-71話ー 難民救済10 デスハウス
難民キャンプを建て替えた後、
俺達は、アイーダさんの屋敷に一旦戻った。
屋敷の前に一台の荷馬車が止まって居り、
少女が一人呆然と立ち尽くしていた。
「あら、ビトン様お待たせしたかしら」
「此れは、アイーダ様。で、この屋敷は一体何でっか?」
「そう言えばまだ、ビトン様にはまだ話して居ませんでしたね、
此のお屋敷は昨日、此方に居られるヤマダ様が建てて下さいましたのよ。
一番の懸案であった資金も出して頂いて居りますのよ」
赤毛の髪を、ポニーテールに結った
中学生位の少女が俺の前に立つと、
ビシッ!っと俺を指さして、
「あんさんも、アイーダ様の体狙いでっか?
なんぼ出して呉れたのか知りまへんけど、
アイーダ様は渡しまへんで~」
「あら、あら、良い子が人様に指を指してはいけませんよ」
食いつく所、其処~?ビトンさんって女の子なんだ~
BL?いやユリ?
「う~すんまへ~ん」
で、直ぐ謝んの~?
「わては、ビトンと申し上げます。
元アレス王国の商人で、
アイーダ様の相談役をして居ります。
以後、お見知りおきを」
「申し遅れました。ビトンさん
俺はヤマダ、タカシ、新米冒険者です」
「王族私達は、王族シスターズで~す」王族
う~ん、お妃様に、奥方様方、王母様迄、
ウィンザーさんや、アンネさんに至っては王族ですら無いんですが~
何気に、マリーとエメルダも混ざって居たりする。
「うむ余は、ヨシュア王国、国王、
ジョニー、アウグスト、ヨシュアである」
ビトンさんは、顎が外れる位に大きく口を開けて驚いて、
其のまま、ジャンピング土下座を決めた。
「は、はあ~ご無礼の段、平に御容赦を~
へ、へ~でおます~」
「ビトン様、此処はアレス王国では有りませんのよ、
皆様、寛容な方達ばかりですから、安心して下さいな」
「無礼打ちとかしない?」
「王族しませんよ~」王族
「わて、平民でっけど?」
「王族大丈夫ですよ~」王族
「ほっ」
アレス王国、無礼打ちが有るんだ~
「所で、ビトン様、其の荷馬車の荷物は?」
「はい、アイーダ様が、国王陛下より伯爵の地位を賜ったと聞きまして、
お祝いにと、お持ちしました」
荷馬車には、肉に野菜、果物が山積みにされて居た。
「ビトン様、有難う御座います。
何時も助けて頂いて・・・・う、う、うううう・・・・」
アイーダさんは人目もはばからず、大粒の涙を流して居た。
「勿体ないお言葉です。死んだ父も母も、
先代様には本当にお世話に成ってまっさかい、
こんな時こそ恩を返すのは、当たり前だす」
自称、王族シスターズも貰い泣きをして居た。
「皆さん、立ち話もなんですから、一旦屋敷に入りましょうか?」
「皆は~い」皆
屋敷の入り口に荷馬車が付くと、執事の指揮の元、
凄い速さで、荷物が屋敷の中へ消えて行った。凄い!
俺達が居間に入ってくつろいで居ると、
すかさずメイド達が、紅茶を配って行く。
洗練された動きで、ブラウニー達にも引けを取らない動きだ。
「凄い、此れが伯爵家のメイドなんだね~」
「な、何でんねん此のお茶。此の優しい香りに、
まろやかな味、甘い。せやけどはちみつやおまへんな、何やろ?」
「へ~ビトンさんは、中々の味通なんですね」
「はい、亡くなられた先代様が大の食通でおましたからね~
自然と舌が肥えましてん」
「そうなんだ~其れと皆さん、今から住宅ギルドに行きますけど、
俺の拠点の購入とアイーダさんの
借家の購入を先に済ませたいと思います。
現場を何回も行ったり来たりすると思うんで、大変ですから、
屋敷で待って居て貰えますか。買ったら声を掛けますんで」
「屋敷の購入迄、お世話になる訳には参りませんわ。」
「いえ、この屋敷に付きましては、
この地の難民救済計画の拠点と成りますし、
現在借地でありますので、貸主ともめない為にも買い取ります。
資金も王国から出して頂けますので、ご安心ください。」
「そう言う事で御座いましたら宜しくお願い致します。
本当に何から何迄有難うございます、
どうお返ししたら良いものやら?
