ー188話― コンロン領 領民説明会
― アイゼンガルド王国、王城 ー
「王よ、アイゼンガルド王、ギドラ様!」
「ミニラ王国宰相よ、何事か!」
「国境のコンロン高地の砦より、
至急の報告が参って来て居りまする。」
「して、報告とは?」
「ははっ!帝国側に
巨大な城塞が出現したとの事で御座います。」
「何と!アイゼンガルド王国と、
帝国との陸地で唯一行き来可能なコンロン高地にか?」
「はい!左様で御座います。」
「帝国はアイゼンガルドを攻めるので有ろうか?」
「分かりませぬ!しかし、
城塞の規模は此の王城を遥かに凌ぐとの事、
さすれば10万の兵を駐屯さす事も可能かと、」
「帝国に攻撃を仕掛けて、
国土を拡張すると言う計画がバレたのであろうか?」
「しかし、帝国とは不可侵条約が有りまする。」
「馬鹿者!約束とは破る為に有る事を忘れたのか!
我が国も不可侵条約を破って、
帝国の地に侵略しようとして居るでは無いか!」
「コンロン高地は、厳寒の地、
何の旨味も御座いませんが、
其処から広がる大穀倉地帯、
其の一部でも手に入れば我が国の発展は
間違いないでしょう。
其の逆もまたしかり、
我がアイゼンガルド王国も、エストア大河が流れて居り、
其の周辺には、
近隣諸国が羨む大穀倉地帯が広がって居ります。
帝国も又、此の穀倉地帯を欲して居る
可能性も御座います。」
「何と!北大陸最大の穀倉地帯を
有して居ると言うのに更に
我が国の穀倉地帯を狙って居居るのか!
欲をかき過ぎじゃ!!」
「いや、いや、あんたが言うなよ」
「うん?何か言ったか?」
「いえ、何も・・・・・
で、国王よ如何致しましょうか?」
「我が国は帝国10万の兵に対抗出来るのか?」
「全然無理です!帝国がもし攻めて来たら、
アイゼン王国や、サージ王国、
ハレス王国や何かの周辺国が一斉に攻めて来るでしょう、」
「ダメじゃん!
周辺国とも不可侵条約を結んで居るのに?」
「弱った国から領土を切り取るのは
国家戦略としては当たり前です!
我が国もやって居ます。」
「不可侵条約、役にたたね~」
「約束とは破る為に有るのだと言ったのあんたでしょ~」
「うん?何か言ったか?」
「いえ何も、で、如何します国王陛下、」
「其の城塞取れないの?
取れたら一発逆転じゃん!」
「はい、偵察隊も近く迄行ったらしいのですが、
巨大な結界が張り巡らされていて、
中には入れなかったと、更に密偵の報告では、
エレノア、スタンダール女子爵が、
コンロン地方の領主と成ったそうです。」
「女が領主なら落としやすそうでは無いか?」
「其のエレノア、スタンダール女子爵は此度、
神界突破して、竜騎士に叙任されたそうで、
更に此の女子爵ですが、
ドラゴンスレイヤーの称号を持ち、
前回帝都周辺の中級ダンジョンで起こったとされる、
マンティスパニックで、英雄的働きをした一人とか、
更には、側近に超優れた治癒士に、
土の女神と、白の女神が何時も一緒だとか、
配下も、神界突破者数名と、
臨海突破の竜騎士がうじゃうじゃ居るのだとか、
アンジュ、ルグレスも入り浸って居るそうです。
アンジュ、ルグレスが言うには、
此の戦力だけで、北大陸制覇出来るとの事で御座います。」
「ダメじゃん!瞬殺されんじゃん!如何しよう~」
「如何しましょうか?」
「兎に角、平和路線でね、人質差し出す?
若い姫が居たよね~あっ!女子爵だったよね、
じゃあ、第7王子なんて如何?ショタだよ~」
「無理~エレノア、スタンダール女子爵は何でも、
モモタロウと言うショタ顔の治癒士に夢中だとか、
此のモモタロウと言うのが曲者で、
優れた軍略家で有り、
アンジュ、ルグレスのお気に入りでもあり、
神竜二柱にも言い寄られて居るのだとか、
更に、配下にエルダードラゴンが5人居るそうです。」
「いや、いや、此のモモタロウの戦力だけで、
北大陸制覇出来んじゃね?
じゃあさ~第六王女のサキ14歳を側室に送る?」
「無理~竜騎士を含めて、
数百人の側室候補が犇めいた居ます。
更に、他の貴族家も狙って居ます。
どんなに考えても王族だからと言って、
側室に成れる可能性は低いでしょう、」
「良いな~モテモテじゃん!
