-146話ー 会議
モモタロウは城から帰って来ると、
「只今~」
「皆お帰りなさ~い」皆
念話で帰宅報告をしてあったので、皆揃って居た。
「モモちゃん、お疲れ様でしたわ」
「ご主人様、お疲れ様でした」
「うん、城での用事は終わったよ、
明日、侯爵様が家族を連れて
此処を訪問するそうだから、カンシン頼むね」
「はい、お任せください。
女帝様でも満足なさる位の歓迎を致しましょう」
「うん、カンシンは頼りになるね。
昼ご飯は何?お腹減っちゃったよ」
「ご信頼頂き有難う御座います。
今日は、天津炒飯に餃子、かに玉で御座います。
食後のデザートは、
夕張メロンを使ったメロンサンデーで御座います」
「其れは美味しそうだね、
メロンサンデーって初めて聞くけど、
楽しみだよ~」
「何でもコック長のユキヒメの創作料理だそうですよ」
「創作料理、もう其処迄腕を上げたんだね~
あれっ?ユキヒメって確か鬼族の鬼女だったよね、
鬼女族とはまた違うの?」
「はい、鬼族は獣人で御座います。
鬼女族は似ては居りますが、
妖精族に含まれます。故に男と言う物が居りません。
人との間に子は出来ますが、余り妊娠はし無いそうです。
其れに、生まれて来る赤ん坊は全てが女と成ります」
「妖精族?」
「妖精族とは言いますが妖精では御座いません。
何方かと言うと、獣人に近いかと、
初元の者達が魔素より生まれたのだとか、
ラミアや、アラクネ、ケンタウロス、エルフにダークエルフ、
バンパイアにドラゴニュートにドワーフ等がそうで御座います。
暗黒大陸が発生源と言う説も有ります。
因みにご主人様が大好きな、
サキュバス、インキュバス、夢魔さん等は、
妖精の範ちゅうに成ります」
「いや、別に大好きと言う訳では無いですけどね~」
「此の屋敷に来る迄に、
時々夜中に結界に開けられた穴を通って、
夢魔さんがご主人様の部屋に行くのを
何度か目撃致しております。」
目が泳ぐモモタロウ。
「・・・・・・・・御免なさい」
「いえ、謝る様な事では御座いません。男の子ですもの、
でも、私達にもたまには声を掛けて頂きたいです」
「はい、心掛けます」
配下の皆は小さくガッツポーズを決めて、小さな声で、
「皆良しっ!!」皆
と囁いて居た。
『もう此れは逃げられ無いな、リリー宜しく』
『はい、ダーリン了解っス、
立たなくても私の愛は変わらないっス』
『うん、愛してるよリリー』
『勿論私も愛して居るっス。後の事は任せるっス、
正妻としてきちんと、下の世話をする者を決めるっス』
『ああ、うん頼んだよって、寝たきり老人かい!』
『そんなもんっス』
『・・・・・・・・御免なさい』
『そう思うなら、早く獅子丸君復活させる事っスね』
『はい、頑張ります・・・・益々クズに成るな~俺』
『宜しいっス、所詮男なんてそんなもんっス』
リリーの尻に敷かれるモモタロウであった。
昼ご飯を食べ終えて、会議室での会議が行われた。
食事中何故か酔い潰れて居たゴンザレスも復活して、
ご飯を食べて居たのだが、
「まず最初にお聞きしたいのですが、
各所の医療に付いて教えて頂きたいのですが」
「うむ、妾が説明しよう。
医療に関して全権を握って居るのは教会じゃ、
その活動に我らが出資して居る形じゃな、
帝国の直轄領は帝室が、
各領地に付いては各領主じゃ、
教会は独自に各種の疫病に関しての、
研究を行っては居るが、
中々成果と言う物は出て居らぬ。
帝都にも此の国最大の研究所が有るがの」
「と言う事は、此の国で成果が出た場合、
世界規模で拡散するのだと考えといた方が良いのですか?」
「其の通りじゃ、過去はそうでは無かったが、
現在の教皇に代わってからと言う物、
貧富の差に関わり無く、
人々に寄りそう教えと成って居るのう、
其れ故、帝室は教会から研究者を10名連れて来る。
モモよ、研究者達の教育をお願いしたいのじゃ」
「了解です。侯爵家は如何ですか?」
「うむ、儂もその考えに賛同する。
侯爵領にも教会の研究所が有るので、
侯爵家からも10名の研究者を連れて参る」
「はい了解しました。其方の方はお任せします。
先ずは、懸案の天然痘ワクチンに付きまして、
必要な機材に付いては、
既に用意させて頂きました」
とモモタロウは、用意して居た魔石動力の遠心分離機と、
医療道具と、実験道具各種ストレージから取り出すと、
机の上に置いて行った。
『リリー凄ぇ~医療道具、ママゾンで買えんの~?』
『医療道具は買える物と買えないものが有るっス。
点滴スタンドやカテーテル、
注射器等は買えるっス。園芸用で』
