ー184話― 獣王国 物資の買い付け 1
アンジュ陛下とモモタロウ一行は南大陸中央に位置する、
獣王国へ交易に来ていた。
南大陸は北大陸最南端、コッサリア神国と、
南大陸海峡に隔てられた先に有る。
南大陸海峡は幅、およそ2キロあり、
北大陸と南大陸を分けている。
海峡の長さは1000キロ以上有るのだが、
其の殆どの地域は、コッサリア神国の西に位置する、
ハイチ大山脈と其の先に有る原始の森、南大森林、
更に其の先に有る、世界の屋根と言われて居る、
バベル山脈に隔てられて居り、
コッサリア神国の一部地域だけが、
空路、行き来可能地域と成って居る。
南大陸海峡は幅が狭い為に潮の満ち引きによって、
異常に流れが速く、水深も深い、
カニの生息地域の為に、其れを餌として居る、
クラーケンやシーサーペントの群生地帯でもある。
海の頂点捕食者、海竜の餌場とも成って居り、
船での行き来が不可能な海域でも有る為に、
古来より、流通は翼人族での空の流通のみと成って居た。
例外として、飛空艇での交易をコッサリア神国と、
帝国のみが独占して居た。
翼人族が運べる交易品の量は50キロ程度で有り、
其れを人海戦術で運ぶわけだが、
経費が高くつく、
香辛料等が高価である大きな理由の一つだ。
魔法の袋を持って居る商人等、余り居ないのだ。
コッサリア神国と、
帝国が裕福である理由の一つでも有る訳だ。
南大陸の大きさはアフリカ大陸程度ある。
北大陸はユーラシア大陸より少し大きいが大陸の7割が、
大山脈と原始の森が広がって居り、
人が住める地域は3割を更に下回って居る。
南大陸も同様で、6割が大山脈と、原始の森で覆われて居り、
大山脈で原始の森と分けては居るが、
大山脈の東には更に広大なジャングルが広がって居る。
田畑の耕作地帯は全体の1割にも満たない、
亜人種の8割の人々は狩猟を生業として居る。
亜人種の殆どの人々は身体能力が高く、
生命力が強い、
其の分おつむが少々弱かったりもする。
脳筋の人々が多いのだ。
其れだけに単純で、義理堅く主従関係で主を裏切らない、
現在迄人族に蹂躙されて居ない理由でもある。
亜人世界は金持ちが少ない、
大部分の民衆は自給自足の生活を送って居る。
腹が減れば狩りをするか、
果物をジャングルから取ってくれば事足りるのだ。
生きるのに厳しい北大陸とは大きく違う世界だった。
奥地に行けば未だに物々交換をする所さえあった。
そんな所では勿論税制は成り立たない、
国家を形成する為には、
何らかの収入が必要に成って来る、
其の分かり易い形が、魔物討伐による素材回収と、
冒険者ギルドによる素材の買取だった。
其の為に身体能力の高い獣人は尊敬されて居る訳だ、
其の頂点に君臨するのが獅子人族であり、
亜人達を纏めていた。
其の他に力は有るのだが、動きが緩慢な像人族や、
牛人族等は農業に向いて居たりする。
大量に香辛料を生産して居る訳だ。
其れ以外には広大な湿地帯での
水田開発を大々的に行っている。
米を生産して居るが、インディカ米の様な米で、
米に粘りが無い為に、ご飯にするのは難しい、
日本の米は長い年月を掛けて、改良されて来た一品で、
そうそう真似の出来る物では無いのだ。
モモタロウ達は獅子王の謁見の後、
簡易の宴を受け、エレン号に戻って来て居た。
獅子王の王都は城下町を中心に、
放物線上に広がって居る。
城下町は貴族街と成って居り
一般民衆とは内外壁により隔てられている。
街の住居は体の大きい獅子人族の為か大きめだ、
石造りの家か、日干し煉瓦の家が多く、
簡素な造りと成って居た。
街の外壁は高さ10メートル程在り立派だ。
モンスターの襲撃を警戒して居るのであろう、
丁度南門の門前街が商業区に成って居り、
バザーなんかも行われていた。
此処には人族の商人もちらほら見える。
此処迄買い付けに来ると言う事は、
アイテムボックス持ちか、
魔法の袋を所持して居るのだろう。
「如何じゃモモよ、獣王国は?」
「獅子人族の体格が凄い、
獅子人族、頭がでかいですね~
目玉お〇じか、セーラー〇ーンショウの
着ぐるみ並みに、」
「うむ、セーラー〇ーンショウって
何か分からんけど、」
「歓迎の宴が凄かったですわ、
骨付き肉何て初めて見ましたわ、
香辛料をたっぷりと使って居て、美味しかったですわ、」
「うむ、妾達が毎回大金を落として、
商人達を潤して居るでな、
獣王にとっても良い
現金収入と成って居るのじゃろうな、」
「ちっぱい師匠、今日は如何します?
宿取りますか?」
「ちっちゃくないよ!
