第四話 「姉の影と言われた少年、実は規格外でした。」
王国全土の土地浄化結界強化の日。
大聖堂の周囲には民衆が集まり、その中には貴族などの上流階級の者たちの姿もあった。
――そして。
大聖堂の入口から現れたのは、王立治癒院最高責任者としての制服とローブを纏ったミレイユと、その 一歩後ろを歩くフレイだった。
フレイもまた、騎士団副団長と王立治癒院最高責任者の息子としての正装に純白のローブを羽織っている。
俺は最前列でその姿を誇らしげに見守っていた。
今日のフレイは、いつもより背筋を伸ばし、表情も引き締まっている。
純白のローブがまるで神聖な光そのもののように彼を包み込んでいた。
ミレイユもまた、凛とした立ち居振る舞いの中にどこか母としての優しさを滲ませている。
ざわめきが広がる。
フレイが儀式に加わることに、多くの者が驚きを隠せないようだった。
――その中には
事前に調べ上げた顔もある。
フレイを陰で中傷していた、貴族の子供たちだ。
彼らの表情には戸惑いが浮かんでいる。
♢
やがて、ミレイユは祭壇の前へ進み出た。
フレイもその隣に立つ。
視線の先にあるのは巨大な魔石。
ミレイユがフレイに最後の指示を出している。
フレイは一度だけ、静かに深呼吸をした。
この一週間、ミレイユから様々な事を学び、あいつはしっかり準備をしてきた。
知識も、そして心も。
――ならば
あとはやるだけだ。
(フレイ……みんなに見せてやれ)
心の中でそう呟く。
あいつの知性と秘められた魔力。
そのすべてが、今ここで明らかになる。
「フレイ……絵本の王子様みたい……」
隣でメリアがぽつりと呟いた。
思わず目元が緩む。
ああ、確かにその通りだ。
純白のローブを纏い凛と立つその姿は――まるで物語の中から抜け出してきたようだった。
「ぶぅー!あうー!」
腕の中のトールが身を乗り出す。
兄の姿に興奮しているのだろう。
「トールも王子様みたいだよ?」
「あーいっ!」
嬉しそうに手を上げるトールに思わず笑みがこぼれた。
♢
やがて、大聖堂は静まり返った。
すべての視線が祭壇へと集まった。
ミレイユが両手を伸ばし、魔石に触れる。
――瞬間。
淡い光が生まれ、それは彼女を通してフレイへと流れ込んだ。
フレイもまた、同じように魔石に手を添える。
次の瞬間だった。
爆発的な魔力解き放たれた。
光が大聖堂を満たす。
それはただ明るいだけではない。
暖かく、清らかで、触れるものすべてを浄化する神聖な光。
その中心にいるのはフレイだ。
小さな身体から、信じられないほどの魔力が溢れ出している。
まるで鼓動のように脈打ちながら、光は広がっていく。
大聖堂の隅々へ、そして王国全土へ。
息を吞んだ。
――これが、あいつの力か。
民衆から感嘆の声が上がる。
貴族の子供たちは呆然と立ち尽くしていた。
自分たちが「凡人」と呼んだ存在が、目の前で奇跡を起こしているのだ。
ミレイユはただ静かに微笑んでいる。
もはや魔石にもフレイにも触れていない。
導いたのは最初だけ。
あとはすべてフレイ自身の力だ。
光は天へと昇る。
空を見たし、王国を包み込む。
その中心にいるのは
フレイ・アークライト
俺の息子だ。
「フレイ……お前は、本当に……」
言葉が、続かなかった。
胸がいっぱいになる。
もう誰もあいつを凡人とは言えないだろう。
――そして
その光が王国の隅々まで行き渡った、その時だった。




