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プロテイン令嬢のざまあは物理〜王子様をワンパンで沈めてやります〜

ネタありきのおふざけ小説です。

気軽にサラッと読んでいただければ嬉しいです。


 この国には他国からみても非常に珍しい、ある風習があった。


『自身の尊厳を踏みにじる非礼に対しては、貴族の子女であっても一回の殴打が許される』


 その一回で非礼を受けた側は怒りを収め、双方に遺恨を残さないようにするための社交術であった。


 実際にさる素晴らしい素養を持った令嬢が、しかし婚約者であった上位の貴族に裏切られた際に「手打ち」を行い、潔くその場を去っていった。


 それが「手打ち」という言葉の語源になったとか。



 ***



 8歳の誕生日を迎えたその日、ゴーワン辺境伯令嬢のパンチェッタは前世の記憶を思い出していた。

 この世界とは文化も歴史もまったく異なる遠い場所『日本』

 彼女を夢中にさせた漫画やゲーム。その中に自分も…パンチェッタも登場していたような…?そして…


 もしかして、このままだと王子と婚約して破棄されて国外追放になってしまうのでは…?!


 どうせ酷い目に遭うというなら…そうだわ!絶対に一発で満足できるくらい思い切りぶちかましてやりたい!どうせだったら…



 私、王子様をワンパンで沈めてやります!!



 ***



 その日からパンチェッタの弛まぬ努力の日々が始まった。

 貴族の常識などは見ないふり。急に体を動かすことに目覚め、筋トレに励み、騎士になりたいなどと言い出す娘に両親や周りの人間は不思議に思ったが、そこは国境に面した辺境伯家。きっと魔物や他国からの侵略など、様々な脅威のあるこの領地を自ら背負って立つつもりなのだと非常に好意的に解釈され、周囲からのバックアップを受けられることになった。


 パンチェッタが前世の記憶を頼りにして発案、領地の専門家たちに協力してもらい開発した魔法薬プロテインは一時的な筋力の増強だけでなく筋肉の発達を促進する効果もあることから、はじめに辺境伯家所属の騎士たち、次に領地に滞在していた冒険者たち…といったように口コミで評判が広まり徐々に国の各地へ。発表から1年が経つ頃になると貴族たちとの社交による恩恵もあり、評判は王都に届くまでに。

 辺境伯家だけでは供給が追いつかなくなった分は信頼できる貴族家や商家にレシピを提供しライセンス販売に切り替え、魔法薬プロテインは「誰でも手に取りやすい金額に」というパンチェッタの希望を叶えつつ、辺境伯家に多大な利益をもたらす一大産業に成長した。


 それに目を付けたのが王家である。まだ幼い時分から高名な魔法薬の発案者であり騎士を兼ねるまさに文武両道で社交界にもその名が轟くパンチェッタ。

 第一王子の王子妃として添えれば、王家の国民人気も高まり、側妃の生まれでちょっぴり(?)足りないところがある第一王子を王太子に推すための強力な後ろ盾になるだろうと王は考えた。


 しかしそれを気に入らなかったのが婚約者である第一王子ナルキッソスであった。

 ナルキッソスは類い稀な美貌を誇る線の細い美少年であり、そんな自分に見合うのはプロテインなんていうよく分からないものを開発した頭でっかちな筋力バカ女ではなく、自分と並んでも見劣りしない…そう母のような可憐な美少女だと!!!(彼はナルシストなだけではなく自分と大変よく似た母を慕うマザコンでもあった)


 そんな主張を王家の婚姻の打診を受けてはるばる王都にやって来て初めて対面することになったパンチェッタ達ゴーワン辺境伯家一行の前で披露したものだから、場の雰囲気は一瞬で凍りつく。

 焦った王家ならびに関係者の取りなしも虚しく二人の縁談話はつゆと消え、辺境伯家は「鍛錬のためにダッシュで」馬車を引く馬をも萎縮するようなスピードで爆走し辺境の地に帰っていき、そして一番遅かった者には罰ゲームが下されるのであった。


 かくしてパンチェッタの努力が実り、婚約は未然に防がれ国外追放の運命は回避された。


 王都→辺境の強制参加のサバイバルレースに参加させられたパンチェッタはパンパンにパンプアップした足を侍女にマッサージしてもらいながらぼんやりと思う。



 まさか貴重な一国の王子ワンパンチャンスがなくなるなんて…



 ***



 筋トレの成果発表の場を失ったパンチェッタだったが、まあめんどくさいことになるより良かったわ!と切り替え、その後は父から依頼された新種の魔法薬カミハエールの開発に乗り出し、見事開発に成功すると大ヒット。(お父様の髪の毛はフサフサでいらっしゃるのに不思議だわとパンチェッタは思った)


 そんなカミハエールの技術を応用した植物の発芽・育成を促進するクサハエールを開発したところ、隣国の有する不毛の地を緑化することになり、その過程でドラゴン討伐を果たしてドラゴンスレイヤーの称号をもらったり、念願のマッスルコンテストを開催したり…

 大変充実した日々を過ごしたという。


 後年に残された家系図ではパンチェッタのことが下記のように記されていた。



 ゴーワン・パンチェッタ

  筋肉の守護者

  髪の女神

  緑化の先駆者

  ワンパンドラゴンスレイヤー


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― 新着の感想 ―
斬新な風習と転生者のパンチェッタが王子様をワンパンで沈めるという目標を掲げ、筋トレに励む設定がユニークで引き込まれました。プロテイン開発が大成功し婚約が回避される展開は予想外で面白かったです。最終的に…
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