-135話ー キャンプ合宿 3
翌日、朝ご飯を食べた後、
日の出と共に合宿の実技訓練が始まった。
「よ~しっ、では此れから実技訓練を始める。
と言っても内容は簡単じゃ、
得意な魔法を湖に向けてぶっ放してこい。
己の魔力が尽きる迄のう」
「はい!学院長」
「おう、何じゃ」
「はい、魔力が枯渇したらぶっ倒れてしまいます」
「おう、ぶっ倒れる迄魔力を使うのじゃ」
「気持ち悪くなるので嫌です!」
「皆うん、うん」皆
「バカ者~!そんな事で立派な魔法使いに成れるか~!」
「はい!学院長」
「おう、何じゃモモタロウ」
「はい、何の為に魔力を枯渇させるのですか?」
「うむ、良い質問じゃお前達もつまらん質問などしないで、
的を得た質問をする様に」
「皆ぶ~ぶ~」皆
「魔力量を増やすのには二つの方法が有るのじゃ、
一つはレベルを上げる事、お前達も分かって居るとは思うが、
ウォーマンティスの討伐で随分とレベルが上がったからな、
しかし此れはもろ刃の剣でも有るのじゃ、
下手をすると死ぬからの~リスクが高すぎるのじゃ、
学生の範ちゅうでは無い、モモタロウに感謝せい。
普通であれば、皆死んで居たからのう、
モモタロウが戦の天才で本当に良かった。
我とて責任を取らされてクビに成って居たじゃろう。
モモよ有難う」
「皆モモちゃん儲けさせてくれて有難う!」皆
<ずって~ん!>
と、すっ転ぶ学院長、
「こ、此奴ら本当に留年にしてやろうか~
まあ良い、もう一つの方法じゃが、幸いお前達は皆若い。
成長期の真っただ中じゃ、
魔力を体中に巡らせ、枯渇させる事で、
魔力量を増やす方法だ。人其々では有るが、
劇的に魔力が増える者も居るのじゃ、
其れこそ一軍に匹敵する位にのう、
しかも、皆高レベルに成って居る。
此の様な事は我も初めてじゃ、結果が楽しみじゃのう」
「学院長」
「何じゃ、マドカ」
「はい、成長期に魔力を枯渇させて、
魔力量を増やす何て聞いた事が無いのですが、
本当ですか?」
「本当じゃ、じゃから我は幼く
才能の有る者しか弟子は取らんのじゃ」
「其れでは何故学院のカリキュラム入れないのですか?」
「ふむ、此れはエルフ独特の育成方法でな、門外不出じゃ、
が、我の弟子に関しては問題無いが、
学院のカリキュラム入れると成ると」
「入れると成ると?」
「ハイエルフの我とて殺されるであろう」
「殺されるんですか?」
「うむ、少数のエルフが種族を絶やさない為の、
数少ない剣じゃからな、
お前達も決して外に広めるで無いぞ、
命が惜しければな」
「皆は~いっ、」皆
「はい、学院長」
「何じゃ、モモタロウ」
「何でそんな門外不出の裏ネタを?」
「うむ、我が直接指導するのじゃ、つまり皆、
我の弟子じゃと言う事じゃな」
「うむ、そう言う事で有れば妾も参加しよう」
「あっ、ちっぱい師匠は湖じゃ無くて、空に向けてね」
「ちっぱい言う・・何故じゃ?」
「湖干上がっちゃったら不味いでしょ、
地形変わるかも知んないし」
「う~む、分ったのじゃ」
「で、俺は?」
「そうじゃの~ヒール以外何が使えるのかのう?」
「そうですね~攻撃魔法以外は何でも・・・・
土魔法が得意かも?」
「其れでは、そうじゃの~
此処に来る迄の道が凸凹じゃったし、
石畳でも敷いてみ」
「は~い分かりました~」
「其れでは始め~」
モモタロウとちっぱい師匠以外は
湖に向けて魔法を打ち始めた。
そしてほんの数十分で皆、魔力が枯渇して倒れた。
「わはははは・・・・まだまだいけるぞ~!
ほ~れ~ほれ~」
<ちゅど~ん!!ちゅど~ん!>
ちっぱい師匠はさながら、花火大会だった。
が2時間後、ぱたりと倒れた。
モモタロウは何時まで経っても魔力が尽きる事は無く、
石畳は帝都の主街道の石畳の所まで敷かれる事に成った。
「モモよお主、まだ魔力が尽きぬのか?」
「はあ~何か御免なさい」
「化け物だな~お主」
「酷い」
此の日帝都の主街道からドサン湖を経由して
ローソン侯爵領の、
領都ローソニア迄石畳が敷かれる事に成ったのだった。
700キロ位?
