-153話ー スノーホワイト号 試験飛行
昨日飛空艇でやって来た
ちっぱい師匠のパパとママを歓迎して、
飛空艇の改修工事をリリーが行った。
事前に改修を頼まれた事も有り、
一晩で改修工事を終えていた。
『まっ新造艦だわな』
屋敷に居る皆を乗せて試験飛行と成ったのだ。
「高度10メートルを維持し、
障害物を避け乍らローソニア城に向かう」
「何故ローソニア城?」
「うむ、上空を半円形に結界が覆って居るからのう」
「そうそう、昨日も領都に入る時に先ぶれを出して、
上空の結界を解除して貰って居るんだよ、ねえママ」
「そうですわね、
結界ぶっ壊して侵入するのは流石に不味いですものね」
「はははは・・・・
流石にそんな事をしたら戦争に成っちゃうよ」
「ですよね~」
スノーホワイト号は障害物の無い
大通り沿いに進み城門前に来た。
上空から門兵に向けて、ゴンザレス爺さんが大声で、
「女帝陛下の新造艦の試験飛行を行う故、
上空の結界を解除する様にとアルギニンに伝えよ!」
門兵は城に向け馬に乗って伝令に走った。
待つ事暫し、アルギニン侯爵が馬に乗ってやって来た。
「父上~ずるいです~私も乗りたい!」
スノーホワイト号は門に掛かった橋に横付けすると、
アルギニン侯爵が乗り込んで来た。
「アルギニン結界は解除したのか?」
「はい、飛空艇が、帝都に向けて帰還する迄の間、
解除して置く様に致しました。
夜間は安全の為に結界を展開致しますが、」
「女帝陛下、発進しても大丈夫で御座います」
「うむ大儀である。其れではスノーホワイト号発進じゃ!」
スノーホワイト号は橋から離れると、
ぐんぐん高度を上げて行った。
「おお~何も見えんぞ~現在上空1000メートル?
ん?そうか雪雲に入って居るのか、其れでは見えんな、
リリー殿どれ位上がれるのじゃ?ふむふむ、
10000メートルは大丈夫?
うんそうか、ん?空気が薄いからあまり進まない?成程、
じゃが今回は試験飛行じゃ、一旦上がって見るぞ、
問題無い?そうか、
10000メートルでの試験飛行を行う!」
約1000メートルの高度に上がって居た
スノーホワイト号は、
更に上昇を始めた。艦橋の中はお祭り騒ぎであった。
「しかし、何も見えんのう~」
「雲の中ですし仕方ないですよね~」
「そうじゃの~」
やがてスノーホワイト号は雲海から飛び出した。
「うん、何処かの空飛ぶ城見たいだ!」
上空には雲1つ無く、
眼下には遥か彼方まで続く雲海が広がって居た。
「おお~!!絶景じゃのう」
とネコが、
「地球は回る~にゃっ、ボクらを乗せて~にゃっ、
地球って、何にゃ??」
とうさぎがネコの手を取って、
「「パンツ!(うさ)(にゃっ)!!」」
「って、空飛ぶ城なんて有るの?」
「有るにゃ」
「そんな物語が有るうさ」
「神話に出て来るお話じゃのう」
「行って見たい!」
「モモちゃん私くしも行きたいですわ」
「モモ様、私くしも行って見たいですわ」
「良し、帝都に帰ったら早速調べさすのじゃ」
「おっ良いね~流石ちっぱい師匠~よっ、大陸一の権力者!」
「むっふ~っおだてるで無いわ」
「・・・・?あれっ?モモちゃん?
何か遥か遠くに何か見えません事?」
モモタロウは目を凝らしてエレンが指さす方を見ると、
「う~ん、何か光って居る?のかな?」
「どれどれ、うむ、何か飛んで居るのう?