今迄主人に操を立てて参りましたが、
これ程の恩義を受けたのであれば、
亡き主人も許してくれる事でしょう。
今宵は屋敷の主人として、ご奉仕させて頂きますわ、ポッ」
「皆に怒られますので、遠慮して置きます。」
「タカシ様のいけず~」
「それじゃ皆、行ってくるね~」
「皆は~い」皆
「其れやったら、わてが送りまひょか?荷馬車でっさかい」
「私の屋敷の事でも在るので付いて参りますわ。」
「其れは有難いですね、じゃあマリーとエメルダ行きましょうか」
「「は~い」」
「「「「じゃあ、宜しくお願いしますね」」」」
こうしてビトンさんの好意で住宅ギルド迄、
送って貰える事に成った。楽だ~、
荷馬車は、街の大通りの一等地と思われる所に着くと
「あの一番立派な建物が商人ギルドだす。
その向かいに建っている、商人ギルド並みの建物が、
冒険者ギルドで、その横に建って居るのが代官所だす。
一番端に有るのが住宅ギルドに成ります」
ビトンさんは、住宅ギルドの前に荷馬車を横ずけにすると、
先に住宅ギルドに入って、
「アイリス~居てはりまっか~
お客さんを案内して来ましたで~」
俺達が中に入ると、体のがっちりした若い女性が出迎えてくれた。
やはり、ドワーフなのだろうか?
「これは、アイーダ女伯爵閣下、
本日はようこそおいで下さいました。
どの様な物件をお探しで御座いましょうか?」
「アイリス、アイーダ様の借家の話もそうやけど、
此方は王族関係の人やよって失礼の無い様にしたってや~
無礼討ちになんで~」
「しないから、無礼射ち何て怖い事」
「ビトン、承知しました要は大切なお客様という事ですね」
と言って、俺に向き直ると、スカートの裾を摘まんで一礼するのだった。
「はい、家を購入したいのですが、
其の前にアイーダさんの借家を買い取りたいのですが?
「それでしたら、うちで構いません、
あの賃貸の家は、とある農家から買い取って賃貸にして居るので、
権利は此のギルドが管理しております。
勿論販売も行って居りますのでご安心下さいませ、
この物件は、
昔馴染みのビトンの口利きも有り優遇させて頂いております。
其れをご購入と言う事でありましたら、
得値で、そうですね~場所も悪いですし、
元農家という事も在りますので、
金貨100枚では如何でしょうか?」
「良いですね、買い取らせて頂きましょう。」
タカシはストレージから金貨100枚入りの革袋を、
懐から出すと、アイリスさんに手渡した。
金貨の枚数を確認するとアイリスさんは、
「はい、間違いありませんね、」
と棚へいき、棚に据え付けの引き出しから、
1枚の羊皮紙を出して来た。
「はい、此方が借家の権利書と成ります。
え~っとアイーダ様にお渡しして良いですか?」
お金を渡したのが俺なので、迷っている様だ。
「はい其れで構いません。」
アイリスさんは権利書をアイーダさんに手渡すと、
「土地、家の重要な書類ですので、無くさない様にして下さいね。」
「はい心得ました。ヤマダ様有難うございます。やはり今宵」
「いやいや、ダメだからリリーに口でしばかれるから」
「う~っ残念でっス」
「ところでアイリスさん、西門近くで、
土地の広い物件が有れば教えて頂けますか?
家は付いて居ても、無くても構いません。廃墟でも問題無いですよ。
出来れば、安い物件が有りましたら嬉しいのですが」
「はい、了解致しました。少しお待ちくださいね」
俺達は、大きなテーブルに案内されて、座って待つ事に成った。
そうすると、別の女性が、お茶を入れて運んできてくれた。
其のお茶を一口飲んで、
「中々に、渋いお茶ですね」
「はい、普通のお茶は、こんな感じだす。
まあ、湖や、川の水の臭みを取る為の物だっさかい
渋いのは仕方ないのだす、所でヤマダはん、
アイーダ様の所で出て来たお茶だすけど、
あれは、ヤマダはんが?」
「ええ、そうですけど」
「もし宜しければ、売っては頂けまへんか?
