-141話ー ローソニア城
モモタロウ達が冒険者ギルドに戻って来た時には既に、
とっぷりと日が落ちて居た。一行は冒険者ギルドに入って、
カウンターに向かうと、
「すいませ~ん、
昼頃に騎士のご遺体の搬送を請け負った
モモタロウと言いますけれど、
夜には結果が出て居ると聞いて来たのですけれど~
其れと請け負ったコーク、スクリュー邸の
悪霊退治ですが完了しました。
屋敷にあった遺体と、
遺留品の回収をしたので確認して頂けますか?」
昼とは違う受付嬢の、今度は人族だったが応対してくれた。
「ウ はいモモタロウ様ですね、ギルマスから話は聞いて居ます。
遺体ですか?どの様な状態なのでしょうか?」ウ
「はい、全て白骨ですね。」
「ウ はい了解しました。では此方においで下さい。」ウ
モモタロウ達はギルドの裏の有る
解体場に案内されて行った。
受付嬢は筵を取り出すと、
「遺体は何体位有りますか?」
「100体以上は有りますね。」
筵を敷き乍ら受付のお姉さんは、依頼書を確認して、
「ウ はい記述道理、惨劇の後手付かずの状態の様ですね、
遺留品は此方に出して頂けますか?」ウ
と解体用の台の上を指定した。
モモタロウは台の上に遺留品を全て出すと、
「ウ 凄い量ですね、
流石は中級ダンジョンの英雄と言う所でしょうか、
確認しました。ん?」ウ
遺留品を調べ乍らお姉さんは、
「ウ 此れは魔法の袋ですか、2つも有りますね、
つきましては此の魔法の袋を売っては頂けませんか?」ウ
「ぺ 貴女、目の付け所が良いですね、見所が有ります。
魔法の袋はギルド本部が、
血眼になって探し求めて居る物ですので、
是非頑張って買い求めて下さいね。
貴女の得点に成りますよ。」ぺ
「ウ 私もそう聞いて居ります。で、貴女は?」ウ
「ぺ 私はペチカ、フィン。グランドマスターです」ぺ
「ウ 貴女があの、伝説の?お会い出来て光栄で御座います。
グランドマスター」ウ
「ぺ はい、私も優秀なスタッフに会えて嬉しいですよ。
貴女お名前は?」ぺ
「ウ はい、ミルフィーユ、バランと申します。
以後お見知りおきを、」ウ
「ぺ はい、期待して居ますね。」ぺ
「ウ 有難う御座います。其れと、
モモタロウ様も宜しくお願い致します。
で、遺留品ですが、全てモモタロウ様の物と成ります。
確認も致しましたので、お持ち帰りください。
で、魔法の袋ですが是非売って頂け無いでしょうか?」ウ
「良いですけれど、ペチカさんから先日、
金貨10万枚の値段を付けて貰って居ますが、
同じ値段で買い取れますか?」
「ウ え~っ!そんなにするんですか~?」ウ
「知らないのかよ!」
「ウ はい、買い取った実績無いですし、
貴重な物なので、本部に買取価格を聞いてから
価格を決める積りでした。
グランドマスター買取価格は
金貨10万枚で宜しいですか?」ウ
「ぺ はい、冒険者ギルドでの需要と希少価値を考えれば、
そうですね、金貨11万枚出しましょう。」ぺ
「ウ 了解致しました。本部にはその旨の通達をして置きます。」ウ
「ぺ お願いしますね。ギルド本部には私が責任をもって運びます。」ぺ
「ウ 宜しくお願い致します。其れからモモタロウ様、
確認はしましたので報酬の方は、
明日以降引き取りにいらして下さい。
其れと遺留品に付きまして、
売りたい物も明日以降にお願い致します。
夜は冒険者ギルドには当直の私しかいませんので、
ギルドに貴重品等は置いて居りませんので、」ウ
「はい了解しました。で、搬送したご遺体に付いては?」
「ウ はい、侯爵様の回答は
明日の朝一番に侯爵城へおいで下さいと言う事です。
宜しくお願いしますね。」ウ
「はい、了解しました。明後日に又来ますね、では此れで、」
「ウ えっ、もう行っちゃうんですか?
こんなに一杯白骨を置いて?
私一人しか居無いんですけれど、
凄く怖いんですけれど、結構マジで、
其れも呪われた屋敷の白骨ですよね~
朝迄お話でもしませんか?
