-22話ー 大雨
俺達が、風呂と夕食を済ませて、各自、飲み物を飲みながら、
スロージャズを聴いて、寛いでいる時に其れは起こった。
マップ上にブレスと書かれた文字が王都を越えて、モンスターの群れを
飲み込み、更に、モンスターの第2陣をも、飲み込んで、
原始の森深くまで達していた。
ブレスの通った後には、王都も人も、モンスター迄も、等しく
消えて無くなっていた。
「えっ、何じゃ~これ~!!」
俺は、思わず叫ぶと、食堂の扉の外に飛び出した。
ノル砦の方角の空が、赤く染まっていた。
血の様な、毒々しい色である。
余りの光景に、呆けて固まっている俺の後ろで、
マリーとエメルダが、呆然と、立ち尽くしていた。
「あっ、いかん、いかん、」
俺は、気を取りなおすと、先ず、状況を、調べる。
マップで見た通り、ドラゴンブレスなのだろう、第2射が来て、
直撃した場合・・・・・
結界が持つのか?
『リリー、』
『リ はい、マイダーリン、何か、凄かったっスね~
あれは、赤き神竜のブレスっスね~
直撃してたら、やばかったス~』リ
『何か、結界の外から凄い音が聞こえるんですけど~?』
『リ ええ、結界の外は、熱風が吹き荒れているっスよ~
危険なので出ないで下さいね~
大火災も起こっているようっスから~』リ
『凄いシュチュエーションなのに、何か、軽くない?』
『リ 其れが私っスから~、常に巾着冷静っスよ~』リ
『いやいや、沈着冷静でしょう~』
『リ そうとも言うっスね~』リ
『リリー、びびってる?』
『リ ・・・・・結界、後2つ位、重ね張りして置くっス~
3重の結界なら、ブレスの3発くらいなら、耐えられるっス~』リ
『あっ、ごまかした。
大火災は大丈夫なの?照り焼きになるのは嫌だよ。』
『リ 其れは、問題ないっス、ドラゴンブレスにも耐えられる、結界っス、
大火災位なら、何て事ないっス~
其れに、自然火災では無いので、じきに舞い上がった、水蒸気が冷やされて、
大雨が降りだすでしょうから、
後数時間もすれば火災も鎮火するっスよ~』リ
『あっ、それ聞いた事あるよ~核の雨ってやつ~?
放射能は大丈夫~?』
『リ まあ、違うっスけど~似た様なもんっス~
核爆発では無いので、放射能は心配いらないッス~、』リ
「なら、大丈夫か、
マリー、エメルダ聞いての通り、大丈夫らしいよ、」
「マ タ、タカシ様、いつも、リリー様と
こんな会話をなさっているのですか?」マ
「エ 夫婦漫才みたいですね~」エ
「夫婦漫才言うな・・・・・戻ろうか?」
「「マエ はい、」」マ、エ
俺達は、食堂に戻って席に着き、
「人もモンスターも沢山死んじゃったね、」
「「マ、エ はい、何か気が抜けちゃいました。」」マ、エ
「ですよね~一瞬で、終わっちゃったからね~
構える暇もなかったよね~
所で、赤き神竜って知ってる?」
「はい、神話に出て来る山の様に大きな竜で、
何でも、神魔大戦で神々の先鋒として、
大活躍したとか?」
「何でも、赤、白、黒、青、緑、の五柱の女神様で、
始まりの竜と呼ばれていますね。」
リリー、説明出来る?
『リ はい、出来るっスよ~
この地上世界が生まれた頃に、生まれた現地産の神っス~
神としては、下級神になりますが、戦闘特化した女神になるっス、
体長はおおよそ、150メートルは越えているっス~
翼を広げると、まあ、軽く300メートルは越えてしまうっス
赤は火を司り、白は、光と生、黒は死を、青は水を、緑は大地を司っているっス。
約2万年前の神魔大戦で五柱の神竜が先鋒を務めて、
暗黒大陸と呼ばれている大陸で
大暴れしたっス、結果緑豊かだった大陸の、南大陸、北大陸は、
今も人が住めない大陸になったっス、
其れが、大神フレイヤ、まあ、女神教のご神体っスね~
の怒りを買って、酷い罰を受けたらしいっス~
五柱の女神たちは、何でも其れが原因で今でも寝込んでいるそうっス~』リ
「話がでか過ぎて、理解できん、
大陸で大暴れしたら、人が住めなく成るって、
どんだけ、暴れたんだよ、
有難うリリー」
『リ まあ、ざっくりと、こんな所っス、分かったっスか?』リ
うん、ムリ、
「「マ、エ ですよね~」」マ、エ
「・・・・・寝るか」
「「マ、エ は~い」」マ、エ
俺は、すぐに、寝床の支度をして寝る事にした。
「お休み~」
「「マ、エ お休みなさ~い」」マ、エ
・・・・・俺は、美しい妖精と踊っていた。木から木へと、
花から花へと、手を繋いで、グルグル回りながら、
妖精は楽しそうに、くるくると、笑っている。
とても、可愛いく、永遠にも思える、楽しい時間、
突然、青空は、暗雲に覆われ、黒く染まり、雷鳴が響き渡る。
「うるさいよ~君達、気持ち良く寝てたのにさ~
如何してくれるのさ~」
突然大きな黒い山が動き出す。可愛い妖精は、力無く落ちて行く、
恐ろしく、大きな顔が俺を睨み付ける。
・・・・・巨大な黒いドラゴン、・・・・・
楽しく遊んでいた、妖精を殺された怒りで、
俺は、ドラゴンを睨み付けた。足はがくがく震え、
言葉を発する事も出来ない、既におしっこと、うんちは、
漏らし切っている。
「君さっきから、目の前をちょろちょろして、
鬱陶しいよ~」
巨大な黒いドラゴンは、まるで、蚊を叩くように、
俺を叩き潰した。
・・・・・俺はそこで目を覚ました。
「う~ん、せ~ま~い~」
目の前の視界がふさがれている。・・・が、柔らかい?
