ー174話ー スタンダール辺境伯領 謀反
譲爵の義の翌日、モモタロウ一行はエレン号で、
スタンダール辺境伯領に向けて、飛んで居た。
飛行船部の最先端にある艦橋には、
主要なメンバーが乗り込んで居た。
「モモよ、スタンダール領の
領地開発をすると言う事じゃが、
具体的に如何するのじゃ?」
ちっぱい師匠は、モモタロウが如何やって、
帝国でも如何しようも無い瘦せた土地の
農業開発に興味津々だった。
「そうですね~先ずは水ですね~
作物に必要な物は、水、肥沃な土、太陽光ですよね~
領内には、1級河川が1本だけ流れて居るそうなので、
其の水を如何に有効活用出来るかで、
収穫量に大きな影響が出ると思って居るので、
農業地帯が、此の川の周囲に集まって居るって聞きましたので、
先ずは海に向かって運河をいくつか繋いで、
其処から農業用水路を網の目状に広げて、
どの畑にも満遍なく水を届けられ無いかと考えて居ます。」
「そんな大魔法聞いた事が無いぞ?
どれだけの魔力が必要なのか想像も付かんのじゃ」
「まあ、魔力量の事に付いては心配無いですよ?
ローソン侯爵領から帝都迄の石畳の道を整備しても、
魔力切れは起りませんでしたし、
所でズロースさん、其の唯一の川に付いて、
詳しく教えて貰えますか?」
「はい私くし、もうズロースに改名致しますわ、
川はモナミ川と申しまして、西アルモス山脈と、
東アルモス山脈を水源として居ります。
此の西アルモス山脈と東アルモス山脈の間に有る
大平原がスタンダール領の穀倉地帯と成りますのよ、
余り作物は育ちませんけど、
領地の7割が、東アルモス山脈の向こうに広がる
大地溝帯に成ります。
このデスバレーは魔物が跋扈する危険地帯で、
ザンジ公国との長大な国境線と成って居りますわ、
デスバレーが形成する大地の割れ目が至る所に有り、
クレパスだらけで、
行軍どころか商隊すら行き来出来ませんのよ、
デスバレーの最南端はアムール大河が流れる、
帝国の東南端に当たりますのよ、
国内の東南の端に位置するナム―ル大河の大きな港町、
チョッパー港が有りますが、帝国の直轄地と成って居て、
スタンダール家には何の経済効果も有りませんの、
遠いし、スタンダール家は、
帝室より此の横に帯状に広がる危険地帯と、
ザンジ公国との国境を守る為に、
此の長大な地域の守護を帝室より
仰せ付かって居りますのよ、
しかしデスバレーの影響で、雨は多いのですが、
バケツの底を抜いた様に雨水は地下に抜けて仕舞って、
何時も水不足ですの、土地も痩せて居ますし、
地下水脈は至る所に有るので、井戸には事欠きませんが、
飲料用で、農業には使えませんの、
でも使って居りますが、」
「中々、大変な様ですね~、
土地の改良もしなくちゃ駄目ですね~
無人の所に人造湖でも一つ作るかね~
雪解け水の量は?」
「はい、雪解け水で川の水位が上がるのは
4月からですわ、其の頃に成ると、
少しの長雨でも川が氾濫いたしますの、
毎年川の氾濫で、領民にも被害が出て居りますわ。
夏の乾季には、川の水位は下がって、枯れる事もしばしばですのよ、
そうなると作物にも大きな被害が出て、
冬の餓死者が倍増しますわ、
スタンダール領が奴隷畑と言われる所以ですわ」
「厳しい生活環境ですね~
上流ににダムでも作ろうかね~どんなダムが良いかね~
流水型ダムが良さげかな~?
