表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/201

-63話ー 難民救済2


ネズの街も、外周、10キロ程の防壁によって、守られている。


いわゆる城塞の街である。


10キロと言えば俺達日本人から言うと、


大変な規模なのだけれど、魔法が有る世界だ。


土木工事の殆どの基礎が、



土魔法で賄われてしまう。


が当然、金、時間、手間は掛かるのだが、


同じ中世位の文化水準であっても、魔法が有ると無いとでは、


天と地ほどの差が有る訳だ。



まあ、其のせいで、文化が全く発展して居無いのだが・・・・


アレス王国と、ヨシュア王国の国境線も、


ミシュラン王国との国境線と、同じ様に、


大河によって、分けられている。



貿易の拠点は当然、


大河の流れが滞って出来た、流れの緩やかな、


湖と成る訳だ。特に中流域に位置するネズ湖は、


下流に有るエスカル湖の、


半分程度の面積では有るが、原始の森が近い事も有り、


魔物の素材の流通が多く、


両国で最大の貿易の拠点と成って居る。



其れに対してエスカル湖は周りを穀倉地帯に囲まれており、


主に農産物が多く取引されている。


アレス王国は、万年食料不足で有り、


その為にバカなアレス国王も、


農業国のヨシュア王国には、


一切手を出さなかった。



もし、戦端を開いてしまえば、


あっと言う間に干上がってしまう訳だ。


逆に、同じ農業国のミシュラン王国の、


ジャババ、ハットリ侯爵は、


自分の領地を広げようとして、


ルビーに蹴散らされた訳なのだが・・・・



此処、ネズの街の南門、農村部に続く街道が有り、


門を出て直ぐに、難民キャンプが有る訳だが、


俺達は、外壁沿いに暫く歩いて行くと、


簡素な住宅街に出た。



其の中の一軒、広い庭が有り、こじんまりとした平屋なのだが、


まあ、石造りの農家の一軒家って感じだが、


普通と違う所は、立ち番の兵が二人、


庭に五人の兵がたむろして居た。


女騎士のレベッカさんが、立ち番の兵の所へ行って。



「今日は、王都からの使者を連れて参りました。


タイゼン、ジオン様はご在宅で御座いましょうか?」



「はっ!話は先ぶれの使者から聞いて居ります。


既に、ゲンマ、ビナス子爵閣下と、


デュラ、ゴリアテ男爵閣下も、既に此方に参られて居ります」



と、立ち番の兵の一人が、家の方へ走って行った。


兵が、家の中に消えると、暫くしてから、


四人の男性と、五人の女性、四人の子供が、


家から出て来た。そして、四人の男性が此方へやって来た。


そして、がっしりとした青年が、


代表なのだろう、俺に話しかけて来た。



「此れは使者殿、私は皆の代表のタイゼン、ジオンと申します。


どうか、お見知りおきを」



「此れはご丁寧に、私は、新米冒険者の、


ヤマダ、タカシと申します。


今日は、王様からの親書を預かって居りますので、


目を通して頂けますか?」



と、王様から預かった親書を手渡した。



「王様?・・・・」



タイゼンさんはちらりと、ミューズさんに、目配せすると、



ミューズさんは小さく頷いて、



「此方の親書は、国王陛下の物で間違いありません。」



「此れは、失礼いたしました。


何分私共は難民、疑う癖が付いて居りましてな、


立ち話もなんです。


ささ、狭い家では有りますが、どうぞ此方に、」



と、俺達はタイゼンさんに案内されて、家の中に通された。


出てきた人たちも、俺達の後を付いて家の中へ入った。


簡素な六人掛けのテーブルに案内されて、皆の自己紹介を受けた。



タイゼンさんは、元アレス王国、侯爵で21歳、


ゲンマさんは、元子爵で、45歳


そして息子さんのゲンさん、25歳で元正騎士、


其れからデュラさんは、元男爵で25歳、


あんな国王でも裏切ったと言う事で、


非常に肩身が狭いのだそうだ。



「ヤマダ、タカシ殿と申されましたな、立ち話もなんです。


ささ、お座りください」



「有難う御座います。では、お言葉に甘えて」



俺が、着席すると、タイゼンさん、ゲンマさん、


デュラさん、そうして、だ・・・ゲンさん、


ミューズさん、レベッカさんが、着席した。


マリー、エメルダは俺の後ろに立ち、


三貴族の家族は壁に沿って立って居る。



小さい子供も立って居り、何とも居心地が悪い。


