-21話ー ドラゴンブレス
俺はモンスターの動きを見ている内に、
いつの間にか、眠りに飲み込まれていった。
・・・・・・
ピピピピピピピピ・・・・
『リ ダーリンそろそろ起きて下さいっス、
だいぶ、日も高くなっているっス、』リ
「うっ・・・うん、リリーお早う、
って、いつの間にか、寝ちゃってたみたいだね~」
マップを見てみると、既にモンスターの大群は、
ジオンの街を飲み込んだ後で、かなりの勢いで、
王都へと、進軍していた。
村々を飲み込みながら、
当然、飲み込まれたジオンの街や、
飲み込まれた村々に、生きている人間は、一人も見当たらない、
正に、死のパレードだ。
俺は分かっているのに、何も出来ない、罪悪感や、無力感に、
苛まれながら、起き上がった。
マリーとエメルダは、既に起きて、ぼんやりと窓の風景を見ていた。
強がっていた、彼女たちも、己の無力さを痛感しているのだろう、
「いかん、いかん、こんな時こそ、しっかりしないとね、」
俺は切り替える事にした。
先の事を考えよう、最優先事項は、とにかく、ノル砦から、もっと、離れること、
この先何が有るのか、全く予想がつかない。
とにかく、早く動く事にした。
「マリー、エメルダ、お早う、昨夜からモンスターパレードが
始まった訳だけれど、俺は、急いで、ノル砦からもっと、
離れようと思う、朝食は、歩きながら取るから、
二人共急いで、支度して、」
「「マ、エ はい、承知致しました。」」マ、エ
~場所は変わって~
そいつは、気に入らなかった。
ふっくら柔らかい、メスの肉がくえると、思っていたのに、
そいつは、気に入らなかった。
恐怖に引きつり、手の中で、身をよじり、断末魔を上げるメスを、
生きながら噛み千切る様を夢見ていたのに、
昨夜、多くの仲間と共に、小躍りしながら、深い森を飛び出して、
人間共の、領域に、ふっくら柔らかい、メスの肉を、
恐怖に歪み、身をくねらせ、断末魔を上げる、メスの肉を、
生きたまま、内臓を引きずり出して、
食い散らかす為に、やって来た。
そいつは、気に入らなかった。
人間共が少ない、
そいつは、気に入らなかった。
捕まえた、人間共は、痩せこけていて、美味くなかった。
そいつは、巨大だった。優に5メートルを超える身長は、
オーガの身長を凌駕していた。
額には巨大な角が2本、そいつは、特別だと主張していた。
キングと呼ばれる、そいつは、
仲間から、溢れる位たくさんの人間共がいたと言う、
その街を目指して、一直線に進んでいる。
村々を飲み込みながら、
だが、人間共は少なく、奪い合い、殺し合い、
殺した仲間をも食っていた。だが、其れも、今しばらくの事、
明日中には、人間共のメスの踊り食いが出来るのだ。
・・・・・・
「マリー、エメルダ、歩きながらの朝食だったけど、
大丈夫?」
「マ はい、タカシ様、全然OKです、」マ
「エ パーティーの行軍では普通ですよ、夜、眠れるだけ
有難いです。」エ
うん、心強い返事だ。
俺達はすでに、3つ目となる、ゲバン砦を越えて、
4つ目のゲム砦を目指している。
日が落ちる迄には、越えられる予定だ。
モンスターの大群も、村々を飲み込みながら、
王都に向けて、行軍している。
領内の村は、領主が予め、避難を呼びかけていたのだろう、
動ける者は、ヨシュア王国に向かって、逃げ出している。
殆ど、間一髪で、何とか、難を逃れている。
しかし、王都は別だ。何の情報も無く、モンスターに蹂躙されるのを、
待つばかりである。
