-90話ー 冒険者 エレン 1
「あちゃ~見つかっちゃったよ~」
『結界張って居るのに、何ででしょうかね~っス』
「水、み~ず~水をめぐんで下せ~ご主人様~」
「あ~はいはい、ど~ぞ」
皮袋に水の魔石を入れて、魔石が無くなる迄、
水が出続ける、魔法の水袋を渡すと、
「ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ~
プッハ~美味し~!
此れで、安心して死ねますわ!
有難う御座います。
心残りは沢山有りますが、此の体はもう持ちませんし、
もう持って居ても、仕方が無いですね。
お礼と申しましては、申し訳ないので御座いますが
私くしの腰に付いている、皮袋を差し上げますわ、
此れは魔法の袋で、
コッサリア神国で買った香辛料が沢山入って居りますの。
一財産と成りますわ、此のお金で魔法学園に入るつもりでしたが、
最早其れも、もう叶いませんの、ですから差し上げますわ。
私が死んだ後は、私の体を好きにして下さって構いませんことよ、
此の変態さん」
「誰が変態さんですか~」
「ああ、私くしが死んだ後に、
私くしの骸にあんな事や、こんな事を、
もお嫌ですわ、此の変態さんは何をなさいますの~
そして、飽きたら私くしを切り刻んで、
残忍に食べてしまうのですね、
此のド変態~鬼畜~あ~でも其れでも、
死んだ後に、お役に立てるのであれば、
この身を差し上げましょう。
ド変態様のお好きになさって下さいませ。
其れも此れも、
死に水を取って頂いたお礼で御座います。
鬼畜なド変態様のお好きになさって下さいませ。
パタリ」
「・・・・・・・・」
「人を散々コケ落とした後、言うだけ言って、
気を失っちゃったよ、此の娘」
『う~ん、何と言って良いか、分からないっスね
でもまあ、瀕死の重体である事は変わらないんスけどね、』
「此のまま、放って置いて良い?」
『気持ちは分かるっスけど、死にますから、
後、10分絶たずに、死んでしまいますから』
「色々、突っ込む所は有るし、色々納得いかないけど、
しゃ~ね~な~ハイヒール!」
気を失って苦悶の表情を浮かべて居た、
毒舌少女の体が輝き出して、
シーワームに齧られて、抉れていた肩の肉が戻り、
げっ歯類に齧られた様に、
雑菌に犯された体が回復して行った。
『体の状態異常は回復したっスね、
しかし、体力が限界を超えて居るっス。
女の子だし、一週間は、入院っス~』
「首から下、砂浜に埋めて、
頭に草履、乗せてたら、治るとか?」
『フグの毒じゃ、無いんスから~』
「一週間か~って事は、10日は足止めだね~」
『まあ、急ぐ旅でも無いし、良いんじゃ無いっスか?
ダーリンも、疲れが溜まって居る事だし、
此処で、ゆっくり、するっス~』
「だね!じゃあ、仮住まいでも造りますか」
見渡す限り、水と砂の世界で、
おおよそ隠れる場所は無いのだが、
土魔法で砂を押し固めた、石造りの仮住まいを造った。
平屋の2LDKだ。勿論大きな風呂は必須である。
仮住まいに結界を張って、女の子をお姫様抱っこして、
家の中へ、部屋に入って女の子をベットの中へ寝かせ付けてから、
表へ出ると、リクライニングベットを出して、
ゆっくりと、寝そべって、トロピカルドリンクを飲み乍ら、
「さてさて、10日間は結構長いな」
空は何処までも青く、海は何処までも蒼かった。
波の音だけが、ザザ~ンザザ~ンと、時を刻んで居る。
・・・・・・・・
日も暮れて、一っ風呂浴びてから、晩御飯だ、
現在、食べること以外の楽しみは無い。
美味しい食事や飲み物は、体に染み渡り幸せにしてくれるのだ。
俺は、キンキンに冷えた、缶ビールのプルトップを開けると、
「ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ~
プッハ~生き返るわ~幸せの一瞬だね~さてと、
今日の晩御飯は、揚げたての、
竜田揚げと、ソーセージの、炒め物に、
野菜も採らないとだね、野菜炒めにしよう。
そして味噌汁。最後に最高~のおかずの、ご飯だよね!」
先ずは、竜田揚げを摘まみにして、ビールを飲んで、
ビールを飲み終わると、ご飯を食べ始めた。
「もぐもぐもぐ、うん、うんめ~生き返るわ~
