-96話ー アンのお目付け役 2
昨日から此処、砂漠と海の狭間の海岸に、
妙な珍客が・・・・
一人はどこぞのお嬢様らしく、
一人で服も着れない、自称15才、
見た目10才位の少女で、
そして今、目の前で黙々とご飯を食べて居る、
見た目二十歳位の、
ジュリアナに出て居そうなワンレンのお姉さん。
自称、お目付け役なのだそうだ。
此の二人何と飛行魔法を操れる、
魔法使いだそうだって、飛んでたし
何でも飛行魔法は上級魔法で、
其れを操れる者を魔導士と呼ぶらしい。
ご飯を、もりもり食べる姿を見ると、
とてもそうとは思えないのだが・・・・
「ジュリアナちゃん、良くこの結界が分かったね~」
「はい、アン様の魔力を追いかけてずっと、
飛んでいたのですけれど、
もう魔力切れが近くって、低空飛行して居ましたら、
アン様の魔力と足跡が、有りまして良く見てみたら、
途中で足跡が、途切れて居たりしてたんで・・・・
アレレノレ~?っと見て回って居ると、
何やら、おでこをぶつけてしまって、
探って居りましたら、御主人が現れた物ですから」
「ふ~ん、そうなの?で、
ジュリアナちゃんはアンの弟子?」
「もぐもぐ、いいえ、違いますわって私、
ジュリアナと言う名前では御座いません。
私はアン様の筆頭従者で、
ケイト、ウインスレットと申しますわ、もぐもぐ、
親しい者からは、ケイトと呼ばれて居ますわ、
もぐもぐ、美味しいですわ。」
「そうなの?じゃあ、ジュリアナちゃんと言う事で、
もう合う事も無いだろうし、俺モモタロウ、冒険者、宜しくね」
「もぐもぐ、所でアン様は?もぐもぐ」
「うんさっきも言ったけど、昨日来て、
風呂入って、食うだけ食ったら、
泊まって朝飯食ったら、さっさと帰ったよ~」
「そうですか、安心しました。
私もさっさと帰りたいのですが、
魔力がもう、休み休み飛んで居たのですけれど・・・・
魔力が回復するまでの間、
少し休ませて頂いても、宜しいかしら」
「其れは構わないけれどさ~、面倒臭いから、
後で魔力、トランスファーで、充填させて上げるから、
さっさと帰ってくれる。
もう飛行魔法も、アンに教わったし~」
「ま、まっ、まあ~こんな、
良い女が泊って上げると言って居るのに、
何て、失礼なのかしら、もぐもぐ」
「い、いや、リス見たいにほっぺ膨らませて、
色気と言われてもね~
せめて、
ほっぺたに付いたご飯粒取ってからにしようよ」
「もぐもぐ、アン様に飛行魔法教わったって、
上級魔法をそんなに簡単に、
覚えられる筈が無いでしょう。
此の私でさえ3年掛かったのですよ!もぐもぐ、
其れにアン様は天才です。
人に教えられるとは思いませんが?もぐもぐ」
「天才かどうかは知りませんけれど、
アンは、師匠と呼べと言ってましたよ~」
「もぐもぐ、其れは羨ましい。
アン様に師事して欲しいと、今迄に色んな方が、
来られましたが、誰一人弟子に成れた人は居りませんのよ、
私も含めて、もぐもぐ、
アン様は天才なので、教えるのが苦手なのですもぐ、もぐ」
「弟子と言っても俺、攻撃魔法レベル1で、使えないですがね」
「へっ?もぐもぐ、で、何で飛べるの?飛行魔法なんて、
魔法レベル30以上の上級魔法ですのよ?もぐもぐ」
「俺はヒーラーですからね、其れでじゃ無いですかね~?」
「もぐもぐ、世の中広いですわね~珍しい、
冒険者のヒーラーですか?