明日の朝には私、死んで居るかも?」ウ
御姉さんがマジで怯えて、涙目で震えて居たので、
「そうですね、気が付きませんでした。
白骨は一旦俺が保管して次に来る時に引き渡しましょうか?」
「ウ ふぅ~助かりました。宜しくお願いします。」ウ
「ぺ 夜の冒険者ギルドに、女性職員が一人だけだなんて、
ギルマスは何を考えて居るんでしょう?」ぺ
「ウ いえ、一人なのは余り問題では有りません。
此れでも私、レベル20有りますので、
聖騎士並みの戦闘力は有ります。
其れに2階には護衛も詰めて居ますので、
でも、此処には私一人です。
私お化けは苦手なんです。」ウ
「ぺ まあ成程ね、
其れなりの女性を配置して居ると言う事ですか、」ぺ
モモタロウは白骨を筵ごとストレージに仕舞うと、
受付のお姉さんにはお礼に、チョコバナナを一つ手渡してから、
冒険者ギルドを後にして、裏の冒険者用の宿屋に向かった。
宿屋の受付カウンターの所へ行くと、
「昼に宿を取ったモモタロウですが、今帰って来ました。」
受付のお姉さんが、宿泊台帳を見て、
「はい、モモタロウ様ですね、此れが2階のお部屋の鍵です。
夕食はもう支度出来ているので、食堂の方へどうぞ、」
食堂に行ってテーブルに着くと、ドワーフの女の子が来て、
「ド 宿にお泊りの方ですか?」ド
モモタロウは部屋の鍵を見せると、
「今日の晩御飯は?」
「ド はい、野菜とオーク肉の具だくさんスープと、
麦粥、に黒パンに成ります。後、料金は掛かりますが、
飲み物にお茶、エール、ミード、葡萄酒、火酒が有ります。
料理ですが、ボウボウ鳥のパテの香草焼き、
オークの骨付きアバラ肉の香草焼きに、
オーク肉の腸詰め、
オーク肉をトレントのチップでいぶしたハムに、
ローソニアレインボウマスの塩焼きに、
オーク肉のステーキ、
野菜とオーク肉の香草炒めに、
イノシシ肉を潰した肉団子ですね。」ド
「お~意外とメニュウが豊富だね~
此処は料理の味も知りたいから、
全部の料理を人数分で、其れでステーキは味を付けないで、
美味しいソースを持って居るんでね、後、飲み物は、
ワインをピッチャーで貰えるかい?」
「ド え~っ!食べ切らないですよ~」ド
「何、大丈夫!うちには大食漢が4人もいるからね。」
「エ 大食漢だ何て失礼ですわ!」エ
「ぺ そんなに沢山は食べないぞ!」ぺ
「カ、チョウ お褒めに預かって光栄で御座います。」カ、チョウ
「ド え~っとちょっと待って下さいね~
・・・・・・・・分んな~い、
幾らに成るか店長に聞いて来ま~す。」ド
料金の計算が出来ない様だった。
「 か、可愛い!が、大丈夫だろうか?」
奥に引っ込んだドワーフの女の子は暫くすると、
戻って来て、
「ド 店長に計算して貰いました~
銀貨2枚と大銅貨1枚、
銅貨6枚に銭貨4枚だそうです~」ド
「ふん、ふん、2万1千6百4十円ね、
そしたらほい、3万円」
と銀貨3枚を手渡すと、
「ド え~っと~お釣りは~・・・・・・・・
やっぱり分かんないや~」ド
「うん?お釣り?
30000円ー21640円=8360円だから、
大銅貨8枚と、銅貨3枚と銭貨6枚だね~」
「ド 店長に聞いて来て、お釣り持って来ますね~」ド
と、又女の子は奥に引っ込んだ。
「ぺ モモちゃんは変わった計算方法をするんだね」ぺ
「あ~俺の国のお金の単位は円と言うんです。
此の国の相場と照らし合わせて、
10円が銭貨1枚、100円が銅貨1枚、1000円が大銅貨1枚、
10000円が銀貨1枚、100000円が大銀貨1枚
後、金貨は1枚200000円、
大金貨は1枚1,000,000円、
白金貨が1枚10,000,000円、
王金貨が1枚100,000,000円と置き換えた方が、
計算がし易いんですよ~」
「ぺ そんなもんかね~」ぺ
「はい、其れに普通に使われて居るのは
銀貨が主要流通貨幣なので、
銀貨を起点に計算すると計算しやすいですね」
「ふん、単位か~確かに良いかも?
