-147話ー 接待
会議の翌日の午前中に、侯爵一家御一行様が到着した。
侯爵ご夫妻に、側室が3人、娘が5人の10人に、
侍女が20人
護衛の騎士が20人の大所帯だ。
モモタロウ達は全員で迎えに出て応対した。
「侯爵閣下、足元の悪い中、良くお出で下さいました。
大した物も御座いませんが、
如何か今日一日お寛ぎ下さいます様に」
「うむかたじけない。
私の事は如何かアルギニンとお呼びくだされ。
モモタロウ殿は、
父上の義兄弟で有れば私にとって叔父も同然、
遠慮は無用で御座いますぞ」
「お心遣い感謝致します。
寒い中立ち話もなんですので、ささお入り下さい」
モモタロウは侯爵一家御一行様を屋敷の中に招き入れると、
玄関でスリッパに履き替えて貰い、
フロントでマントやコートを預かると、
風呂に有るロッカーのカギを説明しながら渡して行った。
勿論騎士達には、鎧を脱いでもらって居る。
フロアに並ぶソファーに座って貰うと、紅茶が運ばれて来た。
「あらあら、まあまあ、此のお茶何て美味しいのかしら、
甘くて良い香り。温かくて落ち着きますわね」
「はい奥様、何だか床も温かいですわ」
「そうですわね、窓も大きくて外の景色が幻想的ですわ」
「此れだけの大きいガラスは、初めて見ますわ」
「お母様、床の木が艶やかで綺麗ですわ」
「そうですね、温かみの有る良い色ですね、
此れじゃあ土足で上がるのはダメですわね」
奥様達と長女の座ったソファーの横に、
アルギニン侯爵とモモタロウが座って、
「モモタロウ殿、
温かみの有る良い屋敷で御座いますな。
我が城や、屋敷は床が石材ですので
此の時期は非常に寒いのですよ」
「そうで御座いますか、
此の屋敷は冬を温かく過ごす為に工夫して居りますので、
ご滞在の間は温かく過ごせると思います」
「ほう、工夫ですか、どの様な工夫をなされて居るのです?」
「はい、先ず天然温泉を
地下300メートルの所で掘り当てて引きました。
其の熱で水を温めパイプで床の下に這わせて居ります。
床が温かいのは其の為ですね、
セントラルヒーティングと言います。
此れを各階に使用して居ます。
更に温泉の熱を魔石動力にて全館に送風する事で、
屋敷内の温度を上げて居ます。
大体25度位にしてあります」
「凄い工夫ですな、温泉と魔法を併用するとは、
せんなんちゃらひーてぃんぐですか、初めて聞きますな、
流石は賢者様の弟子と言った所でしょうか、
25度と言うのは分かりませんが」
『えっ?温度の概念が無いの?』
『そうっスね~体感的に寒いか暑いかだけっスね~
温度を数値化した物は無いっスね~』
「何故賢者様の事を?」
「父上の義兄弟と成れば、其れ位は調べますよ」
『凄ぇな侯爵家の情報網』
「時にモモタロウ殿、我が城や屋敷にも、
此の暖房を取り入れられないであろうか?」
「暖房を?」
「そうです。兎に角寒いのですよ、
暖房は暖炉だけ、
厳冬期には洗面の水も氷ってしまう始末です。
今日は来て居りませんが、
ソフィアの病気の原因の一つでは無いかと」
「う~んそうですね~『助けて~リリ衛門~』」
『そうっスね~
城の敷地の地下500メートルに温泉が有るっスね~
何とか成りそうっス。最悪此処から引けば良いっスね~』
『有難うリリ衛門~』
『私はネコ型ロボットじゃ無いっス~』