ヒーラーは教会にほぼ牛耳られて居ますから、もぐもぐ、
きっと重宝されますわねもぐもぐ、
仕官の道も有りましてよ、もぐ、もぐ」
「アンも言って居たけど、そうなんだ?」
「そらそうでしょうよ、
ポーション何て高価ですからね、もぐもぐ、
パーティーに1人ヒーラーが居たら、
費用対効果が違いますからね、
冒険者にしても軍隊にしても、
需要は多いですわ。もぐもぐ、
教会からヒーラを借りるのも、高いですからね、
まあ、教会の力が強い理由でも有るのですけれど、
もぐもぐ」
「そうなんだ~俺、食いっぱぐれる事は無さそうだね~」
「もぐもぐ、そうですね、もしモモタロウさんが、
ハイヒールでも使えたら、
其れこそ、
王侯貴族の生活も夢では無いですよ。もぐもぐ、
ハイヒールを使える術者は、片手の指位しか居りませんし、
皆教会に囲われて居るので、超貴重ですね。もぐ、もぐ」
「ふ~ん、そうなんだ~」
「もぐもぐ、でもその時は気を付けないと、
教会に消されかねませんから、もぐもぐ」
「えっ!何で、理不尽じゃね?」
「もぐもぐ、そりゃあ~そうでしょう。
教会の影響力のバランスが崩れて、
しまいますもの。もぐもぐ」
「怖ぇ~教会、マジ怖ぇ~」
「もぐもぐ、其れが、
世の中の力関係と言う物ですわ。もぐもぐ、
でも、モモタロウ様の料理の腕であれば、
成り上がれる事、間違い無いですね。
凄く美味しいですわ。もぐもぐ」
「いや俺、目立つのは嫌だから、
成り上がりたく無いから」
「あら勿体ない。
もし、成り上がりたいのであれば、もぐもぐ、
何時でも力に成りましてよ。
其れはもう全力で、もぐもぐ」
「有難う。気持ちだけ、有難く受け取っておきます」
「はい、もぐもぐもぐもぐもぐもぐ、
私達貴族は其れはもう、美味しい物に飢えて居りますの。
其れはもう、お金には糸目を付けずに、
有る時は危険さえ顧みないで、命懸けで、もぐもぐ、
更にその行為その物が、
貴族間の土産話や冒険譚と成って広まります。
其れで、英雄視される事を貴族は喜ぶわけです。もぐもぐ、
アン様はある日、カニが食べたいと申されまして、
飛空艇に乗り込んで、遠い此の砂漠に来て、
此の先のオアシスにキャンプを張ったのですが、
数日前に行き成り、
か~に~と叫びながら飛んで行ってしまいました。
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
「・・・・う~ん・・・・
アンって、もしかしたら感が良いの?」
「もぐもぐ、そうですね~
預言者に成れる位には良いですかね~もぐ、もぐ」
「あっ・・・・そうなんだ~」
「あ、でもアン様は女の感と、
言い張って居ますけれどね、もぐもぐ」
「アハハ・・・・そうなんですか~」
「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ、?」
「しかし、良く食べるよね~太るよ~」
「魔法使いはカロリーを消費するので、
大丈夫です。もぐもぐ、
そうきっと、大丈夫だと思いたいですわ~もぐ、もぐ」
「ああ、其れはそうか、魔法で、大量に魔力使った後って、
お腹減るんだよね~」
「もぐもぐ、そうでしょうそうでしょう、モモタロウさん、
貴方中々、ショタ顔で可愛いですわね!もぐもぐ、
ごくごく、プッハ~此のお茶も
冷たくて香ばしくて、美味しいですわ~何てお茶ですの~?」
「麦茶ですよ~此れは、此の世界でも作れるか、
大麦を焙煎した物を煮出して、
冷やした物で、体にも良いんですよ~」
「此の世界??まあ、帰ったら早速作らせましょう!」
ご飯を食べ終わったお姉さんは、
ワンレンの真っ赤なドレスが弾けそうな位、
お腹を膨らませていたた、
ジュリアナちゃんの前にトロピカルフルーツサンデーを、
どん!と置くとジュリアナちゃんは、眩しそうに、
「な、何ですの~此の眩いばかりの、食べ物は~!!
はち切れる位、食べるんじゃ無かったですわ~!!」
「あっ、御免、もう食べれ無い?
食べれ無いなら、仕舞うけれど?」
「やめて~!こんなに、美味しそうな物~
2度と出会えないかも~いいえ、絶対、出会えないですわ~
死んでも食べますわ~」
此の後、俺は、紅茶を入れるのだが、
大変、面白い・・・・もとい、奮闘する、ジュリアナちゃんに同情した。
「ふぅ~ふぅ~ふっ、ふっ、ふっ・・・・ふぅ~
た、食べ切りましたわ。モモタロウさん、暫く私には触れないで下さいね!
