-156話ー 白銀の女神号 初飛行
離水した白銀の女神号はどんどんと上昇を始め
ローソン侯爵領の領都ローソニアとローソニア城が、
どんどん小さく成って行く、
やがて白銀の女神号は、降りしきる雪の中、
雪雲に消えて行った。
「う~ん、何も見えないですわね~」
「女神様~何も見えなくて怖いです~」
「視覚的には何も見えないですけれど、
ナビスキルで今何処を飛んでいるのか
分かって居るので、心配はいりませんよ」
「ナビスキルって何ですか~?」
「まあ~簡単に言うと千里眼の事ですね、って
貴方達にも使えるでしょ千里眼」
「あ~千里眼ですね、あっ見えました見えました。
凄いです~」
「う~ん、此の娘達優秀なのだけれど、
バカなので困りましたわ・・・
やっぱり食材にしようかしら?
美味しいし、ジュルッ!」
「いやいや、やめて上げて、ドラゴンの食材なら
土の女神様から沢山貰って居るので心配無いですよ」
「あら、そう言えば昨夜のドラゴン料理
地竜でしたわね、
緑は配下を大切にしていたはずなのですけれど、
如何したのかしら?」
「はい、私達がキャンプして居たら、
いきなりアースドラゴンに襲われまして、
そのドラゴンを返り討ちにしたのですが、
そしたら女神様が、
タイマンじゃ~と言って現れたのです。」
「あらあら、凄いわね、貴方達、
真ドラゴンスレイヤーなのね、
どう?私と勝負して見る?」
「やめて下さい、普通に死にますから!
その襲って来たアースドラゴンが
近隣の村や町を襲って
人族を食べて居た事が分かりまして、
其の事を女神様に伝えて和解しました。
其の後女神様がお尻のお礼と
お詫びと申されまして、
若いアースドラゴンをけしかけて居た
ドラゴン達を討伐されまして、
お宝と一緒に10匹程頂きました。」
「お尻のお礼?」
「はい、スクルド様にとっつかまって、
お尻に大木の杭をぶち込まれて
酷い切れ痔だったので、
其れを治療しました。」
「あらあら、まあまあ、そうなのよ、
緑ったら酷い切れ痔で、
内股でしか歩けなかったのよね~
モモタロウさん、緑の友人として
私くしからもお礼を言わせて頂くわ
有難うございます。
如何?世界の半分要ります~?」
「要りませんって~・・・あっそしたら、
屋敷に帰ってからで良いので、
竜泉酒頂けません~?
土の女神様から沢山頂いたのですが
在庫も減って来たので~
何か皆、欲しがるものでして」
「あら、そんな物で良いの?お安い御用よ
毎日美味しい食事も頂いて居る事ですし
毎日10樽位なら出せますよ」
「有難う御座います。
珍しい物らしいので、皆喜びますよ」
「《皆》バンザ~イ」》
「でも誰も治せなかった
緑の切れ痔を治すなんて中々の治癒士ですのね、
私も何かありましたら治療して下さらないかしら?」
「私はヒーラーで戦闘力はレベル1の
其の辺の酔っぱらいのおっさんより弱いのですけれど、
回復魔法と防御魔法は得意なので
其の時は喜んで治療させて頂きますよ。」
「あらあら、私くし戦闘力だけは自身が有りますの、
良いパーティーなれそうですわ、」
「《皆》無敵じゃね?」《皆》
「でしたら今度、暇が出来ましたら竜の穴の特急ダンジョンに
狩りに出かけて見ましょうか?」
「良いですね~・・・そう言えば侯爵領の
騎士を鍛えて欲しいって言って居たよね~
・・・女神様、医療研究実習が一段落したら、
お世話に成って居るローソン侯爵の
騎士のレベリングに協力して頂いても良いでしょうか?」
「あらあら、まあまあ、
そんな他人行儀な事は言ってはダメよ、
私くし達はもう、お友達では有りませんか、
いや、最早親友?恋人?夫婦?
でも立たないから無理ですわね~
ドラゴンは激しいし、
なら姉弟かしら?うん良いわね、
白お姉様、白姉ちゃん、ああ何て良い響きなのかしら
決まりました。
モモタロウさん此れからは私くしの事を、
白姉ちゃんと呼んでくださいな」
「はい、白姉ちゃん」
「ズゥキュ~ン~~!!」
「もう、辛抱たまりませんわ~!!」
と、モモタロウに抱き着いて、
モモタロウの顔を胸にうずめる女神様
「ちょっと~離れなさ~い!!
