-120話ー 中級ダンジョン ウオーマンティス討伐 1
魔法学院の屋外授業で、
初級ダンジョンの探索を暫く続けていたのだが、
12日間に及ぶ探索も無事に終えて、
昨夜は食べて飲んで大騒ぎしたのだが、
「ええ~!何ですと~!」
「そうなのよ~帝国宰相の命で、
モモタロウ君への出動要請も出て居るのよ~」
そう、此処は南街冒険者ギルドの受付だ。
朝ご飯を食べてから、
初級ダンジョンの素材を売る為に、
皆で意気揚々とやって来たのだが、
5日前に中級ダンジョンで、
ウォーマンティスの大量発生が、確認されて、
銀の冒険者三千人と、帝国騎士団三千人、帝国魔法兵団千人、
帝国宰相の命により、組織されて、
其れに冒険者ギルドも全面的に協力しているそうだ。
ヒーラーも教会から50人派遣されて居るらしい。
2日がかりで組織された部隊、最早軍隊と言って良いだろう。
3日前に中級ダンジョンに遠征しているそうだ。
冒険者でヒーラーの者も全員参加なのだそうだ。
と、言っても、冒険者のヒーラーは俺を含めて10人程らしいが、
現地からの報告では、ウォーマンティスは、
5メートル程の強力なモンスターで、
C級モンスターに当たるらしい。大型で動きも早く、
鎌はフルプレイトメイルも切り裂くとの事だ。
正にソルジャーな訳だ。
普通、一匹に20人程の銀の冒険者が、群がって、
タコ殴りにして倒すらしい。
マンティスはカマキリのモンスターなのだが、
Dクラスの、2メートル位のマンティス、
5メートル位のビックマンティス、そして、
Cクラスのウォーマンティス、
同じくCクラスのキラーマンティスは、
10メートルを超えっるらしい。更にその上位種にBクラスの、
クイーンマンティスなんてのも居るらしいが、
これ等カマキリは、一度に大量に子供を産むんだとかで、
ダンジョンに居るウオーマンテスの数は不明なのだそうだ。
既に、ダンジョンの入り口の巨大な鉄製の扉が破壊され、
溢れ出して、
初級ダンジョンと同じ様に入り口の周りを側壁で覆って
コロシアム状に成って居るのだそうだが、其処の所で、討伐隊と、
死闘を繰り広げて居るとの事だ。
数十年に一回程度は、こんな事が有るらしい。
今回は、大量発生したモンスターが、
強力なウォーマンティスの為に、
冒険者だけでは、防ぎ切れないので、
帝国騎士団や、帝国魔法兵団も出たらしい。
「モモタロウさん戦いはとても激しくて、多くの死者と、
負傷者は既に数百人規模に上って居ると報告が来ています。
出来る限り、速やかに救援に向かって欲しいのですが?」
「マジですか~」
「マジです。側壁を突破されて穀倉地帯に広がれば、
食料不足に成り、帝都の冬は餓死者で溢れる事に成ります」
「不味いじゃん」
「はい、不味いです。
昨日も、お屋敷に使者を向かわせたのですが、
初級ダンジョンに潜って居られるとかで、
まだ、公に出来ないので・・・・」
「帝都民が知ったら、パニックに成るよね~」
「了解。皆は屋敷に戻ってて!」
「皆絶対行きますっ!」皆
「え~っ死ぬかも知んないよ~」
「皆皆死んでも私だけは生き残ります!」皆
「本当にもう、魔法使いって奴は~バカばっかしだ!」
『屋敷の皆~聞いてる~』
『皆は~いっ』皆
『非常事態宣言だ。全員武装して、
中級ダンジョン前に集合~!!』
『皆は~いっ!!』皆
「じゃあ、中級ダンジョンに向かいますか~!」
「皆おお~~!!」皆
一応全員武装して居たので、其のままギルドを出ると、
馬車に乗って、中級ダンジョンに向かった。