此の大人数じゃ、
宿は取らずにエレン号で過ごすのが良かろう、
明日早速、物資の買い付けに行こうかのう、
バザールを見て回るのも良いじゃろう、
治安も良いしな、
明日は各自、1日自由行動で良いじゃろう、」
「皆 は~いっ!」皆
モモタロウ達は獣王国王都の夜景を見乍ら、
晩御飯を食べて、宴会に突入して行った。
「旅先の夜景を見乍らピアノ音楽を聴きいて、
美味しいご飯を食べて、お酒を飲む・・・良いね~」
「はい、
モモちゃんと新婚旅行に来たみたいですわ。
雰囲気最高ですわ!」
「あらあら、まあまあ、
奥手のエレンが成長致しましたわね~
此処は未亡人の私くしが、
スタンダール家秘伝の技を使って、
手取り足取り教えて差しあげましてよ~」
「ズロースお姉様、その必要は無くてよ、
モモちゃんの横で、
手を繋いでゆったりとした時間を頂ければ、
満足ですわ、
幸せとはそう言う物ですわ。」
うっとりと夜景を眺めるエレン、
翌日、モモタロウ達は朝ご飯を食べると
直ぐにバザールへと繰り出した。出店の屋台には、
香辛料や、緑黄色野菜、果物、
インディカ米等が所狭しと並んで居た。
モモタロウは果実水の屋台で、
濃厚な果実水を買い求めると、
早速く串肉などを買って食べ乍ら辺りを散策して居た。
香辛料はちっぱい師匠が買い込むとの話であったので、
其れ以外、日持ちのする根菜や野菜、
果物や何かを調べていた。
「おい、親びん交易に使える、
何か良いもんはにゃいかな?」
「うさ達は、余り頭が良くないうさ、
良い物が有ったら教えて欲しいうさ?」
「ん~?そうだね~もし他の人と
被っても良いのであれば教えるよ~」
「其れは仕方ないうさ、女帝様などの大量購入で無いなら、
そんなに値段は下がらないうさ」
「親びんは何を購入するのかにゃ?」
「うん、俺はエレンと一緒に、砂糖と米とトウモロコシ、
後、日持ちのする根菜と、カボチャなんかも良いね~
其れと果物かな~バナナにパイナップルかな~?
其れと王様の許可が取れたら、
ジャングルの熱帯雨林の木材だね、」
「凄いうさ、流石は親びんうさ、
うさはトウモロコシを買ううさ、」
「じゃあ、みゃ~は砂糖を買うにゃ~」
「うん、良いんじゃないかな~
特に砂糖は特権階級に需要が有りそうだよね~」
「そうそう後、チーズ何かの
発酵食品もよさそうだよね~
何処かで売って居ないかな~?
まあ今日はどんな物が有るか
見て回るだけだけれどね~
買い付けは明日以降かな~?
買い付けるなら、
日持ちすると言うのが絶対条件に成るね、
暗黒大陸で賄えない物と言う
前提が付くけれどね、」
「じゃあ、ヤシの実や何かはダメうさね~
海岸線なら何処にでも生えるし、
海流に流されて来るうさ」
「みゃ~には全然分からないにゃ~
だから、親びんの言う通りにするにゃ、」
「「親びん有難うにゃ~(うさ)」」
「カンウとチョウヒは何か買わないの?」
「「私共はご主人様のお側に居られるだけで
幸せで御座います。
はなから、儲けたい等と思わないです。
充分なお手当を頂いて居りますれば、」」
「じゃあ、バザ~ルを楽しもうか」
「「はっ!」」
手に何本も串焼きを持って居る
カンウとチョウヒだった。
此の日は大いにバザールを楽しむモモタロウ達であった。
ちっぱい師匠もパパさん、ママさんと
手を繋いで食べ歩きを楽しんで居た。
翌日、モモタロウとエレンは商店に入ると、
「店主さんは、ご在宅ですか?」
「どんな御用で御座いましょうか?」
「はい、米の買い付けに来たのですが、」
「如何程ご入用ですか?」
「10トン程ですが、」
「・・・直ぐに店主を呼んで参ります!」
牛人族の女性店主がやって来ると、
「お客様、米を買い入れたいとか、
10トン程であれば、倉庫に有りますが如何致しましょうか?」
「ああ、魔法の袋が有るので持って帰りますね、
お幾らに成りますか?」
「はい、1キロで石貨1枚ですので、10キロで銭貨1枚、
100キロで、銅貨1枚、1000キロで大銅貨1枚、
10トンでは銀貨1枚と成ります。」
「え~っと~北大陸だと~金貨1枚位だよね~
そんなに物価が安いの?」
「そうですね~米は牛人族や、
像人族等の農耕民族の主食と成りますので、
北大陸の物価の100分の1から200分の1位ですか?