『愛して居るよ~』
『まあ、クズい旦那様ですけど~惚れた弱みっス~
我慢して上げるっス~』
『・・・・・・・・御免なさい』
「アルギニン様、如何にか成るかもしれません」
「ま、誠で御座いますか?」
「はい、温泉が掘り当てられたらですが、
数日中に見に行きましょう」
「ぜひお願い致す」
「えっと~今の入浴時間は女性だよね~」
「はいご主人様」
「では、奥様方、お嬢様方、侍女さん達、
今丁度女性の入浴時間ですので、
我が家自慢のお風呂に入って来て下さ~い」
「モモタロウ様、
私くし達は旦那様より先にお風呂に入る訳には参りません」
「えっ?そうなの?奥さん達」
「はい、幼い頃よりそう躾けられて居りますわ」
「お前達、モモタロウ殿のご厚意だ。入っておいで」
「・・・・・・・・では、貴方も共に」
「うむ、仕方が無いな、宜しいですかな」
「ご主人様、学院の生徒も含めて誰も浴場には居りません。
案内係の私達も水着を着用致しますので」
「そうですか、ではそう言う事で、カンシン頼みました」
警護の女騎士も5人居たが女性は皆、風呂に行って貰った。
「エレン、俺の応対如何だった?」
「はい、問題ありませんよ、立派なもんですわ」
「有難う。シドニーさん達の事、如何しようか?」
「そうですわね~今はまだ、
侯爵様が望まれた時に対面して頂きましょう」
「そうだね~奥さん厳しそうな人だったしね、
シドニーさんが責められたら可哀そうだしね、そうしようか」
其の頃、ゴンザレス爺さんは宴会場で酔い潰れて寝て居た。
今回の食事はコック長、鬼族の鬼女ユキヒメが指揮を取って、
コックのワーウルフ、
タロとジロとシロの4人で用意して貰って居る。
手の空いたモモタロウはボ~っとして居る。
「何事も経験だからね~俺はする事が無いや~」
「ご主人様はで~んと構えて置いて下さい。
お客様がおいでですので、ご主人様にせっせと動かれては、
私共が困りますので」
「ご主人様、私達も努力して料理の腕を上げましたので」
「如何か安心してお任せ下さい」
「そうだね~ユキヒメ達も料理人のジョブを得て、
実力も付いたからね~お願いするね~」
「「「はっ、お任せください」」」
昼ご飯の用意が出来た頃、浴衣を着た女性陣と、
アルギニン侯爵達が出て来た。
侯爵は風呂で一杯やったのかほろ酔い加減だ。
「モモタロウ様、モモタロウ様、凄いお風呂ですわ!
私くし感動致しましたわ!」
「此れは奥様楽しんで頂けましたか」
「はい、沢山の大きなお風呂、種類も豊富で、
どのお風呂に入るか迷ってしまいましたわ!
何と言ってもあの塩さうなですか、
見て下さいませ、
最近気に成って居たお肌がすべすべに成りましたわ」
「「「うん、うん」」」
「気に入って頂けた様で何よりです。
適度に汗を流せばサウナは体にも良いので、
ご利用くださいね」
「はい、後でもう一度入浴させて頂きますわ」
「お母様お母様、
私くし温水ぷーると言うのが気に入りましたわ。
泉の様に広くて、泳げるんですものビックリ致しましたわ」
「お嬢様も気に入って頂けましたか?」
「はい、はい私くし驚いてしまって・・・・
凄く気持ち良かったですわ、凄く楽しかったですわ」
「「「「うん、うん」」」」
「あの~モモタロウ様、
私達侍女や護衛も
入らせて頂いて良かったのでしょうか?
