表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/201

-145話ー 竜泉酒


モモタロウは、ソフィア、ローソン。


ローソン侯爵家の末娘10才が掛かった業病、


天然痘を治療して屋敷に帰って来たのだが、



「モモタロウ様、お爺様、ソフィアは如何でしたか?」



「うむ、危険な状態ではあったが、


モモタロウ殿が治療して下さった。


しかし乍ら・・・・あれ程の手際とは・・・・


シドニー儂は本当に驚いてしまったよ」



「はい、お爺様、私くし達を治療して下さった時も、


妊娠しない魔法迄掛けて下さったのに、


実にあっけらかんとした物でしたが、


其のお心遣いに皆、抱き合って泣いた物で御座います」



「何と、その様な事迄して下さったのか、


何とお礼を申し上げたら良いのか、


感謝の言葉もござらん」



「シドニーさん、ソフィアさんは、


もう大丈夫ですから安心して下さいね」



「はい、はい有難う御座います。


私くしの忠誠は一生、貴方様のもので御座います」



「うむ、良くぞ言った!天晴じゃ!」



「いや、大袈裟すぎますよ、


俺の知り合いに危機が有った。


俺は、自分が出来る事をしただけです。


誰もが同じ事をするに違いありません」



「其の出来る事が凄すぎるのじゃがなあ」



「まあ、何にしても無事に治療出来た事ですし、


食べ損ねた朝ご飯を食べましょうか、後の事は、


其の後で話し合いましょう。


カンシン、朝ご飯の用意を、其れと食後に小会議室を使うね~」



「はっ、承知致しました」



モモタロウとゴンザレスさんは、2階の宴会場に戻って、


朝ご飯を取り直した。



「美味い!!何と此れは凄く美味い!


最高の食材を最高の調理で極上の一品に仕上げて居る。


正に天上の料理である」



「へ~っドサン湖のエンペラーサーモンって


そんなに良い食材なの?」



「うむ、先ず遠い地である為に


新鮮な物はドサン湖の近く迄行かねばならん。


そして、獲るのに魔法使いと


巨体を釣り上げる為の道具が必要と成るのじゃ」



「へ~そうなんだ~一杯有るので、


た~んと、おあがりよ!」



「かたじけない。此の玉子かけご飯とやらも美味いし、


味付け海苔との相性が抜群で有るな、


サラダも絶品じゃが、


此の茶わん蒸しと言うのも至高の味じゃ!



な、何と言う事じゃ、


漬物、お茶に至る迄・・・・ムムムム・・・・


天上界の旨さと言うのは大袈裟では無かった。


飲みたい・・・・


あの、モモタロウ殿・・・・酒が飲みたいのじゃが」



「此の後、会議が有るので控えて居たんだけれど、


まっ良いか。


カンシ~ン竜泉酒を持って来て~」



「はっ、冷になさいますか?燗になさいますか?」



「う~ん、寒いし燗で頼むよ~」



ゴンザレス、ローソンは口を大きく開けたまま驚いて居た。



「モ・モ・タ・ロ・ウ・殿・今・竜泉酒と、


申されましたか?


いやいや儂の聞き違いで有ろう、


うむ、そうに違いない」



「土の神竜様にご飯のお礼に貰った竜泉酒ですよ」



「誠で御座いますか?儂もまだ飲んだことが御座らん。


酒好きには夢にまで出て来る。幻の酒。竜泉酒。


本当に飲ませて頂けるので御座るのか?」



「え~っ普通のお酒とそんなに変わりませんよ~


一杯有るんで、た~んと、おあがりよ」



「一杯有るので御座るか?