「あっ!王都から大勢の人が、ヨシュア王国に向かって逃げ出している。」
「マ こ、此れは、どうやら、国王は、農民を見捨てたのでは無いでしょうか?」マ
「エ 下級兵などは、殆どが農民出身ですから、
とうとう、王を見限ったのでは無いでしょうか?」エ
「あっ!モンスターに距離を取って、背後に、張り付いてた、領主軍が、
方向転換して、ヨシュア王国に向かって移動しだした。」
「マ 領主や、兵達も王を見捨てた様ですね、」マ
「エ 王都の兵だけでは、モンスターの大群に、
歯が立たないでしょう、」エ
「それで、急を聞き付けた、民衆も逃げ始めたのか、」
「エ 誰も死にたくは無いでしょうし、国王軍も民衆や脱走兵に
構っている余裕は無いですしね、後一日でモンスターが、
大挙してやって来るのですから、」エ
俺達は、日暮れ前には、ゲム砦を越えていた。
「マ タカシ様、そろそろ日も暮れますので、野営の準備を
なさっては如何でしょうか?」マ
「エ うん、うん、」エ
「そうだね~、明日の為にも、十分に休養を取っておかないとね~」
『リ マイダーリンちょっと良いっスか』リ
『リリー何だい?』
『リ ちょっと気になることが有るんで、
扉は高台の地盤が固そうな所に設置してもらえないっスか』リ
『OK~』
俺は、少し長城よりに坂を上り、
手近に有った、25M程の大岩の中腹に食堂の扉を出すと、
『ここで良い?』
『リ うん、良い感じっス』リ
そんじゃまぁ念のため、
強結界を張って、中に入って行った。
「とにかく、風呂に入って、今日の疲れを取りますか、」
「「マ、エ はい、」」マ、エ
俺は、食堂の中に、銭湯の扉を出して、
中に入って行った。中は現在通路に成っており、
左右は工事中だ。その通路を通り過ぎると、
昔ながらの、銭湯ののれんが掛かっている。引き戸を開け、
中へ、下駄箱に靴を入れて、木の鍵を持って中へ、
脱衣籠を取って、服を脱いで、
浴場に入った。
マリーとエメルダに掛湯をしてもらい、湯船に浸かる。
今日は皆、言葉少なめだ。仕方無いよね~
体が、温まったら、二人に、体を洗ってもらい、
今度は薬湯へ、今日は、流石に、マリーもエメルダも大人しい、
「マリー、エメルダ、先に出るよ、こんな、落ち込んだ時は、
薬湯が効くんじゃ無いかな~」
「「マ、エ はい、」」マ、エ
俺は脱衣場に戻ると、何時も通り、体を拭いてから
腰タオルで、ポチと一緒に、コーヒー牛乳を一気飲みして、
「くぅ~う、美味い」
ポチも念話で、『ポ くぅ~う、美味い』ポ と言っているが、
二人共、何処か元気が無い、
皆の服を新しい物と取り換えて、
体も冷めたので、服を着た頃にマリーとエメルダも上がって来た。
体を拭いて、バスタオルを巻いた二人に、
「マリー、エメルダ、今日は何飲む?」
「「マ、エ はい、フルーツ牛乳を、」」マ、エ
「OK~」
俺はフルーツ牛乳の栓を外して、二人に手渡す、
マリーとエメルダは、腰に手を当てて、
一気に飲み干すと
「「マ、エ くぅ~お、美味しい~」」マ、エ
今日も、見事に、ユニゾンを決める二人、
でも何処か元気が無い、仕方ないよね~
マリーとエメルダが服を着終わってから、俺達は、食堂に戻った。
夕食は流石に作る気がしないので、ママゾンで検索して、
駅弁シリーズと言うのを見つけたので、
一人二つずつ、釜めしと、いくら弁当だ。
俺は、弁当を皆に配ると、
「ごめんね、今日は流石に夕飯作る気がしないから、
俺の国の有名処の駅弁にしたよ、
マリー、エメルダ、悪いけど、お茶と味噌汁、取って来てもらえるかい?」