俺は直ぐにママゾンで、アルミ製の長椅子と、


背もたれの無い丸椅子を人数分購入して、タイゼンさんに、



「他の皆さんは?」



「はは、何分狭い部屋でして、ですが皆と話し合い、


重要な情報は、家族で共有すると決めて居りまして、


もし宜しければ、皆が立ち会う事を許しては貰えますまいか?」



「はい、立ち会って頂くのは構わないのですが、


小さいお子さん迄、立って居ると言うのは、流石に


居心地が悪いので、アイテムボックス《宝箱》に椅子が有りますので、


使って頂いても宜しいでしょうか?」



「ほう、ヤマダ様はアイテムボックス持ちで御座いましたか、


どうぞ、宜しくお願いします」



俺は、タイゼンさんに許可を頂いて、ストレージから


アルミ製の長椅子と、丸椅子を人数分出して、



「ささ、皆さん、簡素な椅子で申し訳御座いませんが、


お座りください」



立って居た家族の皆さんは、俺に一礼すると椅子を


壁際において座ってくれた。其の後マリーとエメルダにも


丸椅子を手渡した。その間タイゼンさんは親書に目を通して、


何やら、考えている様子であった。



「・・・・この内容は、余りにも破格過ぎませんか?」



「はい、普通に考えれば、破格でしょうね、しかし、其れは、


普通であれば・・・・です。説明させて頂いても、宜しいですか?」



「はい、宜しくお願い致します」



「では、先ず一つ目は、現在のヨシュア王国の、現状ですね、


タイゼン侯爵閣下は、此の国が悪魔に襲われて、


王国民や王国貴族が


大勢虐殺されてしまった事はご存じですか?」



「はい、存じて居りますが、私はアレス国王を裏切った身です。


もう、侯爵では有りませんので」



「そうですね、確かにアレス王国、侯爵では有りませんね、


では、言い直しましょう、


タイゼン、ジオン、ヨシュア王国、侯爵閣下」



!!



「ゲンマ、ビナス、ヨシュア王国、子爵閣下、デュラ、ゴリアテ、


ヨシュア王国、男爵閣下、そして親書には有りませんが、


ゲン、ビナスさん此方に来て、跪いて下さい」



「は、はい」



大工のげ・・・・ゲン、ビナスさんは、立ち上がると、


俺の横に来て、跪いた。



俺は、ストレージから、一振りの刀を取り出すと、すらりと、


黒刀を引き抜き、水平にすると、ゲンさんの両肩に当てて、


騎士の儀式を行った。皆さんは、美しい輝きの黒刀を見て



「皆おお~!」皆



皆さんから、感嘆の声が漏れた。


すると、ゲンさんは、



「ヤマダ様、本日、只今より貴方様に忠誠を誓います!」



何か泣いてるし、



「此れは、正式な物です。私は王様より、大公の位を


賜って居ります。よって、ゲン、ビナスを只今より、


ヨシュア王国、正騎士として任命致します。」



「皆おお~!」皆



俺は、刀を鞘へ納めると、其のままゲン、ビナスに手渡して、



「此の宝剣は、ドラゴンの鱗を鍛え上げ、更に炎の魔法が納められた、


竜鱗魔剣、リリー、陽炎、此の国の一部の騎士にだけ、


与えた貴重な物ですので、盗まれない様にして下さい」



「はは~、しかし何故、見ず知らずの私に・・・・」



「此れらは、報酬の前渡しだと思って頂ければ良いです。


序でにほいっと」



更に黒竜騎士団の鎧装備一式、ストレージから取り出すと、



「ゲンさん貴方は、中々、見所が有るようだ。


此れから、大変な日々が続くでしょうが、頑張って頂きたい」



俺は、鑑定が出来るので、ゲンさんが黒龍騎士団並みの


実力が有るのを分かって居たので、先に味方につけた。


因みに彼は、レベルが30、剣術が、レベル6だ。


手っ取り早く言うと、騎士団長クラスなのだ。



「其れと、皆さんの爵位は、親書を開いた時に


発効しています。ですが、まだ、領地に付いては決まって居ません。


今回の、依頼の結果次第です。



此れから決まる領地には、


皆さんの領民を連れて行ってください。


恐らくは、原始の森沿いに成るとは思いますが、


現在お連れの兵達には、依頼完了後、


原始の森の守備に当たって頂く事に成るでしょう」



「ほほ~、と言う事は、王国の兵も減ったので、原始の森は、


経験の有る我らに任して、原始の森の最前線に有る、精兵を王都に


呼び戻して、兵の拡充を図りたいと言う訳で?・・・・



其れと同時に減った王国民を補充しようと言う考えで御座いますか?