モモちゃんが窒息してしまいますわ~」
と、女神様からモモタロウを引き剝がすエレン。
「エレン有難う~死ぬかと思ったよ~」
「本当にもう、良い御身分ですわね。
此の男とうとう女神様を引っ掛けてしまいましたわ」
「所で貴女は誰ですの良い所でしたのにぷんぷん、」
「私くしはモモちゃんの
冒険者パーティのパートナー
エレノワ、スタンダールと申しますわ。」
「其れでは私くしの先輩に成るのですね、
此れから宜しくですわ先輩」
「はい、分かりましたわ、
其れでダンジョン攻略に付いてですが、
どのような編成に成るのかしら?」
「そうですわね~私くしと緑、とその配下、
と言う所ですかしら、緑は毎年冬に成ると、
ダンジョンに潜って居ますので、
道案内に成りますわ。」
「こちらは、私くし達ファミリーと、
Sクラスの関係者に後、ゴンザレス様、
騎士は何人程に成りますか?」
「そうですな~
騎士100人面倒見て頂ければ有難いですな~」
「妾も護衛とクルーの面倒を見て貰いたいのじゃ」
「モモちゃんざっくりと、
300人迄は行かないようですわ如何です?」
「そうですね~200人オーバーですか、
取り敢えず屋敷に帰ったらレベリングの為に
研究者の研修期間中は
皆に弩の練習して貰いましょうか?
『カンシ頼める~?』」
『承知致しました。』
そうこうして居る内に飛空艇は雲海を抜け、
高度10000メートルに到達した。
「高度10000メートルに到達。
偏西風は北西に風速約20メートル、凪の状態。
本艦に対しての影響微弱なり
此れより南東方向に向けて進みます。」
「はい、宜しく頼みますわ。」
「各プロペラ機関最大!」
「時速40キロ、空気が薄い為、
速度はゆっくりと成ります。」
飛空艇は海の様に遥か彼方にまで広がる
雲海に小さな影を落としながら
ゆっくりとした速度で進んで行くのであった。
雲海の上空は雲1つ無く晴れ渡った
濃い青の世界が広がって居た。
「遅々として進まないわね~何かイライラするわ~
何かこうスカッとすっ飛ばせないのかしら」
女神様はいらちだった。だってドラゴンですもの
「女神様、私達が船尾に行って
風魔法で艦を進めましょうか?
「モモタロウさん艦尾の空気の状態は如何ですの?」
「はい女神様、風魔法と
強力な結界シールドも張られて居ますので
地上と変わりはありませんよ、
ドラゴンブレスも防げますね。だって戦艦ですから、」
「まあ、其れは頼もしい結界シールドですね、
貴方達は今日の所は操船の訓練をして居るので、
其のまま操舵の練習をしなさい。
私が飛行魔法で飛ばします。」
「こんなでっかい船、飛行魔法で飛ばせるんだ。
飛空艇要らなくね?」
女神様の体が輝くと飛空艇が輝きだして、
気球の側面から白銀に輝く数百メートルは
有ろうかと言う巨大な翼が現れて来た。
すると、飛空艇はいきなりの猛スピードで
飛び始めた。
乗組員は女神様と、配下を除いて全員、
後方の壁に向けて転がって行った。
モモタロウは壁に転がりちっぱい師匠のママさんの
胸に挟まれるのだった。
其れを見ていたパパさんが裏返った声で、
「モモタロウ君~
君は亭主の見ている前で何をして居るのかね~」
「あらん、いやだわ~もう、モモちゃんったら
パパが見ているじゃ有りませんか、うっふん」
「誤解だから、パパさん誤解だから~」
「モモタロウ君、帰ったら君、死刑ねっ!」
「皆~助けて~!」
「《皆》死ねば~」《皆》
「酷い!!」
「モモちゃんたらもう、如何してくれましょうか
此の男、とうとう人妻まで引っ掛けてしまいましたわ」
「モモタロウよ、妾の夫では無くパパに成るのか~」
「ちが~~う!!不可抗力だから~どう見ても
不可抗力だから~リリーお助け~!」
『ふんっ!死ねば良いっス』
「ガックリ」
「モモちゃん、責任は取って下さいましねっ(ぽっ)」
口から魂が飛び出すモモタロウだった。
此の後、更に飛空艇は速度を上げて行った。が、
今度は誰も転がる事は無かった。
数時間飛び続けた飛行艇は軽く音速を
遥かに超えて行くが、
最早どれ位の速度が出ているのか
見当も付かなかった。
『リリーどの位のスピード出て居るの?』
『聞かない方がいいっス』
時々雲間から海が見えるので、
かなりの速度なのは分かるのだが、
飛空艇に張られて居る
結界魔法はびくともしない。
更に空力性優れて居るので凄く速い。
「女神様、そろそろ屋敷に向かわないと、
帰ったら日が沈んでいますよ」
「そうですわね~エルフの大陸に迄来ましたし、
帰りましょうか?
其れでは帰投して下さいな」
「イエス、マム!!
