第二十二話
新年明けましておめでとうございます!!
今年も、皆さんに楽しんでいただけるような小説を頑張って書いていきたいと思っています。
そんなわけで、新年早々の投稿です。
「いくよ、フォルスくん!!」
「こい、ユーカ」
それはほぼ同時だった。
湧き上がる魔力がマジフォンへと流れ込み、魔法を発動させる。
「《アクアパニッシャー》!!」
「《ボルテックス》!」
ぶつかり合う二属性の魔法。
互いに中級の位置にある魔法だが、属性の有利性としてはフォルスの勝ちになる。が、それは一般論に過ぎない。
「ぐっ! 有利属性の魔法をこうも押してくるとはな……!」
「私の魔法は、少し強力なんだよ!! でやあ!!」
一押しの魔力。
有利属性であるボルテックスを、力で押した。しかし、フォルスも負けてはいない。例え、押されていたとしても、やり方次第では。
「経験の差というものを思い知らせてやろう!! 《ライトニング》!!」
「え!?」
二つ目のマジフォンだ。
空いていた左手には、ひとつめの黒いマジフォンに加え赤いマジフォンがあった。本来、マジフォンは複数所持していてもいいことになっている。
ただ、二つ同時に使用することはかなり難しい。
右と左、分けて魔力を送らなければならない。相当な技術がなければ無理なことだ。そのため、大会のルールの中にも、マジフォンは複数所持してはいけないというものはない。
同時に扱えるものが、未だ指で数えられるほどしか確認されていない。
運営側は、複数使用できる選手がいないと想定したうえでの判断なのだろう。
「ただではやられん!」
「くっ!」
魔法を解き、なんとか回避行動に移るユーカであったがぎりぎり間に合わなかった。
左腕の服が破れ、肌に傷をつける。
少し、痺れがあるが問題なく動く。
フォルスにもダメージは与えられた。アクアパニッシャーで押し返した電気。掠っただけだが、これで痛みわけと言ったところだろう。
「どうして……そんな才能があるのに、魔法を!」
「才能があろうと、関係ない。いや、才能があるからこそ俺は……」
マジフォンへと二つ同時に魔力を込める。
展開した魔法陣の色から察するに、左が火で右が風属性の魔法。会場内は、フォルスの才能に盛り上がっている。
同時使用という技を目の前で見ることが出来たのだ。盛り上がらないほうがおかしいというもの。
「魔法が嫌いになったんだ!! 《フレアランス》!! 《シルストーム》!!」
合わせ技だ。
風を纏いし、炎の槍。
巻き起こる風を纏うことで、炎の渦となり威力を増大させている。
(こんなこともできるのに……どうして!)
魔法に込められたフォルスの憎しみ。
こんなにも自分にはない才能があるのに……魔法が憎い、嫌いだなんて。ユーカは、知りたくなった。どうしてそこまで、魔法を憎んでいるのか。
そのためには。
「散れぇ!! ユーカ!!」
迫りくる二属性の魔法。
ユーカは、逃げることなくマジフォンを天へと掲げた。
そして、叫ぶ。
自分が特訓の最中手に入れた、あの力を発動させる言葉を。
「《リミット・ブレイク》!!!」
「なにっ!?」
魔法は、弾かれる。
ユーカを基点に天へと昇る光の柱が、魔法を防いだのだ。これには、フォルスも観客も目を見開き驚きの声を上げる。
だが、これだけでは終わらない。ここからが本番と言ってもいい。
なぜならユーカは。
「な、なんだ?」
「ユーカちゃんが、光に包まれていくぞ!」
「あんな魔法みたことねぇ!!」
光に包まれ、繭となった。
多くの視線が集まる中、それは数秒たらずで弾ける。
「さあ、フォルスくん。ここからの私は……もっと強いよ!!」
「……なんだ、その格好は」
表したその姿は、本気でユーカを倒そうとしていたフォルスでさえも唖然としてしまうものだった。
元々身に着けていた衣服は全てなくなり、新たな衣服へ。
ストレートヘアーだった髪の毛はツインテールに纏められ、学生風のデザインからフリル全快の女の子達が可愛がっている人形のようなデザインに変貌。
そして何よりも、マジフォンが杖の先端に装着されているというなんとも奇妙な光景だろうか。
「か、格好は気にしないで!」
「ふん。その奇妙な格好で俺を油断させる作戦か? ここは、戦場だ。真面目に戦わないか!!」
「これでも、真面目なの!! まあ、そういう反応は予想できていたけど……格好だけじゃないってところ、見せてあげるよ!!」
マジフォンつきの杖を掲げ、魔力を集束させる。
大会前日。
最後の特訓の最中、この力に目覚めた。
最初は、自分でも恥ずかしい格好だと思っていた。いや、女の子としては可愛い洋服だなぁっとは思っているのだが、この格好で戦闘をするのはどうなのかと少し考えたりもした。
ジェイクやネロ、エレナ達にはどんな格好であれ、それが今の自分がランクアップした姿なんだと。
魔機使いは、ランクアップなどないと思っていた。
だからこそ、このランクアップ……絶対強いと思い込みたい。思い込まないと、いきなりこんな格好になった意味がわからない。
「くらえ! 《フォトン・バースト》!!」
放たれるは、光の拡散弾。
マジフォンから放出された拡散する光は、フィールド内を無差別に攻撃していく。もちろんユーカを基点としているため、危険なのは。
「光属性の中級……! ならば!」
うまい具合に、光を見切り回避しながらマジフォンを構えるフォルス。
「させない!」
フォルスが魔法を発動させる直前。
回避し、地面にただ穴を空けただけだと思っていた光。それが……再び起動し、足元からフォルスを襲ったのだ。
「ぐああっ!?」
予想できなかった。
腹部に強烈な一撃を食らったフォルスは、痛みに堪えつつも一度距離を取る。
「言ったよね。今の私は、最初の私より、もっと強いって!」
「なんて変則的な魔法の使い方だ……一度切り離された魔法を再度動かす、か」
負けられない。
本当は、結構恥ずかしいと思っているが、その恥ずかしさを内に留め戦うしかない。勝って、フォルスのやろうとしていることを、止めるんだ。
「さあ、全力で倒しにいくよ、フォルスくん!」
「倒せるものなら……倒してみろ!」
先に動いたのは、フォルスだ。
攻撃を与えられる前に、ユーカを倒してしまおうという作戦なのだろうか。前衛職に引けを取らない、突貫力。
一気に距離を詰められた。
魔法を発動しようとしても発動した本人も影響を及ぼすかもしれない距離だ。
「これならば!」
「ううん。これでも!」
まさか、発動させるのか? そう思った刹那。
「おりゃああ!!」
杖を全力で振るった。
「そんなもの」
少し後方へと下がればいいだけだ。
余裕の笑みで、後ろに下がりマジフォンを構えようとした。
「まだまだぁ!!」
止まらない。今のユーカは、普通の魔機使いとは違うのだ。
「《シルストーム》!!」
スイング速度に加え、発現する暴風。
後方に下がっただけのフォルスへを容易に捉えた。
「なにっ!?」
物理攻撃をしつつ、魔法攻撃を加える。
これも予想できなかった。
そのために、簡単に攻撃を受けてしまった。マジフォンが杖と一体になったことで、物理攻撃をしつつの魔法攻撃が可能となった。
これがランクアップしたユーカの戦闘スタイルなのだ。ちなみに、マジフォンの強度は鉄の剣よりも硬いことが検証済みである。