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第十八話

「そういえば、ユーちゃんってこの街の人じゃないよね?」

「え? うん、そうだけど。リビエちゃん達は?」


 次の試合までの休憩時間。

 ユーカはリビエ、フォルスの二人と飲み物で喉を潤している。他の勝ち残った選手達も各々精神統一や一回戦のことなどを話し合っている。


「私達も、この街の人じゃないよー。とある目的があってきたんだー」

「目的? えっと、優勝賞品のスキルチップ?」


 この大会に出場しているのだ。

 すぐ思いつくのが優勝賞品のスキルチップ。しかし、フォルスは首を横に振り否定する。


「もっと大きな目的だ」

「もっと大きな……何かはわからないけど。達成できるといいね」

「ありがとう! この目的は、私達だけのものじゃないんだ。だから、絶対成功させるつもりで私達はここにいる! いえーい!!」


 つまり、リビエやフォルス以外にも関わりのあることだということ。

 かなり気になるところだが、まだ会って間もない自分が口出しできるようなことじゃないと思いユーカは、食い下がる。


「ユーカの目的は、スキルチップなのか?」

「えーっと、そうだけど。そうじゃないっていうか……」


 確かに、優勝賞品のスキルチップも魅力的だ。

 魔機使いであるのなら、手に入れたいと誰もが思うだろう。それでも、ユーカがこの大会に出場を決めた理由は違う。

 半分飲み干した筒を両手で握り締め語る。

 自分がこの大会に出場した理由を。


「ある人に……強くなったって見てもらいたい。ずっと、迷惑ばかりかけているから。隣で一緒に戦って行けるぐらい私は、強くなりたいの。そのために、この大会で経験を積んで……成長したい」


 さっきの戦いもジェイクやメアリス、ネロは見ていてくれたはずだ。

 どこに座っているのかは、わからなかったが。


「おー。その見せたい人って、ユーちゃんの好きな人? 恋人?」

「ち、違うよ! わ、私の師匠っていうか……一緒に旅をしている仲間っていうか……」

「えー? 顔が赤いよー? 本当に違うのー?」


 明らかに、楽しんでいるような表情で頬を赤くしているユーカに問いかけ続ける。


「ち、違うの! た、確かに好きだけど。こ、恋人とかそういう好きじゃないっていうか……」

「でも、師弟の恋ってなんだか考えただけでも燃えちゃうよね! 私、恋の話とかちょー!! 大好きなんだよ!! ねねね! ユーちゃんのその好きな人ってどんな人? かっこいい? 強い?! 師匠ってことはその人も魔法を使うの?! 年齢はどれくらい―――あだっ!?」

