-136話ー キャンプ合宿 4
合宿初日、晩御飯も食べて風呂にも入りモモタロウは、
現在自室のベットの上に居た。
「そうか~もう冬に成るのか~
此の世界に来てもうそんなに成るんだね~
一日一日の内容が濃すぎて
もう何年も居る感覚では有るけどね~」
此処帝国では、3~5月が春で、6,7月が雨季、
8,9、10月が夏だ。
そして11月が秋、秋は早足に過ぎて行き、
12,13,14,1,2月が、
5ヵ月続く長い、長い冬なのだ。
地方によっては雪と氷に閉ざされた長く厳しい季節と成る。
一番寒い時はー30度以下に下がる事も有るのだ。
帝都は比較的に温暖なのだが、
其れでも年に2~3回位は雪が積もるのだ。
まあ、南に行けば年中温暖な所もあるのだが、熱帯も有るし、
帝国は広大なのだ。
「今日で12月7日暦の上では冬か~
帝都が近い事も有ってナゴの森は歳晩秋と言う所だね~
でも、ドサン山脈はもう真っ白だけれどね~」
そう、此処ドサン湖の周りも
着実に冬の足音が聞こえて居るのだった。
「此のキャンプが終わってローソン侯爵領に向かうのに、
馬車の改修が必要かな?いや、いっその事、新造しようか、
使わない期間はストレージに在庫しときゃ良いんだからね、
そして、ローソン侯爵領で5ヶ月間過ごすんだよね~
別荘も良いんだけれど、石造りじゃ寒そうだな~
此処は気合を入れて和風の温泉旅館でも造るかね~
リリー如何思う?」
『そうっスね~冬装備っスか~必要っスね~
先ず馬車っスね~箱型にするっス。
屋根はドーム状にして、湖で獲れた魚の透明な鱗を使うっス』
「何か魚臭そう~ガラスで良いんじゃない?
其れに箱型って、シドニーさんが乗って居たやつだよね~
重過ぎない?」
『ガラスは割れるし、重いし、高級品過ぎるので使わないっス
鱗は加工するんで匂いなんかしはしないっスよ、
むしろガラスより透明度を上げられるし、
軽いし、頑丈に出来るっス』
「ふん、ふん其れで?」
『シドニーの馬車の材料は木でしたから、
強度を得る為に、ごつく重かったっス。
なので此処は軽くて強度の高いワイバーンの骨を使うっス。
ワイバーンの骨を板状に加工して作りましょうか』
「うんうん其れで?」
『馬車は白く成るので、中はワイバーンや、飛竜の皮を使って、
落ち着いた色にするっス。
座席もワイバーンの皮を使って、中身を低反発素材を使うっス』
「ふん、ふん其れで?」
『車内の明り取りの小窓にも加工した透明の鱗を使うっス。
後、体が大きくて寒さが苦手なラミアのシュウユと、
アラクネのハットリ君用のスペースをドーム状の中に作るっス
まあ~ロフトっスね~
使わない時には物置スペースにするっス』
「えっ、シュウユとハットリ君って寒さが苦手なの?」
『はいそうっス、ラミアのシュウユは
寒ければ冬眠してしまうし、
アラクネのハットリ君は動きが遅く成って
最後には動けなく成るっス。
だからドームにはコタツと同じ様に熱源を置いて、
暖気が逃げない様に
ワイバーンの皮で作ったカーテンを作るっス』
「おお~贅沢使用だね~俺も一緒に入りたいよ」
『眠く成ったら一緒に寝るのも良いかもしれないっスね。
天窓や小窓にはスライド式の
シャッターを付けるので灯りのとれない夜や何かは、
暖気が逃げない様に閉めます。
日差しが有ればサンルームの様に、
温かく成るっスね』
「ふむ、ふむ良いね~」
『御者台と一番奥の出入口に