皆は1時間くらいで意識を取り戻したのだが、
ゲロゲロ吐いて居た。カエルか~
昼くらい迄湖の畔で休憩した後、
砦風仮住い改に戻って来た。
既に昼ご飯の用意が出来て居り、
今日はキノコと野菜のバター炒めだった。
まだ皆青い顔をして居たが、
其処はメンタルが強いのだろう、
無理やりにも食べて居た。
食いしん坊とも言うのだが、
「味は分かんないだろうな~」
「美味い、美味いぞ~モモよわはははは・・・・」
「まあ、ちっぱい師匠は別格だな」
「モモよ、昼ご飯の後少し良いか?」
「えっ、はい学院長」
「うむ」
モモタロウと小っちゃい学院長向かい合わせに座ると、
学院長は荷物の中から時計を取り出して、
「如何じゃ、此の時計を広めようと思うのじゃが」
60秒で1分、60分で1時間、
だが此の世界の1日は26時間なのだ。
時計の1周が13時間なのである。
その為に秒針が合わないのだ。
だからモモタロウはデジタルカウンターにして居る。
ややこしいから、
目の前に出された
時計は秒針と分針が60秒で1周する様に
別に付けて有る。真ん中に13時間の文字盤が有り
1時間に1メモリ13時間の文字盤が動く仕組みだ。
モモタロウには目から鱗であった。
此の時計であれば、普通に使える。
「此の時計であれば、
日常で使う分には問題無いと思います。」
「単純な造りの此の時計であれば、
デジタルにする必要はないじゃろう
動力には小さな魔石を使うがな」
「流石は学院長と行った所ですね」
「ふむふむ、もっと褒めても良いのじゃぞ、」
其れをちっぱい師匠が目を輝かせて見ていた。
次に大きな羊皮紙を出して広げると、カレンダーだった。
「お主が言って居た、かれんだーじゃ、
今年はもう押し詰まって居るのでなあ、来年の物じゃ」
ひと月は32日、1年は14ヵ月の448日だ。
其れを14枚の4つ切り位の大きさの羊皮紙に纏めて有った。
「お主も知っての通り新年は教会が決めて居る。
が、其れだけじゃ、後は、春、夏、秋、冬、じゃ、
その他と言えば、種まきと収穫の季節じゃな、
448日を14枚の羊皮紙で纏めてみた。
7日を1週間として、月、火、水、木、金、土、日、で、
お前の言って居た様に日曜日を
休日にしようと思うのじゃが如何じゃ?」
「良いと思います。
うちの家では既に日曜日を休日として居ますし、
長い時間を掛ければ根付くんじゃ無いでしょうか、
そう、例えば、日曜を安息日として
教会に祈りに行く日とかにすれば」
「おお、良い考えじゃ、
其れなら女神教も協力するじゃろう」
「後はそうですね~綺麗な表紙が欲しいですね、
其れと、ミシン目、小さな穴を明けてページを
破りやすくするのが良いですね」
「何でじゃ?」
「表紙が綺麗であれば購買意欲が湧きますし、
ページを破って貰わないと、
翌年新しい物を買って貰えませんしね、
毎月同じですから、まあ、曜日が変わる位ですからね」
「おお~成程な~モモタロウよ、お主も悪よな~」
「学院長も中々で御座いますな~」
「「ひ~っひっひひひ・・・・~ごほっげほっ!」」
「では早速学院の方へ手紙を送るとしよう、
所でモモの取り分じゃが我が8:モモが2で如何じゃ?
制作、販売は我の方でするからの」
「ごっつあんです」
「話は変わるのじゃが、モモよ、
此処のトイレなのじゃが、
どんな仕組みなのじゃ?」
「ああ~トイレですか?まあ、簡易水洗ですね、
トイレの下に汲み取り層が有って、
風呂と同じ水の魔石と火の魔石で
温水を出してお尻を洗います。
簡単に言うとこんな感じですか」
「凄い発想じゃの、まあ、
魔方陣を使えばそう難しくは無いか、
で、汲み取り層とは何じゃ?」
「はい、糞尿を貯めるタンクですね」
「糞尿を貯めるタンクか?
長い間使って居れば溢れるじゃろう?」
「ああ、ある程度溜まったら肥料として畑に撒くんですよ」
「肥料って何?」
「其処から~」
此の後モモタロウは学院長に植物の光合成から、
土の養分などの話をした。
「モモよお主は学者か?」
「何言ってんですか?
作物を作れば土地は痩せるじゃ無いですか、
当然作物が土の養分を吸い上げているからって
分かりますよね~」
「分らん」
「マジで~」
此処でちっぱい師匠が食い付いた。
「モモよ、作物の育たぬ瘦せた土地や、
荒れ地でも豊かに成るのか?」
「当然!土魔法が有りますしね~
まあ、糞尿は1時肥溜めに貯めて
熟成させる必要が有りますけれど
土地の魔素の濃度の関係が有るかも知れませんが、
その土地に見合った作物が育てられるのでは?」
「そうか、妾のうんちで作物が育てられるとは・・・・」
「別に人糞だけで無く牛や馬、
豚の糞でも熟成させればオーケイですよ
余分に取れて捨てる魚なんかも使えますね、」
「そうなのか、其れは凄いのう」
「まあ、帝都は下水も普及しているので
さほどでも無いですが、
下水の行き届いて居無い所の臭さと言えば
もう近ずきたくは無いですよ~」
「そうじゃの~妾もうんこを掛けられた事が有るのう、
でも如何したもんやら」
「そんなの簡単じゃん」
「ほえ?」
「下水の行き届いて居ない所は、
汲み取り式の公衆便所を作れば良いのでは?
