ー15話ー 従魔
俺たちは、真っ暗な小径をLEDランタンの灯りを頼りに、進んで行く、
小一時間も歩くと、ノル砦に向かう小径に出る事が出来た。
さらに、2時間程歩くと、小径は二又に分かれた。
リリー
『なんスか~ダ…マスター』
結界で姿を見えなく出来るんだったら、
砦の門から出ても良いんじゃね?
『頭の悪いモンスターならいざ知らず、
経験を踏んだ兵士には通用しないっス、
姿を消していても違和感や殺気には敏感っスすぐにばれるのが落ちっス
ばれないのは、映画の中だけっス』
ですよね~
右がノル砦へ向かう小径で、左が隣のゼオ砦へ向かう、
連絡路だ、この連絡路は、砦どうしの連絡と補給の為に、長城に合わせて、
長城の内側に各砦を結ぶ様に、延びて居る。言わば、
砦の生命線だ。
俺たちは、左のゼオ砦へ向かって足を進めた。
ノル砦と、ゼオ砦の中間位で、壁を乗り越えて、精霊街道へ
向かう、予定だ。
長城を超えるのは、明日の夜半の予定である、
今夜は良さげな、位置取りで、野営の予定である。
一気に長城を超えたいのは山々なのだが、壁に辿り着く前に、
夜が明けてしまう、無理に超える事は出来るだろうが、
壁の向こうは、言わずと知れた、危険地帯、モンスターパレードが
始まろうとしている、今、安全が第一である。
で、決行は明日の夜半としたのだ。
マップを見ながらの、旅なので、安全性は高いのだが、
念には念を入れている。
左の連絡路を2時間程歩くと丁度ノル砦とゼオ砦の中間位になったので、
壁に向かって、荒れ地を進む事にした。
暫く歩くと、8メートル位の高さの、岩が有ったので、
連絡路からは、見えない、裏側に、強結界を張り、食堂の扉を出した。
「良し、今日はここで、野営をしよう。
マリー、エメルダ、休憩なしの、強行軍、お疲れさま。」
「マ タカシ様、討伐の時の強行軍では、
これ位当たり前です。気を遣う必要は無いですよ、」マ
「エ うんうん、」エ
「じゃあ、取り敢えず、埃だらけだから、夕食の前に、
汗を流そうか?」
「「マ、エ はい、」」マ、エ
「マリー悪いけど、エメルダに風呂の使い方を、
教えてあげて、」
「マ はい、承知致しました。」マ
俺たちはいったん、食堂へ入ると、銭湯のドアを食堂の中に出して、
銭湯へ入った。・・・・んん?
食堂と銭湯の間に通路?
足元はほの明るいが、左右は真っ暗、黒?
看板が、工事中~?
リリーどお言う事~?
『はい、マイ・・・・マスター前に、言ったじゃないっスか~
改造中のスパリゾートっスよ~
銭湯は普通に使えるっスから心配いらないっスよ~』
マイ・・・・って、
えっ、そうなの?じゃあ良っか~
やり過ぎない様にね~
『はいっス~』
銭湯に着くと、早速、マリーがエメルダに説明しだした。
「マ エメルダ、ここで、靴を脱いで、この箱の中に入れるのです。
この板が箱の扉の鍵になっているので、抜いて持って居て下さい。
無くさない様にね、そして、赤い字が書いてある方が、
女湯です。
タカシ様がいらっしゃらない時はこちらの風呂場を使います。」マ
「エ 男女別々なのね、分かったわ、」エ
「マ 今日はタカシ様がいらっしゃるから、お世話を
する為に男湯へ入ります。」マ
「エ そ、そうよね、お世話させて頂きたいわ、」エ
「マ そうでしょう、私も同じです。タカシ様の
お世話がしたいのです。」マ
いやいやいや、気持ちは嬉しいけど、
君たち色々と間違っているから~
もう、良いけど~
「マ さあ、タカシ様参りましょう。」マ
「うん、お手柔らかにね~」
脱衣所で服を脱ぎ、脱衣籠へ、マリー、エメルダも
恥じらう事も無く、服を脱ぎ脱衣籠へ、
「エメルダ、痩せているな~1日、2日、食べた程度じゃ、戻らないか、
じゃあ、」
俺は二人にかけ湯をしてもらうと、薬湯へ、
