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第二十七話

「というわけでー、君達にはちょっとの間ハージェさんとの旅をを頼みたいのだよ~」

「守人の里……どういうところなんだ?」


 グリードゥア観光から帰ってくるとハージェに呼び出され、明日のことについて話された。丁度、ジェイク達が旅立つと同時にハージェも同じ方向へと用事があるというのだ。

 その用事とは、四十年前ほどに滅びたとされる守人なる者達の里の調査らしいが。

 少なくとも、ジェイクにはその守人に関しての情報がない。


「私も、曖昧な情報しか知らないんですよね。確か、何か特殊な力とか森林を護っているとかその程度の知識しか……」

「だいたいあっているのだよ。彼等は、神聖なる森に住み着き、精霊や森の住む動物達を見守る一族。だけど、四十年前に突然里ごと滅んじゃったんだよねぇ。どういう理由なのかは未だにわかっていない」

「だから、調査するってこと?」

「うむ。観察自体はずっとしていたんだけどね。一年半前から。だけど、一年半ずっと観察してるだけでよかった場所に異様な力の発生が見受けられたのだよ。それが知りたくてね~」


 四十年前に滅び、再びそこで何か不思議な力が働いている。

 ジェイクもそれは気になった。

 もしかしたら、創造神アダー達が関わっているかもしれない。旅の途中で立ち寄ることになるんだ、ならば自分達も行って見る価値はある。


「どうするの? リーダーさん」

「別にリーダーってわけじゃないんだけどな。……わかった。協力する」

「おや? 協力してくれるの? ただ途中まで一緒に旅をしてくれるだけでいいのに」

「何を言っているのかしらね。最初から、協力して言いたかったんでしょ?」


 なんのころかなーっと棒つきの飴を舐めながらそっぽを向く。

 そんな彼女に、メアリスはまったく……と呆れた表情を見せる。なにはともあれ、明日からはまた忙しくなりそうだ。

 今日中にグリードゥアを楽しんでいてよかったとユーカもほっと胸を撫で下ろしている。


「本来、冒険者とは未知なる場所への探索も仕事のうちだ。頑張ってこいよ、お前達。この賢者ウォルツがお前達の無事を祈っている」


 と、ドアを開けドア顔で現れるウォルツ。


「別にあなたの祈りなんていらないわよ」

「なに!?」

「ありがとうね。その言葉だけでも嬉しいよ」

「おお、さすがネロちゃん! 君は俺の天使だあ!!」

「おやめください、変態」

「はぐっ!? え、エレナ……お前まで……!」


 人間に戻っても喜怒哀楽が激しい奴だな。

 ジェイクは、賢者と呼ばれようとも、やはり普通の人間なんだと彼を見ているとそう思ってしまう。


「皆様ー。お食事の準備が整いました!」

「あら、そういえばそうでしたね。報告ご苦労様です、セレナ。では、皆様。それにそこでなぜか倒れているウォルツ様。食堂へご案内致しますわ」


 何気にひどい言葉が多く、ウォルツの扱いも今日は変なエレナ。いったい、ジェイク達と離れている間なにがあったんだ? と首を傾げるも、ウォルツ自身は別に何も感じていない……というよりも、むしろ嬉しそうにしているので、いいのか? 


「セレナ。今日は、一緒にお風呂に入ろうね。それと一緒に寝よう! 明日には、私達出て行っちゃうから」

「いいのですか?」

「もちろんいいわよ。今日は、思い出話で盛り上がりましょうか。あ、セレナが昔ベッドで」

「はわわ! だ、だめだよぉ! メアリスちゃん。その話はぁ……!」




★・・・・・




 朝を迎えた。

 太陽も、旅立つジェイク達を祝福しているかのようにさんさんと輝いている。ジェイク達は、荷物をまとめ北門に来ていた。

 ウォルツや、エレナを初めとしたメイド達も見送りに集まっている。


「まったく、こんなに来なくてもよかったのに」


 見送りの数に、メアリスはもちろんのことジェイク達も少し恥ずかしくなってしまっている。周りの一般市民も何が起こっているんだ? とこちらを見ている。

 メイドの数、ざっと数えても十五人はいるだろう。

 その先頭でウォルツが立ち旅立つジェイク達に言葉を送る。


「また来てくれ、いつでも俺達は歓迎する。それに、ユーカちゃん。是非、その時は大会に参加してくれ。今度は、魔法使いと魔機使いの混合であるものに」

「それまで、力をもっとつけておきます。強敵たちと渡り合えるように」


 ユーカも、今回の大会で精神的にも成長したとジェイクは感じている。これからの成長が、さらに楽しみになってきていた。


「言うようになったじゃない、ユーカ」

「えへへ、そうかな」

「あ、じゃあ今度僕と一緒に戦ってみる? 今のユーカと僕戦ってみたいって思っていたんだ」

「え!? いや、それは……ご、ご遠慮させていただきます……」


 とはいえ、まだネロみたいな接近戦のスペシャリストと戦うのは無理のようだ。ユーカの断りに、えーっと少し残念そうにするネロ。

 そんなネロをメアリスはまあまあっと肩を叩く。


「そんなことよりも、あの飴舐め魔法使いはどうしたの? まだ来ていないじゃない」


 そうなのだ。

 もう旅立つ準備は出来ているというのに、一緒に行くはずのハージェが来ていない。だからこそ、未だにここで立ち往生している。

 ここに来て、もう十分は経とうとしていた。


「あー、奴なら、おそらく寝坊だろうな。あいつはこういう大きなイベントや旅立ちなんかの前でも夜更かしするからな。あいつが、早起きしているところなんてもう何年も見ていないな」


 そういえばそうだったわ……メアリスは、眉を顰める。


「寝坊なんてしていないのら~」


 噂をすれば、現れるハージェ。

 しかし、言葉とは裏腹に寝癖があり服装も乱れている。これは完全に寝坊していると誰でもわかる格好だ。

 メイド達は、ハージェの寝癖や服の乱れを直している。


「どう見ても寝坊したって感じだね」

「大丈夫かな?」

「らいじょうぶですよー。……よし。君たち! 今日は良き旅日和だ! いざ、守人の里へ!!」

「なに仕切ってるのよ……」


 朝食もメイド達からご馳走になり完全に目覚めたハージェは、ジェイク達の先頭に立ち叫ぶ。

 少しの間だけだが、ハージェが加わったことで更ににぎやかになりそうだ。


「それじゃ、行って来る。ハージェのことは任せてくれ」

「ああ。さっきも言ったが、そいつはよく夜更かしをする。さらに寝相も悪い。気をつけろよ」


 ああっと、頷き門を潜り抜けていく。

 向かうは滅んだはずの守人の里シルティーヌ。


「ところで、戻る時はどうするの?」


 グリードゥアを抜けてからすぐにネロが問う。

 行く時は自分達が一緒だが戻る時はどうするのかと。


「もちろん、一人で戻るよ。伊達に高レベルの魔法使いじゃないからね~」

「それじゃ、高レベルの魔法使いさん。戦闘で役立ってくれるかしら?」

「えー、それはやだよー。無駄な戦闘はしない性質なんだよねーハージェさんは。そいうわけだから、君達に戦闘は任せた!!」


 これは、色んな意味で大変そうだ。

六章はこれにて終わりです。

次回からは、七章です。明日には投稿致しますので、お待ちを。

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