-98話ー ルぐレス帝国到着
ルグレス帝国、帝都ソラリスに向かう馬車の中。
砂漠を越えて、山越え谷越え台地越え、
やって来ましたルグレス帝国。
「本当に大変だったわ~山では、
飛竜に襲われて食われそうに成るわ、
ザムド台地では、
グリフォンに襲われて死にそうに成るわ、
いやいや、其れはもう大変でしたよ~」
『中々、スリルの有る旅だったっス~』
「リリーもリリーだよ、
もっと早くにエレンに竜骨魔剣渡しとけば、
あんなにピンチに成る事も、無かったんだからね」
『御免っス、まだレベルが追い付いて居無かったっス~
レベル17じゃ、とても使い切れないと思ったっス~』
「レベルの問題じゃ無いよ~使えなくても、
めちゃくちゃ切れるんだから、
結界シールド張って居るんだから、
やられる事無いんでしょう~」
『そうっスね~此方がやられ無いんスから、
徐々にモンスターのダメージ貯めて行けば、
何時か倒せるっスけどね~
心に大分ダメージは負ったみたいっスけど、
何とか生き延びて此処迄来れたっス~
最初は鉄剣で、其れはもうちびちびと、削って行ったっス~』
「いやいや竜に鉄剣って、ダメージ無いから」
『でもダーリンだって、竜牙短剣持ってんのに、
加勢しなかったじゃ無いっスか~』
「うっ・・・・其れは・・・・
まあ、エレンもレベル35に成ったし、良いんじゃね?
うん、もう立派な魔法剣士だね、いよっ!カッコ良いね」
『・・・・・・・・』
「・・・・御免なさい・・・・」
『・・・・で・・・・』
「・・・・怖くて動けませんでした。御免なさい」
『分かれば良いっス、でも頑張ったエレンには、
もう少し優しくするっス、良いっスね』
「は~いって、エレンこんなに揺れる馬車で、
良くこんなに寝れるな~俺はもう、尻が痛くって」
『まあ、精も根も尽き果てて居るっスからね~
誰かさんのせいで~
其れに、こんな人里で飛ぶのは目立つっス~
のんびり旅をするのも良いもんっス~』
「そうだね~でも、エレン凄くうなされて居るよ~良いの~」
『うなされて、うんちとおしっこちびるより、遥かにましっス』
「・・・・御免なさい・・・・」
『分かれば良いっス』
リリーの結界シールドは、神竜の一撃をも防いでしまう。
例えモンスターの攻撃は防いでも、人の心はそんなに強く無い、
エレンの心に恐怖と言う、深い心の傷を作ってしまったのだ。
馬車の休憩の時と、食事の時と夜営の時以外はこうして、
殆ど寝て居る。まあ俺も、夜営の時はテントで寝て居るのだが、
悪夢の為にちびるのだが、おねしょじゃ無いぞ~
馬車の中では眠れない。漏らすのが怖くて眠れないんじゃ無いぞ~
俺が独り言の様にリリーと話をして居ると、
「ねえ、あの子ずっと独り言、話してるよね~」
「そうよね~怖いよね~あっ!こっち見た!」
ぷいっと目を逸らす二人の旅人のお姉さん、
「お母さん、あのお兄ちゃんずつと一人でお話して居るよ~」
「ボク知ってる~あれ妄想って言うんだよ~」
「しっ、見ちゃいけません」
と、二人の子供の親子連れ。
そう、馬車は乗合馬車なので、俺達の他にもお客さんが居るのだ。
俺達は長い苦難の旅の末、ようやくルグレス帝国の首都、
帝都ソラリスに辿り着いたのだった。
市壁門の所では、大勢の旅人が、列を作って居り、
入門審査を受けて居た。
「あちゃ~日が暮れる迄に、ソラリスに入れそうも無いね~」
「そうですわね、門外の宿に一泊して、明日朝から並びます?」
「其れしか無さそうだね~
此のメダルが使えたら良かったんだけどね~」
と、アンとジュリアナちゃんに貰ったメダルを出すと、
「あら其れ、帝室の紋章と、
ウインスレット家の紋章じゃ有りません事?」
「エレン、此の紋章知ってんの?」
「貴族家の者であれば、知らない人は居りませんわ。
では、此方から参りますわよ」
「参りますわよって、あっち何か綺麗に装飾されて居て、
誰も並んで居無いんですけど~」
「当然ですわ、あれ貴族門ですもの、
魔女の紋章は、大袈裟に成りそうですので、その、
帽子の紋章のメダルを用意して置いて下さいな」
「って俺、貴族じゃ無いんですけど~」
「私は貴族家の出なので、問題ありませんわ、
モモちゃんは従者って事で、良いですね」
「は~い」
エレンは派手で豪華な装飾の門まで行くと、門番に、
「門番さん、私くしエレノワ、スタンダール。