更に人件費は50分の1から100分の1位でしょうか?」
「物価の安さにモモちゃんびっくりだ~」
「驚きました、聞いては居りましたけれど、
本当に安いのですわ~」
「所で、石貨って何?」
「はい、此方での流通の標準貨幣が、銅貨と成りますので、
銭貨の下の単位が必要と成ります、
其の為に獣王国が作ったのが、石貨で御座いますね、」
「物価が安いからか~銀貨1枚でどの位、暮らせるの?」
「一生?」
「スゲ~なおい」
「カルチャ~ショックですわ~」
「因みにチーズ何て置いてません?」
「えっ?有りますよ」
「店頭に無かったし、何で?」
「需要が余り無い物で、だって牛ですもの~」
「需要が無いって~あんなに美味しいのに~?」
「だってだって~固いからって誰も食べないの~
カビが生えるし~私達、農耕民族が食べる位ですの~」
因みに店主さんは魔乳の女性だった。
「火で炙れば良いじゃん~
スープに入れればシチュ―に成るし~
凄く美味しいよ~」
南大陸に新しい料理が出来た。
そう、チーズは火を通さないと、石鹸みたいに固いのだ、
「所でチーズはどの位在りますか?100トン?」
「え~っと~10トン位かしら?」
「じゃあ、10トン買います。お幾ら?」
「大銅貨5枚位?」
「買った~!!」
倉庫に行くと、米とチーズを買い占めた。
お金を払って、魔法の袋に仕舞う振りをして、
ストレージに仕舞うと、
モモタロウはチーズを一口サイズに切って、
魔法の火で炙って試食してみた。
「あら?美味しいわ!」
「凄く味が濃くて美味しいね~」
「此れはパンにつけても行けますわね~」
「早速、牛人国から取り寄せて、
実演販売しますね、」
「所で、あそこの樽に山盛りに成って居るのは?」
「はい、大豆を発酵させて作った物ですが?
野菜につけて食べると美味しいんです~
まあ、農耕民族用の食材ですが」
「味噌じゃん~此れも買います~
何樽有りますか~?」
「100樽位ですね、良いんですか~?」
「お幾ら~?」
「一樽が100キロ位ですが、銅貨1枚ですので、
100樽で、銀貨1枚ですね、」
「買った~!」
「野菜に付けて食べる位しか使い道が有りませんよ~」
「何を言って居るのですか~
味噌汁の元じゃ無いですか~!」
「モモタロウはストレージからアツアツの味噌汁を出すと、
店主に試食させた。」
「あら、此れも凄く美味しいわ、」
「味噌だけだと、もっと淡白な味に成るけれど、
昆布や鰹節、煮干し何かのダシを取って、
具材を入れれば凄く美味しく成りますよ、
後、ブタ肉を入れれば豚汁に成るし、
イノシシ肉を入れればイノシシ鍋に成るし、
やりようで、
幾らでも料理の幅が広がる万能食材ですよ~」
「す、凄いんですね~早速研究します~
で、鰹節って何ですか~?
昆布って、冷たい海で捕れる海藻ですよね~?」
「此処だと南極方面か?
とにかく冷たい海で捕れる海藻を干した物ですね、
カツオを捕って、何回もだし汁で煮込んで、干して、
木の様に固くなった物を削ってダシを取るんです。
凄く美味しいダシが取れますよ~」
「ダシですか~?聞いた事が有りませんが、
研究しますね~
こんな美味しいスープが作れるなら、
頑張りがいがあると言う物ですね、」
モモタロウは此の日、米とチーズと、味噌を手に入れた。
此の日の夕食は早速、
イノシシ肉を使ったイノシシ鍋を作ったのだった。
翌日、獅子王からモモタロウ達は呼び出しを受けて、
王城に出掛けるのだった。
「アンジュ殿、よく来てくれた。」
「うむ構わぬよ、で、今日はどの様な要件なのかな?」
「実はのう、ママチャリなのだが、
我の兄弟や、妃の姉妹と其の子供達が欲しがって居てのう、
融通出来ぬ物だろうか?」
「うむ、モモタロウ如何じゃろうか?」
「はい、良いですよ~王様、身内の内訳は?」
「うむ、わしと同じ様な体格の弟達と、
其の息子が10人に、幼い子供と妃の姉妹が20人じゃ、
幼い子供の内、男の子が5人である。」
「リリー如何?」
『はい、出来たっス~』
モモタロウは魔法の袋から出す振りをして、
ストレージから強化型のマウンテンバイクを10台、
女性用のママチャリを15台、
男の子用のママチャリを5台出した。
全部ジャン〇ル大帝のマーク付きだ、
「此れは素晴らしい、モモタロウとか言ったか、
何か欲しい物はないか?娘はやらんぞ、
妃ならまあ良いか?」
お妃様に殴られて居る獣王、尻に敷かれて居る様だ、
獣王はほっぺを両手ですりすりし乍ら、
「ああそうだ、出戻りの妹は要らんか?一杯居るぞ?」
「要らね~よ、サーカスでもさせる積りかよ~
それでは王様、
熱帯雨林の木の伐採を許可して頂けませんか?
私は木材が欲しいので、」
「構わぬが、王都近郊で有れば農耕の民達が喜ぶ、
其の辺は宰相と相談して呉れれば良い、
宰相よ頼めるか?」
「御意、モモタロウ殿明日、宰相府に来ていただけませぬか?
伐採地の案内を致します。
其の時に伐採の規模等を相談致しましょう。」
「了解しました~王様、有難う御座います~」
モモタロウは王都近郊の
ジャングルの伐採の許可を貰ったのであった。