-137話ー キャンプ合宿 5
朝ご飯を食べた後、午前中座学を受けたモモタロウは、
昼ご飯を食べてから、
ナゴの街まで飛んで行くとユンケル隊長の元を訪れた。
「此れはモモタロウ殿、お待ち申し上げて居りました」
「はいユンケル隊長、
ローソン侯爵領へ行く事に成りましたので、
合宿の途中なのですが、
先に此方の用事を済ませて置こうかと思いまして」
「其れは、其れは、では此方においで下さい」
モモタロウはユンケル隊長に
街の兵舎の事務所に案内された。
「此れが今回の報奨金と、盗賊の懸賞金と、
盗賊の持ち物を換金した物と成ります。
懸賞金の方は盗賊一人頭、戦闘力の高いA級犯罪者として、
金貨1枚、と懸賞金が掛かって居る者が80人居りまして、
合わせて金貨236枚と成って居ります。
其れとは別に帝国より報奨金として金貨100枚、
盗賊の持ち物と盗品が、此れはまあ普通の物ばかりでしたが、
此れが、金貨23枚で合わせて、金貨359枚と成りました。
ひと財産ですな羨ましい限りで御座います」
「え~っと、金貨359枚って、一枚が約20万円だから、
え~っと一杯?まあ、儲かったっと、
此れは春迄の生活費に充てようかね~」
モモタロウは金貨を数えて、金貨袋を魔法の袋に仕舞うと、
「ユンケル隊長有難う御座いました。
此れでローソン領で一冬越せる資金が出来ました。助かります」
「何をおっしゃいます。お陰で我々も盗賊の被害を、
最小限で押さえられる事が出来ました。
お礼を言うのは私達の方で御座います。
あっと、其れとモモタロウ殿」
「はい、何でしょう?」
「モモタロウ殿のパーティーは強者揃いですので、
よもや後れを取る様な事は無いかとは存じますが、
森の奥には立ち入らぬ様にして下さい」
「何で?しし神様でも居るの?」
「しし神?いえ、森の最奥には
地竜アースドラゴンの巣が有ります。
毎年、食料の少ない時期に人里に現れては家畜を襲います。
中には人を襲う者も居ますので、くれぐれもご注意を」
「ドラゴンですか~其れは怖いですね~
森の奥には行かない様にしますね~」
「其れが良いでしょう。
ドラゴンは基本的には女神様の使徒ですので、
無暗に人を襲いませんが、
中には人を好んで喰らうドラゴンも居りますので、
くれぐれもご注意を」
「怖え~絶対に近ずきませんよ~ご忠告有難う御座います」
「いえいえ、私くし共もダンジョンの
英雄を失う訳には行きませんからな」
「えっ、ダンジョンの事知って居るの?」
「はい、帝都より訪れた監察官殿より聞いて居ります」
「で、何と?」
「近年まれに見ぬ出来た御仁で、帝国最大の英雄で有れば、
くれぐれも失礼の無い様にと、で無いと」
「で無いと?」
「モモタロウ殿は女帝陛下様のお気に入りなので、
お怒りに成られた女帝陛下様に宰相様がぶん殴られると」
「宰相さん殴られちゃうの?可哀そう~」
「いえ、宰相様は殴られるのがお好きな様です」
「はい?」
「此れは噂なので御座いますが、
高級貴族や皇族の方々は皆変わった
ご趣味が御有りなのだとか」
「此の国の偉い人って、変態ばっかりなの~?」
「我々下々の者には栄華を極めた方々の
お考えは分かりかねますので」
「全てを手に入れちゃうとそうなんのかね~」
「さあ~?」
「じゃあユンケルさん有難う御座いました」
「いえ、気を付けてお帰り下さい」
ユンケルさんに街の門まで送って貰うと、
モモタロウは人目に付かない所から飛んで帰るのだった。
「ただいま~」
「あら、お帰りなさいモモちゃん、
で、用事の方は如何でしたの?」
「うん、金貨359枚貰ったから、
此の冬を越す資金に充てようかと思って居るんだけど」
