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―内側の4分間―

実質二話目です。

少しでも頑張るMP3プレイヤーを見て頂ければと思います。

いろいろと曲名が怪しいですが、目をつむっていただければと思います。

 今日はご主人様はお休みの日だ。

電源が入ったばかりの僕はまだ頭がぼやぼやしていて

でも僕に触れるご主人様の指が、僕の頭を撫でるかのように

優しく振れた指先が、とてもうれしくて愛おしい。


 TVの音声が、お昼時を告げる。

どうやらもう、お昼ご飯をすませてごろごろするところらしい。

 お休みの日は、僕と一緒にまったり過ごしてくれると嬉しいなあ。

なんて、そんなわがままは言わないよ。

あくまで僕はご主人様のMP3プレイヤーなんだから。


 窓がぽつぽつと音を奏でている。

だんだん激しさを増して、10秒ほどで土砂降りの嫌な音がする。

 こういう雨の強い日のご主人様はいつものあの曲を流すんだろうなあと

勝手に予測したりして……。


 あ、やっぱりこの曲を選ぶんだね。


「あー俺が呼ばれたってことは、外は雨?」

「そうだよ!久しぶり、雨のメドレー君」

「久しぶり……?」

「うん、最近晴れが続いていたから」


 ちょっと面倒くさそうにメロディを奏でている雨のメドレー君。

僕はこの歌声を聞くと、どうしてか涙がでそうになるんだ。

どうしてだろう、雨の日はどうも僕は本調子ではないんだ。

 外の雨につられるかのように僕の頬に涙が伝った。


「こらこら、泣くな泣くな」


 僕の頭をがしがしと大雑把に撫でてくれている。

その乱暴さとやさしさに僕は胸がいっぱいになってもっと涙が出たんだ。

 この時間もこの涙もこの温かい手の感触も

一瞬で消え去ってしまうことを思うとぞっと怖くなった。


考えちゃいけない、考えたくない。


僕の仕事は悩むことじゃない。

ご主人様に少しでも幸せな時間をつくるために僕がいるんだから。


自分の頬をばちんと叩いて、深呼吸。


「あーもう雨のメドレー君の出番が……」

「また雨が降ったら会えるだろ?」

「そうだけど……」


 皆は知らないんだ、僕がすべて忘れちゃうこと。

最初は気のせいかと思っていたんだ、曲の消去。

僕の物忘れのせいかと思っていたんだ。


 でも本当は違ったんだ……。


 気が付かなければよかった。

忘れる、という行為のことを。

 でもそういう風に作られた僕は、それに抗う手段もない。

ましてやご主人様には笑顔でいてほしい。


 僕が、我慢すればきっと皆幸せだ。


「次会うとき泣いたら、俺はメロディを奏でないからな」

「ええええ、それは困るよう」


 またね、という僕の言葉を聞かずに

はは、と乾いた笑いを残して愛のメドレー君の姿とメロディが消えた。

 4分なんて、あっという間に流れてしまうから会話を楽しむ余裕もない時もある。

でもまた雨が降れば、また愛のメドレー君に会えるだろうな。


また会いたいな、今度は泣かないよ。


ふと振り返ると、僕の目の前には見たことがない曲がいた。


 この前、僕の頭の中に入ってきたのはこの子か。


「はじめまして!えっと……」

「真夜中のゲールといいます、ふふ。

 はじめまして、かわいらしいぼく」

「か、からかわないでくださいよう!!」


 真夜中のゲールさんはまだ頭の中の整理のついていない僕の姿をみて

くすくすと笑みを零す。

僕の頭に確かに記録されている、本当につい最近だ。

 新しい曲を招き入れると、最初は戸惑うけど約4分間仲良くできる。

僕とそりの合わない曲もあるけど、まあそれは良い。


「きれいな歌声……」

「自慢なの!でもちゃんとメロディラインも綺麗に作られているわ」


 自信満々な真夜中のゲールを見て、さっきの涙も忘れてくすりとほほ笑む。

ご主人様もこの歌声に惚れ惚れしているだろうなあ。


 曲たちと関われるこの4分間は、僕にとってとても大事な時間。

僕が笑顔でいられるのは、ご主人様と曲たちのおかげなんだ。


 だからたくさんの曲を作ってくれてありがとう。

僕と僕のご主人様はいつでも聞いているよ、忘れないで。


「聞き惚れてるのね」

「うん……!僕、君のこと好き!」

「あらあら、じゃあまた会った時はベースラインもちゃんと聞いてね」

「あはは、がんばる!」


 またね、と声を発した。


真夜中のゲールさんは、笑顔で僕の前から消えていった。

 次の4分間が、楽しみな気持ちでいっぱいになった僕は次の曲に呼びかける。


「出番だよー!ウルトラファイティンさん!」


 僕の声、ちゃんと届くといいな。

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