マリー、エメルダも俺の左右へ分かれて、湯に浸かった。
薬草の香りが、強いが、中々、どうして、気持ちがほぐれて、
リラックスしていく、
「体だけじゃなく、心まで癒されて行くね~、」
神様の温泉ハンパね~
「エ はい、今迄の苦労や、疲れが溶けて流れて行くようです。」エ
「マ エメルダ、タカシ様の銭湯の薬湯は、
本当に体の状態異常や、傷、心の痛みや、疲れが、綺麗に取れます、
更に私たちが一番綺麗だった頃にまで、若返りますよ。」マ
「エ へっ?!」エ
「マ 湯から上がって、鏡を見れば、分かりますよ、」マ
「エ そ、それって、お伽噺に出てくる、神の泉?」エ
「マ そう、それが、タカシ様の、能力の一つ銭湯、
神の力に匹敵すると、私は思っています。」マ
「エ じゃあ、やっぱり、神様?
もしくは、眷属なのでしょうか?」エ
「マ タカシ様は否定しています。タカシ様が違うとおっしゃるので有れば、
違うのです。分かりますか?」マ
「エ うん、何と無く、分るわ、でも、そこ迄、思い入れ出来る、
あんたも凄いと思うわ、」エ
「マ 当然です、全てを諦めていた私に、夢の様な食事を与えてくれただけで無く、
明日への希望と夢、そして、生きて行く事への渇望、女の、
喜びまでも、与えて、いただきました。
私は、タカシ様と共にありたい、しかし、これ程の方です、
独り占めにする事は出来ません、
で、あるならば、・・・・。
タカシ様と、旅が出来る、冒険が出来る。
胸の中がワクワクして、止まらないのです。」マ
「エ あ、それ、分かる~私も、胸のワクワクが止まらないの、
初めて、冒険の旅に出た日の様に、」エ
あの~本人を挟んで、話さないで~
どんなリアクション取っていいか分からないから~
あ、寝た振りしています。
温まったので、薬湯から出ると、マリー、エメルダが続き、
二人で俺の体を洗ってくれた。
特に、俺の獅子丸君を丁寧に、かつ、
必要以上に洗って居た事には触れずにおこう、
「んん~大名気分~!後は、二人共自分の事をしてね、
エメルダは栄養状態が悪かった様だから、
もう一回、薬湯に浸かると良いよ、」
「「マ、エ は~い、」」マ、エ
俺は今度は普通の湯船に浸かり温まってから、
脱衣所へと、俺、マリー、エメルダの着替えを出して、着ていた物と
差し替えた。着ていた服は、ストレージにしまうと、何故か、
買った時の状態に、戻る、不思議機能付きだ。
ママゾンで買った物限定だ。
ちなみに、食べた物、欠損した物は、復元しない、
う~ん、不思議~?
俺は腰タオル一枚で、冷蔵庫から出した、
コーヒー牛乳を片手を腰に当て、
一気に飲む、
「ク~美味い」
これは、風呂上りには欠かせない、お約束だ。
風呂上がりのほてりも収まり、服を着た頃に、マリーとエメルダが、
浴室から出て来た。
マリーも綺麗だが、エメルダが痩せた体に適度に肉がついて、見違えていた。
腰のえくぼが、眩しい、やはり、15,6歳位に若返っている様だ。
鏡を見ながら、ポロポロ泣いている。
「エ うっ、今度こそは私は、恋に生きるわ!」エ
なにか、違う気もするが、そこは、エメルダだからね~
「マリー、エメルダ、何飲む?」
「マ はい、私はフルーツ牛乳が良いです。」マ
「エ えっ、それでは、私も、同じものを、」エ
体を拭き終わってバスタオルを巻いた二人に、
栓を取った、フルーツ牛乳を手渡す。
「マ 良いですか、エメルダ、風呂上がりの、飲み物は、
腰に手を当てて、一気に飲むのが、タカシ様流なのです。」マ
「エ な、成程、タカシ様流なのですか?分かりました。」エ
なんか、流派に成っちゃったよ、
一気に飲む飲む二人、
「「マ、エ ク~ッ!」」マ、エ
はい、良くできました。見事にユニゾン決まりました。
体を冷ましてから、服を着て、食堂へ、
二人を席に案内して、んん?