いや、其れだけでは有りませんな、現在アレス王国の民は、


飢えに嘆き苦しんで居ります。


其の民の救済で御座いますか?」



俺は、静かに頷く。



「う~む、成程、最近強大な魔法で、ヨシュア王国の大地に大規模な、


運河が作られ、農業用、用水路が張り巡らされて、


肥沃な大地が造られたと言う報告が有りましたが・・・・



搾取されて苦しいのであれば、より人道的なこの国の、


肥沃な大地で生きて行けば良いでは無いかと‥‥」



「はい、王様は、民が平和に生きて、そして、平和に死んで行く


そんな国づくりを目指して居ると、言って居りました。」



「・・・・アレス国王とは偉い違いだな、しかし・・・・


私達は、アレス国王を、裏切った身であります。


ヨシュア国王は、裏切るとは思って居られ無いのですか?」



「ヨシュア国王もバカでは有りませんからね、


でも、私は見て居ました。あなた方がジオンの街の民を逃がし、


領地の農村の民を逃がして、



モンスターパレードの背後に付いて、王都軍と


挟み撃ちにしようとして居た事、


アレス国王が農村部を見捨てた時に逃げる民を守って、


兵を進めた事も、其の動きの速さには、



驚いて居ました。王様も、此の事を話すと、


喉のつっかえが、取れたみたいで、


直ぐに今回の、決定をされました。」



「ヤマダ様は、全て知っておいででしたか、


しかし何故?・・・・」



「其れは・・・・ひ・み・つ・です」



「・・・・はあ?・・・・」



「現在、ヨシュア王国には、肥沃な無人の大地が広がって居ります。


難民の二十万や三十万であれば、何時でも入植が可能ですが、


残念乍ら、難民を指揮出来る人材も又不足して居ます」



「と、言うと、有能な貴族も又、受け入れると言う事でしょうか?」



俺は、頷くと、



「有能で有ればですがね・・・・時間もあまり無いでしょうし、」



「アレス王国に、な、内乱が起こると言う事ですか?」



「起こらないに越した事は無いのですが、恐らくは‥‥」



「そうですな、もし、勃発したら、多くの難民の命が、


奪われる事に成るでしょう。私も其れは避けたいですな。


補給は如何されますか?」



「良い所に目を付けられました。補給線の確保は絶対条件と成ります。


遭難者を助けに行って、二重遭難して居たのでは、本末転倒ですからね、


飛空艇によってネズ湖と、エスカル湖のアレス王国側の、


ヨシュア王国の税関倉庫を使わせて貰える様に話は済んで居ます。」



「飛空艇?北大陸に2隻しか無いという?」


「今は2隻ではないですね、帝国の物を合わせて、


4隻と成ります。その内の3隻を物資輸送の為に使う予定です。


この会見終了後、アレス王国側の、税関倉庫に行き


一回目の物資の搬入に向かう予定ですね」



「凄い3隻ですか?我々の為に其処迄・・・・分かりました。


そこ迄、話が出来て居るのであれば、今日にでも、


早速兵を選別してアレス王国に、向かわせましょう、そして、


優秀な貴族にも心当たりが幾人か有るので、


使者を向かわせる事と致しましょう。


では、ゲン頼んだぞ」



「はっ!承知致しました!」



大工・・・・ゲンさんは、与えた装備を大事そうに担ぐと、


直ぐに外へと消えて行った。


何故か皆、指を銜えて、羨ましそうな目で送り出して居た。



其の後、三貴族は、俺の前に跪くと、



「「「「「此れより私、タイゼン、ジオン、


(ゲンマ、ビナス)(デュラ、ゴリアテ)


(ミューズ、フリッカ)(レベッカ、ソーン)


本日、只今より


国王様とヤマダタカシ大公殿下に忠誠を誓います!」」」」」



う~ん、装備が欲しいのね、そうなのね・・・・


何か、キラキラした目で俺を見てるんですけど~


と、言う事で、王国に忠誠を誓った皆に新しい装備を渡した。



男性陣には黒龍騎士装備、女性陣には、赤龍騎士装備だ。


刀は、魔力持ちなので、竜鱗魔剣だ。


またいつもの如く、


きゃーきゃー言い乍らその場で着替え始めたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