土魔法が有るんだから難しくは無いですしね、
そして貧民街の人を雇って集めて
痩せた畑に配れば良いんじゃない?」
「詳しく聞こう」
「先ずは簡易水洗だけど、
魔石なんて入れたら直ぐに壊されるからね、
柄杓で水を流す様にすれば良いよね、
其れと公衆便所を作ったからと言って、
使ってくれる訳じゃ無いと思うんで、
糞尿を窓から捨てたりしたら罰金を取りましょう。
その金も糞尿を回収する人の賃金の足しにしましょう。」
「ふん、ふん其れで」
「後は、糞尿を集めて、
農村部に運搬する人を雇いましょう。」
「ふん、ふん其れで」
「集めた肥料を農村部に運んで肥溜めを作って貯めます。
此れも貧民街の人を雇う、
其れで農作物が増える。
まあ元は取れないけれど、公共事業だしね、
貧民も少しは減るだろうし農家も豊かに成るしね。
其れで、帝国の農作物の収穫が増えれば、
餓死者の数が減るのでは?」
「う~ん・・・・・・・・良し採用じゃ」
「「へっ?」」
「妾は魔力切れで今日はもう飛べぬ、
明日朝ごはんを食べたら出掛ける。ご飯は取って置け良いな!」
「はあ~」
「良し、話は決まったな、妾は晩御飯の時迄寝るとしよう」
「「どうぞご自由に」」
「と、話の腰が折れてしまったのう、
風呂なんじゃが、此れもトイレと同じ工夫か?」
「そうですよ良いでしょう~えっへん」
「うむ、素晴らしいな、此れらは売れるのう、
大貴族やら大金持ちの商人なんかが入れ食いじゃろうて」
「そんなもんですかね~」
「金持ちは贅沢が大好きじゃからな、
風呂はバスタブに魔法でお湯を入れた物じゃが、
お主のは規模が違うからのう、
魔石の値段が高騰しそうじゃわい
此れも売り出すが8:2で良いかの?」
「はい構いませんよ」
「うむ、商談成立じゃな、モモよ、
他に良いアイデアは無いかのう?」
「此れから冬に成るじゃ無いですか、此の国の冬は?暖房は?」
「そうじゃのう、地方によっても違うのじゃが、
帝都は年に2~3回位雪が積もる程度じゃな、
暖房は暖炉じゃ、後は厚着じゃのう其れでも寒いがのう」
「帝国は石炭って取れますか?見た事無いけど」
「あんな燃やすと臭い石なぞ使い道など無いわ、
しかしまあ一杯取れるぞ誰も取らんが」
「ラッキ~じゃあ一杯取って置いて下さい」
「ああ、今度行くローソニアでも山盛り取れるぞ、
鉱山の街だしのう、で、何に使うんじゃ?」
「はい、では石炭ストーブを作りましょうか」
「臭い煙は?魔法で消すのか?」
「いえ、煙突を作って煙は外に出します。
火力は充分ですし、大きな部屋でも暖められますよ」
「ほう~其れは面白そうじゃな、で、他には?」
「コタツですね~」
「ふん、ふん、どんな物じゃ?」
「何時も胡坐をかいて座っている所に
背の低いテーブルが有るじゃ無いですか、
あれ、座卓って言うんですけれど、
その内側に魔石を入れて、
炎の魔方陣を温かい程度にして入れて、
上から毛布か、コタツ布団を被せて、
天板を乗せればコタツの完成ですね」
「凄い発想だな、で、温かいのか?」
「そりゃもう出れなく成る位、つい寝てしまいますね~」
「そうか、何か考えただけでも気が緩んで来そうだな、
しかし其れでは尻が冷たいのでは?」
「其れは下が畳で無いと」
「たたみってテーブルの下の?」
「そうです。座卓の下、食堂に敷き詰めて有るやつですね~
無理に畳でなくとも、絨毯でも良いですが柔らかさがね~」
「そうじゃの~肌触りも良いしの~
何で出来て居るのじゃ?」
「藁を編んだ物ですね」
「そうか、では其れらの見本を今度呉れぬか、
職人に作らせてみるでな」
「良いですよ~学院長は魔法の袋は持って居ます?」
「当たり前じゃ、何年生きていると思って居るんじゃ」
「8年位?じゃあ、ほいっと」
リリーに即興で作って貰うと魔法の袋から出す振りをして、
ストレージからひと揃え出した。
「馬鹿者300年じゃ、成程此れがそうか凄いのう、
モモは発明家じゃのう金の匂いがぷんぷんしよるわ。
此れも8:2で良いかのう」
「勿論」
「「ひ~っひっひひひ・・・・~ごほっげほっ!」」
悪い笑いをする二人だった。