此処数百年市場に出回った話は無かった


と言う幻の酒なのだが」



「まあ、市場は知らないですけれどね~


俺、直接貰ったし、一杯有るし」



「う、売って下され~」



「いや、今後もお付き合いも有るし、一樽差し上げますよ、


珍しいお酒もセットで」



「おお~我が兄弟よ~モモタロウ殿~


今日から兄と慕って下され~少々歳は行って居りますが、


儂の娘をセットで差し上げましょう!」



「歳は行って居るとは?一体幾つ?」



「行けず後家はまだ40には成って居りませんぞ~


出戻りも合わせれば5人居りますぞ~皆あげます。」



「いや御免なさい。美人さんなら此処に一杯居りますので、


勘弁して下さい。本当に御免なさい」



「そうですか~残・念・でっ・すっ・


じゃが、シドニーも居りますし、


義兄弟とは成りましょうぞ!!」



「偉い年の離れた兄ちゃんだなおい!


竜泉酒ってそんなに珍しいの?


俺達毎晩普通に飲んで居るよ~」



「何と羨ましい!儂も今日から此処に住むぞい!」



「住むぞいって、城の方は如何すんの?」



「そんなもん、息子にやらせます。


その為に隠居したのですから」



「竜泉酒の力ハンパね~」



「そりゃそうですよ、酒好きの貴族であれば、


自分の娘、妹、嫁迄差し出す程に貴重な幻の酒です。


其れを一樽ともなればセットで来るでしょう」



「何で其処まですんの?」



「其れは、儂達が女神教の神徒だからですかな?


力の象徴たる神竜様は


亜人や貴族にとっては特別の存在ですからな、


竜泉酒を他の貴族に振舞うと言うのは、他貴族に対して、


力の誇示と成るのですよ。



ですから今度夜会を行います。


モモタロウ殿も参加して下され、


我が一族が後ろ盾であると広く知らしめます。


そうなれば、


貴族達からちょっかいを掛けられなく成るでしょう。



竜泉酒を出すと言われれば、ローソン領の全ての頼子、


近隣の他領主等が挙って、


万難を排して訪れる事で御座いましょう」



「参加するのは構いませんが、何時位に成るのでしょう?


『貴族からのちょっかいが掛からないのは助かるし、


二樽渡して置こうかね』厳冬期に入って居ますよね~大丈夫?」



「そうですな~今ならまだ馬が使えます。


今はまだ年初め迄は40日程有りますので、


直ぐに各地に使者を飛ばして、


年の初め1日に行いましょう。


雪は各貴族が自分の財力を使って


押し通して来るでしょう。


おっ、来た来た~」



竜泉酒の熱燗が来た。


カンシンのお酌で上機嫌のゴンザレスだ。



「モモタロウ殿、此の冬は貴族達で賑やかになりますぞ!


おおそうだ。


もし良ろしければ料理をお願い致しても良いですか?」



「ああ、うん俺の料理で良ければ良いですが」



「其れは有り難い。宜しくお願いします。しかし美味い。


最高の料理に最高の酒!儂は今、幸福の絶頂に居るのかも知れん」



「じゃあ取り敢えず、


朝ご飯が終わったらもう一度城に行きますか。


カンシン悪い、会議は城から帰った後だわ~」



「はい、ご主人様」



此の後ほろ酔いのゴンザレスは


デザートのアップルパイを頬張り乍ら、


今度はシドニーさんのお酌で竜泉酒を飲み乍ら、


相貌を崩して居た。


モモタロウは食後、今度は酔っぱらった爺・・・・もといゴンザレスを連れて


空を飛んで城へ、



「寒い・・・・」



実際には結界シールドに守られて居るので、


寒い訳では無いのだが、


雪が降る中飛んで居るので、寒く感じて居るのだ。



城に付くと、門兵に又馬を借りて城へと向かった。


今度は城内へと入って行き、広い城の廊下を駆けて行き、


大きな観音扉の前で馬を止めると、部屋に入っ行った。



「城の廊下を馬で駆けるとか、誰か止めろよ~」



「アルギニン、アルギニンは居るか~!!」



『如何も侯爵の執務室みたいだな』



「ささっ、モモタロウ殿も入って下され」



「あっ、はい」



モモタロウが入ると奥の部屋から侯爵が出て来て、



「父上如何なさいました。おっ、


此れはモモタロウで有たっな、


末の娘の命を救って呉れたそうだな感謝するぞ」



「其れも有るが、モモタロウ殿に竜泉酒を頂いた。


年の初めの一日に夜会を行う。


今すぐに各地の貴族に招待状を出せ。


其れとモモタロウ殿と義兄弟の契りを結んだ。


今日よりお前の叔父だ!其のつもりで心致せ!


