-65話ー 難民救済4
ネズ湖の難民キャンプは、南門を出て、左手、ネズ湖の街を覆う様に、
半円形に広がって居た。其の外周は防御柵に覆われて、
前線の砦と言った感じだ。軍隊が作って居るしね~
野党や、悪徳奴隷商などは、防御柵に阻まれて、入れない。
一度、野党が襲って来たらしいが、壊滅させて居るとの事、
それ以来、襲撃は無いそうな。
キャンプの中に入るには、門を通らねばならず、
門は、軍隊が管理している。食料が有る限り、中は比較的安全なのだ。
俺は、タイゼンさんと、キャンプ内を視察した。
「ヤマダ様、見ての通り、皆、痩せては居りますが、
何とか、栄養失調の状態は、食糧支援のお陰で、改善されて、
餓死する者も出なく成って居ります。
ネズの街の教会の支援のお陰で、病人も無くなりつつあり、
炊き出し何かも手伝って頂いて居ります」
タイゼンさんは、炊き出しをして居る、シスターに挨拶すると、
難民の少女を呼び寄せて、俺の前に連れて来ると、
ゆっくりと、回って貰い、現在の身体の状態を見せてくれた。
麻で出来たぼろぼろのワンピースを着た少女で、
暗い金髪を、三つ編みに結って居た。
手足は細く、関節の所が目立ち、目も窪んで居たが、
少女は俺の顔を見て、微笑んでくれた。
そして、タイゼンさんに、向かって、
「領主様、何時も守ってくれて、有難う御座います」
タイゼンさんは、少女の頭を撫ぜ乍ら、うむ、うむ、と言って居た。
俺は少女に、
「此処の暮らしはどうですか?」
「はい、毎日、ご飯が食べられます。怖い人が来ないので、
夜ゆっくり、寝れます。」
「何か欲しい物は有りますか?」
「お腹一杯食べたいです。後、雨が降ったら濡れるので、
濡れない所で、寝たいです」
俺は少女の頭を撫ぜ乍ら、
「はい、分かりました。検討しましょう」
「・・・・・・・・?」
「タイゼンさん炊き出しは何時頃、終わるでしょうか?」
「聞いて参ります」
タイゼンさんは、炊き出しをして居る、シスターの所へ行くと、
何やら、話をして、此方に戻って来た。
「炊き出しは、朝から、三ヵ所で行って居り、後一時位で、
終わるそうで御座います」
「はい、有難う御座います。では、炊き出しが終わりましたら、
全員、キャンプの外に出て頂けますか?建て替えます」
「・・・・へっ?・・建て替え?」
「はい、一時的な仮住まいでは有りますが、雨が降ったら
濡れて寝れないと言うのは、ダメですので、
もう少しこましなものへ建て替えたいと思います」
「・・・・はあ~・・・・」
「まあ、其の前に、先ず視察を済ませましょう」
「はい、では参りましょう、」
難民は、全体的に栄養失調の者は見当たらなかったが、
皆、やせ細って居た。此れでも、かなり、改善したのだと言う、
当初、此処に来た時は、酷い物で、殆どの人が、栄養失調に成って居て、
餓死者が続出して居たと言う、入国許可と、食糧支援が始まって、
ようやく餓死者が減り、今の様な状態に成ったと言う、
先ず年寄りと幼い子供が犠牲に成ったと言う。酷いものだ。
難民は皆、遠い遠い所から、徒歩で国境の街まで来たのだ。
来るまでに多くの人が行き倒れ、そしてやっと到着しても尚、
食料不足で倒れて行った。其れでも尚数万の人が生き残れた。
此の世界は人が生きて行くには、とても厳しい世界なのだ。
掘っ立て小屋も、此の世界では、板は高級品で、其のあたりに
落ちて居たりしない、大工が、二人掛かりで大きな鋸で切るか、
魔法で切るのだが、当然、作業に見合った金額が掛かる訳だ。
だから、使う木材は、細い丸太か、枝に成る。当然、隙間だらけだ、
隙間には、木の皮なんかで、瓦の代わりにするが、雨が漏る訳だ。
外に居るよりまし、と言う程度だ。
俺達は、難民キャンプを一周すると、兵舎に戻って来た。
其処では、白く輝く龍骨フルプレートメイルに身を包んだ、
ゲンさんが、難民救助隊の騎士を選別して居た。
と、言っても要は、此の後行軍しても、大丈夫そうな元気な者を