ダンジョンに付く頃にメイド達が、全員合流して来た。
「は、早~っ、獣人の体力、ハンパね~!!」
「武装メイドようやくお役に立つ時が来ました~!!」武装メイド
「戦力はっと、え~っと、武装メイドが、28人と、クラスメートと、
先生で11人後はエレンと、俺、総勢41人か、まあ、まあの戦力だな。
カンシンと、コウメイ一寸良いかい?」
「「ははっ!」」
「基本戦術は、弓とボウガンでの遠距離攻撃に徹する事、
人数を3つに割って、三段撃ちを行う。
魔法使いは、屋外では攻撃魔法を打つのもオーケイだ。
けれど、考えが有るので魔力を残しておく様にしてくれ。
俺は、取り敢えず怪我人の治療に向かうので、
カンシンが全体の指揮を」
「はっ!」
「コウメイが、メイド達の指揮をしてくれ!」
「はっ!心得ました!」
「では、頼んだよ!」
「「ははっ!」」
ダンジョンの町に入ると、俺は皆と別れてから警備の騎士に、
「すいませ~ん、南街の冒険者ギルドから派遣されたヒーラーで~す。
医療所は何処ですか~?」
「おお~ヒーラーか?其れは助かる。此方においで下さい。
もう、此方のヒーラーたちも魔力切れで、
一人でもヒーラーが駆けつけて呉れるのは助かるわ!」
俺は騎士に案内されて街の中心へ向かった。
遠くで、叫び声と剣戟の音が此処迄届いて居た。
「激しい戦闘の様ですね~?」
「はい、相手は、ウォーマンティスですからね、
被害が思った以上に大きいです。
死者は既に300人を超えて居るらしいわ。
怪我人も400近くに上って居ると聞くわ」
騎士は女性の様だ。
俺は、ダンジョンに隣接する教会に案内された。
「ヒーラー君此処です」
と、観音扉を開くと、
怪我人や死体で足の踏み場が無い位だった。
「皆さ~ん!新しいヒーラーの方が来て下さいましたよ~!」
「皆おお~~!!」皆
「早速ですが、重傷者を俺の周りに集めて下さい!」
「は、はい、!」
女騎士さんは、教会の人に重傷者を集める様に指示を出すと、
俺の周りに30人位の重傷者を集めて呉れた。
体の欠損者も沢山居たが、ハイヒールはやばい、其処で、
「皆さん、此の人達の為に祈って下さい。
祈りの力が治癒力を高めます!」
凄い張ったりだが、神の居る世界だ。
効果覿面、皆、涙を流し乍ら、
傷付いた勇者達の為に祈り始めた。女騎士さんも、
兜を取って、膝を付き祈っている。
「エリア『ハイ』ヒール!!」
周りの重傷者達が薄く輝き出して行く、
「皆おお~~!!」皆
少しの時間を置いて、傷口が塞がり欠損部分が再生し始めた。
苦しみに歪む表情が、やがて落ち着いて、穏やかな寝息を立て始めたのだ。
「周りうぅおおおおぉ~~~!!」周り
周りの歓声が止まない内に間髪を入れずに、
俺は少し場所をずらして、
「祈りの力が有る内に早く、欠損者を俺の周りに!!」
「皆はいっ!!」皆
又、直ぐに怪我人が集められた。
今度は、皆、体の一部を無くした人達だ。
「エリア『ハイ』ヒール!!」
「まだ欠損者は居るか?」
「はい!もう少し居りますが、魔力は?」
「まだまだ大丈夫だ。直ぐに集めて呉れ!」
「皆はいっ!!」皆
また少し場所を変えて、怪我人を集めて貰うと、
手の空いて居る者達が祈り始める。
「エリア『ハイ』ヒール!!」
・・・・・・・・
「ふう~此れで最後だね~エリアヒール」
最後の怪我人の一団が回復して、眠りに付いて居る。
穏やかな寝息を立てながら、
「皆・・・・・・・・」皆
やがて、教会の中は大歓声に包まれた。