大儲けの匂いがぷんぷんしますんやけど」
「う~ん、商売にしようとは考えて居無いんですけどね~
まあ、此れからも、ビトンさんにはお世話に成ると思うんで、
少しなら分けても良いですよ」
100個入りのティーバッグと、袋入りシュガーと、
ティーセットをワンセットにして、11セットママゾンで購入して、
10セットビトンさんに渡した。
「こ、此れは凄い。此の食器は?焼き物の厚みが薄くて、
玉の肌の様に白くて美しい絵柄が、何かお洒落なんだすけど~
焼き物と言えば、分厚い素焼きで色も茶色いのに、
女神様が使っていそうな素晴らしい物だす」
「ティーセットですね、カップが5脚にティーポットですね、
お茶を楽しむ為のセットに成りますね~」
「此れを商売にする気は?」
「今の所、有りませんね~でも、
ビトンさんになら少量、融通させて頂くので、
商売に繋げて下さい。此れはビトンさん専用で」
最後にもうワンセット手渡した。
「良いんでっか?」
俺は、にっこりと笑って、
「此れから、王国の為に働いて貰う
アイーダさんのご友人ですからね」
「分かりました。粉骨砕身、努力させて貰いまひょ」
ビトンさんは、お茶を持って来てくれた女性に、ティーポットに
お湯を入れて来るように頼んだ。
俺は、ビトンさんに紅茶の入れ方をレクチャーした。
ビトンさんは、受付のお姉さんにも紅茶を振舞って、意見を聞いて居た。
俺は、お茶菓子に、チョコバナナのクレープを、皆に振舞うと、
皆の目が変わった。
「ビトンちゃん、ヤマダ様は独身なのかしら?」
「い、いや、其処までは・・・・ヤマダはんは、
独身でっか?」
「「タカシ様は、私達や、王族の姫様達の恋人であらせられます」」
口の周りをチョコだらけにしたマリーとエメルダが即答した。
「「「ですよね~」」」
「そら王族の姫様達も一目惚れするわ、子供のわてでさえ、
お嫁さんに貰って欲しいわ、こんなん反則やで~」
「「うん、うん」」
「そんなに美味しい物が無いのですか~?」
「「「無い!」」」
「どの国の上流階級でも、美味しい物を作るのも、食べるのも
最高のステイタスや、ヤマダはんの持って居るお茶にしても、お菓子にしても、
反則級や、ルグレス帝国の皇帝でも落とせるんとちゃいまっか?」
「やっぱり、美味しい物が無いんだね~」
「そうだす。所でヤマダはん、幼い少女は好きでっか?」
「全然興味は無いですけど?」
がく~っとテーブルに突っ伏すビトンさん。
「其れはそうと、今ある物件をお持ちしました。
西門近くの土地の広い物件は全部で此の8件に成ります」
と、羊皮紙を受け取った。其の中で目に付いた一軒を選んで、
「広いですね~この物件はどうでしょう?」
「はあ、この物件は些か問題が有りまして、
此方の物件など如何でしょう?屋敷も広く、土地も大きくプール付きで、
金貨二千五百枚のお得な物件と成って居りますが?