良い候補地が有ると良いんだけどね~」
『ダムを作るのは良いんスけれど、先に人造湖と、
農業用のため池と用水路の確保が先っスね~
なんせ、大量の水の確保をしなくちゃ成りませんので、』
『ですよね~分かりました~』
「モモが如何な活躍をするのか今から楽しみなのじゃ~」
「ちっぱい師匠だいぶ食い付いて居ますが、何で?」
「其れはのうスタンダール領は
特別に貧乏なのだけれど、
穀倉地帯の瘦せた土地と、
水利の問題は深刻でのう、
帝国の問題でも有るのじゃ、
何か良い方策を示してくれるのでは無いかと、
楽しみにして居るのじゃ~」
「楽しみなのは良いですけれど、
俺、全部魔法で解決しちゃうので、
余り役には立たないですよ~
でも、瘦せた土地問題なら、
各所に便所を作って、人糞を集めて肥溜めを作って、
有る程度発酵させた物を畑に巻けば、
良い肥料と成りますよ~」
「其処の所詳しく!」
「農作物は、土の栄養を吸い取って育つので、
其の分の栄養を、
土地に与えてやる必要が有るのですけれど、
一番分かり易いのは、
土に肥料を与えて栄養を返す事ですね、
人糞も良い肥料に成りますし、
牛や豚、鶏と言った家畜の糞も良い肥料に成りますよ、
まあ、有る程度置いて、
発酵させる必要が有りますけれど、
後は水に付いては、
溜池と用水路を作ってやると
有る程度は解決するかもしれませんね、
条件にもよりますが、」
「凄いの~そんな発想をする者を妾は初めて見たぞ!
直ぐに宰相に取り掛からせよう。」
ちっぱい師匠は艦橋から飛び出して行った。
「艦長、スタンダール領に入りました。
スタンダール城迄およそ10分」
「皆~スタンダール城迄、後10分で着くから~
降りる準備してね~」
エレン号は高度を落として、スタンダール城に来ると、
フル武装の騎士が100人程城から、
ワラワラと出て来て、弓矢で攻撃して来た。
ローズはメガホンを持って船首に出て来ると、
「貴方達~誰を攻撃して居るのか分かって居りますの~!
吹っ飛ばしますわよ~!」
「わはははは~ローズよ既に
領都は我々が占領したぞ~
尻尾を巻いて帰るが良い~わ、わはははは~」
其処には禿親父が居た。
其の横には騎士が一人、
「ローズ、母上とお前の妹達は既に捉えた。
降伏しろ~!わははははは~!」
次の瞬間周りの騎士を巻き込んで、
<ちゅど~ん!!>二人は爆発した。
「まだ逆らいますの~
貴方達も吹っ飛ばしますわよ~!!」
騎士達は手に持って居た武器を投げ捨てて、
膝ま付いた。
と、護衛の5人が船から飛び降りて、
降伏した騎士達を縛り上げて行った。
「ふぅ~穴掘って埋める手間が省けましたわ~
皆さんは暫く待機して居て下さいな、」
「流石はドラゴンローズ、容赦無いわ~・・・・・」
ローズと、エレンと、
従者の二人がエレン号から飛び降りると、
城に向かって走り出した。
護衛達も二人を見張りに置いて3人が、
後を追って行った。
30分程してから、
ローズが二人の男の髪を掴んで引きづり、
エレンが、一人の男と女の髪を掴んで引きずり出し、
従者の女性が、オークの様に太った
おっさんの髪を掴んで引きずり出して居た。
モモタロウ達は下船すると、
「エレン~如何なって居るの~?」
「こいつ等が首謀者ですわ。警護の騎士達が、
お母様と、捕らわれて居る
妹達の開放に向かって居りますわ。」
「そうですの~此の二人は禿親父の父親と、
借金亭主の父親ですわ~
此の女は私くし達の妹で、7女のコーチンと言いますの、
此の男が元エレンの婚約者のデコピンと言いますのよ~
そんで、此のオークが主犯の奴隷商のオークンですわ~」
「で、他の家族たちは?無事なの?」
「モモちゃん心配してくれて有難うなのですわ~
怪我をした者も居りますが、
皆、命に別状は有りませんの~」
「じゃあ、怪我人を連れて来て早く、直ぐに治療するから、」
「其れはお姉様の従者と、
護衛が向かって居りますので、直ぐに連れて参りますわ、」
「ローズお姉様~出来心なの許して下さ~い、」
