二人組
僕は、マウンテンデューを飲んでいた。緑色の着色料たっぷりの炭酸飲料だ。美味しいかどうかは、別であり、カフェインが入っているため少々気分がハイになるから気に入っているにすぎない。
そもそも、マウンテンデューを飲み始めたきっかけは、古いアメリカ映画だった。大学生グループが、昼間に集まって、マウンテンデューを飲み、あーでもないこーでもないと語っている姿になんとなく憧れたのがきっかけだ。その映画を見て以来、僕はマウンテンデューの虜だった。
「ねぇ、飲み終えた?」
となりに居たマリアが俺に聞いてきた。
「ああ、あともう少し」
僕は、返事をした。
「どっちよ。もう少しってことはまだ残っているのね」
「そういうことになるかな」
「早く飲み終えて」
「急かさないでくれよ」
僕は、少し苛つき彼女の顔を睨んだ。すると、彼女は、はいはいと飽きれた顔をして「早くしてよね」と言った。僕は「そうする。でもまぁ、もしかしたら最後のマウンテンデューになるかもしれないから、大切に味わいたい。もう少しだけ我慢して」と諭すように言った。でも、彼女の顔は今にも「そんなことにはさせないわ」と言わんばかりの顔をしていた。
僕は左足に重傷を負っていた。敵に打たれた銃によって負った傷だ。敵さん、なかなかの射撃センスだ。まさかあんなところから狙ってくるなんて思いもしなかった。不覚だった。いつか借りを返したいものである。トイレで用を足しているところ狙うなんて卑怯だと思うけどね。
僕は、ようやく空になったマウンテンデューの空き缶をもたれかかっている壁のそばに置いた。マリアは、僕が置いたマウンテンデューの空き缶を拾った。
「もう、早くしてよね」と彼女は言ったので、僕は「ごめんごめん」と謝った。
彼女は、その空き缶に少々の細工をした。空き缶に爆薬を入れた。
「ところでさぁ」僕は切り出した。
「なに?」彼女は爆薬を空き缶につめながら返事をした。
「ここを、逃げ切れたらさ、どこかのレストランで美味しいチーズフォンデュが食べたいな」
「なによそれ」
「最後の晩餐」
「はいはい」と彼女は、飽きれていた。
「本気なんだけど」僕は、真剣な眼差しを彼女に向けたが、彼女にはそれは単なる「真剣な眼差しに見える」というジョークであるということをあっさりと見抜かれてしまった。
彼女は「よし」と言って、どうやら簡易爆弾が完成したようだった。
僕は、それを見て「それは、どうするの?投げても爆発はしないでしょ?」と尋ねた。
「こうするのよ!」
と言って、彼女は空き缶を、窓の外に投げ、その缶に向かって銃の弾を一発打ち込んだ。すると、火薬に引火し、大きな音を立てて爆発をした。
その音に、気がついたのか「何だ!」と誰かが叫び、「こっちだ!」とまた誰か違う人が叫んだ。
「今のうちよ」とリンダは言った。
「さぁ、立って」
僕は、左足の感覚が無かったが、なんとかリンダに肩を借りて立ち上がった。
「行くわよ」
僕は、左足を引きずりながら歩き、敵の混乱に乗じて、立てこもっていた部屋を出たのだった。