ビールを一気に飲んで、生き返って更にご飯を食べて、
もう一度、生き返る。至福の時だよね~」
と、ご飯を食べて居ると、
リビングのドアが、不気味にぎぎ~っと開き、
「キャ~ッ!!」
と、ま〇とちゃんの様に驚いて居ると、
汚れた金髪の髪で、顔が隠れた女性が、はい乍ら、
リビングに侵入して来た。
「ひぃえ~何処のさばこだよ~驚いた~」
「ち、血が足りね~、食い物、じゃん~じゃん持って来い!」
「は、はい~」
ストレージに入って居る、食料をどばどばと、出すと、
ガツガツと、食べ始めた。
「暫くぶりの食事だ。そんなにいっぺんに食べると、
胃が受け付けないよ。体も弱って居るんだし」
「うるせ~!飛行艇だって、一日ありゃ~治るぜ~
がつ、がつ、がつ、がつ~」
女の子は、リス見たいに、ほっぺを膨らませ乍ら、
食料を頬張り、食べて居たが、
暫くすると、真っ青に成って、口を押えた。
「ほら、言わんこっちゃない」
「む~、む~、む~」
と言って、はい乍ら部屋に戻って行った。
『ダーリン、如何したっスか?』
「食ったから、寝るって~・・・・・・
何処の、ル〇ン三世だよ!」
・・・・・・・・
翌朝、俺の正面には、昨夜とは打って変わって、
上品に朝ご飯を食べて居る、少女が、
「・・・・・・・・」
「・・・・おぉ、此れも凄く美味しい・・・・
昨夜は余りの空腹の為に、取り乱してて味も分かりませんでしたが、
美味しい、美味しい、死ななくて良かった。死ななくて良かった。
あの~少年、お代わりを、
有難う御座います。此れも美味しい。生きてて良かった。
生きてて良かったですわ~」
と。泣き出した。
「そろそろ良いですか?」
「えっ!今からで御座いますか?
其れはもう、何時でもばっち来いなので御座いますが、私くし、
殿方と致すのは初めてで御座いますので、
その心の準備が・・・・
其れにもう、40日以上体を拭いて居りませんの、
私くしの体は、其れは其れは、
熟成された良い匂いが致しましてよ?
まあ、其れが良いと言う
殿方も居られる様で御座いますが?変態さん」
「う~ん、何と言ったら良いか?・・・・
君の名前は?何で行き倒れて居たのですか?」
「あら変態さん、乙女に名を聞くときは、
先に名乗る物ですよ」
「がぁ~~ん、此の娘に意見を言われちゃいました~
此れは、失礼しました。
俺は、旅の冒険者、や・・・・
モモタロウと、申します」
「あらあら、まあまあ、良く言えましたね、
冒険者にしては、少し幼過ぎるようですけれど、
お父様か、お母様はいらっしゃらないのですか?」
「父や母は遠くに居りますが、俺は、色々な物を見る為に、
一人旅をして居ります。俺の歳は15才ですね、」
「まあ、成人でしたの?驚きました。
後の事はお姉さんに任せて置きなさいね、
良い経験をさせて差し上げますわ。私くし、臭いですけれど、
勿論、変態プレイもオーケーですわ」
「う~ん、どお突っ込んで良いのやら、
あの~名前と状況を~」
「はい、私くしの名前でしたね、
私の名前は、エレノワ、スタンダール
皆からは、エレンと呼ばれて居ましたのよ、
十七歳ですわ、状況は少し長く成りますけれど、
私くし2年前迄、悪役令嬢をして居ましたの、
私くしの家は帝国でも指折りの貴族、
スタンダール伯爵家で御座いますのよ、
其処の六女ですの、
頼子の貴族との婚約も決まって居たのですが、
私くし、幼い頃より魔法が使えましたの。
私くしの夢は、
女帝陛下の様な大魔法使いになる事ですの、
その為に、淑女の勉強以外に、
剣と魔法を習って居たので御座います。
私の15のパーティーの時に婚約者と、
会ったので御座いますが、
それ以来、事有る事に言い寄って来るように成ったので、
自慢の毒舌で、完膚なき迄に叩きのめしたので御座います。
其れはもう、再起不能に成る位に、フヒッ!」
「怖ぇ~マジ、怖ぇ~」
「そんな時8女の妹が、父に告げ口したのです。
私くしの結婚と言っても、
頼子との絆を強くする為の政略結婚。
父は激怒し、私くしを勘当したので御座います。
僅かな金銭を貰い、屋敷から放り出されたので御座いますが、
其の時に、家の家宝の魔法の袋をかっぱらって来たのです」
「唯起きねぇ~で、告げ口した妹は?」