そして、


我が一族はモモタロウの後ろ盾と成る。良いか!」



「はっ!父上心得ました。


モモタロウ殿。以後良しなにお願い申す」



「えっ、はい此方こそ、宜しくお願いしますね」



「で父上、竜泉酒はどれ程の量に成りますか?


それによって夜会の人数を決めなければ成りません」



「うむそうじゃのう、モモタロウ殿、


樽の大きさはどんなもんじゃろう?」



「あっ、今出しますね『リリー100本程、


竜泉酒一升瓶に詰めて、


お土産用に化粧箱に入れて呉れる~?』」



『は~いっ、了解っス~


化粧箱は竜泉酒だけに竜骨で作とくっス~


序でに侯爵家の家紋の槌に錫杖と、


モモタロウマークを入れて置くっス』



『うん、有難う』



『テヘヘヘ・・・・っス~』



モモタロウは竜泉酒の大樽二つと、


化粧箱に入った一升瓶100本と、


洋酒各種10本づつをストレージから出した。


侯爵も暫く大きく口を開けて驚いたが、


やがて、一つづつ丁寧に見比べると、



「凄いな此れは・・・・神竜様が作った竜泉酒なのか?」



其れを聞いたゴンザレスは、



「ま、誠か?儂は伝説の


神竜様の竜泉酒を飲んだの・かっ・ガハッ!」



と血を吐いた。



「えっ、だって土の神竜様にご飯のお礼に貰ったって、


言ったじゃ無いですか~」



「そうで有った。分かって居れば、もっと味わって飲んだのに」



「モモタロウ殿は神竜様に会ったのですか?」



「うん、ドサン湖で地竜討伐した時にねっ」



「地竜を討伐!幼竜では無く成竜ですか?


討伐出来るもんなのですか?


だとすれば神竜様に殺されてしまうのでは?」



「地竜討伐は村や町を襲って


人を食って居たやつだからね、


神竜様が謝って居たよ」



「しかし、樽には焼き印で我が一族の紋章と、


此れはモモタロウ様の紋章ですかな?


其れに神竜泉酒超特急と書かれて有りますな。



白い箱にも同じように浮き彫りに、


此れは骨で出来て居るのかな?


中は白く薄い紙?見た事の無い布?


美しく梱包されて居りますな、


此れは土産用でしょうか?


其れと、見た事の無い酒?が各10本。


此の酒は何でしょうか?」



「はい先ずは樽は説明要りませんね、満タン入って居ます。


一升瓶ですが、お土産用です。箱は竜骨で出来て居ます。


2つ入って居るぐい飲みもそうですね、



瓶はガラスですので気を付けて下さいねっ、


包んで居るのは紙ですね、高そうに見えるでしょう?


