-62話ー 難民救済1
朝食後、桟橋に、黒龍号を横ずけして、
アニオタブラウニー少女戦隊と、サファイヤが乗船すると、
俺も乗船して、艦橋に有る水晶に魔力を充填してから。
「皆~今回の一泊二日の航海は、ジョンさんの家族旅行だけど、
練習航海でもあるから、頑張ってね~」
「皆は~い!」皆
発艦の準備をし乍ら、宰相のジョン公爵の到着を待った。
やがて、ジョン公爵の家族が到着すると、
三人を、貴賓室に案内してから、娘のミラちゃんに、
「ミラちゃん、君の部屋は、隣の艦長室ね~」
「えっ、では、艦長は如何されるのですか?」
「私は今回は、皆と同じ士官用のカプセルホテルで寝泊まりします」
「ボクは、静かな方が良いから、第二艦橋のカプセルホテルで寝るよ」
何か、皆、色々と出発前に決めている様だった。
発進の準備が終わると、俺は下船した。
黒龍号はやがて、
ごおおん、ごおおん、ごおおん、と言う、低い機械音と共に
離水すると、何やら、音楽が流れて来た。
すると、マッシリ湖の沖合に
巨大な、黒龍が現れて、何やらくるくると、回って居る。
やがて、黒龍はブレスを発射すると、
黒龍号の傍を通り抜け、大空に消えて行った。
そうして居る間に魔力砲が発射された。魔力砲は光を発光させて、
その光を収束させる事で高熱を発生させる、
レーザーみたいな、武器なのだが、
発光、照準、収束、と言う三つの魔法を組み合わせた武器で、
魔力量が少ない割には、ワイバーン程度であれば、
一撃で撃墜も可能なのだが、
モンスターの数が多い場合不向きとだと言う欠点も有ると
リリーが言って居た。
まあ、焦点をずらして置けば、殺傷力はまるで無い訳だ。
魔力砲は黒龍に命中した。黒龍は煙を上げながら、
錐もみ状に湖に墜落して行った。
何か、黒龍号から、歓声が上がった様な・・・・
「何か、黒竜が自分から当たりに行ったような?
・・・・楽しそうだね・・・・」
次に王様に赤龍号を桟橋に横ずけして貰い
王族女子チームが乗り込んだ。
王様も乗り込もうとしたが、
王妃様とお母さんのバーバラさんにシッ、シッと、
追い払われていた。
「うん、王様、ファイト~」
可愛そうな王様は、
軍務大臣のヘンリーさんと財務大臣のシャルルさんに、
引き摺られて行ったのだった。
「其れでは、タカシ様、私達もそろそろ、
王宮農場に置いてある、赤いバラ号で、
出発致しますね、
日が沈む前には、エスカル湖に到着できるでしょう」
「はい、アニタ様、エスカル湖の方はお任せします。
御足労をお掛けしますが、宜しくお願いします。
私達も昼には、ネズ湖に到着出来ると思います。
お互い事故の無い様に頑張りましょう」
「アレス王国の難民の皆様も同じ女神教の信徒ですからね、
一人でも多くの命を救える様に努力いたしますわ、」
「はい、そうですね、
一人でも多くの命を救える様に頑張りましょう。
アニーちゃんもござる君も、
セリカ艦長もサニー副艦長も、宜しくお願いしますね、」
「「「「はい、承知致しました。(でござる)」」」」
「ルビー皆を宜しくね~」
「おう、任せて置きな」
「アニタ様一行じゃあ、行って来ま~す!」アニタ様一行
「は~い、行ってらっしゃ~い」
俺は、アニタ様一行を見送ると、赤龍号に乗船し、艦橋へ、
艦橋では、王様のお母さんの、
バーバラさんを、艦長として、リリーの
指導の下、発進シークエンスが、進んで居た。
「風船内の魔法ガス異常なし!」
「魔法動力炉、異常なし!起動!」
キュ~~イ~ンと言う金属音が響き、
「魔法重力装置、異常なし!起動!」
シュイ~~ン、ゴン、ゴン、ゴン、ゴン・・・・
「赤龍号、離水します!」
鈍い俺にも、赤龍号が離水して、水飛沫をまいて居るのが分かった。
「赤龍号、高度150M、200M,300M,500M、」
艦橋からの景色がどんどん、小さく成って行く。
「高度、800M、900M,1000M,高度固定します!」
「タカシ様、宜しいですか?」
「あっ、はいどうぞ、」
「では、赤龍号、発進!」
「メイン動力プロペラに接続、メインプロペラ起動!