日の光が反射して光って居るのか?凄く遠くなのに見えて居る。
・・・・凄く大きいのでは無いか?」
皆凝視して居ると、
「うん?あっ、目が合った!」
「モモよ目なんて見えんぞ?」
「・・・・いや確かに今、目が合った様な・・・・」
「皆あっ、消えた?」皆
「今のは何だったんだろう?」
「白昼夢?」
「エッチな昼ドラかよ」
「あれっ?ドラゴンじゃね?」
「皆そうかも?」皆
「まさかね~」
「皆ふぅんぎゃ~~!!」皆
艦橋右舷一杯に巨大な目があった。モモタロウを凝視して居る。
「・・・・・・・・」
「パチン!」
モモタロウは場の雰囲気に耐えられずに、
意味不明のウインクをした。
すると、巨大な目は微笑むと消えた。
「何だったのじゃ今のは?凄く大きな目だったのじゃ」
「モモちゃん、
あのでっかい目にウインクをしませんでした?」
「皆何で?」皆
「いや~何となく」
「流石モモにゃ、ドラゴンにウインクする強者にゃ!」
「そううさ、流石私達の大将うさ、
うさの大切な物を上げるぴょん」
「何か御免、場の空気が重かったから」
「そうですわね、普通だったら固まって動けないですわ、
で、此の方、誰ですの?」
エレンが指さす方に真っ白なワンピーースを着た
美しい女性が立って居た。
「あら貴方、人を指さしてはいけませんよ、
其れに他人の事を聞く前に先に自分が名乗る物ですよ」
「あら、此れは失礼いたしましたわ。
私くし、エレノワ、スタンダールと申しますわ、
モモちゃんとは、同じ冒険者パーティーですのよ、
お見知りおき下さいな」
「あら、此れはご丁寧に、私は光の神竜ですわ」
<ちゃらら~~ん>
「皆はっ、は~~っ」皆
土下座する皆。
「此方の殿方が求愛されたのでお返事に伺いましたの、
貴方、
モモ様と仰いましたね、お気持ちは嬉しいのだけれど、
私達まだ知り合ったばかりだから・・・・
御免なさい!・・・・ぽっ」
と、謝る神竜様。
「何処っかのフィーリングカップルかよ!」
「私くし、知り合いの緑の神竜に会いに来ましたのよ、
エルフの大陸から飛んで来たのですが、
長時間飛行で喉が渇きました。
良ければお茶を一杯頂け無いかしら」
「お安い御用です」
モモタロウは、艦橋に有るテーブルに人数分紅茶を出すと、
「船も安定して居るし、お茶にしましょうか」
と言い、お茶菓子も人数分出した。
「皆頂きま~すっ!」皆
「あらモモタロウ様、今日の紅茶は昨日と違うのですね、
とても良い香りがしますわ」
「はいママさん、
今日はアールグレイを使用したミルクティーです。
アールグレイはミルクに良く合うんですよね~
あっ、お茶菓子のチョコバナナをどうぞ」
「あの、モモタロウ様、
此のアールグレイもお土産に頂け無いかしら?」
「はい了解です。お茶会はママさんの楽しみでしたよね、
充分な量をお付けしましょう」
「あら有難う。嬉しいわ」
「貴方、モモタロウさんと言うのかしら?
とても美味しいお茶ですね、
渋く無いし、良い香りです。
此れはお茶菓子と言うのですか?
甘くて凄く美味しいですね、
モモタロウさん気に入りました。
交際の事考えても良いですよ」
「いえ、お気になさらず」
「えっ?私の夫に成れば世界の覇権は思いのままですよ?
世界を統べる事も可能です」
「世界の覇権?要りませんよ、維持するのが大変そうですし」
「世界中の富も思いのままですが?」
「もう、充分稼ぎましたので必要有りません」
「では、私の体は?自分で言うのも何ですが、
絶世の美女ですし、世界最強の神竜の一人です。
皆大好き女神様ですよ」
「絶世の美女なのは分かりますが、俺立ちませんし、
普通に冒険するのであれば、
パーティーメンバーが居ますので」
「・・・・?」
「そうなのじゃ~モモはイ〇ポなのじゃ~
立つなら妾が婿にしているのじゃ~」
「な、何、と、た、立たぬのですかか?
役立たずでは無いですか?」
<がはっ!>
と、血を吐くモモタロウだった。
「何か、納得行きません!」
「そう言われましても」
「此の船、美しくてとても良い船ですね、ちょ~だい」
「其れはダメなのじゃ~此の船で、
暗黒大陸と交易するのじゃ」
「其れは残念ですね、しかし此れだけの船で有れば、
ゆったりとした空の旅が出来ると思ったのですが、
残念ですね」
「材料が有ればモモが作ってくれるのじゃがな」
「どんな材料が必要ですの?」
「そうですね~どの様な船を御所望ですか?」
「私は一応女神なので、黄金に輝く船が良いかしら」
「いや、金ぴかの船って、どんな成金ですか~」
「そうですか~じゃあ白銀に輝く船は?」
「輝いて居るのが好きですね~」
「はい、ドラゴンですから、光物に弱いのです」
「そうですか?白銀ね~
白か、赤か、黒、しか材料が無いですね~
白銀だと、そんな竜の鱗が有れば作れるかな?」
「粗暴な赤は嫌・・・・有りますよ、白銀の鱗」
「えっ?何処に?」
「はい、エルフの大陸の竜の谷の、私の住処に、
お友達のリバイアサンが脱皮した時の皮と
鱗を沢山貯めて居ます」
「ほう、お友達のリバイアさんですか~
で、リバイアさんも神竜様?」
「神竜では有りませんよ、
何方かと言うと神に近い蛇?亜神?