風呂場で使う様な折り畳み式のシャッター扉を付けます。
御者台は高さの関係で半分ほどの高さに成るっスが、
此れで一々降りなくても御者の交代が出来るっス。
此処にも隙間風除けのワイバーンの皮の
カーテンを付けるっス。
そして肝は、馬車の真ん中に
石炭及び木材兼用ストーブを置きます。
ストーブは重い鉄は使わないで、
炎耐性に優れたドラゴンの骨を使います。
溶岩の中に放り込んでも大丈夫っス。
火傷をしない様にガードも付けて、
ヤカンをぶら下げれば出来上がりっス。
ストーブ自体は小さいっスけれど、効き目は抜群っス。
後、ストーブから煙突を馬車の外に出すっス。
此れで馬車の中の空気を綺麗に保ちますっス』
「其れは凄いな、何か暖かく移動できそうだね~」
『其れがそんなに悠長な事は言ってられ無いっス。
ローソン領は鉱山の街と言うだけあって、標高が高いっス。
恐らくもう、雪が積もり始めて居ると思うっス』
「えっ!其れってやばくない?行ったら八甲田山とか、
シャレに成んないんですけど~」
『其れはまだ大丈夫っス、
天気予報もそんな寒波はまだ来ていないっス。
積雪1メートル以内であれば、目的地には到達出来るっス。
まあ、其れなりに完璧な準備は必要ですけれど、
で、馬は4頭だて、馬車の車輪は何時も道りに
板バネとベアリングを使って、
効率的に車輪が回る様にするっス。
本当は4輪独立懸架の
ダブルウィッシュボーン式にしたい所っスが、
構造が複雑なのと、重くなるので諦めるっス。
何せ4馬力っスから、
軽くて簡単な構造で頑丈な造りがベストっス。
車輪は悪路に対応する為に大きいままで、
接地面を増やす為に少し幅広で、
材料は軽くて丈夫な此れもワイバーンの骨を使うっス。
接地面は鉄では無く、タイヤゴムを使うっス。
薄く巻いた感じに成るっスね、
中身は1センチ程の空気の層を作りますっス。
勿論チューブレスで、滑りにくいスタッドレスっス。
此の車輪で、馬車の振動はかなり抑えられるっス。
重量も軽く、馬2頭で引けますが、
今回は馬の負担を減らす為に4頭だてにします。
で、貴族や商人等からのトラブルを防ぐ為に、
馬車の両側面にスタンダール伯爵家と、
ローソン侯爵家の家紋を入れます。
馬車自体先進技術の塊みたいな物なので
奪われない様にするっス』
「了解、で、何台造る?」
『そうっスね~スタンダール伯爵家の家紋入りが3台と、
ローソン侯爵家の家紋入りを1台、
後、予備にもう1台の5台造りましょうか、
馬は20頭いるっスから丁度良いっスね」
「そうだね、馬4頭は馬車で引いて行けば良いよね」
『そうっスね後、冬用のローブを全員分、
此れもワイバーンの皮で良いでしょう。
防寒の魔方陣と魔石を付けて、
そして中身ですがスキー用のジャンパーと、
ズボンですね、
プロテクターの上から着れるダボダボなのにするっス。
靴もスノーシューズをママゾンで手配するっス』
「かっちょ良いのにしてね~」
『はい、男性はカッコいいのを、
女性には可愛いのを選ぶっス。
雪山の男女は見た目の2割増しの美男美女に成るっス。
後グローブと、ゴーグルっスね、
其れと御者用の服も冬用にするっス。
馬車にも魔石灯をヘッドライトの様に
10メートル位先を照らす様に作りますか』
「リリー馬は其のままで良いの?」
『そうっスね~馬は寒さには強いのですが、
余んまり寒いのは如何でしょう?
