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-第10話- 魔法とマナ

やっと、魔術に関しての話になりました!説明っぽい回になりますが、宜しくお願いします!

「それで、結局なんでシエラはスマホ使えるんだ?」


 落着きを取り戻したシエラに、早速質問をしてみた。

シエラくらいの年齢の子供なら、色々なものに直ぐ興味をしめし玩具にしてしまうが、玩具にしたぐらいで操作できるとは思えない。


「スマホね、お外みれそうだから持ってきたの! セトの中をね、ぐうぅーーってみたらわかった!」


 シエラは可愛らしい二つの拳を胸の前で強く握り、身振りで説明をしてくれた。


「なんだよぐぅーーって? 俺が寝てる間に、何かしたのか?」

「セトのおもいで? がね、よしよしすると見えたの」


 シエラの話を要約すると、寝ている俺の頭を撫でていたら記憶が見えて、スマホの使い方を習得したと言っているようだが、起きた状態での入れ替わりや記憶を探ったりと、少しずつシエラが夢の中でおこなえる事の範囲が広がっている気がする。


 以前よりも、出来ることが多くなるのはシエラとして活動する上では利点になるが、それとは裏腹に急激な変化には何かしらの、リスクがあるのではないか?と、不安にもなる。


「まぁ、何で使えるかはわかったけど、外が見えるっていうのは夢の中から、夢の外が見えるっていう事だよな?」

「うん! スマホで見れるよ!」

「まじか! それは良いな!」


 シエラの説明を聞くと、夢の中にいる間にスマホのカメラ機能を使うことで、本体『現実のシエラの肉体』が肉眼で捉えている映像をスマートフォンに投影することが可能だとのこと。

 これも、シエラの私生活での家族とのやり取りをスムーズに情報として入手できる、新たに加わった『出来る事』の一つだ。

 今日の夢と現実の間で、新たに『起きたまま入れ替わり』と『スマホでの現実の視点確認』が可能になった。それとは別にシエラは俺の記憶を覗くこともおこなえる。

 俺の記憶をシエラに見せるのは、シエラの教育に悪影響がでると怖いので俺はシエラに、勝手に記憶を覗くことを禁止させた。


「シエラ、勝手に記憶を見るのは駄目だぞ?」

「どうして?」


 幼いシエラにとっては、まだ善悪の判断がつかないようで『他人の記憶を覗きみる』事に対して、嫌悪されるような事だとは理解できないようだ。


「そうだな…シエラは人に秘密にしたいこととか無いか?例えばイタズラをお母さんに内緒にしてたり」

「うーん? …っあ! ある!」


 シエラは口に両手を当てて、心当たりがあったのか驚いた表情をした。


「俺も秘密にしたいことがあるから、見られたら恥ずかしいんだよ」

「わかった…ごめんなさい…」


 シエラが物わかりの良い子で助かった。世の中の親達の心境は俺には計り知れないが、子供が間違えたり、咎めなくてはならない場合は、キッチリと説明しなければ子供も納得ができないだろう。


「いや、分かってくれればいいんだ。」


 俺は、しょぼくれてしまったシエラの頭を撫でて、小さな心に罪悪感を背負ったシエラを慰めてあげた。


 ――俺とシエラは、その後『剣道』の練習を再開し、一日でいろいろとあったが今日を無事に終えることができた。



 ――三歳児生活の3日目の夜になり、俺は先日と同じように夕食後のポーラの授業を受けていた。本日の読書と算術の授業は一通り終わり、俺はいよいよ魔術の授業を始めることとなった。


 ポーラは昼の間に、ジェフから魔術の授業をおこなう件について了承をとり、エレノアからも魔術に関しての基礎知識を授業前に予習していたみたいだ。

 授業の準備は読書の授業と同じように、ペンと羊皮紙でおこなうようで。期待していた杖とか魔導書みたいな物は見当たらない。


「ではお嬢様、まずは魔法に関しての基礎知識からになります。」

「うん!」


 どうやらまずは、座学で基礎知識を学ぶようだ。


「まず、魔術とは何かについてご説明いたします。」

「わかった!」


 ――それから、俺はポーラにあれやこれや魔術について教わった。


 先日聞いた、マナが魔術には必要なものという説明から、今日はその内容から一歩踏み入った説明をしてくれた。


 マナは星の内側から『マナ回廊』と言われる脈を星全体に張り巡らせており、回廊から漏れ出たマナがその地を調和し安定させているのだとか。


 マナが最も漏れ出している場所を『龍穴』と呼び、この世界には六ケ所の龍穴があるのだとか。


 龍穴よりもマナの出が小さな箇所は『マナ泉』と呼ばれ、世界中に無数存在はしているが、枯れたり移ったりで、安定したマナ供給を長期的に得ることができないらしい。

 人間族が暮らしている地域では、『アガルム山脈』の霊峰『ホノリス火山』に龍穴が存在し、人間族が暮らしている地の調和が保たれているらしい。


 前世の世界の日本でいうところの、龍穴が富士山にある的な話かな?