「園芸用~!!何其れ!」
「皆モモタロウ殿如何なされた?」皆
「あっ!すいません、何でも有りません」
又皆は、医療道具を一つづつ見て回って行った。
『リリー如何言う事なの~?』
『はい、針等は買えなかったので、
恐らく許可が必要なのでしょう。
似たものが有ったので、加工したっっス。
牛の血液を入れるバッグなんかも
普通に代用品が有ったっス」
『リリー凄ぇ~此れなら普通に病院開けるんじゃね?』
『まさか~レントゲンとか、ⅯRIとか部品が複雑で、
数が多いので作れないっスよ~』
『ⅯRIって、脳みそ輪切りにして如何すんの?』
『あと、メスやハサミに付いては竜骨を使って居るっス。
此れも売って居無いっスから、
縫合用の針と糸は練習用が売って居たので、
買って有るっス。
ソーイングセットみたいなのも買って有るっス。一杯』
『そんなの医者じゃ無いと買えないんじゃ無いの?』
『医療関係者だと記入したら買えたっス。
天界では私らは医療関係者に成るんじゃ無いっスか~?』
『まあ、今此の時点では
此の世界の最新医療の会議をして居る訳だが、
何せ、此の世界、天然痘で偉い事に成っているみたいだしね』
『立派な医療関係者っス。
此れから現場に立つ人を育てる訳だし、
うん、嘘は言って居無いっス』
『其れだと、抗生物質が欲しいよね~ペニシリンとかさ~
伝染病の死亡率が下がって、
出生率が上がれば人の数が増えるのにね~』
『えっ、有るっスよ抗生物質』
『えっ?今何と?』
『園芸用の抗菌剤の中にストレプトマイシンって言う、
黒死病の初期治療に使う
強力な抗生物質が普通に売って居るっス。
買っときます~?』
『大量購入頼んます。序でに良く聞くおまじないに、
魔力注ぎ込んで置いて~』
『魔力っスか~面白い発想っス。
此の抗生物質は元々が強力で、
使用量は大人で、体重に合わせて、
1cc~2ccの間で使うっスが、当然副作が用有るっス。
腎臓に負担が掛かるのと、難聴が起こるっス、
症状が出たら、投与を暫く見送るっス。
主にペスト、結核に効果が有るっス。
その他色んな細菌の駆除に使うっス。
けれど、梅毒や、天然痘での効果は言われて居無いっス。
他にも多種の抗生物質が有りますからね、
魔力を加える事で、
もしかしたら全ての細菌に効果が出るかも知れないっス。
其れならば、
何としてでもペニシリンを開発して貰いたいっスね』
『何で?』
『ダーリンも永遠に此処に居られる訳では無いっス。
薬剤にはポーションと同じ腐敗の魔方陣を掛けるので、
長持ちはするっス。
けれど、直ぐに無くなってしまうっス』
『そうだね~世界人口が相手だからね』
『そう言う事っス。
アオカビからペニシリンが取れるのは分かって居るっス。
後は、現地の研究者に其の抽出方法を確立して貰うっス』
「皆、如何?見てくれた?」
「うむ、初めて見る様な道具ばかりじゃのう、
此れもお主の師匠の賢者様が作った物なのかの?」
「賢者様の作った道具を俺がコピーしたんですけれどね」
「其れは其れで凄いと思うんじゃが」
「そうですわね~
モモちゃんだからとしか言いようが御座いませんわ」
「モモタロウ様凄いです。益々惚れ直しますわ」
「そうだね~これ等の器具で、天然痘を撲滅出来たら、
聖者様と言われる様に成るだろうね」
「この道具の使い方等は、研究者を集めた時に説明します。
そしてもう一つ、此処に黒死病の薬が有ります」
皆、口を大きく開けて驚いて
「皆はい~~???」皆
「まあ、驚くのは無理無いですが」
とモモタロウは、ポーションの瓶と同じと言っても良い、
白地の焼き物の底に腐敗の魔方陣が施されて極小粒の、
其れこそゴブリン等の魔物の魔石を砕いて
取り付けた瓶が出された。
「此の中には100ccの抗生物質と言う
黒死病に効果の有る薬剤が入って居ます。
その名をストレプトマイシン。此れを語るには先ず、
疫病に付いて話さなければ成りません。
そんなもんかと言う程度で良いので、聞いて置いて下さい。
黒死病や天然痘、結核や梅毒と言った恐ろしい伝染病は、
細菌と言う目に見えない程の
小さな生物によって引き起こされます。
生物である以上殺す事も可能なのですが、
宿主である体を人質に取られて居る為に
殺す事が出来ません。
其処で、出来るだけ体に害が無い様に、
病気が体の中で広がらない様にするのが、
抗生物質と言う物です。此れが時間を稼いでいる間に、
体の中の抗体が抗生物質で弱らせた細菌を殺して治癒に向かう。
抗生物質での治療と成る訳ですが、
ストレプトマイシンと言う抗生物質は