スタンダール伯爵家の6女ですわ」
門番は、冒険者姿のエレンと俺の姿を訝しげに見やると、
「お嬢さん申し訳ないが、身分を明かすものはお持ちであろうか?」
「勿論ですわ、モモタロウ私の友人である、ケイト。
ケイト、ウインスレットのメダルを此れに」
俺は流されるままに、
「ははっお嬢様、此れに」
と、魔女の帽子の紋章の入ったメダルを門番に渡すと、
門番は、メダルに魔力を流し込んで、
「うむ、お嬢様疑って申し訳御座いません。
此れも、役目で有ればなにとぞご容赦の程を」
エレンは、にっこりと笑って、
「お役目ご苦労様ですわ。其れと、此の従者も一緒で宜しいかしら」
「勿論で御座います。スタンダール伯爵令嬢様。
おい、門を開けて差し上げろ!」
「ははっ!」
大きな立派な門が開くと、
中から、夕焼けに染まる街並みが見えて来た。
「ささっ、どうぞお通り下さい」
俺達が門を潜ると、直ぐに大きな円形広場が有り、
周囲を商店が囲んで、その内側には物を売るバザールの、
テントが立ち並んで居り、多くの人々が行きかって居た。
「さてモモちゃん先ずは、宿を取りたいのですが、
時間も夕暮れ時で一杯でしょうし、
私くし現金が有りませんの、
宿代は大丈夫で御座いますか?」
「お金なら、全然問題ないけど~
貴族専門の宿なら空いて居るかな~?」
「貴族専門って、幾ら掛るか分かって居ますの?」
「いや、分かんないけど~白金貨で足りる?」
「白金貨~!そんなに高級宿では有りませんわ、
王族じゃ有るまいし~
高級だからと言って、食事が美味しい訳でも有るまいし、
装飾が豪華で、部屋が広くて、
安全なのが取り柄ですわね。
まあ、二人で金貨一枚が相場ですわ。
食事はモモちゃんの出して下さる物が一番美味しいですしね、
まあ、居間付きで寝室が二つと風呂付と言うのが、
妥当で御座いますわね。
では、宿に付いては私くしに任せて下さいな。
モモちゃんはお金だけ出して頂ければオーケイですわ」
「は~い、お任せしま~すっ」
俺達は、大道りを唯ひたすら歩いて行き、
貴族街の市壁を又、
ジュリアナちゃんのメダルを使って抜けて、
宿に付いた頃には、とっぷりと日が暮れていた。
宿の受付の品の良いお姉さんに訝しがられ乍らも、
3日間の滞在を告げて、お金を先払いしてチェックインした。
部屋は、一日、二人で金貨一枚の部屋を選んだ。
居間付きの、寝室2部屋で風呂付の食事無しで有る。
食事の無い分、居間が広い部屋を確保する事ができた。
「旅の汚れを落としたいので、
早速お風呂の用意をして頂けるかしら」
「かしこまりましたわ、お嬢様。
では、ごゆっくりお寛ぎ下さいませ」
「はい、宜しくお願い致しますわ、ではモモタロウ、
参りましょうか」
「は、はい、お嬢様」
俺達は、2階の部屋に案内されて、入った。
「何此れ、広いんですけど~」
「ふむ、まあまあですわね。其れより、モモちゃんお腹減った~」
「さっき迄のお嬢様は何処へ消えた~!」
テーブルに突っ伏したエレンは、片手を振り乍ら、
「あんなのは、演技に決まって居りますわ、
貴族社会何て社交辞令ばかりですもの~気を緩めると、
こんな物ですわ、
私くしなんてマシな方ですわよ、
私の御姉様なんて、姉妹だけだと、
直ぐにおならするんですのよ」
「う~ん、聞きたく無かった」
エレンは又、手を振り乍ら、
「貴族令嬢何てそんなもんですわ。
ぷぅ~あら、御免あさぁせ~ってなもんですわ
~そ~れ~よ~り~
モモちゃんご飯~お腹減ったよ~ですわ」
「夢も希望もね~な~
はいはい、ご飯にしましょうかね」
俺は作り置きの餃子と天津炒飯と、唐揚げと白湯スープを
ストレージから取り出して、テーブルに並べて行き、
「「頂きま~すっ」」
「んん~美味しいですわ~モモちゃ~ん此れはきっと、
ビールに合いますわ~
ビール飲みたい、ビール飲みたい、ビール飲みたい!」
「そうだね~もう旅も終わったし~お酒、解禁で良いか~」
旅の期間中危険が多いので、禁酒していたのだが、
セキュリティーの高い、高級宿なので飲酒を許可する事にした。
「「カンパ~イ!!」」
「ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~ひょいパクっ
う~ん、美味しいですわ~今までの苦労が報われますわ~