選別しているだけなのだが、兵士達の栄養状態も悪い。
三千五百人の半分位は、まだ、元の状態には戻って居ない。
俺は、選別された五百人の騎士の前へ行き、
人数分の新たな装備を渡した。白く輝く竜骨フルプレートメイルに。
龍骨剣、片刃で反りが有るので、
竜骨刀と言った方が良いかもしれないが、
魔法使いには、魔法の通り良い竜骨で出来た杖を、
インナーとセットで渡して行く。
難民救助隊の騎士に行き渡った後、残りの三千人の騎士に、
装備を渡して行った。白竜騎士団の誕生である。
此れで、ヨシュア王国に黒竜、赤竜、白竜、の
三大竜騎士団が創設された。
三千五百人の白竜騎士が並んだ。壮観な眺めだった。
そして、難民救助隊の騎士達はその日の内に
アレス王国に向かう予定だ。
此の後、炊き出しが終わったとの連絡がきたので、
皆、一旦、荷物を持って、キャンプの外に出て貰った。
荷物と言っても、着の身着のまま逃げて来た人達ばかりで、殆ど、
荷物らしいものは無いのであるが、
皆、一旦キャンプの外に出ると、近くの森に、
数十人の野党が現れた。外の野党は、王国を再建した時に、
壊滅させて居るので、ネズの街に巣くう犯罪者であろう、
「マリーとエメルダ悪いけど、野党殲滅してくれる?」
「「はい、承りました」」
返事をすると、風の様に森に飛び込んで行った。
「タイゼンさん森の中に野党が出ましたので、マリーとエメルダを
向かわせました。後始末をお願いしても良いですか?」
「承知しました」
タイゼンさんは騎士を百人程森に向かわせてくれた。
『リリー良いかい?』
『はいダーリン何時でもオッケーっス~』
≪クリエート、キャンプ、シティ!≫
キャンプの敷地内が、揺らめきだした。上下水道が作られ、
湖の上流から水を引き込み、湖の下流に流れ出て行く、
その上に蓋をして、
土砂が敷き詰められていく。
次に敷地の中央に入り口から、湖につずく道が出来て行く。
馬車が二台悠々交差出来る位の道幅だ。
其の上に石畳が敷かれて行く。
屋敷のローマ水道が分岐して5か所に飲料水飲み場が出来て行った。
丸い噴水池が5ヵ所作られて行った。
水汲み場だ。噴水は出ないだろう。
次に、体育館が、サイコロの四の目のように生えて来た。
体育館と体育館の間に十字のアーケードの屋根が作られて行く。
集合住宅が何十棟も作られて行く。
中身はカプセルホテルに成って居る。
狭いが、プライベートの空間が持てるだろう。
もう、雨に濡れながら、眠る事は無くなる筈だ。
その他に公園、運動場等の施設が出来上がって行く。
そして、外壁が生えて来た。兵舎や、教会関係者の宿舎なんかも入って居る。
壁の高さは4Mで幅3Mの道が湖迄、続いて居る。万里の長城みたいだ。
門も頑丈な、両開きの鉄の門と、上から降ろす鉄柵の二重門だ。
野党程度では、そうそう突破される事は無いだろう。
騎士や教会関係者、数万の難民達が、顎が外れる位驚いて居たが、
「此の事は、他言無用で、」
「皆は~い!墓に迄持って行きま~す!!」皆
出来たキャンプに入ると次は、部屋割りだ。教会関係者の人に
手伝って貰い、カプセルホテルの、鍵を配る時に、
ジャージ、下着、草履の三点セットを皆に配り、一緒に名簿も作った。
此れで、性別、おおよその年齢、何処の出身かわかる様に成るのだ。
平民の場合、先ず名字が無い、どこそこ村の、
誰それの息子のなになにと成る訳だ。
此れで、疫病などを防ぐことが出来るだろう。
そうこうして居る内にマリーとエメルダが、戻って来た。
「ご苦労様、どうだった?」
「はい、盗賊はやはり、街の犯罪ギルドの者達と、
奴隷商人が居りました」
「30人程ですが、此方の隙を伺って居りましたので、
全員無力化して、捕らえました。」
「犯罪ギルドはまだ、戦力を持って居る様なので、
今夜にでも行って殲滅したいと思いますが?」
「はい、良いでしょう、後後の憂いを残さない様に
