ひとつの未来 a future
メリークリスマス。
完結記念・クリスマス記念の番外編です。
本編完結後、こんなふうになったかもしれないというお話になってます。
本編は知っての通りの終わり方なので、あくまでもありえたかもしれない可能性のひとつとして読んでいただければ。
本編未読の方は、本編を読み終えてから読んでいただくことをおすすめします。
あと、ハーレム苦手という方は読まないほうがいいかもしれません。
互いの未来を賭けた戦いは、もつれにもつれた。
最後は【不易不労】による継戦能力の差が出て、かろうじて俺が勝利を収めた。
「はぁ、はっ……参りました」
美凪さんが地面にへたりこんだままでそう言った。
「まさかここまで苦戦するとはな。さすがだよ」
俺は美凪さんに手を貸した。
もちろん、これは魔法による擬似現実空間だから、そうすることに意味はないのだが。
たくさんの拍手が聞こえてくる。
観客席からだ。
二つの世界から数十万を超える観客がこのヴァーチャル空間にアクセスしている。
そのアバターのうち、システムに処理可能な人数が観客席に表示されてる。たしか、三万人くらいだったはずだ。
「……変ですね」
美凪さんが言った。
「何がだ?」
「もっとこう、あきらめがつくかと思ったんですけど。これ以上ないほど力を出し切ったのに、残ったのは未練がましい気持ちだけ……」
「美凪さん……」
「いえ、すみません。こんなことは言うべきじゃなかった。
全力で戦ってくれてありがとうございました、加木さん」
深々と頭を下げ、美凪さんが言う。
そして、俺が返事をしかねてるあいだに美凪さんがログアウトした。
俺は、反射的に伸ばしかけてた手を宙にさまよわせる。
消え去った幻影が、脳裏に焼きついて離れなかった。
地球にも別荘を持ってはいるが、地球での俺の定宿は、晴れて俺のものとなった魔導戦艦ダッスルヴァインだ。
俺の他には、エレミア、メルヴィ、アスラ、ナイト、シエルさんも乗っている。
ちょっと前までは美凪さんとサンシローもいた。
あの二人が抜けた分、巨大な魔導戦艦の空気はいくぶん寂しくなった。
夜、俺の部屋を、シエルさんが訪ねてきた。
一度すべてのスキルを失ったとはいえ、身体に馴染んだ感覚を取り戻すのに、そう時間はかからなかった。まして今は魔法擬似現実技術もある。俺のスキルのうち、全盛期の2割程度はすぐに取り戻せたし、これからさらに取り戻せそうに思う。
……まぁ、仮にも神になってしまったので、スキルを取り戻したところでなんだという話ではあるのだが。
とにかく、そんなわけで、気配を消さずに廊下を歩いてくるのがシエルさんであることは察知できた。
例の戦いのどさくさにまぎれてちゃっかり身体を取り戻したシエルさんが、俺の部屋の呼び鈴を鳴らす。
俺はドアを開けた。
「……どうしたんだ、こんな夜中に」
「来ちゃった」
「来ちゃったじゃねえよ。そういう用件ならエレミアを呼ぶぞ」
「ああっ、待って、それはやめて! あの子、エドガー君のことになると見境ないんだからっ!」
インカムを手に取りかけた俺に、シエルさんが慌てて言う。
「じゃあなんの用だよ」
「くぅ~、わたしにはカケラも興味なさそうね!」
「いや、まぁ……シエルさんだって本気では言ってないだろ」
「そりゃそうだけど、『いいのか、こんな時間にほいほい男の部屋に上がっちゃって。襲っちゃうぞ☆』くらいのリップサービスはあってもいいでしょうが!」
「それのどこがリップサービスなんだよ」
いつも通りの残念勇者に、俺は大きくため息をつく。
「でもさ、わたしには興味はなくても、ミナギには興味あるんでしょ?」
「…………」
俺はとっさに否定できなかった。
シエルさんは、後ろ手に隠してた酒のボトルと二つのワイングラスを俺に見せる。
「どう? 経験豊富なお姉さんが相談に乗ってあげるわよ?」
「……はぁ。まぁ、いいけどよ」
ウインクしてくるシエルさんを、俺は部屋へと招き入れる。