「マ あの、タカシ様、私達もご飯とお箸で食べたいのですが、
宜しいでしょうか?」マ
「OK~良いよ~
そおいや、馬車に揺られながら、練習してたよね~」
「「マ、エ はい、タカシ様と同じが良いです。」」マ、エ
俺は厨房へ行き、
「さて、今夜は何を食べようか?手早く出来て、明日も
良く歩くから、肉料理が良いね・・・・
うん、トンカツにしようかね。」
揚物機のスイッチを入れて、温度が上がる間に、キャベツを千切りにして、
皿に盛り、レモンを切って、添えて、
下ごしらえしてある、トンカツを一人2枚で、6枚冷蔵庫から出して、
流石、ファミレス、いろんな食材が、すぐ作れるように、
冷蔵庫に、保存されているのだ、
油の温度が上がった所で、トンカツ投入、揚げている間に
ご飯の用意だ、上がったトンカツの油を切って、包丁で
カット皿に盛って出来上がり、
やはり、2枚だと、
ボリュームがあるよね、後、トンカツソースと、からしを添えて、ワゴンに、
乗せて、背中に張り付いている背後霊の、マリーとエメルダに
「マリー、エメルダご飯の配膳頼めるかい?後、サラダバーで、
サラダと、スープを付けて、ドリンクバーで、お茶を入れて、席へ
持って行って欲しいんだけど、」
「「マ、エ は~い」」マ、エ
んん、良い返事だ。
さて、食後のデザートだが、チョコレートパフェを3人前
作って、冷蔵庫へはい、用意完了、
配膳の済んでいる、席へ、
「それでは、」
「「「頂きま~す」」」
マリー、エメルダはなんとも、幸せそうな福笑い顔で
夢中で、トンカツとご飯を食べている。
うん、良い笑顔だね、
俺もレモンを絞つて、トンカツソースに付けて、からしを付けて、
パクリうん、最高だわ~そして、ご飯をかき込む、
ああ、ビールが欲しいわ~
もう暫くは我慢だね~
「マ タカシ様、肩に何か、付いていますけど?」マ
「えっ、本当?」
肩を見てみると、何か、銀色のパチンコ玉位の・・・・?
「なにこれ?何かちっちゃいのに、ぷよぷよ
してるよ~」
すると、エメルダが、
「エ それは、スライムじゃ無いでしょうか?
まだ生まれたばかりの様ですね、
銀色なので、メタルスライムでは無いでしょうか?」エ
「えっ、そうなの?」
「エ いえ、私も見るのは初めてですね~
メタルスライムはとても珍しくて、話で聞く位でして、
希少なモンスターだと聞いていますが?」エ
「マ 危害はなさそうですね、」マ
「そうだね~お前、希少なモンスターなんだって、
お腹減っているのかい?」
チビスライムがぷるぷる震える。何か可愛い、
肩に手を持って行くと、指の上にピョンと飛び乗って来た。
そのまま、チビスライムをテーブルの上に降ろして、
トンカツを1切れあたえると、薄い膜の様に広がり、トンカツを包み込んだ。
あっとゆうまに、食べてしまった。
「「「おお~!」」」
「んん~可愛い、どうだい、お腹は膨れたかい?」
おお~何か、ピョンピョンはねているよ~か、可愛い、
マイ・・・・マスター、
なんだいリリー?
はい、そのメタルスライムの子なんスが、
マスターの従魔になっているっス、
「へっ?!」