ま~どっちにしても、滅ぼされない様に、
第六王女のサキと、
第七王子のリョウを人質として送ろう、」
「そうですね、此処迄態度を低くしたのであれば、
帝国も余り無茶な事はしないでしょう。」
アイゼンガルド王国は戦わずして、
帝国の属国に成る事を決めたのであった。
今後の事を考えると、
ある意味正しい選択であったと言えよう、
「カンシ~ン~」
「はいご主人様、何か御用で御座いましょうか?」
「うん、今度の土、日コンロン領で、
領都の耕作地と、冬場の食料確保の勉強会をするから、
近隣の村人を集めて欲しいんだけど~良い?」
「何〇でもドアは使用しても良いでしょうか?」
「勿論行き来に時間を掛けて居られ無いからね~」
「承知致しました。勉強会ですが、
其の時に代官のコウメイと、
助手のリリアの紹介も行いましょう。」
「そうだね~此の間、エレンとも
話し合ったんだけれど
領都、結界内の耕作地なんだけれど、
リリーの話では、夏場の最高気温で、約30度、
冬場の最低気温も、0度を下回る事は無いようだね、
其処で、結界内は、主に麦と米と
緑黄色野菜を中心に栽培しようと思うんだ。
外延部に牧場と、養豚場と、養鶏場を設置して、
春夏は、牛と馬と、ブタを結界外で放牧して、
結界外は、
厳冬期に休ませないといけないから、
主な作物は、秋に収穫出来るジャガイモにするよ、
其の外コンロン川は、鮭が遡上するらしいので、
秋の塩じゃけの制作と、
結界内に面した所では人工授精させて、
春迄、稚魚を育てて、放流するつもりだよ、」
「はい、流石はご主人様です。
結界は、城を中心に半径約50キロと広範囲で、
一部コンロン川も含んで、居りますので、
前回造られた養殖場が機能するかと、
計画道理に進めば、
コンロン領は一気に発展いたしますでしょう。
極寒の地であり乍ら、
結界内はとても住みやすくなりますし、
正に北の都と呼ぶに相応しいです。
後はコウメイと詰めて置きます。」
「カンシン、コウメイ宜しく頼むね~」
「「承知致しました。」」
ー土曜日、コンロン城ー
「カンシン、地元住民は集まりそう?」
「はいご主人様、既に数十に及ぶ集落から、
代表者を謁見の間に集めて御座います。」
「うん、初見だしエレン、代表者として挨拶してくれる?」
「はい分かりましたわ、実質の代表はモモちゃんですのに、
良いのですか?」
「うん俺は、目立つの嫌いだしね、
影の支配者モモタロウです。
コウメイと、代官助手のリリアも挨拶考えておいてね、」
「「はいご主人様、お任せくださいませ、」」
「其の後は、今後の展望の勉強会を行うよ、
半径50キロの結界内は主に領主の耕作地と成るから、
給料制で、地元住人を雇う事にします。
耕作は主に、麦、米、野菜、牛、養豚、養鶏、
果物、将来的には酒蔵を作りたいと思って居ます。
皆のあいさつの後、其の説明をしたいと思います。」
「皆 は~いっ!」皆
モモタロウ一行は謁見の間に行くと、
各村落の代表者が膝を付いて既に待機して居た。
エレンを領主座に座らせると其の横にモモタロウ、カンシン、
其の反対側に、コウメイ、リリア、
此の5人を守るような位置に、
護衛のカンウ、チョウヒ、チョウウン、バタイ、
リュウビ、シュウユ、が左右に並び、
ハットリくんは、今日は屋敷の警備に残って貰って居る。
6人の警備の後ろに、新たに加わった護衛達が並んだ。
「皆の者、面を上げなさいですわ、」
「領民 はは~」領民
「私くしがコンロン領の領主の、
エレノワ、スタンダール女子爵ですわ、
そして此方に居るのが、
代官のコウメイと助手のリリアですわ、
此の先貴方達の窓口と成りますわ。」
「コウメイです。此れからコンロン領の、
一切を取り仕切ります。」
「リリアです。コウメイ様の補佐として、
直接貴方方との窓口と成ります。」
「ではモモタロウ、説明をして下さいな」
「はい、説明を始める前に、各代表者に聞きますが、
今迄、どの様な生活をして居ましたか?