余りにも勿体無い様で」
「はい、浴場は広いので、全くオーケイですね、
其れに少人数で入る方が勿体ないですよ」
「はい、賑やかしという事で御座いますね、
其れであれば、私達も遠慮なく使わせて頂きます」
「はい、お使いくださいね、
其れとうちの女性陣も入りますので、
皆、仲良くお風呂を楽しんで下さいね」
「皆は~いっ」皆
「それでは、昼食の用意も整った様ですので、
2階の宴会場へ行きましょうか」
「皆は~いっ」皆
「所でモモタロウ殿」
「はい、アルギニン様」
「うむ、風呂の素晴らしさに圧倒されて言うのを忘れて居ったが、
私の娘は、シドニーは如何して居りますか?」
「はい、お辛い事はあった様ですが、今は私共とも打ち解けて、
穏やかにお暮らしで御座いますよ」
「勘当して置いて今更出なのですが、
会わして頂けぬでしょうか?」
「はい、では昼食の時にご一緒に」
モモタロウはカンシンに目配せをすると、
カンシンは頷き、
コウメイに目配せをした。
すると其の場をコウメイが離れて行った。
モモタロウ達が
2階に上がり宴会場に入る時にシドニーさんと出会った。
シドニーさんはお父さんの侯爵やお母さんに、
カーテシーと言う貴族の挨拶をすると、
「お父様、お母様、
こんな姿を晒してしまって申し訳御座いません」
「うむ、事情は聴いている。致し方の無き事、しかし、
頼子への立場もある故、今暫くは我慢致せ」
「シドニー苦労を掛けましたね、
此方の暮らしは如何ですか」
「はい、お父様、お母様、
モモタロウ様やご家族の方々に囲まれて、
心穏やかに暮らせて居ります。
侍女達も皆落ち着いて居りますわ」
「そうか、お前達にも苦労を掛けるが、
モモタロウ殿の計画が成功すれば、
各家での立場も回復するであろう。今暫くは我慢致せ」
「侍女侯爵様、勿体無いお言葉で御座います」侍女
「皆さん、如何かシドニーを支えて下さいね」
「侍女はいお妃様、承知致しました」侍女
皆が宴会場に入ると、ゴンザレス爺さんは既に起きて、
一人で晩酌をしていた。
「モモタロウ殿、直に座るのですか?」
「はい、床には畳が敷かれて、
座椅子に座布団の上に座るのが、
賢者風で御座います」
「ほう、賢者風ですか?賢者様は何時も此の様に?」
「はい、此の方が寛げるのだとか申して居りました」
「其れは素晴らしい、私達も賢者様にあやかると致しましょう」
「モモタロウ様すいません。主人は賢者様に憧れて居りまして、
その弟子であるモモタロウ様の事と成ると舞い上がってしまって」
「これ、何を申す。しかし今日はモモタロ様に賢者様の事を、
色々聞かせて頂きますぞ」
「其れは良いから、アルギニン早よ座らぬか、
今日の昼食、何が出るか楽しみじゃわい」
「はい父上、父上はモモタロウ殿に
がっちり胃袋を掴まれて居りますな」
「皆様お揃いに成りましたね、
先ず前菜は、今からお配りいたします、
コーンポタージュと、
ドサン湖の畔で獲れました
カニで作ったカニサラダで御座います」
前菜を配り終わった所で、
「皆頂きま~すっ」皆
「まあまあまあまあ凄く美味しいですわ!
初めての味ですわ!