マリーかエメルダが抱き付いている様だ。息も苦しい、
背中にも柔らかい物が張り付いている。
後ろからも、抱き付いている様だ、
徐々に目が慣れてきた。マリーが俺の顔に胸を押し付けて、
抱き付いている。後ろからエメルダが抱き付いている。
感触からして、二人共全裸の様だ。
狭いソファーに三人横向けで器用に寝ていた。
「なんて器用な、・・・・・お前らのせいで、又
おしっことうんちを出し切る、怖い夢を見たじゃ無いか
・・・・如何してくれようか~」
二人同時に、うん~ムリ、アブノーマルでない俺は、
早々に、仕返しを諦めて、マリーの胸の谷間に鼻を入れて、
呼吸を確保した。
マリーが蚊の鳴くような、小さな声で、
「マ おとうさん、おとうさん、怖いよ~、タカシ様、助けて、」マ
「寝言か~?そうだよな~俺だけじゃない、
二人共、怖い思いをしてるんだよな~
・・・・・寝るか、」
マリーの腰の下に、腕を入れて、抱き寄せ、
ソファーから落ちない様に支えてから、又直ぐに
眠りに落ちて行った。
ピピピ・・・・・・・・・
・・・・・『リ ダーリン、そろそろ、起きる時間っス
う、う~ん、お早う~リリー』リ
目を開けると、マリーもエメルダも既に起きており、
俺は、エメルダの膝枕で目覚めた、
マリーは、俺の足を膝に乗せていた。
なぜ、足?
「お早う~マリー、エメルダ、」
「「マ、エ お早うございます、タカシ様~」」マ、エ
「マ タカシ様聞いて下さいよ~膝枕をどちらがするかで
じゃんけんに成って、負けてしまって、
仕方が無いので、タカシ様の、足を膝に乗せているんです~」マ
エメルダが、どや顔で、
「エ えへへへへ~」エ
「マ 悔しいです~」マ
「まあ、あれだ、二人共有難う」
「「マ、エ は~い」」マ、エ
ポチは我関せずと俺の頭の上で寝ている。
「・・・・あれ、なんか、ポチでかくなってね?」
「「マ、エ あら、そうですねぇ」」マ、エ
ポチが、ビー玉サイズから、餅サイズに成長していた。
窓の外を眺めると、浜辺の景色で、雨が降っている。
『リリー』
『リ はい、マイダーリン、』リ
『何か、窓の外、雨なんだけど~もしかして、
外は雨なの?』
『リ そうっス、外は大雨っス昨夜の災害に低気圧が影響された様っス
其処かしこで、濁流が、発生してるっス、
結界の中は水の底に沈んでも大丈夫っス、危ないので、
結界の外には出ないで欲しいっス~
まあ、水が引くまで、何日間は此処で足止めっスね~』リ
『リリー有難う、』
「マリー、エメルダ、聞いての通りだ。」
「「マ、エ はい、致し方ありませんね、」」マ、エ
俺は、少し、後ろ髪を引かれたが、二人の膝枕から、体を起こすと、
立ち上がって、ドアを開けてみた。
<がちゃり、>
<どどどどどどど~!>
<がちゃり、>
「何今の?」
『リ はい、濁流が、精霊街道に流れ込んで、川に成って居るっスね~
長城に近い此処は、高台ですので良かったっス~』リ
「いやいやいやいや・・・・・何か、前後ろ濁流が流れて、
何か、凄い音がしてたよね~、ね~
孤立しているよね~此処、孤立しているよね~」
『リ たぶん、大丈夫っス、何時までもこんな大雨は続かないっス
昼頃には大分弱まる予報っス、』リ
『予報って何?』
『リ 予報は予報っス、
ダーリンのマップの機能で天気予報が有るっス、』リ
『マ、マジっスか~其れは、便利ですねって、そう言う事は早く教えてよね、
気象庁が有るのかと思っちゃうでしょ!』
『リ 其れは、申し訳無かったっスって、私のしゃべり方、
マネしないで欲しいっス。』リ
「食い付く所、そこ~?」
『リ 気象庁より、正確っスよ~予報の正解、確率100%っスよ~
ちなみに、現在、大雨洪水警報が出ているっス~
予報は午前中は大雨、午後から雨脚は弱まるものの、
3日間は降り続くでしょう、っス~』リ
「マリー、エメルダ、聞いての通り暫く此処で、
足止めになる様だよ、」
「マ 夫婦漫才?」マ
「エ どつき、漫才?」エ
「ええ加減に、しなさ~い」
『リちゃん、ちゃん、っス~』リ