まあ、大切な馬なので、馬用の防寒服も作って置くっス』
「宜しくね~其れと、ローソン侯爵領で、
5ヵ月過ごさなければ成らない見たいだから~
和風温泉旅館造っといて居て呉れない?」
『良いっスよ~千と〇尋見たいなやつ造って置くっス~』
「いや、其れはデカ過ぎっつうか派手過ぎ、
もう一寸情緒の有るやつをお願いします」
『任せて置くっス、最強の温泉旅館を造るっス~』
「最強って・・・・程々にね~」
『任せて置くっス~』
「はい、宜しくお願いしますね、
明日からは食料、特に魚を集めよう。
そんじゃあリリーお休み~」
『はいダ~リン、お休みなさいっス~』
翌朝は朝ご飯を食べた後に座学を受けて其の後、
昼ご飯を食べた後、又、釣り組と、狩り組とに分かれて、
食料の確保に勤しんだ。
「まあ、食料は大量に有るんだけれどね、
旅館と言えば和食、美味しい魚は欠かせ無いからね」
そうして、キャンプ2日目も無事終了して、
翌日又皆、魔力が切れる迄魔法をぶっ放して倒れていたが、
モモタロウは魔力切れし無いので、見学だ。
午後からは新しい馬車のお披露目となった。
「まあモモ様、真っ白で美しい馬車ですのね、
そしてこの家紋は、私くしのローソン侯爵家の家紋ですのね」
「はい、初めての技術をふんだんに使って居るので、
他の貴族や商人に取られない様にね」
「はい、今から乗るのが楽しみですわ」
「うえっぷ、モモちゃん私くしの家のスタンダール伯爵家の、
家紋入りの馬車が3台有りますのね、おぇっぷ」
「エレン、魔力切れで気持ち悪いんだろう、
皆仮家改でひっくり返っているから、無理しないで、
皆と一緒に寝ておいで」
「おぇっぷ、御免なさいモモちゃん、
悪いけれどそうさせて頂きますわ」
午後の柔らかい日差しの中、モモタロウはコーヒーを飲み乍ら、
ゆっくりとした一日を送るのだった。
翌朝早朝、モモは散歩がてら外に出て見ると、
1メートル先も見えない程の深い霧が森を覆って居た。
足元に気を付け乍ら湖の方へ歩いて行くと、
湖の水面の上1メートル程は彼方まで見通せるのに、
其の上には濃い霧に覆われて幻想的な景色を見せて居た。
「何とも不思議な光景だね~」
「そうよな~美しい景色だぞえ~」
と、湖の畔から美しい声が聞こえて来た。
よく見ると、女性が湖の畔で体育座りしていた。
其の女性は、背中から蝙蝠の羽根を生やして居た。
「悪魔?」
「悪魔は酷いぞよ、妾は夢魔じゃ、森の精霊の一種じゃ」
「俺と戦うの?」
「湖の景色に誘われて、森の奥から散歩に来ただけじゃ、
今朝は戦う気は無いのう」
「しかし夢魔って、
男の夢に現れて精を吸って殺すんじゃ無いの?」
「殺しはせんよ、エロイ夢を見せて精は抜くがの、
足腰が経たなく成る位さね、男あっての夢魔じゃからのう、
男は大切にするのじゃ」
「ふ~ん、じゃあ女は?」
「ふむ、女からは精は取れぬが男を産んで呉れるからのう、
だから敵対はせぬよ」
「へ~そうなんだ」
「お主らは此の先の屋敷に来た者達じゃな」
「そうだけれど」
「昨日魔力の使い過ぎで倒れていた男達から少し、
精を抜き取らせて貰った。
何か3人共男を抱く夢を見て居たがのう?変態か?」
「はい変態です。そう言や腰が砕けて居たな~」
「しかしな~此の森も余り男が来なく成って、
眷属が減ってしまっての~困りものなのだよ」
「ふ~ん、魔物が増えたから?」
「うむ、魔物は増えたの~何か良い手立ては無い物かの~」
「害が無いのであれば・・・・
じゃあ帝都に行って商売を始めたら?」
「うん?都で商売とな?」
「ああ、人族の男の数は激減しているけれど、
独り者の男は沢山いるからね、
そんな男達から安い料金を取って、
良い夢を見せて精を抜く、良いんじゃ無いかな、
足腰が経たなく成るのはやり過ぎだから、
1回か2回分にする事、
料金を取るのは、店を借りる資金と税金だね、
後、商人の協力を得られれば、
スムーズに事が運べるね」
「ふむ、商人には心当たりが有るのう、相談してみるか、
其れでは、都に出張って見るかのう、
有難う、お主大分溜まって居る様だが、
お礼に抜いてやろうか?」
「・・・・・・・・いえ、間に合って居ます」
「そうか、ちょっと残念じゃ、まあ良い。
店が出来たら1度遊びに来るが良い、
妾が直々に良い夢を見せてやるのでな」
「まあ、其の時は頼みます」
「うむ、此れで又眷属が増やせそうじゃわい」
「そんで、夢魔ってサキュバスなの?」
「いいや、サキュバスの亜種じゃがサキュバスでは無いのう、
サキュバスは直接致すが
妾達は夢の中で致すので全くの別物じゃ、
妾は夢魔の女王じゃ、ではの」
夢魔の女王は霧の様に消えて行った。
「ちょっと惜しかったかな?」
ちょっと良い夢を見たいなと、思うモモタロウであった。