パンクするかもですわ。苦しく幸せなのです~
あっあっあ~っ、鼻から、鼻から出そう~
此のお茶も素敵ですわ。美味しい~ふ~っ、ふ~っ、
耳からお茶が出そう~あっ、でも、気持ち良いかも~
何か、新しい境地に至った様な~ア~ン」
「う~ん、色んな意味でダメなやつだ、
こいつは、色気無いしな、うん」
「ぜぇ~はぁ~、ぜぇ~はぁ~、
ひぃっ、ひぃっ、ふ~ひぃっ、ひぃっ、ふ~」
「魔法の袋に、良く冷えた麦茶の入った水筒と、おやつも入れとくからね~
お腹が減ったら食べるんだよ~」
「モモタロウさん、
何か私を早く追い出したがっている様な気がするのですが?」
「だって~何か、面倒臭いんだも~ん、色気無いし~」
「私だって、こんなにお腹が減って居無ければ、
そこそこ良い女なんですよ~
結婚話も沢山有ったし、仕事優先で全部断りましたけれど~
もう、22才で行き遅れですけど~」
「え~っ本当~?派手だし、ジュリアナだし~ね~」
「ジュリアナって、何なんですか~!」
「う~ん、ジュリアナって~色っぽいお姉さんが踊る~?」
「色っぽいお姉さん・・・・ふん、まあ良いでしょう
むふふふふふ・・・・・・・・
所で、冷たい麦茶って、
魔法の袋に入れて置いたらぬるく成るのでは?
お菓子や、お弁当は大丈夫ですの?」
「ああ其れね、
袋の中時間が流れて無いから、心配ないよ~」
「ひぃぇ~っ!心配ないよ~じゃ有りません。
この魔法の袋伝説級じゃ無いですか~!世界に幾つも無い、
お宝じゃあ無いですか~
そんなお宝を見ず知らずの、女にポンとあげる何て、
何考えて居ますの~死ぬんですか~?
あ~っ分かった~狙いは私の、此の男好きのする体なのね、
そうだわ、きっとそうに違いないわ、決定~!
動けない私に、あんな事や、こんな事を
・・・・キャ~えっち~変態~!
分かりました。私の事はもう諦めましょう。動けないし、
好きにすると良いですわ。
でも心迄自由に出来ると思ったら大間違いですよ!
私の体は、好きに出来ても、
心迄は自由には出来なくてよ、
はあはあはあ、何か興奮して来ましたわ。
自由を奪われ、悪の魔法使いの坊やにいたぶられる、
魔法少女とか・・・・
あんな事や、こんな事をされて、
ぼろ雑巾の様に、奴隷商人に売られる乙女とか、
良い~良いぞ~うぅぅ・・・・くっころ~!」
「あのね~ジュリアナちゃん、
今そんな事したら俺が如何成るか位、予想出来るよね~、
俺、ゲロ塗れには、成りたく無いよ~
其れに、其のお腹1ミリたりとも、色気感じ無いし~
魔法の袋気に入らないなら、
返してくれる~普通の袋あげるから
何なら、今すぐ結界の外に
放りだしても良いんだけど~」
「・・・・・・・・御免なさい・・・・魔法の袋欲しいです」
ジュリアナちゃんは食卓に、の、の字を書きながら、
「私~縁談の話一杯有ったって、
言ったじゃ無いですか~そして、
全部断ったって・・・・実は私、妄想癖が有って去年まで、
眼帯と、体中に包帯を巻いて、
此の眼帯の中の瞳に、魔神が封印されて居る~とか~
この腕には竜の呪いが、
掛かって居る~とか~言って居たんですよね~
私の実家そこそこの貴族で、
私も高位の魔導士で、縁談は沢山有ったんですけど~
皆、断られちゃったんですよね~
そんな私なんですけど~ある日、
帝都でアン様と出会ったんですよね~
んでアン様に気に入られて、
お付きに成ったんですよ~
そしたら私の実家も、
嫁に出せない私に困り果てて居て、
やった~周りの貴族に自慢出来る所に、
就職出来たってんで大喜びしたんですよね~
でも私、実は結婚したかったんですよ~
で、アン様の傍付きで、
高位の貴族も多いので、色気で勝負しようと、
ローブの下を派手にしたんですよね~
此れで、声が掛かると思ったんですが、
誰もよって来ないんですよ~
私、帝国でも5本の指に入る位の高位の魔導士なもんで、
怖がって誰もよって来なかったんですよ~
普通に、その辺の正騎士より強いんですよね~私
・・・・生まれて来て御免なさい・・・・」
「う~ん・・・・・・・・ガンバ」