屋敷で出されるスープとは大違いですわ!」
「うむ、此れは・・・・美味い。
屋敷の料理長も帝国で5本の指に入る腕前なのだが、
・・・・次元が違う。
此のサラダも素晴らしいカニが良い、最高だ」
「皆様此れからどんどん食事が運ばれて来ますので、
お代わりをすると食べ切れなくなりますよ。
次はビックバッファローの赤み肉で作った
ローストビーフで御座います」
「皆おお~っ」皆
「モモタロウ殿、学生さんや、
侍女達が美味しそうに飲んで居るのは?」
「はい、良く冷えたビールですね、
今日はお客さんも見えて居るので、
少し豪華に大黒ビールです」
「聞いた事が無い酒ですな~エールですかな?」
「似て居ますが違いますね、試しに飲んでみます?」
「是非に」
「儂も~」
侯爵と、ゴンザレス爺さんにビールを渡すと、
<<ごきゅっ、ごきゅっ、
ごきゅっ、ごきゅっ・・・・・・・・>>
「「ん~~っ、ぷっは~っ!美味いっ!!もう一杯」」
<<ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、
ごきゅっ・・・・・・・・>>
「「ん~~っ、ぷっは~っ!美味い!!」」
「何と言う喉越し!何と言う美味さ!至福である!」
「本当に、こんな美味い酒が此の世に有るとは」
「気に入って頂けましたか?帰る時に一箱用意しましょう。
キンキンに冷やして飲むと最高に美味しいですよ。
仕事終わりの一杯。風呂上がりの一杯はもう、最高ですね」
「ごくりっ、かたじけない」
「儂も」
「勿論」
「うん、うん、嬉しく思うぞ」
「ごくりっ、モモタロウ様私くしも飲んで見たいですわ」
「はい、奥様もどうぞ、どうぞ」
<ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、
ごきゅっ・・・・・・・・>
「くぅ~~っ、ぷっは~っ!美味いっ!!もう一杯」
<ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、
ごきゅっ・・・・・・・・>
「くぅ~~っ、ぷっは~っ!美味いっ!!
何と言う喉越しですの!
此れは、飲み慣れた葡萄酒では味わえませんわ!
初めての歓喜ですわ!」
「「「ごくり、奥様私くし達も是非!」」」
「「「「「お母様!私くし達も」」」」」
「そうですわね、モモタロウ様、宜しいかしら?」
「勿論、沢山有りますので、色々とお試しください」
「側室、娘キャ~有難う御座います~」側室、娘
良く冷えたちょっとお高い大黒ビールと、
色んなカクテル、酎ハイが、
タライに入れられて氷水で冷やした物が運び込まれた。
「モモタロウ殿、ろーすとびーふと言うのですかな?
此れも最高に美味いですな、酒に良く合う」
「次がメインディッシュと成ります。
高級クラブの網焼きと、カニ味噌で御座います。
既に塩茹でされて居る食材を使って居りますので、
味付けは一切して居りません。
とても貴重で美味しいもので御座います。
カニ味噌はお酒の最高の当てとも成ります。
カニ味噌に合う
越後の大吟醸を冷やした物を用意して居りますので、
如何ぞ珍しいカニの味と、
美味しいお酒をお楽しみくださいませ」
「皆おお~~っ!!高級クラブですと~幻のカニでは無いですか~」皆
「おお~っ妾の大好きな高級クラブじゃ~!キャ二、キャ二~っ!!」
「ちっぱい師匠~高級クラブだからと言って
グラスタワー何てしませんよ~」
「ちっぱ・・・・何を言って居るんじゃモモ~」
「モモタロウ殿、気付かなんだが此方の方はまさか?」
「はい、俺のちっぱい師匠で、クラスメイトの女帝陛下です」
ちっぱい師匠は仁王立ちすると、
「妾が女帝のアンジュ、ルグレスじゃ、
今は魔法学院Sクラスの生徒の一人じゃ、
公の場では無いから、
無礼講じゃ!苦しゅう無い!」
「何と、上座に一緒に居られたので
モモタロウ殿の師匠とばかり、
女帝陛下とはとんだご無礼を」
「良いのじゃ!何せクラスメイトや教師、
グランドマスター迄気付かなかったのじゃからな、
わはははははは~!」
「皆根に持ってるな~」皆
「って、ちっぱい師匠帝都に行って居たのでは?」
「うん、昨日行って今日帰って来たぞ!
此処からだと、半日掛かるからしんどかったぞ、
モモに貰った防寒用の着ぐるみが有って良かったわい」
「着ぐるみって、スノーウーマンの?」
「おう、城に付いた時、衛兵に攻撃されたわい」
「そりゃ~怪しさ大爆発だよな~で、衛兵は?」
「燃やしてやった」
「燃やすんかい!」
「パパとママがモモに会いたがって居たぞ」
お客さんの侯爵家族御一行様が固まって居た。