 また、マナにはそれぞれ『火系』『水系』『風系』『土系』の四大元素系と言われるものと、『光闇系』『時空間系』と、それ以外二つの属性からなる、六属性に分類されているとの事だった。

 六属性に分類されているのは、先日の授業ででてきた六柱の龍と関係があるようで、龍のシンボルとなる属性とのことだ。


 また、龍とマナと種族には密接な関係があり、龍はマナの化身であり、種族は龍の眷属として扱われているとのことだ。


 人間族は火の龍『アエスターティス』の眷属に該当し、炎や火を使った魔術が得意な者が多く、それ以外の属性の魔術が得意な者は稀なのだとか。

 火属性が得意なだけで他属性を使えないわけではないが、魔術的に効率が悪いらしい。


 魔術の発動をするためには、雑多な属性のマナを一度最適な属性へとコンバートし、属性を一律に整える必要があり、そのマナの属性をコンバートする作業で、人族は火属性を効率的にコンバートができるが、他属性のマナへはコンバート時にマナの損失量が多いので、魔術行使はできても出力が低くなるとのこと。

 コンバートできるマナの量や属性などにも個人差があり、適性が無いことも珍しくはないらしい。


 簡単に言ってしまえば、雑多な色の光を赤の透明なフィルムに通して、色を赤に変える作業が魔術ならば、赤い色のフィルム以外にも持っている人もいれば、赤いフィルムの色やサイズが個人差があるってかんじみたいだ。