黒死病の治療に使える程強力です。
当然副作用が有ります。
此の場合には腎臓に負担が掛かると言う事と、
難聴に成ったりします。
其の場合には暫く投与を見合わせます。
そして、此のストレプトマイシンで効果が期待出来るのは、
初期段階の黒死病と、結核です。
天然痘や、梅毒に対しての効果は分かりません。
其処で、ストレプトマイシンに魔力を注ぎ込んでみました。
ポーションは、
ポーション草と言う体力増強剤に魔力を注ぎ込む事で、
魔法治療薬と成ります」
「では、其の魔力を注ぎ込んだ
ストレプトマイシンと言う薬が、
疫病全てに効く魔法薬に成るかも知れないと?」
「はい、其の臨床実験をお願いしたいのですが?」
「うむ、協力をしよう、
疫病に苦しむ領地の民を救う為で有れば、
喜んで協力させて頂こう」
「妾も協力を惜しまぬぞ、帝国を上げて協力させて貰う」
「そしてもう一つ、
新しい抗生物質を作り出して欲しいのです。
俺は師匠からアオカビから
ペニシリンと言う抗生物質が取れると聞いて居ますが、
注出の方法が分かりません。其れを研究者に研究して貰い、
更には、魔力を使った実験もして貰いたいのです」
「其れは、ストレプトマイシンを作れるのが、
モモちゃんだけって事だから?」
「はいペチカさん、師匠に頂いた
ストレプトマイシンをスキルでコピーして居るので、
他者には真似が出来ません。
師匠も何処に居るのか分かりませんし、
何かのカビから抽出したとは聞いて居るのですが」
「モモタロウ殿、と言う事はモモタロウ殿が居れば、
幾らでも作り出せると?」
「其の通りです」
「では帝国と、独占契約するのですな、
私共も加えては下さいませぬか?」
「ちっぱい師匠如何します?」
「構わぬぞ、ゴンザレスよ
その代わりの条件と言っては何じゃが、
研究に付いては、極秘と成るであろうから、
此の地で行う事に成るであろう。協力して貰うぞ」
「ははっ陛下、仰せのままに」
「何じゃ知って居ったのか?」
「勿論で御座います」
「モモ達は誰一人、気付か無かったがのう」
皆そっぽを向くのだった。
「じゃあ、後は馬痘に掛かって居る馬を探さないとね、
目印は、天然痘と同じ様に膿疱が見て取れる事、
発見したら膿疱の膿を
牛の血管に注射をして症状が現れたら馬痘ですので、
牛痘に成った牛から更に牛痘の牛を作ります。
くれぐれも注意しますが、
馬痘や、牛痘は人に伝染しますので、
細心の注意をして下さい。
特に馬痘は強毒性なので特に注意が必要です」
「「うむ承知した」」
『うん、有益な会議だった。帝国と、
ローソン侯爵領の協力を取り付けたのは大きいな』
『そうっスね、医療改革が起きれば
人の生存率が一気に上がるっス。
ダーリンももっと住みやすく成るっスね』
『そう願いたいよ』
会議の間モモタロウの後ろに控えて居たカンシンに、
「カンシン、お風呂男性時間に成ったら教えて呉れる?」
「はいご主人様、後、小一時間位で御座います。
コーヒーのお代わりをお持ち致しましょうか?」
「有難う、頼むよ」
カンシンは静かに部屋を出ると、暫くしてからコーヒーと、
紅茶のお代わりを配って行った。出来る執事は違うのだ。
モモタロウは質問を受け乍ら雑談で時間を潰してから、
「御屋形様疲れたでしょう、風呂にでも行きませんか?」
「2人って、そんなに大きな風呂なのかの?」
「いえ、100人位は入れますよ、自慢の風呂です」
「ほえ?100人とな?」
二人は風呂場に行くと、
ゴンザレスが又大きな口を開けて驚いて居た。
「な、何と大きな浴室じゃ、泉かと思ったわ。
此れだけの湯をくべると成ると
魔法を使ったとしても大変じゃろうに」
「いえ、天然温泉です。
地下300メートル迄掘ったら湧いて来ました。
100度のお湯を水の魔石でうめて42度にして居ますよ、
プールは35度で、体温より少し低くする事で、
新陳代謝が上がる様にして居ます」
カンシンがやって来て、
「御屋形様、ご主人様、お背中を流しに参りました」
「うん頼むよ、カンシン、コウメイ」
モモタロウと、ゴンザレスは背中を流して貰いながら、
「御屋形様、かゆい所は御座いませんか?」
「うむ、気持ちが良いぞ」
「有難う御座います。体が温まりましたら、
是非屋敷の露天風呂をお楽しみください。
雪が積もった庭園の侘び寂の、
風景を楽しみ乍ら温かい岩風呂に浸かって
お酒をお召し上がりくださいませ」
「おお、すまぬな、是非行って見よう」
モモタロウとゴンザレスは、
岩風呂から雪が積もった日本庭園を見乍ら、
竜泉酒を飲み、露天風呂を堪能するのであった。