はい、其処の君」
「は、は、は、はいですだ、
おら達は獣人ですだ、帝国領ではつま弾きにされて、
コンロンに辿り着きましただ、
此の辺りは標高も高く、
厳しい冬を越さねば成りません、
盗賊ですら此の辺りには、
寄り付く事は無い程ですだ。
毎年多くの同胞が凍死したり、
餓死する様な厳しい自然ですだ。
おら達は夏の間にライ麦を育てて、
冬場には魔物狩りをし乍ら
何とか食い繋いで居りますが、
何時死ぬか分からない暮らしをして居りますだ。
新しい領主様がいらっしゃると言うので、
如何やったら死ぬ事の無い様に
暮らして行けるのか、
其れを聞きたくて、
此処に集まって来ましただ。」
「はい分かりました。他の皆さんも同じですか?」
「領民 は~いっ!」領民
「はいでは、先ず提案させて頂きましょう、
此の城から半径50キロは結界に囲まれており、
夏場は、最高気温30度、
冬場の最低気温も、
0度を下回る事は余り有りません、
帝国の南寄りの気候と
ほぼ同じように設定して居ます。
結界の効果により、
大型の魔獣の侵入の心配も有りません。
盗賊や、隣国からの侵略が有っても
侵入される事は無いでしょう、
此の安全で温暖な地域で私達は、
麦、米、野菜、果物、牛、豚、鶏、ヤギ、ヒツジ、
等を育てる予定ですが、
此処で働く社員を募集して居ます。
各地区に社員寮を建て、生活の場とします。
其処から各部署に毎日働きに出て貰います。
あ~勿論週休二日制で、
1日3食の食事付きです。
社員寮は、男子寮、女子寮、家族寮に分けます。
給料は15日締め切りの
25日支払いとさせて貰います。
此れはどの社員も一律同じなので、
守って貰います。
如何ですか?今なら更に幾つか特典も付けますが?」
「働くだけで食べさせて貰えるだか?
おら達は食べさせて貰えるだけで、有りがてぇですだ。
お金は要らねぇですだ。」
「領民 うん、うん、」領民、
「うちはブラックでは無いので、
キッチリ支払いをしますよ、時間も、明るくなってから、
暗く成る迄です。結構長い時間にも成りますが、
残業は基本させません。
豊かな領内生活を送って貰います。
そして特典其の一、各地区に学校を建てますので、
子供達は其処で、
読み書きと、算盤の勉強をして貰います。
此れは子供達が成人してから、
何をするかの選択肢を持ってもらう為です。
優秀な子供には奨学金制度も設けます。
其れと、税金は給与から2割を徴収します。
此の中には人頭税も含まれて居ますので、
帝国内では自由民として過ごせます、
差別される言われは無く成ります。
特典その2,診療所を各地区に設けます。
安心して、暮らして行ける様になるでしょう。
此れは長期的な展望と成りますが、
小さな町を作りますので、
生活に必要な必需品を、
買い足せるようにしたいと思います。
そして、安心して暮らせる様に、
警備の兵を巡回させますので、
治安のよい環境で子育てをして下さい。
給与や、労務に関しては、
此処に居るリリアに相談して下さい。
で、有限会社モモタロウに就職したい人?」
「領民 は~いっ!」領民
全員手を上げた。
「今から荷物を取りに帰りますだ」
「はい、そしたら其れ迄に、
社員寮の準備をして置きましょう。
全員、一旦此処に集合して、
此れから住む地区に行って貰いますが、
此処で住民登録をして貰います。
良いですか~?」
「領民 は~いっ!」領民
「コウメイ、リリアいいですか?」
「はい、了解致しました。」
「モモタロウ様、リリアは感動致しました。
正に理想郷です。
コンロンに桃源郷が出来た見たいです。」
「褒めすぎ~」
「領民 桃源郷・・・・・
御伽噺で聞いた夢の世界・・・・・」領民
領民達が荷物を取りに帰った後、
「じゃ~社員寮と、学校を建てに行きますか~」
「皆 は~いっ!」皆
モモタロウは城から出ると、
エレン号を出して、各地区に社員寮と、学校、診療所、
警備の砦を建てに出掛けた。
「コウメイ、リリア、先ずは寮母を決めて、
全員にご飯がいきわたる様にしてね、」
「はい、寮母に関しましては、未亡人を優先して、
配置して行きます。
其れと、掃除と汲み取りや、ゴミ処理、
風呂等の設備管理の下働きも、
農作業が出来ない人達を優先して、
配置して行きます。」
「はい、お願いしますね、」
「でもモモちゃん、此れだけの好待遇ですと、
近隣の住人達が押し寄せるのでは無くて?」
「え~っ、押し寄せるには近隣が遠すぎるんですけど~
少なくても、
此の噂が広まるには凄く時間が掛かると思うよ~
一気に押し寄せて来たら対応に困るけれど、
徐々にであれば人口が増えるのは、有難いね~
結界の外は春からのジャガイモの耕作地と、
放牧地にする予定だからね~」
こうして、
コンロン領、領民受け入れ計画の第一日目は、
事前にエレンと話し合った計画通りに進んで行くのであった。