「貴女、エレンの時も同じことを言って居たわね、
今回は、お母様や他の妹達も被害に有って居ます。
覚悟しなさい。」
「私は貴女様の旦那に金を貸しただけで、
何も悪く無いです。放して下さい。」
「黙れオーク!貴様が、バカ亭主共をそそのかしたのは、
既に分かって居る。一番最初に手打ちにしてくれる!」
ローズは奴隷商の襟首を掴むと放り投げて、
ポチ印の竜牙刀を一閃、
奴隷商の首が飛んで行った。
「こ奴の首を晒せ!」
「騎士 はっ!」騎士
ローズは次々に謀反の首謀者の襟首を掴むと、
放り投げては首を跳ねて行った。
最後に残った妹に、
「コーチン覚悟は宜しくて!」
「いや~!まだ死にたく無い~助けて~!」
「ズロースさん、
チンコーさん流石に処刑は可哀そうです。」
「モモ様がそうおっしゃって呉れる事は
本当に有り難いのですが、
今回ばかりは流石に許せません!」
「ローズお姉様~其処を何とか!」
「エレン、貴女も此の娘の被害に有って居るのですよ、」
「最初は大変で、恨んだ事も有りましたが、
世の中の厳しさを知り、
モモちゃんとも出会う事が出来ましたわ、」
「そうですね・・・・・
お陰で私もその恩恵を受けて居りますし、
成敗すれば、お母様も悲しむ事でしょう、
分かりました。死罪だけは勘弁しましょう。
ですが、売春婦をするより辛い修道院に放り込みます。」
「御姉様~御免なさ~い、でも私チンコーじゃ無く、
コーチンですから~其処大事ですから~」
「成敗するには惜しいいボケだね~」
「モモちゃんったら通常運転ですわね~」
「コーチンを幽閉しなさい!」
「騎士 はっ!」騎士
此の後、捕らわれて居た、文官達と騎士達、使用人達に、
幽閉されていた家族と再会したが、
3女のパンテが大怪我をしていた。
命は有る物の背中と、肩から腹部に掛けて
剣で切られた大きな傷が痛々しかった。
顔にも一生残る様な傷が幾つも付けられて居た。
「パンテ、苦労を掛けました。貴女の忠誠は忘れなくてよ」
パンテさんは涙を流し乍ら、
「ローズお姉様、皆を守れずに申し訳ございませんわ、
まさかコーチンに裏切られるとは
思っても居りませんでしたの。」
ローズの目がギラリと光ると、
「その傷はコーチンが?」
「いいえ、奴隷商が借金を返せと押し掛けて来て、
油断をした所に後ろから切り付けられたのです。」
「家を守る為に・・・・・
ええ娘や~直ぐに治すからね~」
「此方の方は?」
「エレンの良い人のモモタロウ様ですよ」
「モモタロウ様、無様な姿を晒してしまい、
申し訳有りませんわ、
可愛い妹のエレンを如何か可愛がって下さいな」
「自分の事より妹の事を・・・・・ええ娘や~」
何か話そうとするパンテさんの唇を
人差し指で抑えて、
「ハイヒ~ル!」
パンテさんの体が淡く光りだす。
皆、其の様子を静かに見つめる。
やがて、淡い光が消えると、
モモタロウは包帯を取り始める。
顔の部分の血の付いた包帯を取ると、
傷は消えて居て、乾いた血糊だけが付いて居た。
エレンに頼んで、体の包帯も取って貰うと、
乾いた血糊だけに成って居た。
血糊をエレンが濡れタオルでふき取ると、
傷跡も無くなって居た。
エレン張りの奇麗な顔が其処にはあった。
「此れは夢でも見て居りますの?
傷跡はもう諦めて居りましたのに、
モモタロウ様って、聖者様?」
「いいえ、只の冒険者ですよ、
エレンとパーティーを組んで居る仲間ですよ、」
「エレン、少し良いですか?」
「はい、何でしょうか?パンテお姉様、」
「モモ様頂~だい。惚れました。」
「無理です!」
「其処を何とか~」
「ダメですわ、私くしなんて死に掛けて居る所を
救って頂いたのですわ、絶対に譲れませんわ」
「じゃあ、側室と言う事で、」
「其れなら構いませんわ」
「側室なら良いんだ・・・」
「モモ様、幾久しく宜しくお願い致しますわ、
ローズお姉様、良ろしいかしら?」
「ん~此の家の管理を続けるのであれば、
構いませんわよ、どの道行けず後家だし」
「行けず後家言うな!