只今より帰投する。進路180度転換!」
「進路180度転換ヨ~ソロ~」
「エルフの大陸っって・・・・・
何処の戦闘機だよ!」
180度進路変更するのに10分以上掛った。
「そりゃそうだわな、急にUターン何かしたら、
船は大丈夫でも中の人がえらい事に成るわな
・・・壁のシミ?」
飛空艇はまたまた速度を上げて
帰投の途に就いた。」
「女神様の飛行魔法有りえね~」
「何だったら教えて差し上げても良いですわよ」
「私は魔力量だけは多いので、
黒竜2世号のスピードアップが見込めるなら
是非教えて欲しいです。」
「其れでは手をつないで下さいな」
「こうですか?」
「はい其れで結構ですわよ、はい、上級飛行魔法譲渡
此れで私の使って居る飛行魔法が、使えるようになって居ますわ」
「マジですか?」
「はいマジです私の譲渡スキルでモモちゃんも、
大魔法使いですわ。」
「私くしも教えて欲しいですわ」
と、食い付くエレン
「はい教えるのは構いませんよエレンさんも
私の手をつないで見て下さいな」
「はい、こうですの?」
「はい其れで結構じゃあ上級飛行魔法譲渡、
此れでエレンさんも飛行魔法を使えますよ
魔法は使う練度で
スピードがアップして行きますから
頑張って練習して下さいね。」
「女神様有難う御座いますですわ」
「妾も」
『此の後女神様は皆に上級飛行魔法を伝授していった。
よっ、太っ腹だね!』
皆に飛行魔法を伝授し終わった頃に
屋敷に帰り付いたが、
既にとっぷりと日は沈んでいた。
皆が下船すると女神様はご機嫌で
白銀の女神号を魔法の袋に仕舞うのであった。
「ふぃ~疲れたよ、屋敷に帰ったら
取り敢えず女の子からお風呂に入って来てね~」
「《女の子》は~い」《女の子》
何故かママさんも元気よく返事をしていた。
「所でパパさんお詫びのしるしと
言っては何ですけれど、
此れをプレゼントさせて頂きますね、」
と言ってモモタロウはママチャリを1台
ストレージから取り出すとパパさんに手渡した」
「乗り物の様だね?如何使うのかな?」
「はい、跨って此のサドルと言う椅子に座って、
此のペダルと言う物に足を載せてこぐと前に進みんす。
此のハンドルと言う物で右や左に曲がる事が出来ます。
そして、ハンドルに付いているレバーを握ると、
ブレーキが掛かります。」
「うん楽しそうだね~だけど僕の分だけかい?
ママに見られたらきっと持って行かれてしまうよ」
「そうでしたね~そしたらハイ此れママさんの分です。
色違いにしていますので退屈に成った時にでも
2人で遊んで見て下さい。」
「うん、有難う、昼の事ならもう気にしていないよ、
・・・がはっ」
血を吐くパパさん
「やっぱり気にして居るんだ~」
「いやいや、大丈夫楽しそうな乗り物も貰ったしね、
暗部を動かす様な事はしないよ」
「暗部を動かすんだ~御免なさ~い」
「其れより晩御飯の準備をしなくて良いのかい?」
「そうでした~女の子皆入浴中でした~
其れじゃあパパさん又後でね~」
モモタロウは急いで厨房に向かうのだった。
晩御飯の後モモタロウは全員にママチャリを
プレゼントする事に成るのだった。
翌朝、女神様と其の配下とちっぱい師匠のクルーは、
飛空艇の発着場に、モモタロウは研究者の勉強会、
Sクラスの皆は座学、メイドの皆は其々の仕事、
手の空いて居る者は新たにモモタロウが作った
弩の練習場で弩と弓矢の練習だ。
パパさんとママさん、ゴンザレス爺さんは
敷地で雪の積もった道で遊んでいる。
冬の1日が過ぎてゆくのだった。
そんなある日モモタロウの研修も概ね終えて、
研究者達は自分達で
思い思いに研究し始めて居る
モモタロウも時間が空き始めて
年の瀬も迫って来た頃、
『旦那様旦那様、ローズ、スタンダールと言う
貴族の方がお越しに成って居ります。
如何致しましょうか?』
『誰?』
『あらまあ、お姉さまですわ!
チョウヒ丁重にお通して下さいな』
『心得ました。』
「モモちゃんは屋敷の中で
待って居て下さいまし。」
エレンはそそくさとマンチャリに乗って
迎えに出向くのであった。
暫くするとママチャリのエレンに
先導されて1台の馬車が止まった。
「うっわ~幌馬車だよ寒そ~」
馬車の後ろからスカートのすそを摘まみ上げて、
颯爽と1人の女性が飛び降りて来た。
と、エレンに近づくとエレンを抱きしめた。
「エレン~私くしの大切な妹!
会いたかったですわ~」
「私もですわ~ローズお姉さま~!」
久しぶりの再会に姉妹は
熱い抱擁を交わすのであった。