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坂道

作者: 相沢つとむ

 あたしの町には急な坂道がある。そこを自転車で立ち漕ぎをして、息をきらしながら頂上を目指す。前輪がふらつくけど、足と手に力を入れてなんとか、バランスを保つ。

 視界の隅にマンションが通りすぎればもう頂上だ。

 視界が開けた。朝焼けから視線を下に移す。

 海が見えた。それと同時に潮の香りが鼻につく。

 自転車から降りて呼吸を整える。整えるのと同時に潮の香りが今度は鼻ではなく、口の中に入ってくる。

 これを見にきたんだ、そう思ってまた自転車にまたがった。そして、今度は坂道を降っていく。

 どんどんスピードが上がっていく。自転車のペダルから足を外して、あとはもう下り坂に身を任せればいい。

 海に視線を合わせて、スピードをあげる。髪を風になびかせて、潮の香りを嗅ぎながらどんどんスピードをあげる。

 このスピードなら、今のあたしならどこにでも行ける気がした。いや、むしろ、どこかへ行ってしまいたい気分だ。

 景色が視界の隅ですごい勢いで入れかわっていく。

 あたしは、風になるのだ。

 世の中のしがらみなどを絶ち切ってあたしは、無色透明な風になる。だからあたしは、もうこの世にはいないのだ。

 自転車のスピードはぐんぐんと上がっていく。足に力を入れる必要はない。

 海が近づいてきた。

 スピードがあがる。

 ガタガタと音を鳴らす前カゴ。

 あたしはもう風なのだ。


ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 疾走感が心地よくて、良い短編だと思います。
2014/02/09 22:51 退会済み
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