突入せよ突入せよ
「おかしい」
僕はマリアくんに聞こえるように言った。
「なにがですか」
お決まりの返事をマリアくんはしてくれた。僕は安堵した。
僕は、何がおかしいかマリアくんに説明し始めた。確かに今は朝方の4時頃で、まだまだ辺り一面真っ暗である。暗視ゴーグルをしているためある程度の状況はわかっている。それでもおかしいとわかるのは、なにやら一方通行の如く工事用のバリケードなどがおかれているということだ。なんだか僕らをどこかへ導くように……。
「なるほど。でも、博士なら行きますよね?」
「もちろんだ」
僕は、両足をふるわせながらマリアくんに返事をした。
バリケードにそって入っていくと、大学構内への入り口であろうドアが目の前に現れた。僕は、恐る恐るそのドアのドアノブに手をかけた。ドアノブを回すと、ドアは少々錆びていたのか、ぎぎぎと軋みながらゆっくりと開いた。
室内は、真っ暗ではなかった。いや、そうはいってもほとんど真っ暗ではある。非常口の緑の明かりがついているのと、非常灯として、床が少し明るくなっている程度で到底明るいとは言えない状況であった。
「マリアくん」
「なんですか急に。ちょっとビックリしましたよ」
「どうして、中学生活、高校生活、大学生活など、学園モノの小説やらアニメやらが乱立していると思う」
「本当に、なんですか急に」
マリアは、僕を睨んでいるようだったが、構わず続けた。
「僕の仮説では……、筆者がまだ若く、その頃の記憶が一番楽しいと感じている、もしくは題材がそれくらいしかないからなんじゃないかな。まぁ、その頃が一番楽しいのは頷ける。だって、考えてみろ。結婚するまでは良い。しかし、その後は地獄だ。子作りに必死だった夫婦も、いざ子供が出来てみると、あんなに綺麗もしくはかっこよかったパートナーはどんどん老いていき、、おっさんおばさんとになるんだ。そう、もう子供を産む必要がないから見た目を気にする必要はない。パートナーを見た目で落とす必要はないんだからね。なんだか、人間とはいえ動物らしいところもあるじゃないか」
マリアは、「ふーん」と今にも言いそうな顔で僕を睨んでいた。
「結婚なんてするもんじゃないね」
「一生できませんよ。そんなんじゃ。だいたい、学園ものが乱立している理由から、どうして結婚の話になるのか理解できません。つか、真面目に進んでください」
そういって、マリアは僕のケツをひっぱたいた。そして、僕はお返しに言ってやった。
「すまなかった。そして、もう一つ残念なお知らせがある。そう、道に迷った。道がわからなくなったのだよ。ははは」
僕の想定を遥かに超えて、大学構内は複雑だったのだ。無念。