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第十五話

《へいへい!! 魔機使いが次々に熱き戦いを繰り広げてくれているぜぇ!! そして! 初戦もいよいよ後半に突入だぁ!!》


 ズィーの声が歓声に負けないぐらい響いている。

 最初の一戦から、もう半分もの選手達が戦った。

 どの選手も、魔法の高速戦を繰り広げ時間が過ぎて行くのを忘れるぐらい熱狂していた。


「魔法戦も変わったわねぇ、本当に。あんなこと、私にはできないわね」

「えー? メアリスなら、普通に出来るんじゃない?」

「ふふ、できないわよ~あんな早い戦いは。私、古い人だからー」


 ものすごくニコニコした顔で、ジュースを飲んでいく。

 この言い方はできるけど、できないみたいに言っている人だ。寝ろで古い人だと言うなら、自分はかなり古い人になるんじゃないかと少し考え込む。


「そういえば、ユーカはまだ出てこないね。やっぱり、ギリギリでエントリーしたから最後なのかな?」


 これまで、十数人もの魔機使いが出てきたがユーカは出てきていない。

 早く成長したユーカがどこまで通用するかこの目で見てみたいと思っている。


「おそらくな。だが、最後っていうのは中々いいかもしれないな」

「あー、なるほどね。ある意味、最後のほうが盛り上がるかもね」

「うん、ある意味ねー」


 別にジェイクは、受け狙いでという意味で言ったわけではないのだが。

 フィールドで、戦いを繰り広げている魔機使い達。

 やはり、高いに出場するだけあって中級の魔法を使っている者が多い。本来ならば、詠唱に時間が少しかかる魔法をこれだけ高速で撃ちあえる。

 これが、魔機使い同士の戦い。


「あら? 誰かしら」


 後半戦の第一試合が丁度終わったところで、メアリスのマジフォンから着信音が鳴り響く。

 画面を見て、とても嫌そうな表情で固まる。


「誰からだ?」

「……ウォルツからよ」

「連絡先交換してたんだね」

「仕方なくよ。エレナやセレナの連絡先を交換したついでにね。まったく、くだらないことだったら魔法ぶち込んでやろうかしら」


 などと呟きながら届いたメールをチェックする。

 そして、その内容を確認したメアリスの表情が一変。

 とてもシリアスなものとなった。


「ジェイク。これ」


 その内容をジェイクにも確認させる。


「……これは本当なのか?」

「ええ。二年前も、こんなことがあったわ。あの時で懲りたと思っていたのだけど……はあ」


 内容はこうだ。

 今、この魔法闘技場を襲おうとしている集団が居る。

 その者達は、魔法使いや魔機使い。

 魔法を使う者達を根絶やしにしようとしている集団。

 その名を《魔殺団》という。

 集まった者達は、誰も魔法を使う者によりひどい目に遭わされたという。


「懲りていないってことだね。それで、その集団が下水道を通って闘技場に近づいている。目的は……」

「ここに集まっている魔法使いの……殲滅」


 周りをざっと見渡しただけでも、集まった魔法使いは二百人は越えているだろうか。 

 これだけの魔法使いを相手にするというのは、正直無理がある。

 いったいどれだけの実力を持っているのか。

 魔殺、というだけあって魔法を無効にするなのかを持っている? 


「仕方ないわね。もう一回懲らしめてあげましょうかね」

「僕も手伝うよ。さっきから体を動かしたくてうずうずしていたからね」


 二人が立ち上がり、ジェイクも当然手伝う覚悟で立ち上がろうとする。

 が、メアリスに止められた。


「あなたはここにいなさい」

「いや、だが」


 二人がやられるとは思っていない。

 しかし、多いほうが早く片付くんじゃないかと。


「ジェイクだけはここにいて。全員で行っちゃったら、ユーカの戦う姿を誰が見るの?」

「それは……」

「あの子も、まだ不安が残っているはず。だから、一番のあなたが見守ってくれるだけで、あの子も戦っていけるはずよ」


 そうだ、全員が行ってしまえば、誰がユーカを応援するんだ。

 ジェイクは、わかった……と笑顔で二人を見送る。


《オらー!! まだまだ続くぜー!! 次の魔機使い達カモーン!!》




☆・・・・・




 魔法闘技場で大会が始まっている中、ウォルツはマジフォンをその小さな手で器用に弄っている。


「ウォルツ様。こちらからも、腕利きの冒険者に通達を致しました」

「ご苦労だ、エレナ。俺も、メアリスに連絡を入れておいた。あいつは、二年前のあの事件も解決してくれたからな。あいつらとの戦闘は慣れている」


 よしっと、マジフォンから手を離しエレナの肩に飛び移る。


「エレナ。俺達も現場に向かうぞ。いくら、今の俺が小動物だろうと魔法が使えないわけじゃない」


 小動物の姿になったといっても、魔力はある。

 魔力と魔法の知識があれば、動物だろうと魔法が発動できるのだ。

 とはいえ、あまり強力な魔法は使えない。

 体への反動が大きなため、簡単に体が壊れてしまう恐れがある。


「ですが、無理はなさらないように。戦闘は他の冒険者方に任せてウォルツ様は、ご指示に」

「わかっている。奴らの使う力は、魔法使いにとっても他の奴らにとってもきついものがあるからな。俺もあの時は、苦労したなぁ……」

「ええ。あの時は、メアリス様の助けがなければ大変でしたね」


 懐かしむ二人。

 しかし、そんな時間はない。今もまさに、魔法使い達を殲滅せんと下水道を移動している真っ最中なのだ。


「しかし、メアリス様にご連絡してよろしかったのでしょうか? 現在、ユーカ様が大会に出場なされている真っ最中なのでは?」

「大丈夫だ。奴らのことだ。全員で行くわけではないだろう」

「ウォルツ様ぁ!! ハージェ様がいらっしゃいましたー!!」


 バン! と少し乱暴な開け方だ。

 メイドとしてはどうかと思うが、隣にはハージェが居た。


「セレナ。もう少し、静かにドアを開けられないの?」

「そう言うなってー。セレナちゃんは元気なほうがいいんだからさー」


 そう言って、セレナのことを動物のように抱きかかえ頭を撫で回すハージェ。

 年齢としては、ハージェのほうが上なのだが身長は同じぐらい。いや、ハージェのほうが少し低いだろうか?


「あふぅ……なんだか落ち着きますぅ」

「おーいい子いい子ー」

「妹を可愛がって頂くのは大変嬉しいことなのですが、セレナもウォルツ様に仕えるメイド。少しは、メイドとしての作法というものを大事に」

「まあまあ、主である俺は気にしていない。それよりも、ハージェ。準備はできたようだな」


 むふっと笑うハージェ。

 自身ありげに胸を張り、白衣のポケットから小さなクリスタルが填め込まれた球体を取り出す。


「これがあれば、あいつらの力なんて怖くない! でも、これしかないから完全にってわけじゃないけどね」

「十分だ。少しでも、あいつらの力を無効にできるならな」

「そんじゃまー、いこうか。私も、久しぶりに暴れちゃうぞー」


 準備は整った。

 二年前のあの悲劇が起きないように、賢者として同じ魔法使い達を護るために。


「いくぜ! お前達!!」

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