「あら、良いんじゃ有りません、
贅沢な冬を迎えられそうですわね」
「うん、出来たら広い土地を買って
温泉旅館でも建てようかと思って居るんだよね~」
「う~ん、広い土地を購入するには資金が心許無いですわ」
「まあ何時も通り、
いわく付きの屋敷が有れば良いんだけれどね」
「其れは大丈夫なんじゃ無いでしょうか、
大きな街にはいわく付きの屋敷の
1軒や10軒、有るのが普通ですわ、
歴史のある街では特にね、
長い歴史の中で愛憎渦巻く事件何てざらですわ」
「そう言うもんかね~」
「そう言うもんですわよ~」
「まあ、無ければ自腹切れば良いんだけれどね」
「私くしも出しますわよ」
「有難うエレン」
「パートナーなのですから当然ですわ」
「うん、うん、嬉しいよ」
「ムフゥ~ですわ」
と、どや顔をするエレンだった。此の日の晩御飯の時に
「皆食べ乍ら聞いて、今日ナゴの街に行って、
報酬を金貨359枚貰ったので、
冬越しと、冬を越す為の屋敷の購入に充てたいと思います」
「モモ様、此の人数を住まわせる事の出来る屋敷と成りますと、
金貨359枚では足りないと思いますので、
不足分はお世話に成って居る私くしがお出し致します」
「いや、足らないなら足りないで自腹で買えますので、
シドニーさんの気持ちだけ受け取って置きます。
其れより、
領都で土地が広いお化け屋敷の話は聞いた事無いですか?」
「近ずか無い様にと、幾つかお父様に聞いた事は有りますが」
「おお~有るんですね、ラッキ~」
「モモ様危険です。
どれも此れも死人が出て居る凶悪な物ばかりです。
モモ様がとり殺されたら、私くしもう生きて行けませんわ」
「其れは大丈夫!俺は戦闘レベルは1ですが、
アンデッドには非常に強いんです」
「そうですわ、帝都の屋敷だってモモちゃんが、
お化け屋敷の凶悪な
アンデッドを退治して手に入れたのですわ」
「そうなのですか?でも無理はしないで下さいね」
「勿論、勝て無さそうだったら、さっさと逃げますよ」
「其れなら良いのですが」
「其れともう一つ食材採取組の皆に、森の奥に立ち入らない事」
「皆何でですか?」皆
「今日ユンケルさんから聞いたのですが、
森の最奥には地竜アースドラゴンの巣が有るそうです。
幾ら俺達のパーティーが強いと言っても地竜アースドラゴンが、
群れで襲ってきたら勝てる気がしませんからね、
絶対森の奥に行かない事、森の中での単独行動はしない事、
良いですか~絶対ですよ~」
「皆は~い」皆
「で、モモちゃん地竜アースドラゴンが出たら
如何対処しますの?」
「うん、一応此の後シェルターを作るから、
もし出たら、非戦闘員と馬はシェルターに避難する事、
護衛とエレンは、地龍アースドラゴンの対処をしてくれる?
倒す必要は無いからね、
地竜アースドラゴンを撤退に追い込む事を優先して、
何せ相手は地上で最強の生き物だからね、
幾ら結界シールドが有ると言っても
対処出来ないかも知んないし、
武器は竜の牙の武器を使用して、相手は頑丈だからね、
自分の命を最優先にねっ」
「皆は~い」皆
「あ~フラグが立っちゃったな~
やっぱり出るんだろうな~嫌だな~」
「戦うのは私くし達ですのよ、
嫌な事は言わないで下さいまし」
「でも、出ると思うだろう?」
「あ~今回は私くし何回死に掛けるのかしら?」
翌日は何事も無く過ぎるのだった。2日後、
「モモちゃん、今回は何事も無いようですわ」
「が~っ!お前はバカか~!」
と、森の中から、
食材採取に向かったメイド達が走って来た。
「ご主人様~魔物と獣が大量に此方に向かって来ます!!」
「ほら~だから言わんこっちゃない!」
「でもドラゴンでは有りませんわ!」
「お前はバカか~!