……廊下をすばやく確認して、エレミアが見てないか確認してからな。
シエルさんがグラスに酒を注ぐ。
「これはわたしの故郷から取り寄せたお酒よ。軽い風味のワインみたいな感じね」
「へえ。おいしいな。飲みやすい」
「ままっ、シャッチョさん! 飲んで飲んで!」
「あんたはどこからそういう怪しげなネタを仕入れてくるんだ」
「地球はいいわね。自由で、楽しくて、安全で」
「マルクェクトに比べればな。地球だって地域によっちゃひどいもんだ」
「そうね。なまじ、個人の力が小さいもんだから、事態がこんがらがるんでしょうね。勇者の力で一刀両断快刀乱麻とはいかないもの」
「これからはそうでもないかもしれないぞ。あまりにひどい紛争が起きたら、サンシローのクローン部隊が飛んでって調停するらしいからな。それでもダメなら俺たちの出番だ」
地球にせよ、マルクェクトにせよ、俺たちが圧倒的な力を手に入れたことで、急速に新しい秩序が生まれつつあった。
物語ってのは、どうしたって誰かが不幸になるところから始まるものだ。
俺たちが目指してるのは、英雄が悪党を成敗する物語すら必要とされないような、物語の終わりに先にある平穏だ。
「かくして物語は終わり、めでたしめでたし……かもしれないけど、それでもやっぱり物語を作り出すのが人間のさがってものよ。
エドガー君だって、第二の恋の物語に巻き込まれてるし、それを力づくで解決することはできないでしょ」
「……これは恋なのか? 俺にはエレミアがいるってのに」
「恋愛感情かどうかってことなら、まちがいなく恋愛感情なんじゃない? ミナギくらい魅力的な女の子はそうはいないわ。あなたが恋心を抱くのは当然ね」
「だけど……」
「その感情を、生かすも殺すもあなたしだいよ。もちろん、公序良俗を気にして殺したっていいわ。エレミアの師匠として、あの子には幸せになってほしいもの。
でも、気づかないことにしてごまかすのはやめたほうがいい。どちらを選ぶにしても、自分の気持ちと向き合うべきよ。そうしないと悔いが残るわ」
「悔いか。全力を尽くして戦って勝った。だから悔いはない……はずなんだけどな」
「ミナギも同じような顔をしてたわね。
だけど、わたしに言わせれば、あんな試合に意味はないわ」
「ずいぶんばっさりだな」
「だって、恋と戦いは別物でしょう。戦って勝とうが負けようが、恋を見きれるはずがないじゃない。二人とも勘違いしてるわ」
シエルさんの言葉に、おもわず納得してしまった。
「エドガー君が、エレミアのことを思ってるのはわかってる。それも大事ね。でも、あなたの気持ちだって大事よ。エレミアを傷つけまいとするあまり、あなたは自分の気持ちに蓋をしてる」
「……かもな」
「それって、エレミアにも失礼なんじゃないの? だって、このままじゃエレミアはこう思うわ。『エドガーくんはボクのために我慢してくれてる。本当はミナギさんが好きだったのに』って。あの子は、それを嬉しいと思うような単純な精神構造はしてないわ」
「んなこと言っても、どうすんだよ」
「知らないわよ、そんなの。それはあなたが決めること」
「俺が……」
「結局、あなたは未練を隠せてないのよ。ずばりと指摘すれば、エドガー君は、『エレミアに加えて美凪さんまで嫁にできればウハウハだ』って思ってんのよ。モテる俺はかっけーとも思ってるわね」
「うっ」
「そのくせ、世間体やら常識やらを気にして、一夫多妻なんてとんでもない、エレミアも傷つけたくない、だからなんとか我慢しよう、ミナギさんならわかってくれるはずだ、と思ってる。
その意味では、あなたとミナギは共犯ね。心の中ではつながってるのに、示し合わせてなんでもないふりをしようとしてる。
エレミアにとっては、むしろそのほうがイヤなんじゃないかしら。自分の夫が他の女と通じ合ってるんだから。ましてあなたとミナギは同じ世界、同じ国の人間で、運命的な出会いをしてて、趣味まで同じ」
「それは……そうかもな」
俺は自嘲気味につぶやいた。
