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―僕たちの役目―

更新頻度が不定期なので、申し訳ないです。

短編続きなのでストックが溜まり次第、更新予定です。


今回もぎりぎりな曲名ですが目をつむっていただければと。


 今日も僕は元気に働いている。

大好きなご主人様のためにいろいろな曲をお届けしている。


 でもなんだか最近、泣いている姿を見ることが多い。

なにかあったのかな、聞きたいけれど僕にはそんなことできっこない。


僕は、ただのMP3プレイヤーなのだから。


 近頃よく僕の前に現れる曲。

僕はこの曲がはっきり言って好きじゃない。

 なんでかっていうと、その曲が現れるとご主人様の大きな瞳から

ぽろぽろと涙があふれていくんだ。


 僕はご主人様に笑顔になってほしい、だからその涙を流させる曲は……

なんていってたら、僕の目の前に黒い影が現れた。


彼だ。


「あからさまに、嫌そうな顔するね」


 そういうと、彼は僕の隣に座り込んでメロディを奏でる。

ご主人様が呼んだんだ、僕にはどうすることもできない。

 顔がこわばるのが自分でもよくわかる。


「僕、君が嫌い……」

「ははっ、それまたなんでだい?」

「NATUMIさんは、その、悲しい曲でご主人様を泣かせるから」

「なるほどなぁ」


 ふぅ、と一呼吸おいてNATUMIさんが声を発する。


「誰にだって泣きたい時はあるもんだよ」

「泣きたい時……?」


 ぽかんと、不思議そうにしているとNATUMIさんが立ち上がり

僕の頭を優しく撫でた。

見た目とは違う、ちょっと乱暴にみえるのにすごく優しい撫で方。


 僕は目を閉じて、NATUMIさんのメロディを改めて聞いた。

力強い歌声に、絡んだ美しいピアノの音色。


 どうしてだろう、僕もご主人様のように

溢れる涙を止められない、すごくすごく、切ない気持ち。


 ご主人様と僕は、今おんなじ気持ちなのかな。

どこからともなくやってくる涙を拭い、深呼吸。


「……僕、やっぱり君のこと好きになれない。」

「正直だねえ」

「君を聞いていると切ないし、苦しいし、もどかしいんだ」

「そういう風に作られたから、としか言えないんだけどねえ」


 まあいいさ、と言葉を零してNATUMIさんが姿を消した。

また次会った時、僕はどんな気持ちで向き合えばよいのだろう。

 そういう風に作られた、の言葉に自分がすごく勝手なことを言っていた事実に

恥ずかしくてまた涙があふれた。


 僕もご主人様に曲を届けるのが仕事だ、それがどんな曲であっても。

ご主人様の期待に沿える働きをしなくっちゃ。


「泣きたい時……」


 ぽつり、唇が言葉を残した。

泣きたい時に、僕のことを傍に置いてくれているご主人様。

 

 どんな時でも一緒にいられるのかな、ご主人様にそう思ってもらいたいよ。

日に日に僕の欲求が増えている気がして、いけない事だと自分を叱咤する。


 一緒にいられる、この時間を大事にしなきゃ。


「くらーい顔してるね!」

「わっ!?ウルトラファイティンさん!」

「泣いた、のか?悲しい気持ちなんて俺がふっとばしてやるよ」


 目の前に現れたウルトラファイティンさん。

彼はまっすぐなメロディで、いつも僕とご主人様を元気づけてくれる存在。

たまに現れて、僕のことを気にかけてくれるお兄さんみたいな存在。


 何もない場所にむかって大きくメロディを流す彼の言葉が力強くて

僕は泣いていたなんてことを忘れて、心にひっかかったNATUMIさんの言葉も忘れて

ウルトラファイティンさんに笑みを向けた。


 僕はどんな時も、なにがあっても僕のことを支えてくれる曲たちが大好きだ。

NATUMIさんは……まだ、僕の中でもやもやしているけれど

それは僕がまだ幼稚だからなんだろうなあ。


「俺にはな、役目だと思っているんだよ」

「役目?」

「そう、俺たちにしか、曲にしかできないこと」


 曲にしかできないこと、とはなんだろう。

ご主人様の見えないところを支える力がある、曲たちのことなのかな。


 僕だけじゃなにもできない、そんな時に僕の前に現れてくれる曲たち。

それは本当に誰にでもできることじゃないから、すこし羨ましくなる。


「ただ、俺たち曲が元気いっぱいメロディを奏でられるのは

 ご主人様だけの力じゃない、お前の力も必要なんだぞ?」


 その言葉が、僕の胸に深く突き刺さって離れない。


「僕も、僕の役目を果たせてるかな……?」

「当たり前だろ!うじうじいうな!お前にしかできないことだってある!!」


 僕にしかできない事……。

この前みたく、「愛が勝つ」さんを呼んだりしたことかな。

 あの時のご主人様は本当に辛そうで見ていられなかった。


 僕に……僕にしかできないこと……。


「ありがとう!なんとなくわかった気がする!!」

「おう!お前はお前でいいんだ、そんな深く考えるな」

「本当にありがとう、ウルトラファイティンさん!!」


 僕のもやがかかった心が溶けていくのを感じる。

僕も必要とされているんだ、ご主人様に、曲たちに。


 少しでも良いから皆に恩返しがしたいな。


 でもその前にNATUMIさんに嫌いって言ったことを訂正しなくちゃ。

NATUMIさんはNATUMIさんの役目をしてるんだもんね。


「僕も、頑張るよ」


 ぽつりと零した言葉にウルトラファイティンさんがにっこり笑って

その笑顔につられて、僕も泣きそうな笑顔をみせたんだ。


 僕に役目を与えてくれてありがとう、ご主人様。


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