分かりましたわ家の事は引き受けましょう。
モモ様宜しくお願い致しますわ。」
「パンテ姉様、モモちゃんはイ〇ポでしてよ、」
「ガ~ン!役立たずでは有りませんか、」
「ガ八ッ!」
吐血するモモタロウ、
「でも良いのです、どの道もう行き遅れですし、
うん付いて居れば問題無しですわ~
立たない位、平気ですわ~」
「ゲハッ!!」
更に吐血するモモタロウ、
「モモ様、良い家庭を築いて参りましょう、(ポッ)」
「いや、其れはもうお腹一杯です。
所で家は?城の近くに有ったって話ですけど~?」
「屋敷でしたね、はい、オークに燃やされて、
奇麗さっぱり無く成りました。」
「奇麗さっぱりじゃね~だろう~如何すんだよ~」
「暫くは城住まいですわね、
ああ~屋根が有って良かったわ~」
「ズロースさん、屋敷立てても良い?」
「はい、もうズロースで行きますわ、
勿論構いませんが?建てられるのですか?」
「はい、土木魔導士のモモタロウです。
屋敷は何処に立って居ましたか?」
「はい、あの瓦礫の所に有りましたわ」
「ああ、あそこですね、」
モモタロウは瓦礫の有る所へ行くと、
「セイクリッド、ニューパレス!」
瓦礫がうにょうにょと動き出し土塊に変わると、
新たに3層建ての真っ白な宮殿が生えて来た。
エレンと、モモタロウの側近以外が、
目を剥いて、口を開けて居た。
「何時見てもとんでも無い魔法ですわ!」
「側近 ご主人様なら当然です。(フンス!)」側近
「ズロースさん、
ついでに崩れかけの古い城も建て替えるので、
城の中に居る人達、城から出て貰えますか?」
「崩れかけは余計ですわ~
おい!直ぐに城に居る者達を皆、此方に来る様に伝えよ!」
「騎士 はっ!」騎士
騎士が城に行き戻って来ると、
城の中からワラワラと人が出て来て、
捕らえて居る騎士達の所まで来た。
「此れで城が無人に成ったか?」
「騎士 はっ!もう誰も居りません。」騎士
「モモ様~やっちゃって頂いて構いませんわ~」
「オーケー!セイクリッド、グランドキャッスル!」
古く今にも崩れそうな城塞が波打ち消えて行くと、
新たに崖の上に真っ白な
白〇姫城の様な美しい城が生えて来た。
と、周りから歓声が上がる。
「此れで、崩れて死ぬ心配が無く成ったぞ~」
「皆 おお~っ!凄ぇ~~!!」皆
「中に有った家具調度品や、資料等は其のままですから、
適当に整理して使かって下さいね~」
「凄い魔法ですわ~屋敷も城も一新するなんて、
何て凄い魔法ですの~」
「後、城壁と堀を作りますね~」
と其のままモモタロウは高く頑丈な城壁を作ると、
その外周りに堀を作った。堀の水は近くの小川と、
地下水から取って居る。
「ズロースさ~ん俺たちの拠点の
屋敷も立てて良いですか~?」
「何処と戦争するのでしょう~えっ?
勿論構いませんわ」
「じゃ~セイクリッド、ニュウーパレス!」
ローズの屋敷から少し離れた所に
同じ様な屋敷がもう一つ生えて来た。
「私くし夢を見て居るのかしら、
城の周りが帝都の宮殿にも負けない位、
美しく成りましたわ~」
宮殿の周りには噴水や庭木が植えられ、
石畳の道が敷き詰められた。
水源は、地下水を魔石動力で吸い上げて、
石畳の小川が作られた。
水が貴重な地域では有るが、
水をふんだんに使った庭に成った。
「まあ、こんなもんかな~」
モモタロウは初日に問題は有った物の
拠点を作り上げたのであった。