銭貨を1として考えた場合に計算しやすいな~ただし、
其の場合金貨が、20000に成ってしまうか、
憶えれば良いだけの話なのだが、其処がな~」
とペチカさんは、何やら考えて居る様子だ。
そうこうして居る内に女の子が戻って来た。
「ド 冒険者さん凄いです~
こんなややこしい計算が直ぐに出来る何て、
尊敬します~私も店長に教わって居るんですけれど、
頑張らないとダメですね~」ド
『リリーそろばん作って呉れる~』
『リ はい、了解っス~ホイ出来たっス~』リ
『有難うリリー』
モモタロウはそろばんを出すと、
何とも可愛いドワーフの女の子に
説明してプレゼントした。
「ド 冒険者さんありがとう。
でもタダだなんて、私の体、狙って居ます~?」ド
「要らね~よっ!只何となくですよ」
「ド でも、嬉しいです~頑張って計算できる様になりますね~」ド
「うん、頑張れ~」
頑張って居る娘にはとことん甘いモモタロウだった。
きっと男だったらこんな事はしないだろう。
「ぺ あの~モモちゃん、私も欲しいのだけれど、
何か、其れを使える様に成れば、
嫌な事務仕事が凄くはかどる様な」ぺ
「エ 私くしも欲しいですわ、
報酬の計算がはかどりそうですわ」エ
ペチカと、エレンにもそろばんを渡すモモタロウだった。
亜人であるカンウとチョウヒは分かって居ない様子だった。
『此れは良いな、後でカンシンとシュウユ、
其れと買い物に行く娘にも渡して置こう』
『リ 賛成っス!識字率が低く、
計算能力の低い此の世界の人では、
読み書き、算術が出来るのは高い能力として認められています。
ま~でも、私の電卓機能が有れば
必要無いんっスが』リ
『そうでした~画面に電卓機能付いてました~』
「でも、管理者に送るのは有りかも」
『リ 管理者には算術の能力は必須っス
大いに期待出来るっス。
早速此処の領主に試してみるっス』リ
「そうだね~そうしよう」
「ぺ モモちゃん何をぶつぶつ言って居るんだい?」ぺ
「いや何ね、此処の領主にそろばんを
プレゼントしたら喜ぶんじゃ無いかと」
「ぺ おお~ナイスアイディア!
冒険者ギルドでも売り出したい。
ギルド7:モモちゃん3で、如何ですか?」ぺ
「はい、オーケーです」
「ぺ 決まりだね、
ギルド本部に帰ったら早速作りましょう!」ぺ
「エ モモちゃん金の匂いがプンプンしますわ。」エ
「いや、此れ以上儲けても仕方ないんだけれどね。」
「エ お金は邪魔には成りませんわ。
前にモモちゃんが言ったのですよ。」エ
「そんな事も有りましたね~そんな事よりも~
おっ、来た来た。さ~食べるぞ~」
モモタロウ達のテーブルは晩御飯で溢れそうだ。
「え~っと確か此の堅い餅みたいなのが黒パンだよね、
粥かスープに浸して柔らかくしてから食べるんだよね。」
「エ そんなのは常識ですわ。」エ
「いや俺、自分で料理するからさ~
食べるの初めてなんだよね。」
「ぺ そうですね、モモちゃんの料理を食べたら
他の料理は食べる気がしませんものね。」ぺ
「エ そうですわ、モモちゃんの料理は最高なのですわ。」エ
「チョウ ご主人様の料理は天界の料理です。
私はこの料理を食べる為に生まれて来たのです」チョウ
「カ 私もそうです。
しかしご主人様の料理だけが至高なのでは有りません。
お酒も至高で御座います。我が身がとろける程に、
私はご主人様の為であれば何時死んでも良いと思って居ります。」カ
「チョウヒ、カンウ褒め過ぎ~明日も忙しそうだから、
皆ガンガン食べて飲んで、疲れを取ろうね。」
「皆 は~いっ!」皆
此の後、何時も通りに歓談し乍ら、
飲み食いをして、夜は更けて行った。
結局、沢山有った料理を食べ残す事も無く、
更に、ハムと腸詰とチーズを追加注文したのだった。
翌朝、暗い内から朝ご飯を済ませたモモタロウ一行は、
侯爵城に向けて、箱馬車で出発するのだった。
道は広く石畳を敷いて整備されて居たが、
如何せん雪の為に、
通りを通る馬車や人は殆どおらず、
灰色の景色に溶け込んで、
一層の寂しさを醸し出して居た。
出発して3時間を過ぎた頃にようやく領都の端、
ローソニア湖に辿り着いた。
ローソニア湖の沖には、
岩で出来た島が有り切り立った崖には、
高い城壁に覆われた白く美しい城が聳え立って居る。
雪が無ければ写真に載る様な美しさに違いないだろう。
しかし、其処は難攻不落の城塞でも有った。
陸側から約500メートルの橋を渡ると、
直径1キロ程の近衛騎士団の要塞が有り、
要塞を超えると、
更に500メートル程の橋が有り城に辿り着く、
城に行き来する為の唯一のルートであった。
モモタロウ達は陸側の橋を渡って
近衛騎士団が詰める要塞に行き、
訪問の意を伝えると、
冒険者ギルドから預かった依頼書をみせて、
検閲所を通過し、更に500メートル程進んで、
城の入り口に差し掛かった。
いよいよローソニア城やって来たのであった。