ごきゅごきゅごきゅごきゅ、ぷっは~ひょいパク、もぐもぐ」
「ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~う~め~生き返る~
ひょいパクつもぐもぐ、餃子、ビールに合うわ~
ごきゅごきゅごきゅごきゅ、ぷっは~」
「ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~ひょいパクもぐもぐ、
所でももちゃん、明日なのだけれど、
ひょいパクもぐもぐ、
ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~
香辛料の市場価格を調べに行きますわよ。
ひょいパク、もぐもぐ」
「ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~ひょいパクもぐもぐ、
そうだね~序でに、空き家を探してみようか?
拠点が有った方が、色々動き易いしね~ごきゅごきゅごきゅ~」
「あ~ら、モモちゃん凄いお金持ちですのね、
ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~ひょいパクもぐもぐ、お代わり~」
「あ~はいはい、うん、何でか一杯あるよ~
え~っとお代わりね~ほいっ」
ストレージから、冷えたビールをたくさん出すと、
「わ~い、プシュッ、ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~美味ぇ~
拠点ですか~出来たら、魔法学校の近くが良いですわ~
ひょいパクっ、ひょいパク、もぐもぐもぐもぐ」
「プシュッ、ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~
ひょいパクもぐもぐ、
魔法学校って何処に有んの?ごきゅごきゅごきゅ~」
「ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~ひょいパクもぐもぐ、
生徒は、お金持ちの貴族ばかりですので、入学金高いし~
貴族街の外れに成りますわ、ごきゅごきゅごきゅ~」
コン、コン、
「ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~ひょいパクもぐもぐ、
何方様ですの~」
「はい、お風呂のお湯を張りに来ました~」
「鍵は掛けて居ませんから、どうぞお入りに成って~
ひょいパク、もぐもぐ」
「は~い、では、失礼しますね~」
魔法使いの格好の女の子が入って来て、風呂場に、
「ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~ひょいパクもぐもぐ、
お湯を持ってくるんじゃ無くて、魔法でお湯を張るんだね~
ごきゅごきゅごきゅ~」
「ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~ひょいパクもぐもぐ、
そうですわね、
ルグレス帝国は魔法使いが多いですから、其れに、
魔法学校も有りますから、
アルバイトかしら、ひょいパク、もぐもぐ」
「ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~ひょいパクもぐもぐ、
所で、チップあげなくて良いの?ごきゅきゅごきゅ~ぷっは~」
「ひょいパク、もぐもぐもぐもぐ、
そんなの、大貴族位しかしませんよ、
お金を出してお湯を入れて貰って居るのですし、
何か、特別な事をして貰ったなら別ですけれど、
ひょいぱく、もぐもぐ」
「ごきゅごきゅごきゅ~ぷっは~ひょいパクもぐもぐ、
ふ~ん、そうなんだ~ひょいパク、もぐもぐ」
「旦那様~お湯を張り終わりました~」
「は~い、ご苦労様~」
と、俺は魔法使いの女の子の所へ行くと、
「此れ、暇な時にでも食べてね~」
とストレージから、チョコバナナを出して渡すと、
「凄く、美味しそうなお菓子ですね、有難うございま~すっ」
と、喜んで帰って行った。
「モモちゃ~ん、お風呂に入ろ~」
「一人で行といで~」
「もう、モモちゃんのいけず~」
「はいはい、俺も後から入るんだから、風呂で寝ないでよ~」
「は~いっ、ひっく」
此の後結局、エレンは風呂で寝てしまい、後始末が大変だった。