ドラゴンに魔物と獣が追われて居るんだよ~!」
「バカと言う人がバカなんですわ!」
「非戦闘員は馬を連れてシェルターに!
戦闘員は湖に向けて行くぞ!ドラゴンを拠点から引き離す」
「皆はいっ!!」皆
モモタロウ達は立ち塞がる魔物を倒し乍ら、
拠点から離れると、
前もって調べて置いた立地の良い場所に向かった。
足の速いチョウヒとチョウウンに
此方に誘導する様に指示を出して、
開けた場所に土塁と壁を作って地竜アースドラゴンを待った。
地竜アースドラゴンにとって木は邪魔には成らないが、
モモタロウ達にとっては行動の邪魔に成るのだ。
一見危険に見える開けた場所なのだが、
地竜アースドラゴンと対峙するのに
安全な場所などは存在しない。
其れならば、開けた場所に自分達に有利な地形を
形成した方が有利なのだ。
遠くの方で大木が薙ぎ倒される音が響いて居る。
巨大な何かが近ずいて来る。
聞くまでも無く地龍アースドラゴンだ。
結構な距離が有るのに既に姿が確認できる。
大木が雑草の様だ。
「で、デカいな、20メートル位有るんじゃ無いか?
3倍顔が凶暴な4つ足のゴ〇ラだな]
「モモちゃんちょっと勝てそうに無いんですけど~」
「お前がフラグ立てるからだろ!
責任取って玉砕して来い!!」
「ええ~っ!酷いですわ!」
「酷いじゃね~よ、此奴がナゴの街に行ったら
大変な事に成るんだからな!」
「む、無理ですわ~!」
「無理でもやるしか無いだろう!
足の速いチョウヒ、チョウウン、二人で奴を引き付けろ!
隙を突いて、他の者で奴の右足を潰す。
右足が潰れたら、
俺が土魔法で左足を落とし穴を作って落とす。
右足が潰れたら簡単には
落とし穴から左足を抜く事は出来ないだろう、
チョウヒとチョウウンは
奴の顔が下がった隙に目を潰せ。
動きを封じて目を潰せれば
如何に地竜アースドラゴンとて倒す事が、
出来るかも知れない。
しかし絶対油断はするなよ、
ドラゴンにはブレスが有るからな!
しかも頑丈と来ている。簡単に倒せる相手じゃ無い。
が、奴の弱点は奴自身の体重だ。
弱点が分かっている以上倒せなくも無い。
皆、良いか!死なない様に頑張るぞ~!!」
「皆おお~っ!」皆
「ご主人様来ます!」
「良しっ、散開!!」
「皆はっ!!」皆
森からチョウヒが飛び出して来た。
念話でチョウヒにも作戦内容は伝わって居る。
チョウヒの直ぐ後を追ってチョウウンが飛び出した。
間髪を入れずに巨木を吹き飛ばして
地竜アースドラゴンが現れた。
地竜アースドラゴンはチョウウンを踏み潰そうと、
両足で襲い掛かるがチョウウンは左に飛びのく、
モモタロウは、
間髪を入れずに足元に穴を作った。
地竜アースドラゴンは両前足を穴に落とすと、
大きな顎を地面に叩き付けてしまった。
地竜アースドラゴンは2~3度頭を振ると、
前足の鋭い鉤爪を地面に突き立てて、穴から足を抜いた。
「おお~怒ってる、怒ってる~」
地竜アースドラゴンは怒り狂った目でモモタロウを睨むと、
突進して来たが、モモタロウは其のまま飛翔すると、
少し離れた所に着地した。
とチョウヒが蛇鉾で地竜アースドラゴンの顎に傷を入れると、
左に飛びのいた。地竜アースドラゴンが左を向いた隙に、
カンウ達が右足に切り掛かって離れた。一撃離脱だ。
「良し、効いてる効いてる。
蝶のように舞いハチの様に刺すのだ」
地竜アースドラゴンは一旦体を浮かせて、
右足を庇ったが直ぐに地面に足を付けた。そう体重が重くて、
足3本では、重い体重を支え切れないのだ。そして顔を顰めた。
地竜アースドラゴンは喋る事は出来ないが、