赤龍号、発進します!」
「南西の風15M、結界、展開!」
「目標地点、ネズ湖、進路東南東!」
「進路、東南東!ヨーソロー!」
「ゆっくりで構いません、
確実に操舵して目的地に向かいましょう!」
「乗組員はい!艦長!」乗組員
う~ん、アニオタブラウニー少女戦隊とは、偉い違いだわ、
皆、初めてで、いきなりの練習航海の為、
めっちゃ緊張している。
俺は艦橋の端で、皆を見て居るのだが、
俺の所に迄緊張感が伝わって来る。
エストア大河の上空1000Ⅿ、
雄大な大河は、アマゾンの航空写真みたいである。
暫し、その雄大な景色を眺めて居ると、最年少で12歳の
軍務大臣のヘンリー侯爵の娘であるリンが、
紅茶を持って艦橋にやって来た。
「おば・・・・艦長!バーバラお姉様!
お茶をお持ち致しましたわ、」
う~ん、幼いのに凄い気を使ってるわ~
バーバラ艦長は、にっこりと笑って、
「リン、ご苦労様」
「・・・・う~ん、何と言って良いか・・・・」
リリーの作った飛空艇は、
基本艦橋で集中して、艦を操れるように、
工夫されて居り、故障した時のみ、
取り付けて有る装置の所へ行く様に成って居るが、
ストレージに収納して有れば、
リリーのメンテナンスも受けられる訳だ。
ストレージの中には、時間の流れが無い、
赤龍号も、昨日着水した時の状態で保管されており、
リリーが、メンテナンスを施して居る。だから、今日桟橋に出した時、
異常確認して、直ぐに各機能を起動する事が出来た訳だ。
本来であれば、ガスの注入だとか、
魔力の充填などをしなければならないのだが、
それらを、すっ飛ばす事が出来た訳だ。
艦橋に居るメンバー以外は、
何か起こる迄は暇であり、する事があまり無い、
今は貴賓室で景色を見ながら、お茶をして居る。
俺は、ストレージの中に仕舞って居る
大量のクレープをお茶うけにする様に、
念話で、赤龍号、黒龍号、赤いバラ号、の皆に指示する。
皆から、喝采を受けてしまった。・・念話で・・・・う~ん。
「又、ポチとクレープの作り置きしとかないとダメだね~」
艦橋には、艦長の王母であるバーバラさんの他に、
副艦長のお妃様であるジャンヌさん、
娘のメアリー王女、王国魔導士のウインザーさん、
赤龍騎士団長のアンネさんの五人だ。
他の娘達は一般船員に成るらしい、大丈夫か此の船、
『大丈夫っスよ私が、世界一の海兵に育てるっス~』
「まあ、程々にね~」
『はい、了解っス~、死んでもエリクサー、一杯作って有るっス~』
「死ぬのが前提かい~」
『まあ、エリクサーは、余り要らないッス~
ハイポーション位で収まる様にするっス~』
「・・・・・・」
航海は順調に進んで、昼前には、ネズ湖に到着したが、途中一度、
ワイバーンが近づいて来たが、此方を視認すると、
脱兎の如く逃げて行った。
何でも、ドラゴンの鱗で覆われている為だとかで、
弱いモンスター何かは、逃げ出すらしい、
「ワイバーンが弱いモンスターって・・・・
大きかったよ、多分・・」
ネズ湖は、エストア大河が原始の森から、
ヨシュア王国に流れ出て、暫く行った所に有った。
此処は、王国の北西部の端っこで、
俺の領地に成るアイザック地方に有る訳だ。
もっとも、貿易の町ネズは、
王国の直轄領に成る訳だが、俺達は其のネズの港に、
飛空艇を着水させて、船着き場に係留した。
今回降りるのは、俺と、マリーとエメルダの三人で、
他の皆はお留守番だ。俺達三人は下船すると、
二人の兵隊を連れた係官がやって来たので、
王様から貰った親書を見せると、
怪しい者を見る目で此方を見ながらも、
代官の詰める建物へと案内してくれた。
まあ俺達のいで立ちは、迷彩柄のポンチョに
オフロード用のプロテクターなのだ。
知らない人が見れば、凄っごく歌舞いた、
目立つ冒険者と言う所だろう。
怪しさ大爆発だ。とっ捕まらないだけでも、有難い、
王家の紋章入り親書万歳だ。
代官の詰める建物は、三階建ての石造りの頑丈そうな、
宿屋と言う感じの建物であった。
入り口には、数人の兵隊と、一人の女騎士が立ち番をして居た。
係官が赤毛の女騎士に、王家の紋章入り親書を手渡すと、
女騎士が此方へとやって来た。
凄っごい怪しそうに、俺の顔を見ると、
「こほん・・・・私はネズの町の守備隊の副隊長で、
守備隊隊長で、代官のミューズ女男爵の、
護衛をして居る、レベッカと言います。で、貴方は?」
「此れは、申し遅れました。
俺は、新米冒険者のヤマダタカシと申します。
今回は王様に頼まれまして、協力させて頂いて居ります。
内容は、この手紙に、書いて居ると思いますので、
お代官様に渡して頂けますか?」
と、代官あての手紙を渡した。
レベッカさんは、手紙の封蝋を見ると、
「お代官様?・・
こ、此れは国王陛下の紋章の封蝋では有りませんか?