 そのフィルムの役割は体内に存在する『オド』と呼ばれるものが役割をになっている。


 俺はその『オド』と呼ばれるものが、何なのかとポーラに尋ねた。


「オドって言うのはなんなの?」

「はい… オドとは命そのものです。龍穴より出る生命の根源をマナと呼び、体内に存在するものをオドと呼びます」

「じゃあ、オドを使って魔術を使えるの?」

「可能ですが、それは禁忌とされています。オドを削り魔術を使用すれば、自らの命を削り取ることとなります」

「分かった… 使わないようにしないとダメだね…」


 『オド』は魂のようなもので、それを使えば死んでしまう。禁忌にもなるはずだ。


「はい。まずお嬢様がオドを消費して魔術を使う事態にはなりませんが、何かあっても決しておこなってはなりません」


 ポーラによるマナに関しての説明が終り。ポーラは床に置いてある袋から、丸い金属の板と綺麗な六色のビー玉を取り出した。

 円盤には六芒星の魔方陣が描かれ、六芒星の頂点には窪みがある。それらの窪みの間を細かい文字の線で結んでいた。

 ポーラは円盤の窪みにそれぞれ、赤、青、緑、黄、灰、透明の六種類を置いていった。


「これは何をしてるの?」

「ただ今より、マナの適性をお調べいたします。まずは私がお手本をお見せいたしますね」


 そういって、ポーラは魔方陣の中心へと手をかざすと設置されたビー玉が二つ薄く光った。


「この光ってるのが適正?」

「さようでございます。私はこの風と火の属性に適性がございます。赤が火で、緑が風の属性石となっております」

 ポーラは手をかざし終え、指を刺しそれぞれの関連する属性の色を教えてくれた。

 俺はポーラが、風と火の適性があるがあるのはわかったが、ポーラの過去の口ぶりから魔法を使っていないようだったので、理由を聞くことにした。


「じゃあ、ポーラは風と炎の魔法が使えるの?」

「使用できないわけでは無いのですが、私は魔術をあまり得意とはしません」

「そうなんだ…」


 要領のよさそうなポーラが得意じゃないなら、俺も今後習っていくうちに挫折するかもしれない。と、早くも挫けそうになる。

 そんな誰でもポンポン使用できるほど、魔術は甘くないようだ。


「では、お嬢様こちらに手をかざし掌に集中してみてください」

「うん…わかった」


 俺はポーラをまねて、手をかざし言われた通りに意識を掌へと集中した。すると、全ての玉が風前の灯火のように、微量に光っている。

 その中でも赤い色が多少強いぐらいだった。


「これは非常に珍しいですね…全属性に適性がありますが…」

「これじゃあ魔術は使えない?」

「この光の強さですと、火属性がかろうじて可能かと思われます」


 宝の持ち腐れもいいところだ…適性はあっても、使用できるほどの強さが無ければ持っていても意味がなさそうだ。

 しかし、火属性魔法は使えそうだというなら、まだましだったのかもしれない。


「お嬢様はまだお若いので、今後の修練しだいで十二分に他の属性も強くなる可能性がございます。あまりお気になさらなないでください」

「ありがとう…」

「今のこの強さですと、放出系の魔術より、私と同じような自己強化型の魔術がよさそうですね」


 ポーラが言うのはつまり、TVゲームで言うバフ系の魔術なら使えると言うことか…できないよりは、気休めにはなるし、自己強化なら私生活でも役に立つ可能性があるし、無いよりはましか。


 ――その後もポーラに色々説明を受け、魔術の基礎授業は続いた。


 そもそも、魔法やシエラが習っている剣術がこの世界で必要な理由も教えてくれた。

 俺も薄々は感づいていたが、この世界のあちらこちらに野生動物以外に『魔獣』と呼ばれる生物が野生に点在ししているようで、普通の動物よりも凶暴で危険な生き物が存在しているらしい。

 そういった危険に対処すべく、魔法や剣術といった武力が必要になったようだ。


 銃や近代兵器の類の話は聞いてないので、もしかするとあるかもしれないが、魔術の強さが近代兵器よりも効率的ならば、脅威との戦い方も違ってくるのだろう。

 それに、銃等は弾や火薬の消費をするのに対し、同じ遠距離的な戦闘をおこなった場合は経済的には魔法の方が消耗は少なくお財布には優しいのだろう。


 ただ、誰にでも魔術が使えないという点においては、銃の方が安定した武力を有することができるのだろう。


 俺は戦いのプロじゃないし、そもそも戦いたいから魔術を習っているわけじゃない。興味本位で魔術を習ったのもあるが、生活に役立つような実用的な魔術が習えればそれでいい。それに、貴族令嬢のシエラが前線にでて戦う事などまずないだろうし。


 ポーラは魔獣の存在以外にも、魔術に付いての詳しい説明もしてくれた。


 魔術は、自己強化、放出、設置の三タイプで系統が分れているようで、最も簡単なのが自己強化型の魔術らしい。

 ポーラも自己強化型の魔法は多少使えるらしく、専門知識が無くても獣人族のほとんどが本能的に強化魔法は使えるらしい。

 エレノアは最も難易度が高い設置型の魔術までを使えるらしく、設置型魔術が使えるまでには相当な時間や、マナのコントロールが求められるらしい。


 俺がまず習うのは、自己強化の魔術を教わるところから始まった――。


「お嬢様、まずは自分の胸の中心に意識を集中し、炎をイメージしてください」

「炎をイメージするのは何か意味があるの?」

「はい、ご自身の適性があるマナをまずは効率よく変換できる練習からになります」

「わかった、やってみる」


 胸の中心に意識を集中し、頭の中で大きく燃える炎を連想した。しばらく集中してたが、別に変化は特に感じられない。


「これ、いつまでするの?」

「そうですね…、では試しに魔術を使用しましょう」

「どうやって?」

「イメージした炎をそのまま、全身に広げていくようイメージしてください」


 俺は胸の中心で燃える炎のイメージを、ゆっくりと胸から全身に広げていった。


「それで?」

「終わりです」


 え?特に何も変化ないよ?これで終わりってどういうことだ。


「何もかわってないよ?」

「自己強化の魔術は、マナを全身に巡らせることにより、筋力の補助などをおこなうものです」


 俺が思っていたものよりも、かなり地味だった。てっきり複雑な呪文を唱えたり、魔方陣を書いたりするものだと思ったが、見当違いだった。


「どれぐらい強くなったの?」

「――そうですね…腕立て伏せが一回多くできる程度には強化されたはずです」


 涼しい顔で腕立てが一回増えたと言うポーラだが、もうそれは誤差の範囲じゃないか?気のせいと言っても過言じゃない。


「これ、意味あるの?」

「はじめはその程度ですが、毎日続けることでより効果が出てきます」

「そうなんだ…じゃあ魔術の練習はこれだけ?」

「はい、基礎をまず固めることからになりますので」

「毎日どれくらいするの?」

「夜寝る前に瞑想を続ければよいかと」


 やはり、想像していた以上に地味だった。


 そして、これで本日の授業は終了になった。習って直ぐに使えるようになるとは思ってはいなかったが、まさかここまで地味だとも思ってもいなかった――。

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