今なら、私をお嫁さんにして頂いて、家具付き財産付きで、
タダで私とお持ち帰り出来ますが・・・・
色白のロリ巨乳はお好きですか?」
「お好きですが、家に沢山居りますので、要りません」
がく~っとテーブルに突っ伏すお姉さん。
「でこの物件は?」
「はい~此方の物件は百年程前、一家五人と、
下働きの者が十人が、街の犯罪ギルドの者に全員惨殺されて、
街でも有名な幽霊屋敷に成って居り、
かなり凶悪な悪霊が住み着いて居り、
幾度もギルドに依頼して、浄化を試みたのだそうですが、
全て失敗して、翌朝死体で発見されると言う、恐ろしい物件で、
今尚、さび付いたままなので御座いますが・・・・」
「ふむ、アンデットですか?何とか成りそうですね、
気に成るお値段の方は?」
「勿論、手続きの費用を含めて、無料ですが、
悪霊を討伐する義務が掛かる分、メリットは無いと思いますよ
もしヤマダ様に悪霊討伐の、つてが有るのであれば、
一度、冒険者ギルドへ行って下さい。
討伐依頼が百年分焦げ付いて居ると思われます。
近隣にも被害が出て居り、討伐に向かい、
亡くなった冒険者の数は百人は下らなく、
其の都度、懸賞金が上がって行ったと聞きます。
確か、王国からも懸賞金が出て居たと思うんですが?」
「じゃあ、一度現場を見ても良いですか?」
「はい、其れは構わないのですが、耐性の弱い人であれば、
気を失ったりするのですが、大丈夫でしょうか?」
「まあ、大丈夫でしょう、其れよりお口の周りのチョコ、
拭きましょうね、シリアスが台無しですよ?」
アイリスさんはやかんの様に頭から湯気を吹きだすと、
真っ赤に成って、口の周りを拭いて居た。
俺達は又、ビトンさんの荷馬車に乗せて貰い、
アイーダさんの屋敷に戻る格好で、進んで行き、
手前に有る森林公園の様な所へ入って行った。
「何か、鬱蒼とした森林公園ですね~」
「いえ、森林公園ではなく死霊の館、デスハウスの影響を受けて、
無人に成った、住宅街の成れの果てですね。
因みに、この辺の住宅も、全て無料です。
この街は外壁が約10キロの、
まあ、王国でも大きい方の街なのですが、
隣国との貿易も盛んですし、其のエスカルの街の約2割を、
此の森林地帯と、死霊の館デスハウスが占めてしまって、
年々、影響する地域が広がって居るのです」
「ふ~ん、お得な物件なのですね」
「いや、いや、命あっての物種ですから」
森の中は、昼でも薄暗く、鬱蒼としているが、
路は馬車が通る分には問題無かったが、嫌な空気感が、
半端なく体に纏わり付く、生者を死の国に迷い込ませる雰囲気だ。
「此れは、夜はヤバい雰囲気ですね~」
「はい、面白半分に夜に此の森に入る者も居る様ですが・・・・
戻って来るものは少ないと聞きますね」
「リアル心霊スポット~!」
と、そうこうして居る内に馬車が止まった。
と言うか、馬が一歩も動かなく成ったのだ。
俺達は荷馬車から降りると、目の前に広がった景色に目を奪われた。
「あれが、例の屋敷ですか~出てますね~」
「はい、目に見える程の瘴気なんて初めて見ました」
「まあ、今は此れ以上近付か無いのが賢明ですかね」
「皆そうですね~・・・・ほっ」皆
「じゃあ、申し訳無いのですけれど」
「やっぱりこの物件はダメですよね~?
お勧めは私付き、財産付きですが~」
「いえ、いえ、そうじゃ無く、
ビトンさん冒険者ギルドへ寄って貰えますか?」
「えっ、あ、はい、ヤマダはんはチャレンジャ~でんな~
こんなお化け屋敷、それこそ悪魔の軍団を滅ぼしたとか言う勇者様位しか、
扱えまへんで~いやマジで、じゃあ、行きまっか」
冒険者ギルドに付くと、遅い時間の為か、閑散としていた。
俺は綺麗な、耳の尖がったエルフのお姉さんの居るカウンターに行くと、
「はい、今日は、如何されましたか?」
「はい、焦げ付いて居る死霊の館デスハウスの事を、
教えて頂けますか?」
「はい、少々お待ち下さいね」
棚に有った、羊皮紙の山を漁って一枚の羊皮紙を見つけると、
此方にやって来て、カウンターに羊皮紙を置き、
「此れですね、う~ん、123人の冒険者が失敗して、
113人が亡く成って居ますね、
犯人は、どうやらアンデットの王、リッチーが湧いて居るようですね、
で、君は幾つなのかな?冒険者?なら、
カードを見せて貰えるかな?
十五歳か~で、木の冒険者ね~、
あれ?まだ一度も更新して無いね~
更新しとくね~えっ従者の分も?勿論良いですよ~
でも、死霊の館デスハウスの討伐とかは、ダメですよ~
死にに行く様なもんだからね~君の様に若くて、礼儀正しくて、
可愛い男の子が死ぬのは心が痛いからね」
お姉さんは、俺のカードを見て固まった。
更に、マリーのカードを見て時が止まった様だった。
そして、小さな声で、
「・・勇者パーティー?・・・・」
俺は、お姉さんの口を人差し指で抑えると
「他言無用で・・・・」
うん、うんと、頬を染めて、頷くお姉さん