「あのね、まず、あなたがミナギに手加減しなかったことは褒めてあげるわ。素直に感心した。二人とも全力を出してたのはわたしにはわかる。ミナギがあきらめる理由を作るための八百長にならなかったのは、さすがこの二人だわと感心したわよ」
「そりゃ、失礼だろ。手加減なんてしたらさ」
「それよ。あなたは手加減したら失礼だと思った。そう思ったってことは、手加減して負けるって誘惑が相当に強かったってことよね。ミナギが勝てば、あなたは負けたんだからしょうがないってことで、ミナギを嫁にすることができたんだもの。
端的に言って、あなたは負けたかったのに勝ってしまったのよ」
「それは……わからない。
でも、美凪さんは負けたかったんだろうと思う。だから、俺が勝ったことは美凪さんにとってはよかったはずなんだ。美凪さんは全力を尽くすことで意地を通しつつ、地球の現代人からすれば倫理に外れた結婚をあきらめることができる。そのための儀式なんだと。
でも、試合が終わった後の美凪さんを見てたら自信がなくなった……」
「その分析は、半分は当たり、半分ははずれでしょうね。ミナギはそういう計算をすべて理解した上で、それでも本気で勝ちに行くことに賭けたのよ。全力を尽くしてすっきりしたいなんて誘惑には負けず、本気も本気で勝ちに行った。ミナギは、小賢しい計算を超えて、その先に勇気を持って踏み込んだのよ。
でも、いくらなんでも相手が悪すぎた。ミナギは誇り高い子だから、試合の結果を気持ちで覆すような真似はできない。それは、真剣に勝ちを求めた自分の気持ちを愚弄することになるから」
「じゃあ、気持ちが弱いからあきらめたんじゃなく、強すぎるからあきらめるしかなくなったってことか。でも、強すぎるからあきらめることができない」
「健気でしょうが。本当はあなたに、よく考えて自分の気持ちに素直になりなさいって説教するつもりだったんだけど……やめたわ」
「やめるのかよ」
「わたしも一歩踏み込ませてもらうことにしたわ。
エドガー、あなたはミナギと結婚しなさい」
「命令かよ」
「ここまで言われてヘタれるんだったら、わたしはあなたを斬り捨てるわ」
シエルさんがそう言った一瞬後、喉元にひやりと冷たい感触が生まれた。
シエルさんが抜き放った剣が、俺の喉元に突きつけられていた。
「擬似現実ならともかく、今のあなたにならわたしでも勝てるわね。まぁ、神を斬ったところで殺せるかどうかはわからないけど」
「シエルさんの腕なら神殺しに遭いかねないな」
「さぁ、そのことを踏まえて返事をしなさい。エドガー・キュレベル。あなたはどうするつもりなの?」
勇者の目で俺をにらみ、シエルさんがそう言った。
「俺はーー」
その頃、エレミアはダッスルヴァインにはいなかった。
地上に降りて、エドガーには内緒で、ある人物のもとを訪ねていた。
「ごめん。電車が遅れてて」
「ううん、わたしも来たとこだから」
エドガーの……いや、加木智紀の地元駅で待っていたのは、もう一方の当事者である片瀬美凪本人だった。
有名すぎるほど有名になってしまったので、大人しめなブラウスとフレアスカートという出で立ちで、顔には色の薄いサングラスをかけている。
「じゃあ、落ち着いて話せる場所に……」
「そのまえに、すこし遊んでいきましょう」
「えっ?」
戸惑うエレミアにかまわず、美凪はすたすたと歩き出す。
「ここって……」
「ええ。最近は流行ってないけど、この店はなんとか残ってるの」
美凪がエレミアを連れてきたのは、加木智紀が通っていたゲームセンターだ。
中に入る。
アーケードゲームの筐体が所狭しと並んでるが、客の数は少ない。
「魔法擬似現実なんてものができてしまったから、従来のゲームは厳しいのよね」
と言いつつ、美凪が筐体の前に座った。
もちろん、スラムファイターの筐体だ。
「向かい側に座って」
「こう?」
「うん。電子決済はできないから、百円玉を入れて。そうそう」