他のお酒は皆さんへのお土産です。


此の国では売って居無い物ですね。


全て、此処に来る前に献上品として用意した物です」



「凄いの一言しか出ません。値段の付け様が有りませんな。


どれも見た事の無い酒ばかりでは有りませんか。


其れに神竜様の竜泉酒。箱が竜骨とは、


ミスリルより希少な素材に、



美しいガラス瓶、どの様に作られたのやら、


見当が付きません。


どれも芸術の域を飛び超えて居て神秘的でさえ有ります。


一体どれ程の価値に成るやら、


これ程の物を頂いて良いのでしょうか?」



「モモタロウ殿良いのですか?」



「うっ!『此処は神竜様に擦り付けよう』


其のつもりで、神竜様に作って頂きましたから


貰って貰わないと、


次に神竜様に会った時に俺が困ります。」



「承知しました。父上、我が家の頼子貴族と、


帝国中の領主、


其れに女帝様の一族を招きましょう。


其れでも余るかと思われます」



「うむ、では至急使者を出すのじゃ」



「はい」



と言って侯爵は文官を呼ぶと直ぐに書面の作成と、


使者を送る様に指示した。



「うん、仕事が早いね」



「所で父上、此の酒を何処に仕舞いましょうか?」



「そうじゃのう、盗まれる可能性も有るか、


では、宝物庫に仕舞って厳重に管理するのじゃ」



「はい、ではその様に致します」



「其の前に1本試飲してみては?」



「おう、そうで有ったの。アルギニン、1本開けてみよう」



侯爵は大事そうに箱入りの1本を取り出すと、


中の竜泉酒を取り出して、封を開けた」



「盃が一つ足りませんな」



「俺はマイ盃を持って居ますから


『嘘です。リリーに作って貰いました』」



ぐい飲みをストレージから出すと、


酒を注いで貰い試飲を始めた。



「う、美味い、此れならば最高の夜会が開けるでしょう」



「そうじゃな、神竜様が作ったと分かったら、


有難さが増して更に美味く成ったのう」




『うん、何時もの味だね。そうそう、あてが要るな』




とモモタロウは、チーズ、ポテトチップ、


柿の種、ハムなどのあてを出して、


3人で試飲?という名の飲み会を始めた。



「此のあてと言う物は酒が進みますな、非常に美味しい」



「うむ、最高じゃわい」



「ですよね~」



「所で如何じゃ、モモタロウ殿に


夜会での食事を作って貰おうと思うのじゃが


今朝、屋敷にお邪魔した時に朝ご飯を頂いてな、


天にも昇る美味さじゃったのじゃ、



モモタロウ殿の身内に聞いてみても、皆、夢見心地で毎日、


食べて居る食事で、天にも昇る気持ちだと言って居る」



「其れは素晴らしい。父上、私も食べてみたい。


今の時期は仕事も少ないし、


モモタロウ殿、明日伺っても良いですかな?」



「其れは構いませんが、


うちは使用人も一緒にご飯を食べるので、


其れでも構わなければ、歓迎しますよ」



「其れは勿論構いません。


其々の家には其々の決まりが有るのは必然。


当然従いますよ、


妻や子供達にも言い含めて置きましょう」



「では、歓迎しますね、『一家で来るのかよ、


ま~別に問題は無いのだけれどね、広いし』」



試飲用の1本を綺麗にあけた後、



「では、私は屋敷に帰りますね」



「儂は暫くモモタロウ殿の屋敷で世話に成る故、


何か有ったら、連絡せい」



「はい、父上此処はお任せ下さい」



『暫く泊まるのかよ此の爺さん。


ま~後ろ盾に成って呉れるし、歓迎しようかね』



「あっ、そうそう、


モモタロウ殿が業病の天然痘と黒死病に付いての、


予防策が有るそうじゃ、屋敷に来た時に詳しく話そう」



「父上、あっそうそうと言う話題では有りません。


此の領内に置いても重大な懸案事項で御座いまするぞ、


モモタロウ殿、本当で御座いますか?」



「うん、今朝ゴンザレスさんから魔法や、


魔法薬で治すのは難しいと聞きまして、


今迄、魔法で治ると思って居たもんでして、


此れから帰って会議です」



「はい?誰でも知って居る恐ろしい病気ですぞ、


モモタロウ殿は長く人里を離れて


暮らして居たとかですか?」



「はい、賢者の師匠に付いて、


ずっと原始の森に居ましたから、


偶然今のパーティーメンバーと、ソリア王国の砂漠で有って、


其の儘此の国に来た訳なんですよ~


だから一般の常識には疎くて、あの~すいません」



「ほう、賢者様の弟子ですか、


賢者様は何処かに居られるのですね、


今の世には居られないと嘆いて居りましたが・・・・


そうですか、


此れは世界が救われるかも知れませんね、分かりました。


そう言う事でしたら私も一肌脱がして貰いましょう」



「はあ、協力して貰う事も有ると思いますので、


宜しくお願いします」



「承知しました」



モモタロウとゴンザレスは又、


空を飛んで屋敷に帰るのだった。



「は~寒ぅ~『爺さんは酔っぱらって寝てるし~』」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