プロローグ
どうも。
タイトルを覚えている方々はどれくらいいるでしょうか? リアルの事情により突然いなくなった形になりましたが。
恥ずかしながら戻ってまいりました。そして、戻ってきた同時に投稿するのは処女作であったやつをリメイクしたものです。
タイトルはサブタイトルになんかついていますがまあ……頑張りたいと思います!
設定とか色々と変わっていますのでご注意を!
異世界イルディミアでは、レベルというものが存在している。
生物であるのならば必ずあるレベル。
レベルが上がれば、能力が向上しより強くなれる。だが、レベルを上げるためには【経験値】というものを吸収しなければならない。
悲しいことだが、経験値は生物を殺すことで得られる。
つまりレベルを上げるために、生物を殺さなければならない。一番経験値を多く保持しているのは魔物と呼ばれる自然が生み出した危険な獣達。
古い書物によれば、魔物は神々がレベルを上げるために生み出した生命体だと記されている。
レベルを上げれば【スキル】という特殊な能力だって扱えるようになる。
炎を操り、水を操り、風を操り。
中には、自分の肉体を強化するスキルもある。人々は、強さを求め最高レベルである100に到達するため日々努力を惜しまない。
そして今、一人の男がレベル100に到達せんとしている。
髪の毛は白く染まり、顎からは長い髭が生え、古びた鎧を装備し、鞘に納まった剣を杖代わりに使い霧が漂う山々を登っている。
「もう逃がさんぞ。お前との鬼ごっこも今日で終わりだ」
老剣士は、鞘から剣を抜き放ち目の前に飛んでいる小さな敵と対峙する。
そこに飛んでいるのは金色の蚊。
普通の蚊よりも少し大きめだが、実はレベル100になるには目の前に居る金色の蚊を倒さなければならないのだ。
まず、レベル99に到達するのにもかなりの経験値を有するのだが、99になれば神託が下される。
レベル99の壁を突破し100になるには、金色の蚊を倒すことだと。
ちなみに金色の蚊は、レベル99になった者でないと認識はおろか倒すことすらできない。かと言って、レベル99の者であるならばすぐに倒せる、といえば難しい話だ。
金色の蚊は、非常に素早くさらに小さい。
一度見失ってしまったら、探すのにもかなりの時間を有する。
世界にはすでにレベル100に到達している者達が三人存在している。しかも、種族別にエルフ族、龍人族、獣人族の三種族。
そして、今レベル100にならんとしている老剣士ジェイクは人間族。
つまり、ここでジェイクがレベル100になれば人間族初のレベル100として名が知れ渡ることに。
「うぅ……」
突然の眩暈。
無理もない。もうジェイクは八十五歳。人間にしてはこの歳でよく戦っていると言ってもいい。もう精神的にも肉体的にも限界にきている。
ジェイクは、ゆらりと腕から力を抜く。
金色の蚊は、そんな無抵抗のジェイクの横を通り過ぎようといつものように高速で飛んだ。
「―――ふん!」
一閃。
最後の気力を振り絞り、老剣士の刃が……金色の蚊を切り裂いた。四散した蚊は、青白い光の粒子となりジェイクの体に吸い込まれていく。
この青白い光こそが経験値。
ジェイクは、やっと金色の蚊を倒すことができた。
「これでやっと、俺は……!」
体の底から溢れてくる力の胎動。
レベルやステータスなどを確認できる【ステータスカード】というものがあるのだが、ジェイクはさっそく自分のステータスを確認しようと体に手を添える。
がしかし。
「うっ!」
まるで糸が切れたかのようにその場に倒れこむ。
霞みゆく視界。
湧き上がってきた力の胎動も、今では暖房に当たっている時のような感覚でしかない。
(レベル100になったというのに、命が尽きるとは……。やはり、人間には他の種族と違いこれが限界ということか……)
人間族は、半ば諦めていた。
他のエルフや龍人などと違い人間は、弱い生物。いくらレベルを上げようとも、所詮は生まれ持っての才能というものには勝てない。
現に、レベルが10も高い人間が龍人族に負けているのだ。いくらレベルが高くても、種族の壁というものは越えられない。
だから、レベル100になったとしても変わらないだろうと諦めていた。
が、ジェイクは諦めなかった。
絶対。絶対レベル100になれば奇跡が起きる。人間だって、この世界に生きる同じ生命体なんだ。だから、絶対に諦めるわけにはいかない。
自分が、人間の希望の星になってやるんだ。
そう意気込み何十年の時が過ぎただろうか。
(ふっ……だが、同志達よ。俺と同じ人間達よ。ここで俺はくたばるが……人間だって、レベル100になれることができた……だから……希望を信じて……いき……)
ジェイク=オルフィス。
人間達の希望の星とならんとし、誰にも見取られず、人気のない山脈でその生涯の幕を閉じた。