完全に殲滅しましょう。ミューズさん構いませんか?」
「はい、犯罪ギルドには、私達も困って居りましたので、
此方からも兵を出しましょう。」
そして、だ・・・ゲンさんも準備が出来たとの事で、
アレス王国に向けて、出発した。
俺は料理人の所に行って、人数分のオークの焼肉用の肉と、焼き肉のたれと、
パンとビールを出して、兵士と教会関係者に振舞う様に依頼した。
其れと、兵糧倉庫と、難民用食料倉庫を一杯にして来た。
ひと月分は、有ると思う。其の後難民キャンプを後にした。
俺達は、ひとまず、タイゼンさんの屋敷に戻って、
会議室に集まった。
「「タカシ様其れでは、犯罪ギルドの討伐に行って来ます。」」
「はい、そうですね、ミューズさんどうしますか?」
「はい、私はもう少し計画のすり合わせをしたいので、
レベッカ、守備兵を連れて、一緒に討伐に向かって下さい」
「はいミューズ様、では早速マリー様エメルダ様、
一緒に来て頂いても宜しいですか」
「「はい、承知致しました」」
三人は、出て行った。
「では、タイゼンさん先ずは、軍資金です」
俺は、テーブルの上に、王金貨10枚をごとりと置いた。
一枚が金貨五百枚分の重さが有るのだ。重い
「此れが当座の軍資金と成ります。此れで、何時迄、
軍を維持できますか?」
「此れだけ有りましたら、今年いっぱいは、軍を維持できます」
「分かりました。追加の軍資金が必要に成ったら、教えて下さい」
「承知致しました。明日にでも、街の両替商を呼びましょう
此れだけの軍資金、盗まれない様にするのは、中々大変ですな」
「タイゼンさん、ゲンマさん、デュラさんに、ミューズさん、
レベッカさんに、だい・・・ゲンさんは、俺の配下に成ったので、
此れからは、俺の能力の一部を使えますので、説明します。
先ずメニュウ画面が使える様に成ります。
其の中の、マップ、ストレージ、ママゾンが使える様に成ります。
使い方は、画面内の軍師リリーが説明してくれるので」
「「「ああ!今リリー殿より挨拶が有り申した!凄い!」」」
「其れに俺と、その他の配下同士の念話が可能となります」
「あっ!今湖を渡って居るゲンと話が出来ました」
「敵の位置や軍の規模等、知る事が出来、更に同じ配下どうしの
念話での情報の共有、迅速な命令を出す事が出来る様に成ります」
「情報こそは戦の肝、同じ規模の軍勢であれば、無敵、
な、何とチートな」
「で、有るからこそ、他人に知られる訳にはまいりません、
奥の手と成りますので、此の事は他言無用で」
「「「は、は!」」」
「では、今日は新しい仲間が増えた目出度い日ですので、
俺が、料理を作りましょう。
俺は、料理人でも有るので、美味しいご飯を作りましょう」
「ヤマダ様、そんな事をして頂いては、私が主人に叱られます。
どうか、お客様は、お座りに成って待って居て下さい」
そうだそうだと頷く奥さん達。
「其れでは、手伝って頂けますか?」
「「「そう言う事で有りましたら、お手伝いさせて、頂きますわ」」」
晩御飯は、オーク肉の焼肉定食と、ヒュドラと、コカトリスの唐揚げだ、
デザートには、バケツプリンのプリンアラモードだ。
女性陣や、子供が大喜びして居た。男達は、酒を酌み交わし、
子供達を寝かしつけた頃、
「此の酒、ビールと言いましたね?美っ味い!」
「貴方、此のちゅうはいって言うの、凄っごく美味しいですわ、うっふん」
「タイゼン、此のういすきーって言う酒、美味過ぎるぞ~ひっく」
「ゲンマ、僕はやっぱり此のこにゃっくと言うのが気に入ったよ~ひっく」
「タカシ様、私は此の冷酒と言うのが気に入りましたわ、ひっく
お嫁に貰って、うっふん」
「間に合ってます。ひっく」
「もう~タカシ様のいけず~ひっく」
「「タカシ様には私達が居りますので、ひっく」」
マリーとエメルダもいつの間にか戻って酒盛りに参加して居た。
「ああ~ミューズ様~黄金のバラの威厳が~ああ~威厳が~ひっく」