しかないってだけで、どんなスキルが入っているか公開されていなかったから」


 ウォルツに聞いたが、教えてくれなかった。

 聞くならユーカ本人に聞けと。


「だったら、すぐ聞いてくれればよかったのに」

「あなたも、すぐ教えてくれればよかったのよ?」

「あはは、別に黙っていようと思っていたんじゃないんだ。ただ……入っていたスキルをどう説明すればいいかずっと迷ってて……」


 説明に迷うほどのスキル。

 それはかなり気になる。

 俄然どんなスキルなのか知りたくなってしまった。


「それじゃ、少しずつ説明しなさい。まずは、攻撃系か補助系か。そこからよ」

「えっとね……え!?」

「どうしたの?」


 ユーカが何かに驚いている。何に驚いているんだろう? とメアリスも視線の先を見ると。


「ノア?」


 ノアが、森側へと向かう窓から飛び出す寸前だった。


「……」


 メアリスの呼びかけにも反応することなく、そのまま飛び降りていく。


「いったいどうしたんだろう、ノア」

「考えている暇はないわ。とりあえず連れ戻すわよ。普通じゃなかったわ」

「う、うん。あでも、ジェイクさん達にも」

「連れ戻すなら私達だけで十分よ。ほら、いくわよ」

「あ、待ってよ!」


 本当にジェイク達に教えなくてもいいのかな? と思いつつメアリスと共にノアを追いかけていく。

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