「やってみたかったんだよね。エミュレーターでは触ったことがあるけど、実機は初めてだ」
エレミアは、目の前にある筐体をしげしげと見る。
「それなら早いね。さっそくやろうか」
「いいけど、勝てるかな」
「え? 万に一つも勝てないよ」
「うわっ、言うね」
「だって、七年連続で世界チャンプだったんだもの」
対戦が始まった。
「ひいい、どうにもなんない!」
「だから言ったでしょ?」
「エドガーくんが、『才能の土台が違う』って言ってたくらいだもんね」
「あきらめる?」
「ううん! まだまだ!」
数時間、エレミアは粘るが、美凪からはラウンドすら取れなかった。
いつのまにか店の常連が集まってきて二人の対戦を観戦してる。
二人ともいまや有名人のはずで、もう正体はバレてるはずなのだが、観戦してる客たちはそのことにはまったく触れない。
ただ、今の差し返しがどうの、裏の裏の選択肢がどうのと囁きあってるだけだ。
「いい店だったね」
「でしょう?」
二人がゲームセンターから出た時には外はもう暗くなっていた。
「あそこのホテルを取っておいたから。そこで話そう」
はっきりと言ったエレミアに、美凪が身を硬くしてうなずいた。
決戦前に泊まったハワイのスイートに比べれば格段にグレードが落ちるものの、街を見下ろせるまずまずの部屋だ。
二人はルームサービスの軽食を挟んで向かいに座る。
エレミアが言った。
「ミナギさんって、エドガーくんに似てるよね」
「わたしが……?」
「うん。こうするのが正しいって思うと、自分の気持ちを後回しにする。そのくせ、最後には我慢できなくなって気持ちを通そうとするんだけど、うまく通せないとなんとかしてあきらめようとする。真面目で、すこしだけわがままで、でもやっぱり真面目なところに戻ってくる」
美凪は困った顔をした。
「ボクの過去のことは聞いた?」
「いえ……」
「じゃあ、話そうか。ボクが暗殺者だった時のこと」
エレミアは、淡々と自分の過去を美凪に語った。
昏き森の巫女として育ち、暗殺教団にさらわれ、エドガーに救われた。
重すぎる話に、美凪はあいづちを打つのもためらわれた。
「ボクはわがままを言っていいんだって、エドガーくんが教えてくれた。
でも、そのエドガーくんがわがままを言うことはあんまりない。今回のことだってそうだよ。
まったく、未練たらたらでさ! それを我慢してる俺エラいみたいな空気まで出しちゃってさ! そんなのを間近で見せつけられる妻の気持ちを考えろっての!」
「そ、それは……ごめんなさい?」
「べつにミナギさんは悪くないけどね。いや、悪いけど、エドガーくんが煮え切らないのが悪いんだ」
「わたしはもう、やることはやったから。時間が解決してくれるんだと思う」
「本っっ当に、そう思ってる? こんな大事なこと、時間なんかに解決されていいと思う?」
「そ、それは……わたしだってわからないよ」
「ボクはよくないと思ってる。
ボクのために我慢するエドガーくんなんて見てたくない。
エレミアはもっとわがままでいいんだよって言ってくれたくせに、自分の行動でそれを裏切ってる。
じゃあ、ボクに言ってくれたことはなんだったの!? ただかわいそうなボクに同情して慰めてくれただけだったの!?」
「そ、そんなことはないと思うけど」
「今日ゲームして、ミナギさんがどんな人かはもっとわかったよ。
でもね、ミナギさんがどんなつもりでボクをゲームに誘ったかなんてどうでもいい! ボクを味方につけるための姑息な工作だったのかもしれないし、もっと真摯なメッセージなのかもしれないけど、ボクにはミナギさんの『つもり』なんてどうだっていい! あきらめようとしてあきらめきれない? 知るか! ボクには関係ないし、ボクには他の女の気持ちをおもんぱかる余裕も趣味もないよ!」
「うっ」
「でもね、エドガーくんが、ミナギさんがほしい、必要だ、ミナギさんがいてくれたほうが自分は幸せだっていうなら、話は別だ。エドガーくんの幸せはボクの幸せ。受け入れようじゃないか。正妻としてね!」