勅命なのですか?」
「はあ王様、直に書いてたし、勅命なんですかね~」
「王様?・・す、少しお待ちいただけますか?」
と、言い残して屋内にすっ飛んで行った。
と、間を置かずに、今度は、金髪ショートの女騎士が、
すっ飛んでやって来ると、両の膝を付いて、祈る様に手を組んで。
「あ、あの、ヤマダ様で御座いますか?」
あのってどのヤマダさん?
「あのか、どうか分かりませんが、ヤマダです」
女騎士は、キラ、キラ、した目で、
「私、ヤマダ様のファンです、結婚して下さい!」
「無理です」
「・・・・・・ですよね~こんな三十路ババアなんてダメですよね~
ええ、分かって居ますよ、わかってますとも、
・・・・必死だったんですよね~
傾いた男爵家を立て直すのに、
武門の家に相応しい様にと、剣一筋の人生でしたから、
でも、夢見たって良いじゃ無いですか~
夢見たって~思いません~?
こんなんでも、恋する乙女なんですよ~
救国の英雄に憧れるじゃ無いですか~
私も~こんな英雄に、
お姫様抱っこされて、助けて貰いたいの~」
後から来た女騎士が固まって居た。
「あ、あの黄金のバラと謳われた、
女騎士憧れのミューズ様が、恋する乙女・・・・
救国の英雄に恋心・・・・救国の英雄って誰?」
「あら、レベッカ貴方は耳にして居無いの?
凄っごく目立つ歌舞いた格好の冒険者が、
三柱の女神様を引き連れて、
十万の悪魔の軍団を殲滅して、王族様達を救出した話を?」
「いいえ、聞いて居りません、って、
救国の英雄どころか、救世主じゃ在りませんか~」
「ええ~そうなの~此処も風前の灯火だったのよ~一日遅れて居たら
私も、貴方も此処には居なかったでしょうね~」
「ま、マジですか?」
「マジです。一つ向こうの町、無人だったでしょう?」
「一人も助からなかったと?」
コクリと頷く、お代官様、
「で、ヤマダ様今回の御用件は?私と結婚とか?」
「違います。手紙を読んで下さい」
がくりと、うなだれながら手紙を読むお代官様。
「読んでないのかよ~」
「話は分かりました。全面的に協力いたしますわ」
「宜しくお願い致します」
「妻として当然です!」
「あっ、妻なんだ~」
「先ずは、説明を致しますね、」
「はい、」
「国王陛下の勅命で、対岸にひしめいて居た、
難民の入国支持と共に、食料の供給、此れにより、
船での難民の移動を行うとともに、街の外での
難民キャンプを設営致しました。
まあ、アバラや同然では有りますが、何とか、
雨露はしのげて居ります。
最近では、行先の決まった難民を送り届けて居ります。
此処には、護衛と成る兵が居りませんので、
難民と一緒に脱出された元貴族の兵を借り受けて、
護衛に付けている次第で御座います。
守備兵だけでは、街の守備だけで手一杯なので、
難民キャンプは三人の元貴族の兵が、
守備して居ます。食料が、何とか、行き届いて居る事も有り、
野党や、人買いによる、誘拐や、人の売り買いはされず、
着の身着のまま、逃げて来たにしては、
治安も比較的に安定して居り、安全ですね」
「うん、成程其れは、上に立つ貴族の方が兵隊に信頼され、尚且つ、
軍律がちゃんと、機能して居ると言う事ですね」
「流石ヤマダ様、其のとうりです。
元、貴族の方達は、武門の出と言う事も有り、
民には平等で優しく、又、規律を重んじて居るご様子で、
私とも話が合います。
ですから、今回の話は、良い結果が得られる事でございましょう」
「では早速、其のお三方に会いに、難民キャンプへ行きますか」
「いいえお三方は、家族も居るので、
街に家を借りて、仮住まいをしておいでです。
レベッカ、ゲンマさんと、
デュラさんをタイゼンさんのお宅へ直ぐに集まる様に
先ぶれを出して頂戴、大至急の要件だと伝えてね、」
「はい!承知致しました。ミューズ様、」
「では、タカシ様、私達も向かう事に致しましょう」
「は~い」