其れと、リバイアさんじゃ無くリバイアサンですよ」
「だからリバイアさんですよね~」
「名前がリバイアサンです。モモさんが言う所では、
リバイアサンさんと成るのでしょうか?」
「あっ、成程、リバイアサンさんですか、
ややこしい名前ですね」
「まあ種族名ですね、と言っても彼女一人しか居無いので、
固有名でも有るのだけれど、青の神竜の配下の一人です」
「青の神竜様ね、まあ会った事無いけれど、
で、如何します鱗?」
「はい、眷属とは念話で話せますので
眷属に持ってこさせましょう。
明日中には到着するでしょう」
「持ってこさせるって、竜ですよね~?でっかいドラゴン。
そんな姿でローソニアに来られたら、
パニックに成っちゃいますよ~」
「そうですか~じゃ~あ~人の姿で、
魔法の袋に詰めて、
後、何が必要ですか?」
「そうですね~大っきい魔石と~
竜骨ですかね~後、あっ賢者の石も~」
白の神竜は少し赤く成ると、
「賢者の石ですか~仕方有りませんね~
私の寝床に取りに行かせましょう」
「はい、お願いします。
中々無い素材なのでお願いします」
「了解しましたわ。其れから船員は何人必要ですか?」
『リリー何人必要~?』
『そうっスね~クルーは最低5人居れば回せるっス~』
「最低必要なのは5人だそうです」
「じゃ~あ、配下のエルダードラゴンを5人と、
ハイエルフ15人を連れて来ましょうか」
「其れはお任せします。アルギニンさん、
白の神竜さんの配下さんが
城門を通れる様に手配をお願いします」
「うむ、任せて置いてくれ、
明日城に帰ったら早速手配致そう」
「モモタロウさん報酬は如何しましょうか?」
「さあ?エレン如何しょう?」
「そうですわね~
正直金銭で如何こうとは出来ないのでは無くって?」
「ですよね~」
「それじゃあ、私がお嫁さんに成るって事で」
「間に合って居ます」
「連れないわね~では、
神話級のお宝を持って来る様にするわ」
「お任せします」
「其れでは妾も、パパ~宝物庫のお宝をモモに渡して~」
「おう、アンジュちゃん任せて置きなさい」
「まあ、此れ以上金貨を貰っても仕方無いしね~」
「私くしも其れで良いと思いますわ~」
「おっ、そろそろお昼にしようか?」
「皆賛成~」皆
モモタロウは作り置きの弁当を配って行った。
下に居る皆には
ストレージを通してメイド達に配って貰った。
「皆~お弁当は行き渡ったかな~」
「皆は~いっ!」皆
「それじゃあ頂きま~すっ!」
「皆頂きま~すっ!」皆
「モモ~美味いのじゃ!何時の間に作って置いたのかのう?」
「はい、暇な時に作り置いてた弁当ですよ~お代わりも有るので、
じゃん~じゃん食べて下さいね~」
「流石モモなのじゃ~愛して居るぞ~」
「「立つ様に成ったらね~孫の顔が見たいから~」」
<ぐはっ!>
「モモタロウ殿、<ぐはっ>は良いのだが、
お酒が飲みたい」
よろよろとし乍らモモタロウは、
「船上ではダメですよゴンザレスさん、
我慢して下さい。
屋敷に帰ったら
今晩はキラーナマズのアンコウ鍋にしますから、
美味しいですよ~さぞお酒も美味いでしょう」
「ごくりっ!其れは楽しみじゃのう」
「美味しいのですか?」
「モモちゃんが作る料理は世界最高ですわ!
神竜様も驚きますわよ、美味しいお酒も沢山有りますし」
「ほ~う、此の弁当とやらも美味しいし、もぐもぐもぐもぐ、
此れは期待出来ますわね、もぐもぐもぐもぐ」
「そうですわ、
美味しいご飯や甘いお菓子を一杯食べて幸せ、
美味しい、
沢山の種類のお酒を飲んで色んなお喋りをして幸せ、
モモちゃんと
色んな冒険をして幸せ・・・・あっ、思い出しました。
神竜様、空飛ぶ城って聞いた事有りませんか?」
「有りますよ、各大陸に一つ有りますよ」
「北大陸にも有るのですか?」
「はい有りますよ、原始の森の向こうに広がる大山脈、
世界の屋根と言われて居る山頂の上に」
「マジですか~」
「はいマジです。北大陸の天空の城は無人ですね」
「詳しいですね、まるで行った事が有るみたいですね」
「えっ?たまに行きますよ、
あんなでっかい城、落ちたら大変でしょ?
時々見回りに行きますよ」
「そうなんだ~他の城も?」
「はい、空は私の領域ですのでね、
因みにエルフの大陸の
天空の城は私の別荘に成って居ますよ」
「皆行きたい!!」皆
「そうですね、其れでは1度ご招待しましょうか、
私も行くのは久しぶりですけれど」
「えっ?どれ位ぶり?」
「ん~?1000年振り位?」
「皆・・・・・・・・」皆
「ドラゴンの時間の感覚ハンパね~」
此の後、エルフの大陸の
天空の城ツアー計画が話し合われた。
結果、新年のパーティーが終わったら
行くと言う事で決着が付いた。
「何かゆっくりとする筈が、何かと忙しいな、
って其処迄行けるならば、帝都に帰ったら良い様な気もするが、
予定が組まれて居るのでそう言う訳にも行かないか」
スノーホワイト号は一通りの試験飛行をして
飛行能力を調べると、
領都ローソニアに戻るのであった