エレミアはそこで言葉を切った。
「……本当に気に入らないよ。ミナギさんもそうだ。勇気を持って踏み出したはいいけど、その足の置き場がなくなったと知るや、やっぱりいいですって足を引っ込めちゃうんだ。思いきって前に飛べよ! そんで落っこちて死ね! 穴の手前でうろちょろしてボクの旦那を誘惑するのはやめてくれませんかね迷惑だ!」
「ううっ、そ、そんなつもりは……」
「あるだろ! こうしてエドガーくんに負けた後でも、ひょっとして認めてくれないかと期待してボクに会ったりしてるし! 本当はエドガーくんから誘われるのを待ってるんだ! この卑怯者! 自分から行けよ、自分から!」
「だから、行ったじゃない! でも負けて……!」
「負けたからってなんだよ! 死んだわけじゃあるまいし! 試合の結果を尊重するーだなんて余裕ぶっこいてないで、どんなにみじめな思いをしてでも食い下がってみろよ! 人の旦那取ろうって言うんだからさぁ!」
「そ、そんな……」
「もしミナギさんがそんな上っ面の格好をつけて、エドガーくんから声をかけてくれるのを待つつもりだったら、ボクは絶っ対に許さないから! 地球の常識だとかなんとか、そんなくだらない留保条件をつけて、それをエドガーくんの方で乗り越えてから告れっていうのはおかしいよ!
ボクが言いたかったのはそれだけだっ! ぜぇっ、はぁっ……」
「え、エレミアさん……」
銀髪の美少女は、言いたいことを言い切ると、ぷいと顔を背けて窓を見る。
美凪は返事ができず、酸素を求めてただあえぐ。
そんな美凪にしびれを切らし、エレミアが鋭い目つきで振り向いた。
「ーーで、どうするの!?」
「わ、わたしは……」
片瀬美凪は、自分の意思をはっきりと口にした。
ダッスルヴァインに乗せろとエレミアから通信があったのは翌朝のことだ。
(っていうか乗ってたんじゃなかったのかよ)
いつのまにか降りてて乗せろとは。
俺の嫁さんもわがままになったもんだ。
自衛隊の基地を借りてダッスルヴァインを下ろすと、エレミアは思いがけない相手と一緒だった。
美凪さんだ。
いったいどういう経緯なのかわからなかったが、行動するのは今だと思った。
「「あ、あの……」」
俺と美凪さんの声がかぶった。
いつもなら「どうぞお先に」と言うところだが、今日だけはそんなわけにはいかなかった。
「やっぱり俺と結婚してくれ!」
「やっぱりわたしと結婚してください!」
「「って、えええええっ!?」」
告白が思いっきりかぶって、俺と美凪さんが同時に驚く。
「ふっくくっ……まさかかぶるとは思わなかったわ」
俺の後ろでシエルさんが笑ってる。
「まさか、シエルさんが仕組んで?」
「いや、わたしはエドガー君に言いたいことを言っただけよん。エレミアがそっちについたとは知らなかった」
「べ、べつにボクはミナギさんについたんじゃないよ! 言いたいことがあったから言いにっただけだから!」
エレミアがあわてて首を振る。
「ええっと、じゃあ、そういうことで?」
「いいんですかね……」
「なんで自信なさげなんだよ、二人とも」
顔を見合わせてから目をそらし、ふんわりしたことを言いあう俺と美凪さんに、エレミアがそうつっこんだ。
「おー、ミナギお姉ちゃんもお嫁さんに?」
と、アスラが言い、
「まぁ、落ち着くところに落ち着いたのかしら」
「まったく見てられなかったわね」
メルヴィ、ナイトの妖精二人が言った。
俺は、思い切って美凪さんの肩を抱き寄せる。
「そういうことだから! みんなよろしく!」
俺の言葉を、みんなの拍手が迎えてくれた。
宣伝ですみませんが、現在新連載が進行中です。
『不幸少女は二度目の人生でイージーモードを望む』
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年末年始、こたつでごろごろしながら読んでもらえるとうれしいです。
それでは、みなさまよいお年を。
天宮暁