「ヒーラ様凄いです。大きな魔力を必要とするエリアヒールを、
こんなにポンポンと連発して、更には皆の祈りの力を利用して、
ヒールを、ハイヒールに迄押し上げるとは、賢者様ですか?」
「旅の途中で出会った大賢者様に教わったのですよ、
魔力の種は此れです」
と、一寸良さげな魔石を出すと、
「俺は、魔石から魔力を引き出すスキルが有るんですよ」
と、嘘八百を並べると
「凄っご~い!憧れます~」
「ヒーラー君から様に、あげくに賢者様とはね~
最後には憧れられちゃいましたよ~まあ良いけど、流石に、
疲れたよ、ちょっと休ませてね」
「はい、取り敢えずの怪我人はもう居りませんので、
ゆっくりと休憩なさって下さい。
ワク、ワク・・・・ワク、ワク」
「何か、ワクワクした目で見られちゃってるよ~」
俺は、ママゾンでペットボトルの、コーヒーと紅茶を購入すると、
ストレージから出して、紅茶を女騎士さんに渡して、飲み始めた。
「あ、有難う御座います。ヒーラー様は、もしかして、
アイテムボックス宝物庫持ちなのですか?其れとも、
インベントリ無限収納持ち?」
「ああ、アイテムボックス宝物庫ですよ」
「そうですか、残念!勇者様だと良いな~って思ったんで、
あっ、私、アモン、フィールって言います」
「あっ、此れは申し遅れました。
俺、冒険者のモモタロウって言います。
宜しくお願いしますね。
其れよか街の門の警備して無くて良いんですか?」
「はい、大丈夫です。部下に任せて来てますので、
此れでも私、帝国騎士団の百人隊長なんですよ~まあ、
街の警備させられて居ますけど~」
「いや、警備も大切だと思いますよ~」
「ですよね~ですよね~でも、
前線で華やかに敵を倒したいですよね~
マジで、でも中々競争が厳しくて~ごっくん、
何此れ、美味しいわ、」
「ああ、其れ紅茶って言うんですよ」
「ねえ、何処で買ったの?教えて~」
「企業秘密です」
「そう、じゃあ、此れからも時々飲ませて、ねえ、ねえ~」
「そうですね、其れは構わないですよ」
「良かった~あっ、今回のお礼と、此れからの友好の為に、
此れをプレゼントするわ」
と、又メダルを貰った。魔女の杖の紋章だ。
「軍関係では力に成れると思うわ、私の一門は軍属の貴族だから、
何かもめごとが有ったら力に成るわね」
「はい有難う御座います。其の時は宜しくお願いしますね」
と、向こうから一人のでっかいオッサンが、やって来た。
「あれ、一番最初に治療した時に居たよな~うん?べん髪~?
最初は包帯で分からなかったけど~あれ~?どっかで見たよ~な?」
2メートル以上は有るだろうか?べん髪の筋肉ダルマがやって来て、
「あら、おじ様、お体の方はもう宜しいのですか?」
「うむ、アモンか、少し休めたしな、所で、其処の君、
かたじけ無いお陰で又、前線に立てる」
「何を言って居ますの?ジャーキーおじ様は、
今回、総指揮官で来て居りますのよ、
其れが行き成り、ウォーマンティスの群れに突っ込んで、
如何するのですか?
あの後大変だったのですから」
「う~ん、戦闘狂かよ~あっ、俺、モモタロウって言います」
「うむ、モモタロウ君、
多くの怪我人を治療してくれて感謝する!」
「はあ、まあギルドからの依頼ですから」
「うむ、所で、アモンよ、鎧と剣を」
「ダメです~鎧はズタズタで使い物に成りませんし、
剣も根元から折れて居ますわ!其れよりも、
副官が何とか支えて居ます。
早く指揮に戻って下さい!」
「こんなに、血沸き肉躍るのにか?有り得ん!!」
「有り得んじゃ有りません!
