表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

―いくつもの出会い―


 今日も一日、ご主人様に音楽を届けることができた。


 お風呂上がりの少し汗ばんだご主人様。

 すこしほの暗い部屋で、パソコンに向かうご主人様を見て

僕は少し、どきどきしていた。


 またお別れかな、また出会いかな。


 パソコンのモニタの光で美しく照らされるご主人様。

まだ乾ききっていない髪の毛が、少し色っぽい。 


 パソコンに僕が接続されると、ご主人様はいつも通り

僕の頭の中を整理する。


 ああ、ごちゃごちゃされるこの感覚は慣れることができない。

僕はいつの間にか、気絶したかのように機能を停止していた。


 頭をごちゃごちゃされた次の日、僕が必ずすること。

あ、まだ「ウルトラファイティン」さんがいる。

 「真夜中のゲール」さんもちゃんといる。

ひとりひとり、名前を確認して縁が途切れていないことにほっと一息つく。


 外側は朝の光が差すように痛いくらいの太陽の赤。

ご主人様はこれからどこかにおでかけかな。

 いつものように髪をひとしばりにして、今日もいつもの笑顔のご主人様だ。

 

 イヤホンをつけて、僕はいつでも準備万端。

今日もご主人様にたくさんの曲を届けるよ。


「やあ、はじめまして!」


 ふと振り返ると、爽やかな疾走感あふれるメロディと共に

現れた、新しい曲。

 僕は声をかけてもらったことが嬉しくて、笑顔で答えた。


「はじめまして!全力青年くん!」

「ちゃんと名前を憶えてくれたんだな!ありがとう!!」

「これから宜しくね!」


 どこか懐かしい雰囲気がする全力青年くん。

太陽みたいな笑顔に、つられて僕も笑ってしまったんだ。


「ご主人様、君のこと気に入ってるのかな?

 もう三回もリピートしてるよ!」

「へへ、曲からするとすごく嬉しいな!

 このままずっとこのメロディを送り届けたいもんだ!」


 全力青年くんの眩しいくらいの笑顔。


 ご主人様も今は、笑ってくれているのかな。

僕はご主人様のポケットにしまわれて、外側がよくわからない。


 たまに触れる、ご主人様の白い手が心地よくてぼけっとしてしまう。


 ああ、いけない。

次の曲が待っている。


「全力青年くん、またね!」

「俺の出番は終わりか!残念だがまた会おうじゃないか!」


 大きく腕を振って別れの挨拶をする全力青年くん。


「サウダーGさん!出番だよー!!」

「もう私ならここにいるわよ、ふふ」

「わっ、びっくりした!脅かさないでくださいよう」


 切れ長の目が特徴的なサウダーGさん。

どうして見た目は男性なのに、話口調は女の人みたいなんだろう。

 僕は不思議でたまらないけれど、聞いたら失礼かなと思って聞いていない。


 先ほどの全力青年くんとは全く違った、切なく悲しいメロディ。

泣き虫な僕はたまに泣きたくなっちゃうんだ。


「まーた新入りがきたの?」

「うん!全力青年くんていうすごく良い曲だよ!」

「全力青年くん……ねぇ……」


 サウダーGさんがすこし困惑したような表情をしている。

 

 僕はなにか悪いことを言ってしまったのかと

あたふたとサウダーGさんに話しかける。


「僕、なんかサウダーGさんに悪いこと言ってしまったかな

 ごめん、僕……不愉快にさせるつもりじゃなくて……」

「ん、勘違いしてるわね。

 不愉快になんかなってないわよ、心配性ね」


 ふふふ、と笑みを零した顔を見て僕は安堵した。


「でもさっき、難しい顔してなかった、かな?」

「ああ、なんでもないの。

 私の気のせいだから気にしなくて良いのよ。」


 妙にひっかかる言い方なんだよなあ。


 でもこれ以上話を聞いても、たぶんサウダーGさんは

何も話ししくれないだろうなと、なんとなく空気でわかった。


「また新入りが来たら私に教えてね!

 私のほうが良い曲だって教えてあげて、ね」


 ウィンクをして、そんなことを言うから僕は笑ってうなずいた。

サウダーGさんは本当に良い曲なんだよなあ。


 今もなお流れるメロディに心を揺さぶられる。

大人びた歌詞が僕には理解できないこともあるけど

 なんだか少し、背伸びした気分になる。


「そろそろ次の曲の出番じゃないかしら?」

「え、あ、もうそんな時間!?」

「ふふふ、また今度ゆっくりお話ししましょ」


  僕はランダムに再生される頭の中から次に流れる曲を呼ぶ役目だ。

 ついついおしゃべりに夢中になってしまうと、たまに遅刻なんてことがある。


 遅刻するとご主人様は、いそいそと僕を取り出して

か細い指で僕の外側を確認して、どこも壊れていないかチェックする。

 僕が曲を流し始めると、ご主人様は安心してよくため息をつく。


 うーん、せっかくご主人様が僕を頼ってくれているのに。

ちゃんと役目を果たさなきゃ。


「未来への砲口さん、出番だよー!」


 サウダーGさんに大きく手を振って「未来への砲口」さんを呼ぶ。


 個性豊かな曲たちに囲まれて過ごすこの環境は

僕はとっても楽しくて仕方ないんだ。

 出会いも、別れもあるけれど僕は僕なんだ。


 ご主人様も楽しんでくれてるかな?


 すこしでも、笑顔を見せてくれたら良いな。


その笑顔の裏に、少しでも僕がいてくれたら良いな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