「私くしの婚約者を慕って居た様ですね。で、
私くしの態度が気に食わなかったのでしょうね。
其の後、冒険者と成って、小銭を稼いで居たのですが、
女帝陛下が、魔法学校に入学されたと聞いて、
私もと思ったのですが、入学金が全く足らなくて、
あのけち臭い、糞オヤジめ~と悔しい思いをしたのですが、
仕方も無いので、せっかく有る魔法の袋を使って、
一攫千金を目指して、キャラバンの護衛に雇って貰って、
コッサリア神国迄行って、持ち金全部注ぎ込んで、
香辛料を仕入れたので御座います。」
「護衛に成る位、強いの?」
「はい、銀の冒険者ですの、
私くし此れでも、魔法剣士で御座いますのよ、
ファイヤーボールを使えますので、どのキャラバンでも、
引っ張りだこで御座いましたわ」
「その割には成仏、仕掛けてたけど」
「其れは、私くしのせいでは有りませんわ。
キャラバン隊には、
腕の良い道案内が付かなければとても、危険ですの、
たまたま、腕の悪い道案内のせいで、
シーワームのテリトリーの罠に嵌ってしまって、
キャラバン隊は全滅。人やラクダは皆、食べられて、
流石のシーワームも香辛料は、食べなかったので、
其れも集めましたの、
私くしもお金を頂いて、護衛をして居るので、
最後迄戦いましたのよ、シーワームを焼き払った時には、
キャラバン隊は、全滅して居て、
私くしも、齧られてしまいましたけれど。
傷は、ポーションが有ったので、何とか傷口は塞げたのですが、
大量の雑菌が体に入って、暫くは歩いたのですが、
水袋も皆、破られて、喉が渇いていて、
海を見ると、あら海の水が一杯有るじゃんって、
海の水を飲んだら、
喉が焼け付く様に成って、気を失いましたの」
「ばっかで~塩分満開の海水なんか飲んだら、
喉が焼き付くよね~」
「言わないで下さいな、誰かに言われた様な気がして居たのですが、
頭も朦朧として居ものですから」
「まあ、大体わかりました。オアシスに着く迄は、
同行しましょう。
其の後は、別のキャラバンでも見つけて、
帝国に帰って下さいね。」
「で、あの~私くし、何で生きて居るのかしら?」
「其れは、ハイヒールで治したからですが?」
「いっ!・・・・・・・・
ハイヒールって、言いましたよね?」
「はい?何か?」
「何かじゃ有りませんわ!
ハイヒールって、取り敢えず心臓が動いて居たら、
治るって言う、最上級、回復魔法じゃあ有りませんか!
其れこそ、コッサリア神国の女教皇様以外は、
ほんの数人しか、術者が居無いと言う。
体の欠損迄も修復すると言う大魔法。
死んだと思ったのに、生きて居る筈ですわ」
「え~っと~そんなに、貴重な魔法?」
「はい、超貴重です。」
「じゃあ、誰にも言わないでね」
「勿論ですわ。誰かに話したら、
其れこそ、大騒ぎに成りますわ、
その代わりに、
私と一緒に帝国の魔法学校に行きましょう。
命の恩人ですし、入学金は、私くしが、全額出しますわ」
「いや其れはちょっと、俺は静かに暮らしたいのですが」
「良いですね、私くしとパーティーを組みます」
「いやだから、其れは」
「い・い・で・す・ね!」
「はい、分かりました」
押しには弱いヤマダタカシだった。
「宜しい、後はお姉さんに任せて、
手獲り、足取り教えますので、
其れと、命を助けて頂いたお礼ですけれども、
魔法の袋は、渡せなく成りましたので、代わりに、
私くしの、体を自由に使って頂いて構いませんわ。
私くしは色恋にはあまり興味が無いので、
気遣う必要も有りません。私くしの目標は、徹頭徹尾、
大魔法使いになる事ですので、
何時でも使って頂いて良いですよ。一家に一台ですわ。
モモタロウ様の事、嫌いで無いですしオーケーですわ。
今すぐでも良いですわよ、臭いですけど」
「いや、結構です。お断りします。其れより、
お風呂に入って来なさい!今すぐ!
エレンさん此処迄、匂いますよ」
「えっ、お風呂?屋敷にいた時でさえ、姉妹が多いので、
中々入れなかったお風呂?」
「はい、大きなお風呂が有りますよ、
石鹸で綺麗に体を洗って、
シャンプーでしっかり髪を洗って、リンスして、
湯船でしっかり体を温めて体調を整えて下さい」
「あの~使い方が分からないので、一緒に入って下さい」
「あっ!」