話を理解する位に頭が良いのだが、
今の地竜アースドラゴンは、
怒りの為に我を忘れている、
我を忘れている今がチャンスだ。しかし、
「焦ってはダメだ。
奴は一発で形勢を逆転出来るだけの力を持って居る。
今の内に出来るだけ奴の体力を削るんだ!良いか!」
「皆おお~っ!!」皆
今度はチョウウンが地竜アースドラゴンの下顎を、
槍で突きさして飛びのこうとすると、
チョウウンに食い付こうと、
地竜アースドラゴンの顔がチョウウンを追い掛けて、
ガチンと食い付いて来たが、チョウウンはぎりぎりで、
地竜アースドラゴンの唇を蹴ると飛び退いた。
「危ね~ギリギリじゃんびっくりした~
獣人の身体能力ハンパね~」
と、その隙を逃す事無く
他の者達は右足に攻撃すると、離脱した。
「うん、隙の無い攻撃だな」
この攻防を何度か繰り返しているうちに、
カンウが青龍偃月刀で、
とうとう地龍アースドラゴンの右前足の骨に
傷を付ける事が出来た。
生物の巨大化限界を無視した巨体だ。
巨大な骨の僅かな傷でも、
その重量を支える事は出来ないのだ。
<ぼき~~っ!!>
大きな音と共に右足の骨が折れた。
と、共に大きく体が傾くが、
骨の折れた足で何とか体を支えたのだが、
モモタロウはこの機を逃す事無く、
左足の下に大きな穴を作った。
<ずず~~ん!!>
大音響と共に前のめりで
地竜アースドラゴンは突っ伏す事に成り、
下あごを地面に叩き付ける事と成った。
と、其の時、地竜アースドラゴンの口から炎が漏れる!
「ブレス!来るぞ!散開!!」
モモタロウが居た所にブレスが襲う!皆ギリギリの所でかわした。
今迄温存した居たのは、何度も使え無いのだと思う。
此処一番の奥の手であろう。
「ブレスが溶岩だ何て、シャレに成んないよ~
当たったら、結界シールド張ってたって、
蒸し焼きだな、有り得無いわ~
良し気を取り直して、第2段階始め!!」
「皆はっ!!」皆
チョウウンが地竜アースドラゴンの気を誘うと、
地竜アースドラゴンの目はチョウウンを追い掛ける。
視界の外からチョウヒが
地竜アースドラゴンの右目を蛇鉾で突き刺した。
地竜アースドラゴンは、右目から血を噴き出すと、
痛みの為に叫び声をあげ、
其の後すぐに又ブレスを放ったが、
的を得ずに飛んで行った。
今度は視界の狭まった地竜アースドラゴンにチョウヒが、
囮と成って気を引くと、隙を見てチョウウンが槍で、
左目を刺して潰した。メクラに成った地竜アースドラゴンは、
更に狂暴になって、其処いら中にブレスを吐きまくった。
モモタロウ達は更に隙を突いて首を切り裂きまくった。
最後にはカンウが、青龍偃月刀で
喉笛を切り裂いて絶命させたのだった。
とてもでは無いが、首を切り落とす何て事は出来なかった。
「ふ~っ、やっと討伐出来たわ~
流石は地竜アースドラゴンって所だね~
疲れた~皆ご苦労様でした」
「皆何とか倒せました~」皆
「此れもご主人様の作戦と的確な
指示があってこそで御座います」
「カンウ褒め過ぎ、でも此れで皆、
真ドラゴンスレイヤーだねっ」
「皆はいっ!」皆
モモタロウは地竜アースドラゴンの
死骸をストレージに仕舞うと、
周りを見回した。
其処いら中ブレスの溶岩がくすぶって居る。
森にも火が付いて居るが、
エレンが水魔法の雨で鎮火させて居る。
と、森の中から少女が現れた。
「お前が地竜アースドラゴンを殺したのか?」
「って、君誰~?」
「私か?私は土の神竜だ!良くも私の眷属を殺してくれたな~
ぶっ殺す!私とタイマンを張れ!!」
「はい~~っ???」