「暴走し過ぎだ」


 どんどんテンションが上がっていき、ユーカの言葉など入る隙もないぐらいの怒涛の質問攻めを止めたのはフォルスによる脳天チョップだった。


「あうぅ……脳天チョップは脳が揺れるからやめてよーフォルスー」


 涙目で頭を擦るリビエに対しフォルスは呆れた表情で息を漏らす。


「お前が、暴走するからだ。こうでもしないと、お前は歯止めが利かなくなって収拾がつかないだろ? それに、そろそろ時間だ」


 時計を見れば、確かに残り一分半で二回戦が開始される。

 出番的にフォルスやリビエはもう移動しておかなければならないが、ユーカはまだ余裕がある。


「えー、もうそんなに経ったの? 十分って短いなー。もっと、ユーちゃんと恋話したかったのに~」


 不満そうに、頬を膨らませながらゴミ箱に空になった筒を捨て椅子から腰を上げる。


「ユーちゃんは、もうちょっとゆっくりしてていいよ。戻ってきたら、一杯お話しするけど!」

「あはは……お手柔らかに」

「心配するな。暴走したら、また俺が止める」

「えー! もう脳天チョップいやだよ! もうちょっと優しいと止め方を要求するー!」

「お前の暴走具合で考える」


 先に移動していく二人の後姿を見詰め、ユーカは壁に背を預け天井を見上げ呟く。


「……恋、か」




★・・・・・




「お待たせ」

「ユーカは当然、勝ち残っているわよね?」

「ああ、無事に勝った。そっちはもう片がついたのか?」


 そろそろ十分の休憩が終わろうとしている時刻。

 魔殺団の侵攻を止めに行ったメアリス達が戻ってきた。怪我もなく、服にも汚れはなく。一回戦はほとんど観戦することはできなかったが、まずはほっと胸を撫で下ろす。


「もちろんよ。人数も増えて、力も強くなっているとはいえ私の敵じゃなかったわ」

「相手は、魔法に対して強い人達だったからね。僕は、魔法使わないから難なく倒せたかな。でも……なんだか気になることを言っていたね」


 気になること? いったいそれはなんなんだろう。


「あー、確かに言っていたわねぇ。どうやら、あの集団以外にも敵がいるようだけど」

「うん。そのことに関しては、今ウォルツやエレナ達が調べている最中だね」


 魔殺団は、捕らえられた。

 しかし、まだ魔法使い達を狙っている敵がいる。もしかすると、この闘技場のどこかに? 観客に紛れていると考えてもいいだろう。


《皆さーん!! 休憩は終わりでーす!! というわけで、さっそく二回戦の開始だぁ!!》

「待ってたぜぇ!!」

「早く熱い戦いを見せてくれぇ!!」


 通常の闘技場以上の盛り上がりだ。

 やはり、武器と武器のぶつかり合いもいいが魔法により派手な戦いも盛り上がるということか。そして、魔法使いならではの感性というものもある。

 さらに、魔機使いは無詠唱による高速魔法戦が可能なためにさらに派手で激しい戦いができる。


《はいはい! いい具合にテンションも上がりまくりですねぇ! では、そんなお客様の声にお応えて、さっそく二回戦第一試合の魔機使い達カモーン!!》


 ズィーの声に応じて出てくる二人。

 一人は一回戦第一試合で難なく勝利を収めたフォルスという少年。対して、相手は水属性の魔法が得意だったアリーという少女だ。

 短めの青い髪の毛にスカートというよりも短パンを穿いた活発な性格をしている。

 第一試合の時は、水の刃や水の砲撃を活用し見事勝利を収めた。


《さあ、今大会の注目のフォルス選手の二回目の試合だ! 第一試合は一瞬で相手をノックアウト! だが、今回の相手は同じ第一試合を勝利した選手! さあ、いったいどんな試合になるのか! 二人とも、準備はいいか!?》


 ズィーの問いに二人は無言のまま頷く。

 が、マジフォンを握り締めている手には力が入っている。


《二人とも準備はいいようだ! そんじゃ、二回戦第一試合! 開始だぁ!!》

「さて、フォルスって子。次はどういう戦い方をするのかしらね」


 ジェイクも個人的に興味がある。

 初戦は、圧倒的な強さを見せたが今回は相手も二回戦を勝ち残った魔機使い。

 最初に動いたのは、アリーだった。

 水の刃を飛ばす初級魔法を発動し先制。


「前に出たわ」


 横に回避することなく、真っ直ぐ進んでいく。

 水の刃の僅かな隙間を流れるような動きで回避しつつアリーへと近づいていく。


《嘘っ!?》


 これには、アリーも驚くしかない。

 しかもかなり涼しい表情だ。

 まったく恐怖を感じていない。


《なら、これでどう! 《アクアブレイザー》!!》


 水の砲撃を放つ中級魔法。

 ただの真っ直ぐ突き進んでいく砲撃ではない。魔力を込めることで分けることもできる。


《ダブル!》


 二つに分かれた水の砲撃は、水の刃を通り抜けたフォルスへを完全に捉えた。

 アリーもやった! と表情に表れている。

 しかし、それをも余裕の表情で回避してしまう。


《また……! だったら》


 次の行動に移ろうとするもフォルスはアリーの目の前に辿り着いていた。


《《ボルテックス》》

《きゃああっ!?》


 至近距離からの雷属性の中級魔法。

 マジフォンを腹部に押し付けての発動。天まで届くかと思うほどの雷の柱の中でアリーは、悲鳴をあげ仰向けに倒れてしまう。


《……決まったぁ! アリー選手ダウン!》


 倒れたアリーの状態を調べたズィーが宣言。

 勝者はフォルスとなった。


「相変わらず、素早い勝利ね彼」

「これは、ユーカも彼に当たったら大変かもね……」


 圧倒的な強さを見せるフォルス。

 自分に敵う者などいない。

 そんな勝利の仕方だった。

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