ヨダレを流す二人
「「ま、エ は~い」」マ、エ
「マ これは、中々」マ
「エ これはこれでアリですよね~」エ
そそくさと、お茶と、味噌汁の用意をする二人
「「「皆 では、頂きま~す」」」皆
何時も通り、福笑い顔で幸せそうに駅弁を食べる二人、
ポチも何故か箸を器用に使って食べている、
口は無いのだが、
何時も通り、念話で
『ポ おいし~ますたーすき、すき、あいしてる~』ポ
と言っている。駅弁を食べ終わった後は、
ママゾンでショートケーキを一人二つずつ購入して
マリーとエメルダは紅茶、俺と、ポチはコーヒーを飲みながら、
美味しく頂いた。
「マリー、エメルダ、ノル砦前の原始の森なんだけれど、
又モンスターが集まって来ているんだよね、
第2陣だよね~もう、1万以上集まっているんだよね~」
「マ 第2陣で間違い無いでしょう、このまま放置していると、
際限なくモンスターが集まり続けるでしょう、」マ
「エ 残念ですが、私達には如何する事も出来ません、」エ
「ですよね~」
~場所は変わって~
「う、う~ん、誰だよ、俺を起こすのは~
イケメンとイチャイチャしている、良い夢を見てたのにさ~
女神教の信者の断末魔で目が覚めたじゃ無いか~」
山が動いた。その山から、地鳴りの様な声が、響く、
「これは、お目覚めに成られましたか、赤き神竜の女神様、」
「お前は?」
「はい、この竜の谷の長でございます。」
「いったい何が起こっているんだい?」
「はい女神様、人間共が魔物を間引くを怠った為、
原始の森より、モンスターが溢れ出してございます。」
「ふ~ん、それが、人間共を蹂躙しているのか、
放置してたら俺が、大神フレイヤに叱られるじゃねーか、」
赤き神竜が顔を上げ、体を起こした。
その巨大さは、頭から尻尾まで優に150メートルは越えており、
竜の谷の長のエルダードラゴンがまるで、子供の様だ、
赤き神龍は、遥か先の王都のその向こうのモンスターの
大群を睨みつけて、
「くっそう~原始の森の管理者は何をやってんだい。
黒いのは、一体、何してるんだよ~
後で文句言いに行ってやる!」
内容はともかく、その怒号を聞いた百数十頭の赤竜や、エンシェントドラゴン、
エルダードラゴンは地に平伏し、おしっことうんちを漏らしまくって、
大変なことに成っている。
しかし、流石に長の、エルダードラゴンは、臣下の礼を崩さない、
が、おしっことうんちは、出し切っていた。
赤き神竜の口から炎が漏れ始めた。
と次の瞬間、ゴワーっとブレスを吐き出した。
ほんの数秒の事だが、辺りは一面にオレンジ色に染まり、
赤き神龍の恐ろしい姿が照らし出された。
レーザー並みに高温に凝縮されたブレスは、
王都を一瞬で国王諸共蒸発させると、人間を貪り食っていた、
モンスターの大群を人間諸共、蒸発させた。
圧倒的な暴力の前に全ての物は塵と水蒸気に分離され霧散していく、
後に残った溶岩流が、其の凄まじさを物語っていた。
ブレスは更に、原始の森の第2陣を蒸発させると、
数百キロに渡って、森を蒸発させた。
原始の森は、南大陸を縦断して、海を渡って、
更に北大陸を南から北へ縦断している、長大な大森林だ。
北大陸の森だけでも、北大陸の7割以上の面積を有している、
人間が生まれる、遥か以前から存在している、太古の森なのである。
森が、赤き神龍に焼かれた、と言っても、ほんの1%にも満たないが、
ブレスの、通った後には、溶岩流が流れ、大火災を発生させた。
アレス王国が滅んだ瞬間であった。