有り得無いのはおじ様の頭の中です~!」
「アモンさん、こんなバカは
マンティスノ中に放り込んだら良いんじゃない?」
「其れがそうは行かないの!こんなバカでも死んじゃったら、
指揮に響くから・・・・困ったわ」
「バカって言う奴がバカなんだぞ~!」
「「・・・・・・・・」」
仕方が無いので、竜鱗のフルプレイトメイルと、
竜鱗剣をリリーに作って貰って、
べん髪のおっさんに渡した。
すると、おっさんは、喜々として着替えて、
「其処の君、モモタロウとか言ったな、
確か賢者だっけ?お礼に、
全指揮権を君に譲る事にする。
では、さらばじゃ~!!」
と、おっさんは、ヒャッハ~と飛び出して行った。
「「・・・・・・・・」」
「アモンさん・・・・如何する?」
「如何するもこうするも無いですね、
取り敢えず副官の所に行きましょうか?」
「そうですね~」
俺と、女騎士アモンさんは、近くに有る建物に入って行くと、
10人程の騎士と、4人の女性のエルフが居た。
「副官、ジャーキー指令が、
此方に居るヒーラー様に全権を与えて、
ヒャッハ~と、飛び出して行きました」
「あの糞オヤジめ~軍を全滅させるつもりか!」
と、どんと、机を殴った。エルフのお姉さんの一人が、
「話は届いて居るよ、君が怪我人を治してくれたんだね、
有難う、本当に助かった感謝するよ」
「いえ、ギルドからの依頼ですから、で、状況は?」
「うむ、芳しくは無いね、兵を交代で休ませては居るのだが、
一進一退でね、丸3日戦い続けて疲弊して居る。
相手は昆虫型モンスターで疲れ知らずだ。
何時迄持つか分からない状況だ。
新たに40人程の弓兵が健闘して呉れては居るのだが、
矢も無限では有るまい。
しかし、此処で食い止めなければ、マンティスの群れが、
穀倉地帯に広がる事が有れば、帝都は、大飢饉に見舞われる」
「そうなんですよ、百年ほど昔、一度ビッグマンティスの群れが、
穀倉地帯に溢れた事が有ってね、10年に渡って大飢饉が続いたのです。
其の時は、帝都の人口が半分に迄減りました。
マンティスは、マザーマンティスが
混ざつていた場合繁殖するのです。
其れも大量に、其れが、動物、植物関係無く、
食べ尽くしてしまうのです。
しかも広域に広がる為に中々討伐が進みません。
昆虫型のモンスターは大量発生するので、厄介なんですよ」
「ふむ、で、マンティスをダンジョンに封じ込めたとしましょう。
其の後の対策は?」
「ウォーマンティスの発生源の5階層での、
マザーの討伐に成るのだが、現状況では、不可能だろね、
で、代替案なんだが、ダンジョン内に押し込めて、
大岩で蓋をする。ってのが今の計画では有るんだけれどね~」
「そう、蓋に成る大岩が有るの?って話なんですよ」
「ふんふん、分かりました。先ず俺は、ヒーラーですが、実は、
タンカーでも有ります。攻撃魔法は一切使えませんが、
強力な結界シールドを持って居ます。
簡単な土魔法も使えるので・・・・
作戦ですが、結界シールドでダンジョンの入り口に蓋をして、
先ず、マンティスのお代わりを無くします。
蓋をしている間に出張って居るマンティスを狩って下さい。
此れが、第一段階、そして、
火魔法と風魔法を使える者を集合させます。
そして、マンティスで一杯のトンネルの中に
火魔法をぶっ放します。
時間差で風魔法を送って、奥に迄炎が行く様にします。
其の後、俺が土魔法で蓋をします。そうなると」
「煙に巻かれてマンティスを大量に殺せる?」
「近いけれど違います。火は大量の空気を必要とするので、
空気口に蓋をされると、空気が無くなりますので、
広範囲のマンティスを駆除する事が出来るでしょう。
そんな事をすれば
当然、我々もダンジョンに入る事が出来なくなるので、
その間に兵に休息を取って貰って、体力を回復して貰います。
此れが、第二段階。
そして、トンネル内に空気が戻ったのを確認してから、
蓋に人が通れる位の穴を明けて、
ダンジョンに侵攻します。
此の時、魔法使いは、魔法が使え無い者が増える訳です、火とか、
魔法使いの皆には、
俺達が使って居る弩を配るので、弓兵をして貰います。
3段撃ちを教えるので、其の陣形で進みます。
その間騎士達は、弓隊の護衛をして貰います」
「3段撃ち?」
「はい、弓兵を3列に並ばせて前列が撃つと最後尾に並んで、
次の順番が来る迄に矢を準備して貰う方法で、
間断無く矢を射続ける戦法ですね」
「皆其れだ~!!」皆
こうして、俺の戦術が選択された。良いのか其れで、
「さあ!逆襲の始まりだ!」